Archive for category テーマ

Date: 2月 23rd, 2025
Cate: ディスク/ブック, バッハ
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バッハ 平均律クラヴィーア曲集(その10)

ヴィルヘルム・ケンプのベートーヴェンは愛聴盤といえるほどに聴いている。
ベートーヴェン以外でもケンプの演奏は割と聴いているけれど、
自分でも不思議に思うほど、バッハは聴いてこなかった。

まったく聴いてこなかったわけではないが、ケンプの平均律クラヴィーア曲集は、三十年ほど前に聴いて以来、
つい最近まで聴いていなかった。

三十年前の印象が悪かったわけではないのだが、
特にこれといった理由もなく、
ずっと聴かずに年月が経っていただけだ。

そのケンプの平均律クラヴィーア曲集を聴いている。
三十年ほど聴いてこなかったことを後悔はしていない。

いいバッハだ、素晴らしい平均律クラヴィーア曲集だ。
三十年前は、そうは感じられなかった。

Date: 2月 23rd, 2025
Cate: 新製品

TOPWING OPT ISO BOX(その2)

Phile webが『Qobuzの音質改善に効く!話題の「光アイソレーター」4モデルを一斉試聴!』という記事を公開している。

TOPWINGのOPT ISO BOXも取り上げられている。
記事中で、スピードの切り替えについての記述が、当然ある。
そこでは、10Mbpsでの音が冴えなかったと、読める。

そうだろうな、と思う。
(その1)でも触れているように、すでにこの製品を購入して、
その感想を公開している人が何人もいるが、
その中には10Mbpsの音が、もっとも良かったとしている人もいる。

その人のネット環境、システム、そしてその人の音の聴き方、
それらが人それぞれ違い、そのトータルの結果として、私が聴いた印象とは反対の10Mbpsの音がいい、となるだけのことだ。

Date: 2月 22nd, 2025
Cate: 「ネットワーク」

オーディオと「ネットワーク」(おさなオーディオ・その9)

内輪だけの関係を、どう捉えるのかは人によって違ってきて当然だし、
ネガティヴに捉える人もいるだろうが、
この内輪だけの関係は、同じ志をもつ人たちが、少人数だからこそ、
互いに精進、切磋琢磨していく関係性でもある、と私は捉えている。

そして、この内輪だけの関係は、とてもオーディオと相性がいい、とも思っている。

けれどそれがオーディオ雑誌の取材、
そしていまではインターネット、ソーシャルメディアによって、
内輪だけの関係に留まることに、かなりの無理を生じさせているのではないか。

多くのオーディオマニアの音を聴いてまわること。
多くのオーディオマニアと知り合うこと。
さらに、その輪を広げていくこと。

悪いこととまでは言わないが、本当にいいことなのだろうか。

内輪だけの関係を大切にしたままであればいい。
けれど、どうもそうではないように、私の目にはうつる。

Date: 2月 20th, 2025
Cate: アナログディスク再生

Westrex 10Aのこと(その4)

ノイマンのDSTは、その改良型のDST62も一緒に聴いている。
最初にDSTを聴いた。そして驚いた。
DST62を聴く。
DSTの方が、素晴らしかった。

DST62だけを聴いていたら、
もしくはDST62を最初に聴いていたら、すごい、と驚いていたはず。

けれどDSTを先に聴いてしまった。
この印象はステレオサウンドの試聴室で聴いても、
持ち帰って自分のシステムで聴いても、変らず私はDSTを取る。

今回、ウェストレックスの10Aを聴いた。決して万全な環境で聴いたわけではないが、
ひとつ確信していえるのは、ローコンプライアンスのカートリッジの音に、
私は惹かれる、ということだ。

Date: 2月 19th, 2025
Cate: 「ネットワーク」

オーディオと「ネットワーク」(おさなオーディオ・その8)

『オーディオと「ネットワーク」(SNS = SESか・その6)』で、
オーディオクラブのことにちょっとだけ触れた。

1980年代のステレオサウンドで、いくつかのオーディオクラブを取材して記事にしている。

これらのオーディオクラブのいくつかは、
記事で紹介されてしばらくしたら、解散してしまった、と聞いている。

その原因も少しだけ聞いているけれど、どこまで本当なのかは、確認していない。

ただ記事になってから解散したという事実だけである。

オーディオ雑誌では昔からマニア訪問記があった。
オーディオクラブを紹介したのは、あまりなかったはずだ。

思うに、オーディオクラブは、元々内輪だけの世界を大切にした人間関係だったはずだ。
それがオーディオ雑誌で取り上げられる。
しかもステレオサウンドで、カラーで取り上げられる。

