Archive for 7月, 2020

Date: 7月 6th, 2020
Cate: Cornetta, TANNOY

TANNOY Cornetta(その20)

ケイト・ブッシュのCDは、2018年にすべてリマスター盤が出ている。
今回、HくんがもってきてくれたCDもそうである。

この時にMQAも配信が始まった。
44.1kHz、24ビットだった。

デジタル録音のアルバムにあわせるためなのだろう。
でもアナログ録音のものは、サンプリング周波数を高くしてほしかったのが本音だ。

大きな期待は、その時はしてなかった。
MQAの音は、ULTRA DACで聴いて衝撃を受けていたけれど、
まだ自分の部屋でMQAが鳴っていたわけでもなかった。

なのでMQAということに期待しながらも、
音に大きな違いはないのかもしれない──、そんなことも考えていた。

これが違っていたことは、218で聴くようになってからである。
数値上は、44.1kHz、16ビットと44.1kHz、24ビットは、どれだけの違いがあるのか。
そのわずかな違いにMQAということが加わる。

そこで、どれだけの音の変化が生れるのか。

実際に聴いてみると、MQA、MQAとバカの一つ覚えのように、
ここ二年ほどの、私が何度も書いたり話したりしている理由がわかる。

コーネッタで聴いても、その違いははっきりとしているし、大きい。
最後のところでかけた“Hello Earth”の音には、ほんとうに驚いた。

20代のころ、QUADのESLをSUMOのThe Goldで鳴らしていたころの音がよみがえってきた。
“Hello Earth”でESLの仰角や振りを調整していたものだ。

コーネッタで聴くケイト・ブッシュは、
ケイト・ブッシュがイギリスの歌手であることも、感じさせてくれた。

アメリカの英語ではなく、イギリスの英語で、ケイト・ブッシュは歌っている。
そう感じられたのが、なによりもうれしいことだった。

Date: 7月 6th, 2020
Cate: Cornetta, TANNOY

TANNOY Cornetta(その19)

喫茶茶会記では、コーネッタをコーナーに設置することは難しかった。
床も壁も理想的な条件からほど遠い。

それでもアルテックのいつものセッティングよりは、後面の壁との距離はかなり近い。
けれど左右の壁との距離は、けっこうあいている。

コーナー型のセッティングとしては、フリースタンディングに近い、といえる。
こういうときに、メリディアンの218のトーンコントロールはありがたい。

7月のaudio wedneadayでは、鳴らし始めてしばらくして1.0dB低音をブーストしていた。
途中で1.5dBにして、最後までそのままで鳴らしていた。

そうやってえられたコーネッタの低音の表現力は、
私にとって意外だった。いい方向に意外であった。

喫茶茶会記のスピーカーは、アルテックで、38cm口径。
コーネッタは、タンノイで、25cm口径。

コーネッタは四十年以上前のスピーカーで、
コーナー型という、これも古い形式であり、
同軸型というスピーカーユニットも、古い形式といえる。

しかも新品ではなく、中古で手に入れたモノだ。

音を聴かずに頭でのみ判断して、その日のCDを前夜選んでいた。
結果は、あのディスクももってくればよかった……、と後悔することになった。
そのくらい、よく鳴ってくれたからだ。

兵庫から来てくれるHくんが、ケイト・ブッシュの“Hounds of Love”をもってきていた。
私のiPhoneには、ケイト・ブッシュのアルバムはすべてMQAで入っている。

audio wednesdayが始まる前にCDで聴いて、MQAで聴いた。
最後のほうに、もう一度MQAで聴いた。

ケイト・ブッシュの鳴り方も、私には意外だった。
よく鳴ってくれるのだ。

Date: 7月 6th, 2020
Cate: Cornetta, TANNOY

TANNOY Cornetta(その18)

ステレオサウンド 37号、38号、39号掲載のコーネッタの記事は、
エンクロージュアの設計がどう決っていったのか、どう変化していったのかがわかる。

最初に試作されたエンクロージュアはフロントショートホーンが付いていない、
いわゆる四角い箱(レクタンギュラー型)である。
W53.0×H68.0×D45.0cmの外形寸法で、
バスレフの開口部が18.0×10.0cmで、ポート長16.5cmである。

