日本の音、日本のオーディオ(その32)
イソダケーブルの音は、ステレオサウンドの試聴室で聴いている。
銅だけ、銀だけ、つまり単一導体を使用したケーブルとは、あきからに違う音が、
当時の試聴室のリファレンススピーカーだったJBLから、してきた。
不思議な音だな、という印象が、とにかく強かった。
このケーブルの開発者の磯田氏も一緒の試聴だった。
磯田氏が、このときのJBLの音をどう感じられていたのかは、私にはなんともいえないけれど、
あの時の音をふり返ってみると、
イソダケーブルのブレンドは、JBLのスピーカーシステムには不向きだった、とはいえる。
磯田氏がどういうスピーカーシステム、どういうシステムで聴かれているのか、
つまりそのシステムで、このケーブルのブレンドは決定されているわけだから、
磯田氏のシステムにぴったりとブレンドされたケーブルであればあるほど、
試聴室のスピーカーシステムに接いで聴く、という条件は、うまく合う可能性が低い方に傾いている。
つまり、この時のイソダケーブルのブレンドよりも、
もっといい方向へもっていってくれるブレンドがある、
つまり普遍的なブレンドがある、ということである。
結局、ステレオサウンドでイソダケーブルを取り上げることはなかったが、
ラジオ技術ではときどき取り上げられていて、五十嵐一郎氏は積極的に評価されていたし、
海外での評価は高い、ともきいていた。
いまどうなっているのだろう、とインターネットで検索してみると、
活動を停止していた時期があったようだが、いまもイソダケーブルは健在であることがわかった。
あのとき以来、イソダケーブルの音は聴いていない。
けれど、これだけ長く、ある評価を得ているということは、
あのときのブレンドよりも、普遍的なブレンドへと変っていったのかもしれない。