こうなると、もう内輪だけのことでは済まなくなってきたはず。
ぜひ聴かせてほしい、という人もけっこういただろう。
私も、そのクラブに加わりたい、という人もいたことだろう。
記事になって最初のころは、その反響に驚いていたはずだ。

けれど、その反響は内輪だけの関係を毀していったのではないのか。
それまでクラブ内の序列なんてものはなかったのに、一度記事になってしまうと、
徐々に内からも外からも序列のようなものが形成されていく──、
そんな気がしてならないし、それが解散の原因になっていったのか。

ソーシャルメディアを頭から否定はしないけれど、
当時のオーディオクラブがオーディオ雑誌に取り上げられなくて、
内輪だけの関係を大事にしていったとしても、
ソーシャルメディアにオーディオクラブのまま、一歩でも踏み入ってしまえば、
同じことになってしまうだろう。

Date: 2月 18th, 2025
Cate: 訃報

マジカル・パワー・マコ氏のこと

一昨日、マジカル・パワー・マコ氏の訃報をFacebookで知った。
2月7日に亡くなられている。

2010年1月22日に、このブログでtwitterを始めたことを告知した。
すると、しばらくしてマジカル・パワー・マコ氏のからフォローされた。

マジカル・パワー・マコ氏との共通の友人、知人はいないはず。
なのにマジカル・パワー・マコ氏の方からのフォロー。

マジカル・パワー・マコ氏はオーディオに興味をお持ちだったのか、
私のブログを読んでくれていたのだろうか。

いつか確認したいと思っていた──、
もうそれもかなわない。

Date: 2月 17th, 2025
Cate: 名器

ヴィンテージとなっていくモノ(マランツ Model 7・その3)

2023年5月の(その2)で、マランツのModel 7を続けて聴く機会があった、と書いている。
2024年もそうだった。
今年もそうなりそうだ。

去年と今年、聴くのは野口晴哉氏のModel 7である。

Model 7ほどよく知られるモデルだと、
オーディオマニアのところで聴く機会は、割とある。
じっくり聴いたことはないけれど、聴いたことはある、とか、
実物を見たことはある、という人はけっこういよう。
そういう存在でもある。

私もこれまでに何度も聴いてきている。
それでもその音は、持ち主が操作しての音だった。

去年と今年、自分でModel 7に触れながら音を出していると、
それまで気がつかなかったことがあった。

各入力間のクロストークが意外に大きいことだ。
アナログディスクを聴いている時に、ライン入力に信号が加わっていると、盛大にもれて聴こえてくる。

最近のハイエンドのコントロールアンプがどうなのかは触ったことがないので知らないが、
音質が高く評価されているアンプでも、
入力間のクロストークは意外に大きかったりする。

このことは覿面、音に影響する。

私が触ってきて確認した中で、このクロストークをほぼ完璧といえるレベルまで抑えているのは、
ソニーのTA-ER1だけである。

TA-ER1が、だからコントロールアンプとして完璧な存在なのかというと、
そうとはいえないのだが、それでもコントロールアンプに求められている性能とは、
本来どういうことで、どうあるべきかを正面から取り組んだ製品だとは言える。

そんなことよりも肝心なのは音だろう、
入力間のクロストークなんて使い手が注意していれば、
問題ないのだから──、
そんな声があるのはわかっている。

世の中には完璧なモノはないのだから、
使い手がうまく補ってやればいいのだとしても、
Model 7を触っていて、TA-ER1のことを思い出していたのは事実だ。

Date: 2月 16th, 2025
Cate: アナログディスク再生

Westrex 10Aのこと(その3)

ノイマンのDSTを欲しい、とあの頃、思った。
しかも譲ってもいい、とも言われていた。
安いわけではなかった。すぐに、買います、と言える金額ではなかったけれど、
法外な値段でもなかった。相当無理すれば買える──、そんな金額だった。

買おうかと迷った。けれど買わなかったのは、DSTがカートリッジだからだ。
すでに製造中止になって随分経つ。
針交換のことを考えると、買います、とはなかなか言えない。
あとどれだけの時間、聴けるのか。それもなんとも言えない。

それで結局は諦めた。
それにDSTを聴いた直後だと、なかなかEMTのTSD15で聴く気は起こらない。
そうであってもTSD15以外のカートリッジは、基本使えないわけだから、
これで聴くしかない。