この状態での周波数特性が載っている。
約45Hzまでほほフラットで、それ以下の周波数では急激にレスポンスが下降する。
典型的なバスレフ型の特性といえる。

コーネッタはコーナー型である。
つまり部屋のコーナーに設置するわけだ。

コーナーは二つの壁と床が交叉するところであり、コーナー効果が発生する場所でもある。
理想的な壁と床が用意されていれば、
低域のレスポンスは無響室での結果よりも、18dB上昇することになる。

これはあくまでも理論値であって、
壁と床が理想的な条件とは遠いほど、レスポンスはそこまで上昇しない。
一般的には8dBから12dB程度だと考えられる。

そのためコーネッタの低域特性は、コーナー効果を前提とした設計となる。
つまり低域に向ってなだらかにレスポンスが下降していくのが望ましい。

バスレフ型であるならば、ポート長は長いほど、コーナー型に適した低域レスポンスが得られる。
ただし、そのポート長がエンクロージュア内におさまらなければ意味がない。

記事には、48.6cmのポート長で、コーナー型として適した低域特性になる、とある。
こんなに長いポートは処理がむずかしい。
結果として、レクタンギュラー型と同じポート長にして、
エンクロージュアの内容積を増すことで、約100Hzからなだらかに下降するレスポンスを得ている。
約45Hz以下では急激にレスポンスが下降していく。

コーネッタの周波数特性は、38号に載っている。

Date: 7月 5th, 2020
Cate: Cornetta, TANNOY

TANNOY Cornetta(その17)

いまもそうなのだろうと思うが、
タンノイの同軸型ユニットは、ウーファーの口径に関係なく、
中高域のダイアフラム口径は同じである。

HPD385A、HPD315A、HPD295A、
中高域のダイアフラムは共通である。
そしてクロスオーバー周波数も、三つのユニットとも1kHzで同じである。

ということはウーファーの口径に起因する指向特性の変化を考慮すれば、
38cm口径の場合、ウーファーの受持帯域にわたって良好な指向特性は無理である。
30cm口径でも、やや苦しい、といえる。

単純に指向特性の良好さということだけで判断すれば、
25cm口径ということになる。

それでも、私は、どこかHPD295Aの実力を侮っていたところがあった。
タンノイのユニットを代表するのは、やはり38cm口径である。

30cm口径はそのジュニア版といえる。
HPDシリーズをみても、ウーファーに補強リブがあるのはHPD385AとHPD315Aで、
HPD295Aにはないことからも、
HPD295Aは、ラインナップにおいて上二つのユニットとは設計方針が違うのだろう。

発表時期も、30cm口径は、モニターシルバーになる直前であるが、
25cm口径は1961年、モニターレッドになってからだった。

そして25cm口径のIIILZをおさめたシステムは、
IIILZ in Cabinetは、タンノイ初の密閉ブックシェルフ型であることからも、
25cm口径のタンノイのユニットは、ブックシェルフ型向けといえる。

そのユニットを、見かけの割には内容積が確保しにくいコーナー型とはいえ、
それでも誰の目にもあきらかなフロアー型エンクロージュアにおさめたのが、コーネッタである。

Date: 7月 5th, 2020
Cate: ちいさな結論

ちいさな結論(問いつづけなくてはならないこと・その2)

美しい音を聴くためには、美しく聴く、ということが求められている。
その1)に、そう書いた。

コーネッタを鳴らして、そのことをあらためて実感するだけでなく、
私が五味先生の残されたものから学んだ最大のことは、このことだ。

Date: 7月 5th, 2020
Cate: Cornetta, TANNOY

TANNOY Cornetta(その16)

その9)で、コーネッタに手持ちのサーロジックのサブウーファーを追加したい──、
そんなことを書いた。

HPD295Aは、25cm口径。
それほど低いところまで再生できるとは考えていなかったからなのだが、
実際にコーネッタを鳴らしてみると、意外にもかなり低いところまで再生できることに気づく。

HPD295Aのカタログ上のf0の値は、22Hzなのは知っていた。
喫茶茶会記のアルテックのシステムのウーファー416-8Cとそれほど変らない。

25cm口径としてはけっこう低いf0である。
ステレオサウンド 38号では実測データが載っている。
HPD295は、シリアルナンバー200427と200003の二本が測定されていて、
200427が18.5Hz、200003が18.4Hzである。

