Archive for category 「ネットワーク」

Date: 6月 9th, 2018
Cate: 「ネットワーク」

ネットワークの試み(その11)

audio wednesdayでは、いわば実験をやっている。
この実験で心掛けているのは、誰もが追試できる、という点である。

アクロバティックな技術を必要とすることはやっていない。
ハンダ付けを数箇所できるくらいの技術があれば、
audio wednesdayが来られた方が、自分もやってみようと思われれば、
いくつかの注意は必要ではあるが、実験としての再現性は高い、と思っている。

今回の件も、何をやったのかは隠すことなく伝えている。
両チャンネルでハンダ付けは六箇所。
これだけやれるのであれば、追試可能である。

ただし同程度の効果が得られるかどうかは、
どれだけシステムのセッティングが、聴感上のS/N比を重視しているかにかかっている。

これにしても、特別なことは何もない。
特別高価なラックを使っているわけでもないし、
ケーブルに関しても、むしろ一般のオーディオマニアが使われているのより、
ずっと安いモノしか使っていない。

原則として喫茶茶会記にあるものを利用してのセッティングである。
何も特別なこと、高度な技術を要することはない。
ただただ細かなことの積み重ねである。

Date: 6月 8th, 2018
Cate: 「ネットワーク」

ネットワークの試み(その10)

「Moanin’」の前に「FRIDAY NIGHT IN SAN FRANCISCO」をかけていた。
以前、JBLの2441+2397で、「FRIDAY NIGHT IN SAN FRANCISCO」のCDを鳴らしたとき、
かなりいい感じだったのに比べ、
先月と今月、SACDで、アルテックの806+811Bで鳴らすと、
ギターの音色の違いが判然としない。

これはちょっと意外なほど、うまく鳴らない。
先月、ネットワークを変えていっても、そう大きくは変化しなかった。
今回も、そうだった。

けれど、ほんのちょっとしたことをネットワークのコイルに施すことで、
この大きな不満が、ずいぶんと改善された。

6dBのネットワークのコイルだから、ウーファーに対してのみ変化が生じるわけだが、
低音が変れば中音、高音の印象が変化する(その逆もある)ように、
音色の再現性が全体に高まってくる。

コイルにどんなことをしたのかは、audio wednesdayに来られた方には伝えている。
このブログをきちんと読まれている方は、あれか、と気づかれるはずだ。

試す前から、音の変化は小さくないであろうという予測はしていた。
それがいい方向に向くのか、それとも逆なのかは、実際にやってみないとわからないことで、
今回はうまく働いてくれた。

私だけでなく、他の方も、ここでの音の変化の大きさには驚かれていた。
こううまくいくと、この状態でドライバーとホーンを、
以前のJBLの組合せにしてみたら……、と思ってしまう。

とはいっても、2441+2397を、また喫茶茶会記に持ってくるのは大変だし、
また持って帰ることを考えると、その音を聴いてもらいたい気持と、
億劫な気持とがさめぎあう。

Date: 6月 7th, 2018
Cate: 「ネットワーク」

ネットワークの試み(その9)

昨晩(6月6日)のaudio wednesdayでは、
最初の音出しからスロープ6dBの直列型ネットワークを使った。

5月のaudio wednesdayのテーマ「ネットワークの試み」では、
6dBの並列型と直列型、両方の音を聴いてもらうために、
バラックでの実験(音出し)だった。

今回は木のベースにコイル、コンデンサー、抵抗を固定、配線し仕上げている。
前回までは喫茶茶会記常用のスピーカーケーブルが、
カナレのスターカッド構造なのを利用して、
四芯構造を利用しての、いわゆるバイワイアリング接続していた。

そのままにしたほうが、今回の変更による音の違いははっきりするわけだが、
何度も作り直すのが面倒に思えて、
もう一組、カナレの同じケーブルを購入してきて、
ウーファー、ドライバー、トゥイーター、
すべて独立したスターカッド構造のスピーカーケーブルになっている。

つまりトライワイアリングにしている。

昨晩は16時くらいから準備にとりかかっていたが、
そのうちの大半はネットワーク作りだった。
使用した部品そのものは5月に使っているものである。

数枚ディスクを鳴らしたあとに、今回のテーマであるアート・ブレイキーの「Moanin’」を鳴らす。
悪くない感じの音ではあったし、おっ、と感じるところもあったが、
どうもピアノの鳴り方が、イメージにあるものと若干違っているようにも感じた。

