VUメーターのこと(その25)
メーターがついていれば、その針がどこまで振れるのか。
このことに、まったく関心がない、と断言できるオーディオマニアは、そういないはずだ。
メーター付きのアンプを手に入れたのであれば、
しかもそれがパワーアンプのメーターであれば、どこまで出力が出せるのか、
つまりどこまで針が振れるのかをやってみたくなる。
瀬川先生が、ステレオサウンド 59号の新製品紹介で、
アキュフェーズのM100を取り上げられている。
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いったい、どこまでの出力が出せるものかと、ハイパワー限界のテストをしてみた。こういうテストは、もしもクラシックで、ピーク500Wを出そうとしたら、ふつうの部屋ではとても耐えられない音量になってしまう。むしろ、最近の録音の良いジャズやフュージョンの、むしろマイナー・レーベル(たとえばオーディオ・ラボやシェフィールドなど)のほうが、一瞬のピーク出力が制限されずにそのままカッティングされている。いいかえれば、音量感の上ではむしろ意外なところで、出力の表示は数百Wを軽くオーバーシュートして、びっくりさせられる。
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M100は、出力500Wのモノーラルパワーアンプで、
8Ω負荷時のピークパワーの値を数字で示すディスプレイもついている。
瀬川先生は、この時の試聴で640Wを記録した、と書かれている。
この時のスピーカーはJBLの4345だろうから、出力音圧レベルは95dB/W/m。
いまどきの80dB前後のスピーカーとは違う。
メーターがついていると楽しい。
ピークメーターであれば、さらに楽しい。
とはいえ、メーターの針の動きを、ずっと眺めているわけではない。
瀬川先生も、59号で、こうも書かれている。
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というのは、かなり時間をかけてテストしたにもかかわらず、C240+M100(×2)の音は、聴き手を疲れさせるどころか、久々に聴いた質の高い、滑らかな美しい音に、どこか軽い酔い心地に似た快ささえ感じさせるものだから、テストを終えてもすぐにスイッチを切る気持になれずに、そのまま、音量を落として、いろいろなレコードを、ポカンと楽しんでいた。
その頃になると、もう、パワーディスプレイの存在もほとんど気にならなくなっている。500Wに挑戦する気も、もうなくなっている。ただ、自分の気にいった音量で、レコードを楽しむ気分になっている。
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ならばメーターなどなくてもいいじゃないか、
メーターがないほうが音がよくなるのだから、と。
人によっては、そう思われるかもしれないが、
オーディオ機器の製品としての魅力というものは、
そんなふうに割り切れるわけではないところに潜んでいたりする。