IIILZ MkIIの実測データもある。
シリアルナンバー138822と141464で、前者が38.2Hz、後者が55.3Hzである。

HPD295のf0は低いだけでなく、
この実測データをみるかぎりは、バラツキも少ないことがわかる。

でも、これだけで数値でどれだけの低音の再生能力があるのかを、
正しく予想できるわけではない。

サブウーファーを考えていたぐらいだから、
私は、f0の数値の低さをそれほど重視していたわけではなかった。

なのに聴いてみると、サブウーファーは必要ないかも……、と思っていた。
もちろんサブウーファーを持っているのだから、試すことになるだろう。

かなり低いところをうまく補うだけで、全体の音の印象は大きく変る。
ピアノを聴くと顕著である。
サブウーファーがうまくつながっていると、フォルティシモでの音ののびがまるで違う。

それにaudio wednesdayでかけたクナッパーツブッシュの「パルジファル」は、ライヴ録音。
こういうライヴ録音こそ、サブウーファーがあるとないとでは、
全体の雰囲気が、これまた大きく変ってくる。

そんなことがわかっているから、やることになる。
それでもコーネッタだけで、何の不足があるのだろうか、とも感じていたのは本音でもある。

Date: 7月 4th, 2020
Cate: High Resolution

MQAで聴けるエリカ・ケート

エリカ・ケートについては、これまで何度も書いてきている。
瀬川先生の文章の熱心な読み手であれば、
エリカ・ケートを、瀬川先生はどういう音で聴かれていたのかを知りたいところである。

同時に、MQAの音の良さに惚れ込んでいる私としては、
MQAでエリカ・ケートを聴きたい、と思っている。

e-onkyoでエリカ・ケートを検索しても、ヒットしない。
ないものだとばかり思っていたが、実はあった。

フリッツ・リーガー指揮ミュンヘン・フィルハーモニーによるモーツァルトの「魔的」である。
1964年7月26日のライヴ録音で、
エリカ・ケートは夜の女王を歌っている。

e-onkyoの当該ページをみても、エリカ・ケートの名前はない。
Fritz Rieger & Münchner Philharmoniker[MainArtist]、
Various Artistsとの表記があるだけだ。

エリカ・ケートが夜の女王を歌っていることに気づいたのは、偶然が重なってことである。
MQA Studioで、96kHz、24ビットで配信されている。

小さな宝ものを見つけたようで、とにかく嬉しい。

Date: 7月 4th, 2020
Cate: 世代

世代とオーディオ(実際の購入・その3)

1977当時、G.R.F.は420,000円(一本)だった。
HPD385Aが搭載されたコーナー型のバックロードホーンである。

当時、タンノイはG.R.F.の製造は、オートグラフとともにやめていた。
エンクロージュアは、タンノイの承認のもと輸入元のティアック製だった。

この点もコーネッタに近い。
この時代、コーネッタが完成品のスピーカーシステムとして登場していたら、
300,000円前後になっていただろう。

ユニットの口径は小さいし、
ホーン型エンクロージュアとはいえ、フロントショートホーンとバックロードホーンとでは、
製作の手間が違う。

それでもコーネッタが、意外にも高くなると予想するのは、エンクロージュアの材質の関係だ。
コーネッタでは、バスレフポートや補棧にはラワンが使われているが、
エンクロージュアの大半には桜合板が使用されている。

この時代の300,000円前後の海外のスピーカーシステムといえば、
アルテックのModel 15(289,000円、一本の価格)、612C(296,000円)、
A7-8(326,000円)、アコースティックリサーチのLST(290,000円)、
JBLのL45-81B(289,000円)、L45-001B(299,000円)、L45-84B(324,000円)、
K+HのOY Monitor(300,000円、アンプ内蔵)、クリプシュのC-WO-15 Cornwall(320,000円)、
ラウザーのCorner Reproducer TP1 TypeD(295,000円)といったところである。

これらのスピーカーシステムの、現在の中古市場での価格をすべて把握しているわけではないが、
このなかで、一本四万円程度で買えるものがあるだろうか。

とにかく、中古オーディオ機器の購入は、運任せのところが多分に強い。
欲しい、と思った時に、あらわれてくれるとはかぎらない。

オーディオマニアのなかには、
ほぼ毎日のように中古を扱うオーディオ店を覗く人もいる、ときいている。
出合いを運任せにはしたくない──、そういう人は、そうであろう。