とはいえ前回「Moanin’」をきちんとしたシステムで聴いたのは、ずいぶん前である。
けれど、鳴らし終ってから、聴かれていた人が「ピアノの音の印象が……」とのことだった。

それで、もう数枚ディスクを鳴らした後に試すことを、すぐさまやってみた。
ものの数分で終る作業である。

もう一度「Moanin’」をかける。
もう冒頭の音からして違う。
イメージにあるピアノの音で、鳴りはじめた。

Date: 5月 19th, 2018
Cate: 「ネットワーク」

ネットワークの試み(その8)

直列型ネットワークにおける、
トゥイーターとウーファーを結ぶ50cmほどのケーブルは、
アナログプレーヤーならば、シェルリード線にあたるような予感がある。

シェルリード線はわずか数cm。
トーンアームのパイプ内配線、出力ケーブルあわせてのトータルの長さからすれば、
ほんの僅かとはいえ、そこでの音の変化は意外にも大きい。
だから1970年代後半からは、各社からさまざまなシェルリード線が登場してきた。

直列型ネットワークでの50cmほどのケーブルが、
シェルリード線と同じくらいの音の変化を聴かせてくれるのであれば、
そうとうに楽しいことができそうである。

(その7)で1:16と書いたが、実際にはネットワークのコイル、
スピーカーユニットのボイスコイルの長さも全体に含まれるわけだから、
1:16どころか、もっと差は大きくなる。

50cmほどだから両チャンネルで1mあればいい。
実際にはスピーカーケーブルはプラスとマイナスとがあるわけだから、
市販のスピーカーケーブルをバラしてしまえば、50cmでも足りるわけだ。

市販のスピーカーケーブルではなく、配線用として売られているモノを買ってきてもいい。
例えば、ここに銀線を使ってみたい、と考えている。
単線もあれば撚り線もある。
かなり細い銀線も使ってみたいし、太めの銀線も試したい。
いくつかのケーブルを合せて使うこともできる。

常識にとらわれることなく、思いつくかぎり試してみたい。

この部分に関しては、正面からは見えないわけだから、
実際の実験は、audio wednesdayに来られた人に内緒でできる。

どういう結果、どういう反応が得られるのか、楽しみである。

Date: 5月 18th, 2018
Cate: 「ネットワーク」

ネットワークの試み(その7)

スピーカーを一種の仕掛け(ギミック)として捉えれば、
ある種の常識から解放されていくのではないだろうか。

基本を無視しろ、とはいわない。
ただ常識は、一旦無視してもいいではないか、そう言いたいのである。

その常識もオーディオマニアすべてに共通していることなんて、ないといえばない。
オーディオについてまわっている常識なんて、
世代によっても、周りにいる人たちからの影響によっても、違ってこよう。

私にとっての常識が、私以外の人には新鮮なことだったりして、驚かれたりしたことは、
これまでに何度もある。

それだけ常識とは、ちょっとしたことで違うもの。
ならば、そんな常識から自由になるにはーー、
そんなふうに考えて、スピーカーの自作(構築)に取りかかった方がいい、と私は思う。

例えば、直列型ネットワークではウーファーとトゥイーターとを直列にする。
つまりトゥイーターのマイナス端子とウーファーのプラス端子を結線する。

これまではスピーカーケーブル(喫茶茶会記使用のカナレ製)の端材を使っていた。
長さはせいぜい50cmほど。
スピーカーケーブルの長さは8m弱。

1:16の関係だが、おそらく、この50cmのケーブルの音への影響は、
1:16程度の変化ではないはずだ。

Date: 5月 10th, 2018
Cate: 「ネットワーク」

ネットワークの試み(その6)

