Archive for 6月, 2014

Date: 6月 3rd, 2014
Cate: 4350, JBL

JBLのユニットのこと(2440と2441のこと、4350のこと)

いまでは話題にする人はいなくなってしまったようだが、
JBLから2441(376)が登場してからしばらくは、
4350のドライバーを2440から2441にしたら良くなるのか、という話題がときどき出ていた。

2440(375)と2441(376)の違いはダイアフラムのエッジだけである。
2440(375)はロールエッジ、2441(376)は、日本の折り紙からヒントを得たダイアモンドエッジ。
違いはこれだけである。

だが実測データを比較してみると、高域の延びに関してはけっこうな違いがある。
2440はエッジの共振点を9.6kHzに設定してあるため、
10kHz以上はネットワーク(ハイカットフィルター)なしでも急峻にレスポンスが低下している。
その反面、10kHz以下の帯域に関してはレスポンスをできるだけ得られるようになっている。

2441はダイアモンドエッジとすることでエッジのスティフネスを高め、共振点を2440よりも高く設定。
そのため4kHzあたりからなめらかにロールオフする周波数特性となっている。
2440にみられる10kHz付近の肩の張った特性ではなく、素直な特性ともいえる。

つまりトゥイーターなしで2ウェイで使用した場合、
2440ではイコライザーで10kHz以上を補整しても効果的ではない。もともと出ていないのだから。
2441では高域のイコライジングが容易になる、という違いがある。

その一方で5kHzから10kHzにかけてのレスポンスは2440の方が高い。

どちらが優れているのかは、それぞれを単体で鳴らすわけではなく、
ウーファー、さらにはトゥイーターと組み合わせてシステムを構成しての評価となるため一概にはいえない。

4350の2440を2441に交換したとする。
やったことはないが、あまりうまくいかないように思える。

4350の2440はローカットに12dB/oct.のネットワークがはいっているが、
高域(ハイカット)に関しては10kHz以上はフィルター無しでもレスポンスが急峻に低下するため、
フィルターが入っていない。

そういうネットワークの4350に10kHz以上もロールオフしながらもレスポンスがのびている2441に交換しても、
おそらく2405とのつながりがうまくいかないと思えるからだ。

4350のネットワークまで変更するのであればうまくいく可能性は高くなるが、
そのままでは2441への交換を考えない方が無難である。

Date: 6月 3rd, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーの設置・調整(その9)

ふだんあまり意識することはないが、われわれが暮らしている地球には重力があり、
アナログプレーヤーの動作には重力が密接に関係している。

スタティックバランスのトーンアーム。
どうやって針圧を印可しているのかを考えれば、すぐにわかる。

レコードをターンテーブルプラッターにのせる。
それだけでターンテーブルプラッターとレコードが同じ回転数で廻るのも、重力があるからだ。
重力がなければ、レコードとターンテーブルプラッターを密着させるためにスタビライザーが必要になる。
それもコレットチャック式のスタビライザーが。

ターンテーブルプラッターにしても同じだ。
重力を利用しているから、軸受けの中にシャフトがおさまり、ターンテーブルプラッターが回転できる。
試してみる必要はないが、アナログプレーヤーを上下逆さまにする、
つまり重力の作用が通常と正反対になるようにすれば、どうなるか、
それを考えれば、水平がきちんととれていない状態では重力が各部の動作に影響を与えることがわかる。

アナログプレーヤーの設置に関しては、絶対に忘れてはならないことが、
水平にガタツキなく設置することである。
これが基本中の基本であり、ここをおざなりにしたままでは、何も始まらないし、始めてもならない。

Date: 6月 3rd, 2014
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドの表紙に感じること(その1)

書店にステレオサウンド 191号が並んでいる。
まだ読んでいないので、内容については書かない。

ここで書きたいのは、191号の表紙のこと。
191号の表紙の写真を見たのは、五月終りごろだった。
twitterに、191号の表紙をフォローしている人が添付していたからだ。

191号の表紙を、その時見て、私が最初に思ったことは、別冊を出したのか、だった。
写真だけでなくツイートされた文章も読んで、191号の表紙だと気づいた。

この十年くらいのステレオサウンドと別冊、
それを見てきた感じでいえば、191号の表紙はあきらかに別冊を思わせる印象がある。

これを書くためにステレオサウンドのサイトを見ているが、
やはり191号の表紙は、明らかに印象が違う。
どこがどうとはっきりと指摘できないけれど、いままでのステレオサウンドとは違う印象があることは感じられる。

Date: 6月 3rd, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーの設置・調整(その8)

なぜ水平がもとめられるのかといえば、
アナログプレーヤーの各部の動作は水平にセットされていることを前提としているからである。
それもそれぞれの箇所が水平でなければならない。

回転部であるターンテーブルプラッターが水平でなければならない。
ここが傾いていたらどうなるか、想像してみてほしい。

ターンテーブルプラッターが水平であっても、プレーヤーキャビネットの加工が悪くて、
仮にトーンアームが傾いて取り付けられていたら、どうなるか。これ想像してみてほしい。