Date: 7月 4th, 2020
Cate: ワーグナー

Parsifal(その2)

先日のaudio wednesdayでは、クナッパーツブッシュの「パルジファル」をかけた。
この音ならば、「パルジファル」がうまく響いてくれるはず、という確信があったからでもある。

それでも、audio wednesdayで「パルジファル」をかけることになろう、とは、
audio wednesdayで音を鳴らすようになってからでも、考えたことはなかった。

ワグナーの楽劇は、以前バーンスタインの「トリスタンとイゾルデ」は二、三度かけている。
それでも「パルジファル」となると、
それがクナッパーツブッシュの演奏ではなく、カラヤンであったり、ショルティだとしても、
なんとなくさけていたところがあった。

もしかけたとしても、それはクナッパーツブッシュの「パルジファル」ではなく、
カラヤンの「パルジファル」か、いやむしろほとんど思い入れのないショルティをかけただろう。

なのに、今回いきなりクナッパーツブッシュの「パルジファル」を鳴らした。

五味先生の「続・オーディオ巡礼」の森忠揮氏(ステレオサウンド 50号)に登場されている。
     *
森氏は次にもう一枚、クナッパーツブッシュのバイロイト録音の〝パルシファル〟をかけてくれたが、もう私は陶然と聴き惚れるばかりだった。クナッパーツブッシュのワグナーは、フルトヴェングラーとともにワグネリアンには最高のものというのが定説だが、クナッパーツブッシュ最晩年の録音によるこのフィリップス盤はまことに厄介なレコードで、じつのところ拙宅でも余りうまく鳴ってくれない。空前絶後の演奏なのはわかるが、時々、マイクセッティングがわるいとしか思えぬ鳴り方をする個所がある。
 しかるに森家の〝オイロダイン〟は、実況録音盤の人の咳払いや衣ずれの音などがバッフルの手前から奥にさざ波のようにひろがり、ひめやかなそんなざわめきの彼方に〝聖餐の動機〟が湧いてくる。好むと否とに関わりなくワグナー畢生の楽劇——バイロイトの舞台が、仄暗い照明で眼前に彷彿する。私は涙がこぼれそうになった。ひとりの青年が、苦心惨憺して、いま本当のワグナーを鳴らしているのだ。おそらく彼は本当に気に入ったワグナーのレコードを、本当の音で聴きたくて〝オイロダイン〟を手に入れ苦労してきたのだろう。敢ていえば苦労はまだ足らぬ点があるかも知れない。それでも、これだけ見事なワグナーを私は他所では聴いたことがない。天井棧敷は、申すならふところのそう豊かでない観衆の行く所だが、一方、その道の通がかよう場所でもある。森氏は後者だろう。むつかしい〝パルシファル〟をこれだけ見事にひびかせ得るのは畢竟、はっきりしたワグナー象を彼は心の裡にもっているからだ。〝オイロダイン〟の響きが如実にそれを語っている。私は感服した。
     *
この文章を、高校生のときに読んでいる。
このときはまだクナッパーツブッシュの「パルジファル」は聴いていなかった。
クナッパーツブッシュのだけではなく、
ほかの指揮者の「パルジファル」も聴いたことがなかったから、
よけいに「パルジファル」は神聖なものに近いようにも感じていた。

私にとって、クナッパーツブッシュの「パルジファル」はそういう存在だった。
だから、人前でかけることがあるとは、まったく想像できなかったのだ。

Date: 7月 3rd, 2020
Cate: 930st, EMT

EMT 930stのこと(ガラード301との比較・その16)

歌い手の口の小ささを優先した気持は、私にもかなり強くある。
それでも、口の小ささばかりに気をとらわれていると、
歌は口からばかり発せられているのではないことを、忘れてしまいがちになるのかもしれない。