瀬川先生は、ネットワークについて、こんなことを書かれている。
     *
 LCネットワークひとつとりあげてみても、こうした多くの問題が現実にたくさん待ち受けているのだ。それらをひとつひとつ正しく解決するためには、相当に高度の理論を身につけた上で、周波数特性やインピーダンス特性や位相特性や、さらに音響エネルギー特性など、多くの項目にわたる精密な測定設備をもたなくてはとうてい無理だ。測定器ばかりでなく無響室や残響室が必要で、つまたは個人の力ではとうてい無理、という結論になる。
 だからスピーカーなどアマチュアがいじるな……などと単純かつ乱暴な結論を言いたいのではない。全くその逆を私は言いたい。
 測定設備を持たないアマチュアでも、基本的な原則を一応守った上で、長い年月をかけて聴きながら、少しずつカットアンドトライしてまとめ上げたスピーカーシステムから、現実に素晴らしい音が再生されるのを、私は過去にも現在にも、多くの例で知っている。大切なことは、理論値を実現させることではなく、自分であれこれと計画を立て、実行に移し、年月をかけ模索しながら、自分独自の音の世界を築きあげること、ではないか。自分の努力で完成させたスピーカーシステム(に限らず再生装置ぜんたい)こそ、既製品では得られないかけがえのない満足感を与えてくれるのではないか。そのためにこそ、目先の一面のみの理論にとらわれたり迷わされたりせず、失敗を怖れず、まず実行してみるところにこそ、価値がある。ハイテクニックシリーズの刊行の真の意図もそこにある。……などとステレオサウンド編集部の代弁みたいになってしまったが、ともかく私の言いたかったのは、理論を一面からだけとらえる愚かさを避け、現実をしっかり踏まえた上で、自分の耳を研ぎ澄まして、自分ひとりのための良い音を目ざして、大胆にスピーカーシステムにトライしよう、ということだ。
     *
マルチウェイにすると、どうしてもネットワークが介在し、
そのことによる問題が生じてくる。

マルチウェイなどにせずに、フルレンジでやっていれば……、という意見もある。
確かにフルレンジならば、ネットワークは要らない。
要らない存在に頭を悩ます必要はない。

フルレンジにはフルレンジの良さがあり、
マルチウェイにはマルチウェイならではの世界があって、
優劣をつける必要はない、と私は考えている。

マルチウェイでも、LCネットワークではなしにマルチアンプシステムにすれば……、という声もある。
確かにマルチアンプシステムは、LCネットワークに起因する問題は、ほぼ解消する。
けれどだからといって理想のシステムかというと、必ずしもそうとは言い切れないし、
すべての人にとってそうだともいえないのが、マルチアンプである。

スピーカー(システム)は、ある種のからくり(ギミック)である。
LCネットワークは、その仕掛けのひとつであり、要ともいえよう。

Date: 5月 9th, 2018
Cate: 「ネットワーク」

ネットワークの試み(その5)

ボリュウムは、いつもの「THE DIALOGUE」の音量よりも絞っていた。
といってもほんのわずかなのだが、それでも絞っていたのだから、
わずかとはいえ、スピーカーからの音量は厳密には下っているのに、
聴感上はむしろ少し大きく聴こえてきた。

直列型の場合、並列型とは違い、
配線上、ウーファーとトゥイーター、どちらを上にするのか下にするのか、でも、
音は違ってくる。

スピーカーの教科書的な書籍で、直列型ネットワークの回路図を載せている例でも、
ウーファーが上の例もあれば、トゥイーターが上の例もある。

何度か試して結果からいえば、ウーファーを下側にしたほうがいい。
さらに今回試した配線方法では、それまでの配線とは違ってきて、
ある一点で三本の配線を集中させるようにしている。

本来ならば従来の配線での直列型ネットワークの音を聴いた後で、
新しい配線での直列型ネットワークにすべきなのだが、
並列型ネットワークの音を聴いていて、それがひとつの比較の基準になっているともいえ、
時間も都合も考えて、やってはいない。

このへんによる音の違いは、直列型ネットワークに興味を持った人が、
実際に自身で試して、自身の耳で確認したらいいことでもある。

三本の配線を集中させた一点は、もう一箇所、別のところでも動作する。
試していないが、音は変ってくるはずだ。
これに関しては、audio wednesdayで、黙って実験してみようと思っている。

ここまで読まれた方の中には、直列型の方がいいのか、と思われるかもしれない。
確かに6dBスロープで、2ウェイという限られた枠内では、好結果が得られた。

これが3ウェイ、4ウェイ、
さらには12dBスロープとなってくるとどうなるのかは、試してないのでなんともいえない。
それに並列型だから、やれることもある。

だから決めつけはしない。
それでも、自作スピーカーで自作ネットワークで鳴らされている方は、
一度直列型ネットワークに興味をもってほしい、と思う。

Date: 5月 8th, 2018
Cate: 「ネットワーク」

ネットワークの試み(その4)

同じコンデンサーとコイルを使って並列型から直列型へと変更する。
二年前に試したときよりも、直列型の音の印象がいい。

それに音量がわずかとはいえ増したよう聴こえる。
二年前の直列型とは、配線の仕方を変更している。
スピーカーケーブルは同じカナレのスターカッド型を使っている。

音量が増したように聴こえるのは、音のピントが以前よりも合っているからかもしれない。
二年前の音だし、アンプも二年前とは違っているし、CDプレーヤーも違う。
それでも並列型と直列型の比較をして、直列型の音を私はとる。