名のとおったメーカーの、きちんとした製品であれば、ターンテーブルプラッターが水平であれば、
ほかの箇所も水平である、とはいえるが、
トーンアームを取り付けるベース部分がプレーヤーキャビネットとは別になっているときは、
または後付けのベースでトーンアームを二本にしたりするときは、一応確認・注意は必要となる。

寺垣プレーヤーは、ターンテーブルのシャフトを意図的に傾けている。
だからといって水平に無頓着であっていいわけではない。
理由があって傾けているのであり、置き台がその傾きと反対方向や違う方向に傾いていたら、どうなるか。

寺垣プレーヤーにおいても、置き台の水平は重要なことである。

そのためにも水準器はアナログプレーヤー関係のアクセサリーの基本である。

Date: 6月 2nd, 2014
Cate: JBL

JBLのユニットのこと(2397の匂い)

昨年12月、JBLの2441と2397が我家に来た。
未使用のまま、しかも梱包されたままずっと保管されていた2441と2397。

開梱してすぐに気づくのは、JBLのスピーカーシステム(というよりエンクロージュア)に共通する匂いである。
一度でもJBLのスピーカーシステムか木製のホーンを使ったことのある人なら、
ほら、あの匂い、でわかる、独特の匂いがある。

この匂いも、JBLの製品の魅力のひとつ、と私は思っている。

この匂いは、なぜ漂ってくるのか。
何の匂いなのか、ということは、JBLの関心のある人たちのあいだでときどき話題になっていた。
話題になっても、誰もほんとうのところは知らないから、あまり話は発展していかないのだが、
JBLのスピーカーが好きな人で、少なくとも私が出会った人の中に、この匂いが嫌い、という人はいなかった。

この匂いは、防虫剤の匂いだ、ということが10年くらい前にわかった。
木に虫がつかないように、だからエンクロージュアと木製のホーンから同じ匂いがするわけである。

アメリカでは割と一般的な匂いでもあるらしい。
残念なことに、最近のJBLの製品には、この匂いがないモノも増えてきている。

2397がやって来たとき、この匂いが部屋に満ちていた。
あれから半年、鼻が慣れてしまったのか、それとも匂いが薄れてしまったのか、
あまり匂いを意識しなくなっていた。

ここ数日、東京はかなり暑い日が続いている。
気温が高くなってきたせいなのだろう、また2397から、あのJBLの匂いがしてくるようになってきた。

Date: 6月 2nd, 2014
Cate: マルチアンプ

マルチアンプのすすめ(その32)

違うブランドのスピーカーユニットを組み合わせるのは、いいとこ取りになるよりも、
どうもうまくいかないことが多いのかもしれない。

そういえば、瀬川先生もステレオサウンドがマルチアンプを特集したHIGH-TECHNIC SERIES-1にも書かれている。
     *
その頃は、こうした考え方に合致するユニット自体が殆ど作られていず、また、あまりにもいろいろの国のキャラクターの違うユニットの寄せ集めでは、周波数レインジやエネルギーバランスまではうまくいっても、かんじんの音色のつながりにどうしてももうひとつぴしりと決まった感じが得られなくて、やがて、帯域の広さでは不満が残ったが相対的な音の良さで、JBLのLE15A(PR15併用のドロンコーン位相反転式エンクロージュア入り)、375ドライヴァーに537−500ホーン、および075という、JBL指定の3WAYになり、やがてそれをマルチアンプ・ドライブし、次に4333をしばらく聴いたのちに4341で今日まで一応落ちつく……というプロセスが、大まかに言ってここ十年あまりのわたくしのスピーカー遍歴だった。そう、もうひとつこれとは別系列に、KEFでアセンブリーしたイギリスBBC放送局のモニタースピーカーLS5/1Aの時代が併行しているが。
     *
けれど瀬川先生が最後まで手元に置かれていたKEFのLS5/1Aは、
ウーファーはグッドマン社製、トゥイーターはセレッション社製である。
LS5/1Aだけに限らない。
スペンドールの場合もトゥイーターには他社製のユニットを使っている。
ロジャースのPM510もトゥイーターはフランスのオーダックス製である。

ということは、必ずしもブランドが違うユニットを組み合わせて、うまくいくこともあることになる。

Date: 6月 1st, 2014
Cate: Jazz Spirit

Jazz Spirit Audio(その5)

“Friday Night in San Francisco”。
私は、このディスクをどの位置で聴きたいか、といえば、
ステージの上で聴きたい。
ギターの至近距離にいて、聴きたい。

だから、そういう音で鳴ってほしい、と思う。

昨年のインターナショナルオーディオショウのあるブースで鳴っていた“Friday Night in San Francisco”は、
正反対の鳴り方だった。
いわゆるハイエンドスピーカーに共通するスピーカーよりも奥に定位する鳴り方。
とはいえスピーカーと聴取位置の距離はさほど離れていない。
比較的近い距離でもあった。