口の小ささに強くこだわっている人をみていると、そんな気がすることがある。
人の声は口から発せられているのは間違いないが、
身体は共鳴体でもある。

頭蓋骨からも音が発せられている、ということを何かで読んだことがある。
腹から声を出す、ともいう。
腹式呼吸が重要だということである。

少なくともプロフェッショナルの歌い手は、口だけではない。
上半身から声を出しているように感じている。

ウォルター・レッグの「レコードうら・おもて」に興味深いことが書かれている。
     *
カラスが、私の妻がミラノにその晩来ていると知っていて、一緒に食事をしたいといい張った時のことは、しばしば報道されている。私がカラスの代りを探しているという根拠のない噂が何人かの有名なソプラノを磁石のように引きつけ、私たち夫婦がきまって食事するビフィ・スからの中や周辺を、望みを抱いて動き廻っていた。そこへ、まるで何事もないかのような顔でカラスが入って来て、妻の頬に申しわけのようにせっかちなキスをして腰も下ろさずにいった、「あなたの最高音AとBの歌い方を、そのディミヌエンドの仕方を歌って見せて下さい。ウォルターが私のを聴くと船酔いがするっていうの。」シュヴァルツコップが躊躇していると、カラスは、驚いているレストランの客たちを無視して、彼女のトラブルになっている音をフル・ヴォイスで歌った。その間、シュヴァルツコップは横隔膜や下顎や喉、それに肋骨を手で触っていた。給仕たちはびっくりして足を止め、客は眼を見張り耳を傾けてこの面白い光景を楽しんだ。数分してシュヴァルツコップが同じ音を歌い始め、カラスが、どのようにしてそれらの同じ音を安定して歌うことができるのかを探ろうと、同じ箇所を指でつついた。二十分ほどしてカラスは「分かったと思うわ。朝またやって来ます。それまで練習しておきますわ」といって腰を下ろし、夕食を始めた。
     *
身体は共鳴している。
というよりも、プロフェッショナルの歌い手になればなるほど、
身体の共鳴をコントロールしているのだろう。

Date: 7月 3rd, 2020
Cate: audio wednesday

第114回audio wednesdayのお知らせ(再びTANNOY Cornetta)

「MQAで聴けるバックハウスのベートーヴェン(その3)」を公開した約12時間後に、
バックハウスの30番、31番、32番のMQAでの配信が始まった。

タイミングがいいというのだろうか、悪いというのだろうか。
とにかく8月のaudio wednesdayでは、五味先生がお好きだったケンプとバックハウスで、
ベートーヴェンの後期のピアノ・ソナタを、MQAでコーネッタでかけることができる。

8月のaudio wednesdayで最後にかける曲は、ケンプとバックハウスになる。

Date: 7月 3rd, 2020
Cate: 世代

世代とオーディオ(実際の購入・その2)

当時HPD295Aを搭載していたタンノイのスピーカーシステムEatonの値段は、80,000円だった。
Eatonは、Arden、CheviotとともにLegacyシリーズとして復刻されている。
現在の価格は400,000円だ。

いまタンノイはユニットの単売を行っていない。
Eaton搭載の10インチ口径の同軸型ユニットが、どのくらいするのかはわからない。

なので単純にEatonの値段だけで考えると、
1977年の五倍になっている。

HPD295Aが五倍で300,000円。
SSL1が五倍で440,000円。
合計で740,000円となる。

しかもくり返すが、SSL1は組み立てが必要なエンクロージュア・キットである。
これが完成品として発売されるとなると、組み立てにかかる費用、
梱包材もしっかりと大きなものとなるし、ここにかかるコストもけっして低くはない。

輸送の費用も、保管して置くための倉庫の費用なども、
キットの場合以上にかかる。

それにSSL1のフロントショートホーンの加工をながめていると、
いまこれだけの木工を依頼するとなると、当時よりもずっと高い費用がかかるではないだろうか。

そうなってくると、コーネッタ(完成品)の価格は、
80万円、90万円ほどになっても不思議ではない。
しかも、これはペアの価格ではなく一本の価格でしかない。

あくまでも単純に考えての予想価格でしかない。
現実にはもう少し安くなるのかもしれないし、高くなるのかもしれない。
どちらにしても、安い価格のスピーカーシステムではないことだけは、はっきりといえる。

7月1日のaudio wednesdayでのコーネッタの音をきいた人たちは、
ペアで八万円ちょっとスピーカーシステムだとは思わなかった。

Date: 7月 3rd, 2020
Cate: 世代

世代とオーディオ(実際の購入・その1)