厳密な意味では、並列型と直列型の正しい比較試聴とはいえない面もある。
本来ならば並列型であっても直列型であっても、
微調整をしていき最適化していったうえで比較試聴であるべき、とは思っている。

とはいえ、それだけの時間をかけてやれるのは自分のシステムにおいてであって、
こういう場での実験としての音出しでは、そこまでは無理である。

なので細部の比較ではなく、素姓の比較といえる聴き方だ。

ただ最初から今回の直列型がうまく鳴ったわけではない。
試したことのない配線ということもあって、こちらの頭がすこしこんがらがった。
そのため手間どった。
そのあいだアンプの電源は落したままである。

その影響が、直列型ネットワークにした際にモロに音に出てきた。
音場があまり拡がらないのだ。
常連のHさんは不思議がって、珍しく席を移動して音を確認されていた。

私は待つしかないことがわかっていたので、アンプが目覚めてくれるのを待っていた。
それまで鳴らしていたわけだから、それほど時間は必要としない。
数分経ったころから、音は拡がりはじめた。

アンプがきちんと目覚めたな、と思えたところで、「THE DIALOGUE」を鳴らす。
黙っていたけれど、実はいつもよりほんの少しだけボリュウムは絞っていた。

Date: 5月 8th, 2018
Cate: 「ネットワーク」

ネットワークの試み(その3)

直列型ネットワークは、2016年に数回試している。
並列型6dBスロープと直列型6dBスロープの比較も行っている。

なのでコイズミ無線の12dBスロープネットワークから、
いきなり直列型6dBスロープにしてみてもよかったし、その方が手間も省けるが、
やはり確認の意味をこめて並列型6dBスロープの音も出すことにした。

私の中にある6dBスロープのネットワークらしい音がしてくる。
この音は、ひとつの標準になりうる音だと思っている。

自作スピーカーであれば、なんらかの形でネットワークも自作しなければならない。
計算通りに作って、それでうまくいくという保証はどこにもない。

カットアンドトライをくり返しやっていくしかない。
その場合、泥沼にハマってしまわぬように、リファレンスとなるネットワークをひとつ作っておいたほうがいい。
なにも最高のモノである必要はない。

私なら、しっかり巻かれた空芯コイルとASCのコンデンサーの、
並列型6dBスロープを基準(リファレンス)とする。

ネットワークをいじっているといろいろと思いつくことが出てくるだろう。
あれをやってみたら、あれに交換してみたら、といろいろと出てくるはずだ。
試していくのは実におもしろい。

目的の音に近づいたかと思うと、遠ざかっていることもある。
判断に迷うことだってある。
そういうときに基準となるネットワークがあれば、
その音と常に比較することで、方向の修正ができよう。

6dBスロープで2ウェイなら、片チャンネルあたりコンデンサーとコイルがひとつずつで済む。
実際にはコンデンサーの容量を調整するために、
いくつかのコンデンサーを並列接続することになるが、
12dBや、それ以上の高次のスロープとは違い、部品は最低限でいいということは、
部品配置に特に頭を悩ます必要もない。

いろいろ試したあとで6dBスロープに戻ってきてしまうことだってある。
そのときでも、クロスオーバー周波数のカットアンドトライをすることになる。
基準があれば、その判断もしやすくなるし、しっかりしたものになる。

今回も並列型6dBスロープの音を聴いた後に、
直列型、それも以前試したのとは違う配線による直列型ネットワークに移って、
ひとつ確認できたことがあった。

Date: 5月 6th, 2018
Cate: 「ネットワーク」

ネットワークの試み(その2)

私がこれまで読んできたオーディオ関係の本で、
並列型と直列型ネットワークの音について記述してあったのは、ほんの数例で、
ラジオ技術での石塚峻氏、それから無線と実験の金田明彦氏くらいである。

石塚峻氏は並列型よりも直列型を評価されていたと記憶している。
金田明彦氏は、6dBスロープのネットワークにおいて、
直列型よりも並列型のほうが音質的に優っている、と書かれている。

私がこれまで試してきた並列型と直列型の比較、
それも6dBスロープにおいてのみの結果では、直列型を、いまのところとる。

今回のaudio wednesdayでは、
喫茶茶会記の標準仕様であるコイズミ無線の12dBネットワークから、
6dB並列型、それから6dB直列型へと変えていった。

