Date: 5月 10th, 2018
Cate: 「ネットワーク」
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ネットワークの試み(その6)

瀬川先生は、ネットワークについて、こんなことを書かれている。
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 LCネットワークひとつとりあげてみても、こうした多くの問題が現実にたくさん待ち受けているのだ。それらをひとつひとつ正しく解決するためには、相当に高度の理論を身につけた上で、周波数特性やインピーダンス特性や位相特性や、さらに音響エネルギー特性など、多くの項目にわたる精密な測定設備をもたなくてはとうてい無理だ。測定器ばかりでなく無響室や残響室が必要で、つまたは個人の力ではとうてい無理、という結論になる。
 だからスピーカーなどアマチュアがいじるな……などと単純かつ乱暴な結論を言いたいのではない。全くその逆を私は言いたい。
 測定設備を持たないアマチュアでも、基本的な原則を一応守った上で、長い年月をかけて聴きながら、少しずつカットアンドトライしてまとめ上げたスピーカーシステムから、現実に素晴らしい音が再生されるのを、私は過去にも現在にも、多くの例で知っている。大切なことは、理論値を実現させることではなく、自分であれこれと計画を立て、実行に移し、年月をかけ模索しながら、自分独自の音の世界を築きあげること、ではないか。自分の努力で完成させたスピーカーシステム(に限らず再生装置ぜんたい)こそ、既製品では得られないかけがえのない満足感を与えてくれるのではないか。そのためにこそ、目先の一面のみの理論にとらわれたり迷わされたりせず、失敗を怖れず、まず実行してみるところにこそ、価値がある。ハイテクニックシリーズの刊行の真の意図もそこにある。……などとステレオサウンド編集部の代弁みたいになってしまったが、ともかく私の言いたかったのは、理論を一面からだけとらえる愚かさを避け、現実をしっかり踏まえた上で、自分の耳を研ぎ澄まして、自分ひとりのための良い音を目ざして、大胆にスピーカーシステムにトライしよう、ということだ。
     *
マルチウェイにすると、どうしてもネットワークが介在し、
そのことによる問題が生じてくる。

マルチウェイなどにせずに、フルレンジでやっていれば……、という意見もある。
確かにフルレンジならば、ネットワークは要らない。
要らない存在に頭を悩ます必要はない。

フルレンジにはフルレンジの良さがあり、
マルチウェイにはマルチウェイならではの世界があって、
優劣をつける必要はない、と私は考えている。

マルチウェイでも、LCネットワークではなしにマルチアンプシステムにすれば……、という声もある。
確かにマルチアンプシステムは、LCネットワークに起因する問題は、ほぼ解消する。
けれどだからといって理想のシステムかというと、必ずしもそうとは言い切れないし、
すべての人にとってそうだともいえないのが、マルチアンプである。

スピーカー(システム)は、ある種のからくり(ギミック)である。
LCネットワークは、その仕掛けのひとつであり、要ともいえよう。

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