アンドロイドのピアニストはまだ実現していない(まだいないというべきか)。
けれど、ことピアノに限れば、19世紀後半から自動ピアノが存在している。
ピアノロールと呼ばれる穿孔された巻紙(これが演奏の指示を出す機構)と、
ピアノを弾くフォルセッサーという機構から構成される。
フォルセッサーはピアノ内部に組み込まれるタイプと、
外部から鍵盤を叩くタイプとがあり、どちらもコンプレッサーと穿孔による気圧差で弁を動かしている。
自動ピアノによる記録は、古い時代から行われてきた。
SP盤には残っていない演奏家の演奏も、ピアノロールには記録され、いまも聴くことができる。
ピアノロールによる自動ピアノの録音は、昔から各レコード会社が行ってきた。
日本ではCBSソニーが1977年に「世紀の大ピアニストたち」という七枚のLPを出している。
マランツからも出ていて、このレコードについては五味先生が「ピアニスト」で触れられている。
CBSソニーの「世紀の大ピアニストたち」が発売されたとき、
ステレオサウンドは「ピアノ・ロールのレコードをめぐって」という記事を、
45号に7ページ掲載している。
CBSソニーの京須偕充、半田健一の二氏を、坂清也氏がインタヴューしている。
45号が出た時、私は中学生だった。
なんとなく、この七枚のLPに興味はもったものの、
レコードはいつでも買える、という気持と、他に買いたいレコードが数多くあったこともあって、
それ以上の興味をもつことはなかった。
それに、そのころは、いまこうやって再生音について、あれこれ書くことになるとは思っていなかった。
いまごろになって、自動ピアノのレコード(LP、CDに関係なく)は、
きちんと聴いておくべきだった、と反省している。
もちろん、いまも自動ピアノのCDは、いくつかのレーベルから出ているし、
2007年には、グレン・グールドの1955年のゴールドベルグ変奏曲を、
まったく新しい自動ピアノによって再現したSACDが出ている。
この自動ピアノをつくりあげたメーカーは、re-performanceと、その仕組みを呼んでいる。
ステレオサウンド 45号の記事を読み返してみると、興味深い。