しばらくTSD15で聴いていると、これはこれで素晴らしいカートリッジだと思えてくる。

DSTの音の印象が薄れてきたわけではないが、針交換の心配もないし、
安心して聴くことができるTSD15の音に、ほっとしたところも感じていた。

それでもいつかはDSTというおもいは持ち続けていた。
そのおもいも、四十をこえたあたりから薄れてきた。
そしてメリディアンのULTRA DACでMQAの音を聴いて、相当に薄れていった。

そこに今回のウェストレックスの10Aである。

Date: 2月 15th, 2025
Cate: 「ネットワーク」

オーディオと「ネットワーク」(おさなオーディオ・その7)

人は誰しも弱さがある。
なに一つ弱さなんてもったいないと豪語できる人はいるのかもしれないが、
だからと言って、本当にそうなのかは誰にもわからないことだろう。

その弱さを誰かに見られる(見せられる)のは、悪いこととも何とも思わないが、
インターネットの普及、ソーシャルメディアの普及、
スマートフォンの普及、
これらによって増えてきたと感じているのは、
自分の弱さを誰かに見せつける人である。

世間一般で、そんなふうに感じるようになってきているが、
オーディオに限っても、同じに感じている。

弱さを誰かに見せつけているとしか思えない人は、慰めて欲しいのか。
特別扱いして欲しいのか。

いい歳した大人のオーディオマニアがそうだったりすると、
これもおさなオーディオなんだなぁ……、と思うだけでなく、オーディオは元々内輪だけの世界だったところに、
外向きといえるインターネットが登場したことに、
いまだうまく対応できていない人が多いのかもしれない──、
そんなふうに思料したところで、
何が変って良くなっていくことがあるのか。

Date: 2月 14th, 2025
Cate: アクセサリー

仮想アース(こういう方法も……・その10)

昨晩、野口晴哉氏のリスニングルームで、オイロダインを聴いていた。
三人で聴いていた。

ちょっとしたことを試してみた。
海外のウェブサイトを見て、こんなことがあるんだ、と思いつつも、
自分のシステムではまだ試しなかったことを、昨晩やった。

やったことの詳細はまだ明かさないが、材料費もほとんどかからない。
オーディオマニアならば余っているモノを使えるから、ほぼタダのようなものだ。

それを作るのにも特別な技術は要らない。
ほとんどの人が難なくやれること。

そうやって作ったのを、マランツのModel 7のアース端子に接ぐ。

大きな音の変化ではないが、音ははっきりと変る。
私だけがそう感じたのではなく、他の二人の耳も変化は感じとっていた。

理屈は、正直なところよくわからない。
わからないけど、簡単に作れるし、失敗することもまずない。
これをアンプのアース端子に接いでも、アンプが故障することもない。

やってみて損はないはずだ。
昨晩作ったのは、Ktêmaを貸してくださっているOさんが、
自宅でも試してみたいということで持って帰られた。

その結果を、次回聞くのが楽しみだし、
audio wednesdayでもこっそり試してみようかとも考えている。

Date: 2月 13th, 2025
Cate: High Resolution

MQAのこれから(MQA-CDへの誤解)

先ほどまでオーディオ好きの方と話していて、MQA-CDのことが話題になった。
そこで気づいたのは、MQA-CDを再生するのに必要となるのはMQA対応のD/Aコンバーターということ。
当たり前だろ、そんなこと、と言われそうだが、
トランスポートもMQA対応でなければならない──、
そんなふうに思われていることだ。

トランスポートはデジタル出力を持っているモノならば、それだけでいい。
MQA対応のD/Aコンバーターと接続するだけで済む。

私もそうだったわけではないが、
知識として特別なトランスポートは必要としないとわかっていても、
実際にメリディアンのULTRA DACと接続して、MQA-CDを再生したときは、
あっけないほど簡単にMQAの素晴らしい音が聴けたことに、
技術の進歩とは、本来こうあるべきなのかもしれない、と思ったものだ。

私は比較的早いうちに、こういう体験を持つことができた。
でもそうでなければ、間違った認識を持っていたかもしれない。

デジタル出力を持つトランスポートなりCDプレーヤーがあれば、
MQA対応のD/Aコンバーターを接ぐだけでMQAの再生はできる。
この当たり前すぎることは、あまり知られていない可能性がある。
当たり前だと思っていることでも、
くり返し書いて伝えていくことの必要性も感じていた。

Date: 2月 12th, 2025
Cate: 新製品

BLUESOUND NODE ICON

二日前に発表されたブルーサウンドの新製品、NODE ICON
MQAの新技術、QRONOd2aを採用している。

これだけのことなのだが、MQAはまだまだ継続されるし、
5月に発表予定の新しいストリーミングにも、期待が持てる。

NODE ICONのスペックをみてみると、CPUにARM社製を採用しているのがわかる。

五年ほど前に別項で、iPhoneとUSB D/Aコンバーターとヘッドフォンで聴く音が侮れないのは、
CPUがARMということも関係しているのではないか、と書いた。