でも心理的距離感が遠く感じる音だった。
ギターのひとつひとつの音が鮮明に鳴れば、近くに感じられるかというと、必ずしもそうではない。

まったく異る音楽のディスクであれば、こういう鳴り方がふさわしいと感じることもあろうが、
そこで鳴っていたのは“Friday Night in San Francisco”。

ライヴ録音ゆえに収録されている観客のざわめき、歓声。
そういった要素がうまく鳴ればなるほど、観客の昂奮とは反比例するかのように、
こちらの心は冷静になっていくような、そんな感触の音が鳴っていた。

インターナショナルオーディオショウの四ヵ月ほど前に、
JBLのD130で“Friday Night in San Francisco”で聴いていたから、よけいにそう感じたのかもしれない。

Date: 6月 1st, 2014
Cate: マルチアンプ

マルチアンプのすすめ(その31)

1970年代はスピーカーユニットの豊富さにかけては、いまよりも充実していた。
いまも国内外にスピーカーユニットを生産している会社がけっこうある。
それらからいくつものユニットが登場している。
単純にユニットの数だけで比較すれば(すべてが輸入されているわけではないが)、いまの方が多いかもしれない。

けれどユニットのバリエーションということでは、1970年代の方が充実していた。
そのころ、ステレオサウンドが出していたHI-FI STEREO GUIDEを見ては、
スピーカーはこれにして、アンプはれあれ、プレーヤーとカートリッジは……、と、
予算を決めては組合せをあれこれ夢想していた。

コンポーネントの組合せだけではない、
スピーカーの組合せもあれこれ夢想できていた時代だ。

ウーファーはこれを、エンクロージュアはこれを組み合わせて、
中高域はホーン型にするか、ドーム型でいくのか……、
予算だけでなく、スピーカー全体の大きさをどうするのか、
とにかくそんなことを夢想しているのが、とにかく楽しかった。

よくいわれていることにメーカーの異るユニットは組み合わせないほうがいい、というのがある。
例えばアルテックのウーファーに、JBLのコンプレッションドライバーの組合せ。

この組合せは実際にやった人もけっこういた、と聞いている。
実際にやったことのある人から話も聞いている。
まったくうまくいかなかった、と。

Date: 6月 1st, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーの設置・調整(その7)

いまも昔もアナログディスク再生に関係するアクセサリーはいろいろある。
どんな人出もひとつかふたつは持っていることだろうし、
多い人ならば、ありとあらゆるアクセサリーを持っていることだろう。

アナログディスク再生に関係するアクセサリーの中で、もっとも重要なアクセサリーであるにもかかわらず、
意外に持っていない人がいるモノ──、
水準器である。

水準器がなければ置き台(ラック)の水平を出すことはできない。
水準器を使わずに目視でわかる傾きはけっこう大きなもので、
そんな傾きは論外であり、置き台(ラック)は水準器を使って水平にする必要がある。

水準器には、オーディオ用のアクセサリーとして売られている円筒型の小さなモノがある。
ないよりはいいけれど、水準器はホームセンターで売られている、スパンのあるタイプがいい。

小さな円筒型だと、水平を正確にとった台の上にいくつも並べてみると、
けっこうバラツキがあるのがわかる、という話を聞いている。

置き台の天板の上に水準器を置く。
左右方向と奥行き方向、どちらも水準器を置いてみる。
このときひとつ注意したいのは、水平を出したあと水準器の向きを180度回転させてみることである。
こうして水平がとれているかどうかもチェックしておくこと。

Date: 6月 1st, 2014
Cate: audio wednesday

第41回audio sharing例会のお知らせ(試聴ディスクのこと・再掲)

いまJBLの4350について書いている。
その中でチャック・マンジョーネの「サンチェスの子供たち」のことについてふれたことで、
facebookで、このことが話題になった。
いくつかのコメントの中で、試聴ディスクについて知りたい、というのがあった。

最近では視聴と書く人が、少なくともインターネットでは多くなってきているが、
あくまでも試聴であり、試聴のためにかけるディスクを試聴ディスク、試聴LP、試聴CDという。

ステレオサウンドで働いていたから、かなりの数の試聴ディスクを聴いてきた。
それ以前、ステレオサウンドの読者だったころも、どんなディスクを使われているのかは非常に興味があった。

試聴ディスクとは、いったいどういうものなのか。
どういう基準によって、試聴ディスクを選ぶのか。

いわゆる優秀録音と呼ばれていれば試聴ディスクとして十分なのたろうか。

試聴といっても、例えばスピーカーやアンプの総テストでは、
かなりの数のスピーカーなりアンプを聴く。
そういうときに使うのも試聴ディスクである。

一方で新製品として登場してきたスピーカーなりアンプを聴くときに使うのも試聴ディスクである。

さらに試聴室でもいい、自分のリスニングルームでもいい。
あるシステムからいい音を抽き出すために調整していくために聴くディスクもまた試聴ディスクである。

試聴ディスクで、ひとつのテーマになる。

今月のaudio sharing例会では、この試聴ディスクをテーマにしようと思っている。

今月のaudio sharing例会は、4日(水曜日)です。
時間はこれまでと同じ、夜7時です。

場所もいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。