続・再生音とは……(CBSソニーのピアノロールLPについて)
CBSソニー「世紀の大ピアニストたち」の七枚のLPは1977年に発売になり、
ステレオサウンドでは44号に広告が載っている。
広告にもあるように、当時のソニーの会長だった盛田昭夫氏のコレクションをレコード化したものだ。
45号の記事とあわせて読むと、盛田氏のコレクションは録音時点で998本で、
録音に使われたのは約100本、コレクションの一割がレコードになったわけである。
監修は岡先生であり、
第一巻がヨーゼフ・ホフマン、第二巻がイグナツ・ヤン・パデレフスキー、
第三巻がアルフレッド・コルトー、
第四巻は伝説の巨匠たちというタイトルで、ゴドフスキー、パハマン、フリートハイム、ガブリロヴィッチなど、
第五巻は若き比の巨匠たちで、ホロヴィッツ、バックハウス、ルービンシュタイン、フリートマンなど、
第六巻は女流ピアニスト名演集で、ランドフスカ、エリー・ナイ、ノヴァエスなど、
第七巻は大作曲家、自作自演集で、ガーシュイン、プロコフィエフ、サン=サーンス、グラナドスなど、
となっていて、この企画はCSBソニー創業10周年記念でもあり、
エジソンが蓄音器を発明した1877年からちょうど100年目ということで、実現になった、とある。
録音は盛田氏の自宅で行なわれている。
ピアノはスタインウェイで、フォルセッサーはアメリカ・エオリアン社のデュオ・アート。
録音場所がスタジオやホールではなく、個人の住宅ということから、
スタインウェイの調律は、この条件下でピアニスティックに響くように、
調律師の枡渕直知氏が、一日半かけて行われている。
CBSソニーにとって、この「世紀の大ピアニストたち」が初のデジタル録音である。
テスト録音はすでに何回を行っていたが、当時のデジタル録音には、まだ編集の問題が残っていた。
45号の記事では、76cmのアナログ録音では2mmきざみ(約1/400秒に相当する)の編集をやっていたけれど、
同レベルでのデジタルでの編集はできなかったため、
こまかな編集を必要とする録音は避けようということで、
ピアノロールによる自動ピアノがデジタル録音第一段に選ばれている。