とはいっても、厳密な意味での比較試聴ではない。
コイズミ無線のネットワークは、コア入りのコイルであり、
コンデンサーも私がよく使うASCのものではない。

6dBのネットワークでは、ASCのコンデンサーに空芯コイルを使っている。
この時点で、音が違ってくるわけで、
厳密な比較試聴ということでは、6dBスロープにおける並列型と直列型ということになる。

それに来られた方にも黙っていたが、
6dBスロープでは、ウーファーとドライバーのカットオフ周波数が、
コイズミ無線のネットワークとは違っている。
クロスオーバー周波数も、だから800Hzではなく、少し上の方へ移動している。

それでもコイズミ無線(12dBスロープ)から6dBスロープ並列型に変えると、
私の耳には6dBスロープのネットワークが、やはり好ましく聴こえる。

Date: 5月 3rd, 2018
Cate: 「ネットワーク」

ネットワークの試み(その1)

3月のaudio wednesdayのテーマであった「ネットワークの試み」。
3月はアルテックのドライバーのダイアフラムの交換、
4月はアンプのトラブルで二回連続で先延ばしになってしまった。

5月2日のaudio wednesdayでやっとの「ネットワークの試み」。
フルレンジのスピーカー以外、
どんなスピーカーであれ、マルチウェイならばディヴァイディングネットワークが必要となる。

スピーカー側にあるLC型ネットワークもあれば、
マルチアンプでのネットワークもある。

スピーカー自作のおもしろさは、ネットワークにある、といっても過言ではない。
もちろんユニットの選定、エンクロージュアの製作などもそうだけれども、
ある程度ユニットが決り、エンクロージュアが完成したあと、
時間をじっくりとかけて調整していくのはネットワークである。

クロスオーバー周波数をどのあたりに設定するのか、
スロープ特性はどうするのか、
ネットワークの方式は、
パーツの選択、その配置と取付方法……等々、
ちょっとした変更で、そうとうに音が変化することだってある。

そのネットワークだが、たいていの場合、並列型といわれる方式が使われる。
メーカー製のスピーカーシステムでも、直列型ネットワークを採用しているのはわずかだし、
スピーカーの自作記事、スピーカーの教科書的書籍でも、
直列型に関しては、取り上げられていないか、簡単な紹介程度であったりする。

並列型と直列型の回路図を見ると、並列型の方がよさそうに思える。
直列型は、その名のとおり、ユニットを直列に接続する。

高校のときに、直列型ネットワークがあるのを知った。
けれどユニットを直列接続している図を見て、
いい音がしそうには思えなかった。

Date: 5月 1st, 2018
Cate: 「ネットワーク」

オーディオと「ネットワーク」(情報量・その5)

情報量の多い音というのは、いわば鮮明な音である。
不鮮明な音を、情報量が多い音ということはない。

鮮明であって、細部まで聴きとれるからこそ、情報量が多いわけだ。
物理的なS/N比が優れているだけでなく、
聴感上のS/N比の優れた音は、ここでいう鮮明な音であり、
情報量の多い音である。

けれど、昔からいわれているのは、不鮮明な音ほど、
聴き手の想像力は、鮮明な音を聴いているよりも働かせている、ということだ。

鮮明な音は、音を待って聴きがちになる、とは黒田先生がよくいわれていたことだ。
耳をそばだてることなく、容易に細部まで聴こえてくるのだから、
スピーカー(音)に対しての意識を、一歩前に向わせる必要はない、ともいえる。

けれど一方で、情報量が多いからこその想像力がある、という意見もある。
不鮮明な音、情報量の少ない音での想像力は、
聴こえない音を補おうとしての想像力であり、
情報量が多い音での想像力は、そこから先の想像力である、と。

そうかもしれないが、
それはあくまでも不鮮明な音に対しても、鮮明な音に対しても、
積極的な聴き手であるからこそだ。

音楽(音)の聴き手として、つねにそうありたいと思っていても、
つねにそうである、といえるだろうか。

情報量は増す傾向にある。
情報量が増えれば増えるほど、
聴き手は、増えた情報量の対処でいっぱいいっぱいになることだって考えられる。

人によって処理できる情報量には違いがある。
同じ聴き手であっても、つねに同じとはいえない。

Date: 11月 7th, 2017
Cate: 「ネットワーク」

オーディオと「ネットワーク」(post-truth・その4)

知人が間違ったことをサイトで公開していることに気づいて、
すぐに電話した私に「いちばん信頼できそうなサイトにそう書いてあった」といって、
すぐには間違いであることを認めようとはしなかった。