いまコーネッタのことを続けて書いているところである。
四十年ほど前のスピーカーシステムを、八万円ちょっとで入手できた。
ペアで、この値段である。

いま一本四万円ほとのスピーカーシステムにどんなモノがあるのか、
すぐには思い出せない──、というよりもほぼ知らない。

コーネッタは中古である。
中古は当り外れがある。大外れもある。
もし、そんな大外れにであってしまったら、金をドブに捨てるようなもの。
運任せのところがある。

なので、誰にでも中古を買うことをすすめるようなことはしない。
それでも、実際にオーディオ機器を購入する場合、
中古の購入をまったく考えない人は、どのくらいいるのだろうか。

予算に限りがある。
そのなかで、少しでもいい音を出してくれる可能性の高いモノが欲しい。

昔は、中古を探そうとしても、地元のオーディオ店、
オーディオ雑誌の売ります買いますコーナー、
オーディオ雑誌掲載の販売店の広告ぐらいしかなかった。

いまはインターネットがあり、
海外からも購入することができるようになっている。
今回のコーネッタも、インターネットがなければであえなかったかもしれない。

コーネッタは、いまいくらなのだろうか。
中古相場ではなく、コーネッタというスピーカーが新製品として登場したとしよう、
いったいいくらになるのだろうか。

ユニットのHPD295Aは、60,000円(一本、1977年)、
エンクロージュアのSSL1は、88,000円(一本)である。
トータルで148,000円だが、エンクロージュアはキットである。

購入者が自ら組み立てる必要がある。
ここで考えたいのは、完成品としてのコーネッタは、いまいくらになるのかである。

Date: 7月 2nd, 2020
Cate: Cornetta, TANNOY

TANNOY Cornetta(その15)

タンノイの同軸型ユニットは、ウーファーのコーン紙が中高域のホーンの延長になっている。
このことはすでに書いているし、
それだからこそコーン紙のカーヴ、それから材質、強度などがホーンとして、
その音に関係してくるわけだが、昨晩コーネッタを聴いていて感じたのは、
コーン紙をホーンの延長とする同軸型ユニットは、
プログラムソースがデジタルになってこそ本領発揮となることである。

アナログディスクだと、どうしても低域共振の影響から完全に逃れることはできない。
それゆえに1970年代の終りごろに、
アナログディスクのRIAAカーブの改訂が行われ、20Hz以下を減衰させるようになった。

それまでのRIAAカーヴは、35Hzから15kHzまでは厳格な規格が定められているが、
それ以下、それ以上の周波数帯については、35Hzから15kHzまでのカーヴの延長であればいいとなっていた。

いまでもいるようなのだが、サブソニックの影響でウーファーの振動板が前後に振れているのをみて、
低音が出ている、と勘違いする人がいた。

そういえば二年前のインターナショナルオーディオショウのあるブースでは、
あるアナログプレーヤーのデモで、ウーファーがかなり激しく前後していた。
にも関らず、そのブースのスタッフは誰一人として気にしていない様子だった。

アナログディスク再生の難しさ、大変さを体験していない人は、
サブソニックの影響について何も知らないのだろうか。

とにかくウーファーの振動板の動きが目に見えるようでは、それは音になっていない。
つまりタンノイの同軸型ユニットにおいて、ウーファーの振動板が目に見えるほど動いている、
サブソニックの影響を受けて振動している状態は、
ホーンの前半分が、そういう状態にあるということだ。

低域の安定性に欠けていては、タンノイの同軸型ユニットのメリットは損われる。
そう考えて間違いない。

タンノイが気難しいスピーカーといわれていたのは、
こういうところにも一つ原因があったように考えられる。

デジタルがプログラムソースであれば、機械の故障でもないかぎり、
サブソニックの影響はない。

しかも以前のCDの44.1kHz、16ビットだけでなく、
いまではサンプリング周波数も高くなり、DSD、MQAなども登場してきている。
同軸型ユニットにとって、いい時代といえる。

Date: 7月 2nd, 2020
Cate: Cornetta, TANNOY

TANNOY Cornetta(余談)

コーネッタは、沈黙したがっている──、
そう書いている私は、コーネッタについて書きたがっている。