IntelのCPUとARMのCPUの厳密な比較試聴はおそらく無理だろうし、
結局、どちらかのCPUを搭載した製品を聴いて、
なんとなく、こっちの方が……、というくらいのことしか言えないのは分かった上で、
それでもNODE ICONの音が、どうなのかは気になる。

Date: 2月 12th, 2025
Cate: audio wednesday

audio wednesday (next decade) –第十四夜(FRANCO SERBLIN Ktêma + Meridian ULTRA DAC + MQA-CD)

3月5日のaudio wednesdayは、
ストリーミングではなくCD、それもMQA-CDのみをかけるつもりでいる。

Date: 2月 11th, 2025
Cate: アナログディスク再生

Westrex 10Aのこと(その2)

ノイマンのDSTを聴いて、そのすごさに打ちのめされた──、
と書くと、なんと大袈裟な、と思われるだろうが、
それまで聴いてきたカートリッジすべての音が、
少なくともわたしの中では一瞬にして色褪せたのだから、
打ちのめされたは、決して大袈裟でもなんでもない。

次元が違うとは、この音のことを言うのだとも思っていた。
だからというか、DSTよりもすごい音というのが想像できなかったし、
ウェストレックスの10AはDSTよりもすごいとしても、
DST以上を求めても……、という気持も芽生えていた。

10AはDSTよりもすごいんだろうけど、
世の中に完動品の10Aがどれだけあるのか。
それよりもDSTをなんとか手に入れることを考えた方がいい──、
そんなことも考えていて、10Aに関しての興味は薄れていっていた。

DSTの音を聴いてから数年、イケダサウンドラボからIkeda 9が登場した。
針先のほぼ真上に発電コイルを配置する構造のカートリッジは、
それまでサテン、ソノボックス、ビクターなどがあった。
ソノボックスは聴いたことはない。
サテンは一度だけ聴いている。
ビクターの一連のカートリッジは、何度も聴いている。

けれど私が強烈なほど惹かれるのはDSTだった。
Ikeda 9は、どうなのか。
期待は大きかった。

ステレオサウンドの試聴室でも何度も聴いたし、
オーディオテクニカのEMT用のヘッドシェルに取り付けて、
自分のシステムでも聴いた。

執念のカートリッジだと思う。DSTを聴いてなければ買っていただろう。
5g超えの針圧のDST、標準的な針圧で使えるIkeda 9。
後者の方が安心して使える。

どちらもいわゆるダイレクトカップリング型と呼ばれる構造なのに、
音は、大きく違う。
Ikeda 9も、ダイレクトカップリング型らしい良さが感じられる。

なのに、この二つのカートリッジの音の違いは、なんなのだろうか。

Date: 2月 10th, 2025
Cate: ショウ雑感

インターナショナルオーディオショウの音(その6)

インターナショナルオーディオショウは、金土日の三日間開催される。
各ブースへの搬入は前日で、セッティングも前日に行われる。
これを1997年から毎年くり返し行っているわけだ。

前日搬入を含めての四日間は短いのか。
私は十分な時間だと思っている。

しかも何人ものスタッフがいて、機材に関してもかなりのモノが用意できている。
ケーブルなどの周辺機器に関しても、そうだ。

それに同じブースで、長年やっている会社もある。
どこにスピーカーを置いたらいいのか、
機材のセッティング全般に関しての積み重ねがあるはず。

なのに、エソテリックやアーク・ジョイアのようなブースがある。
他にもあるわけだが、なぜ? と思う。

別項で、あるオーディオ店でのKtêmaが冴えない音から脱しきれなかったのも、
インターナショナルオーディオショウで冴えない音しか出せないのも、
制約を排除し過ぎているからかもしれない、とすこしばかり思う。

audio wednesdayをやっていると、毎回、オーディオショウは恵まれているし、
楽な面もけっこうあるな、と思う。

四谷三丁目の喫茶茶会記でやっていたときも、
昨年からの狛江に移ってからでも、当時に搬入して、
ソファなども移動して、それからセッティングが始まる。

用意できるオーディオ機器も、オーディオショウやオーディオ店とは違い、
限られた中でなんとかするしかないわけで、
制約は時間的なことを含めて、少ないとは言えない中でやっているから、
身につくこともある。

オーディオショウもオーディオ店も、恵まれているいろんなことに頼りすぎているのではないか。