結局、角速度、線速度について説明することから始めた。
知人は、サイトに角速度一定とか線速度一定と書いていながら、
線速度一定がどういうことなのか、角速度とはどんなことなのかを知らなかった。

線速度、角速度についての基本的な知識もないままに、
間違ったサイトに書いてあることを、そのまま自分のサイトに書き写したわけである。

つまり知人は角速度、線速度について知らないだけでなく、
角速度とは、線速度とは、ということをインターネットで検索すらしなかった。

角速度、線速度のどちらかにについて検索さえしていれば、
知人が参照したサイトが間違っていることに、彼自身で気づいたはずである。

知人は、よく私に言っていた。
「できるかぎり調べて書いている」と。

コワイな、とここでもくり返したい。
知人の「できるかぎり調べる」とは、その程度のことであったのだ。

Date: 11月 6th, 2017
Cate: 「ネットワーク」

オーディオと「ネットワーク」(post-truth・その3)

それにしても知人は、
CDが角速度一定、LPは線速度一定は間違ったことを書いているサイトを信じたのか。

CDの方が線速度一定なのだから、
検索すれば、正しいことを書いてあるサイトの方が圧倒的に多い。
なのに、ごく少数の間違った、正反対のことを書いているサイトを信用するのか。

知人は、そのサイトがいちばん信用できそうだったから……、と言っていた。
私を含めて、ほとんどの人が、
CDは角速度一定とあるサイトに書いてある技術的なことは疑ってかかるだろう。

知人は、反対だったわけだが、
なぜ、そういう選択をしたのかまでは、本人もよくわかっていないようだった。

サイトの見た目なのだろうか。
それはありそうなのだ。

パッと見た目のサイトの印象。
あとは、そのサイトにある文章だろう。

技術的に正しいことを書いているサイトの文章が、
いわゆるうまい文章とは限らないし、
間違ったことを堂々と書いている文章のほうがうまかったりもする。

これも見た目といえば、そういえる。
知人は見た目だけで、そのサイトを信用してしまったのか。

「人は見た目が9割」(新潮新書)という本も出ているし、
「人は見た目が100パーセント」というマンガと、
これを原作としたドラマもあったくらいだから、
ウェブサイトも見た目が100パーセントなのかもしれないし、
知人のように見た目で、ほぼ判断してしまう人もいよう。

しかも知人は、検証を怠っている。

Date: 10月 24th, 2017
Cate: 「ネットワーク」

オーディオと「ネットワーク」(伊藤喜多男氏のことば)

サウンドボーイ 1981年2月号で、小林貢氏が、
アルテックの755Eを使ったスピーカーシステムの製作記事を担当されている。

755Eというユニットについて、
調べれば調べるほどわからないことだらけになる、と、
とけない謎を解くために伊藤先生が登場されている。
     *
小林 今日は身の上相談にうかがったのではなく、スピーカーの正しい鳴らし方を教えていただきにまいりました。
 アルテックの755E、W・E時代は755Aですが、このオリジナルのエンクロージュアはあったのでしょうか。
伊藤 W・Eにくわしい人はそれこそたくさんいますよ(笑い)。
 ただ、私はW・Eで職工していただけだから、どんな思想でどんな開発の仕方をしていたかなどという点については判りません。ただ、どんな使い方をするのが正しいのか、どういう音なのかについてはすっかり勉強させてもらいました。私にいわせればそれだけで十分で、それ以上のことは知る必要もないし、W・Eで教えてくれるわけでもない。だから、私の知っている範囲内でよければすべてお教えできると思います。
     *
W·Eとは、いうまでもなくウェスターン・エレクトリックのこと。
ウェスターン・エレクトリックのスピーカーや部品などについて、
ことこまかなことを知っている人は、伊藤先生のいわれるように当時からいた。

いまではインターネットが普及しているから、もっともっと多くいるだろうし、
知識の量も、当時よりも増えていることだろう。
ますます《W・Eにくわしい人はそれこそたくさんいますよ》となっていっている。

これは何もウェスターン・エレクトリックのことだけに限らない。
知識量が多いのは、決して悪いことではない。
けれど知識量だけが多い人が増えているようにも感じられるし、
その知識の多さが、まるで脂肪の多さのように感じさせる人もいる。

それよりも大事なのは、伊藤先生がいわれている。
《どんな使い方をするのが正しいのか、どういう音なのかについてはすっかり勉強させてもらいました》と。