Archive for category 戻っていく感覚

Date: 7月 24th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(2500とM6000のこと・その6)

ヒートシンクだけを比較するならば、
SAEのMark 2500とラックスのM6000の出力がどちらも300W+300Wとは思わない。

Mark 2500はファンつきの強制空冷であっても、
ここまでヒートシンクの物量が違うものなのか。

ずっと以前、無線と実験で、柴崎 功氏が、
オーディオ機器に欠かせない部品に関して、
国内のメーカーの技術者にインタヴューした連載があった。

ずいぶん前、1980年ごろだったと記憶している。
その連載でヒートシンクのメーカー(どこだったのかは忘れてしまった)の回があった。

いくつか記憶に残っていることがある。
よく出力が同じでも、A級動作とAB動作とではヒートシンクの規模が違う。
とうぜんA級動作のアンプのほうが大きなヒートシンクを必要とする──、
そんなふうに言われているし、そう思い込んでいる。

けれど、ヒートシンク・メーカーの技術者によれば、
アンプの動作(A級、B級)に関係なく、最大出力で決る、ということだった。

たっぷりのアイドリング電流のA級100Wのアンプ、
純B級といいたくなるほどアイドリング電流を流していない100Wのアンプ、
発熱量は一般的な使い方であればA級100Wのアンプのほうが多い。

だからこそ、A級アンプには大きなヒートシンクということになるし、
実際の製品も、ほとんどの場合がそうである。

ところが最大まで出力を出すことを前提とするならば、
アンプの動作方式はヒートシンクの大きさには関係なくなり、
最大出力の値こそが重要である、ということだった。

四十年ほど前の記憶だが、おおよそ、そんなことだったはずだ。

Date: 7月 21st, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(2500と現代アンプのこと・その4)

もちろんすべての製品が、二倍から三倍なのではなく、
たとえばSAECのトーンアームのWE407に関しては、
あえて当時の価格、現在の価格は書かないが、約二十倍である。

二〜三倍というのはひとつの目安であって、
それでもなんとなくの感覚でしかないが、
二〜三倍というのは、なんとなくしっくりくる。

SAEのMark 2500は、いまでは1,300,000円から2,000,000円くらいとなるのか。
この価格帯は、ステレオサウンドのパワーアンプのベストバイの価格帯、
100万円以上200万円未満と一致する。

では、217号で、どんなパワーアンプが選ばれているかというと、
ウエスギのU·BROS120R(1,180,000円)、U·BROS300AHPS(1,280,000円)、
アキュフェーズのA75(1,200,000円)、オーロラサウンドのPADA300B(1,600,000円)、
CHORDのULTIMA 5(1,700,000円)、ソウリューションの311(1,850,000円)、
マッキントッシュのMC462(1,200,000円)、フューズメーションのMA1500(1,600,000円)、
アキュフェーズのP7300(1,200,000円)、TADのTAD-M1000(1,350,000円)、
コンステレーションオーディオのStereo 1.0(1,900,000円)、
パスのX350.8(1,900,000円)などがある。

ここまでが写真とコメント付きで紹介されていて、
これら以外に、あと八機種ベストバイとして選ばれている。

こうやって眺めてみると、
1,900,000円クラスとなると、同価格帯とはいえ、ランクが一つ上だな、と感じる。
それから真空管アンプが四機種あるのも、少し意外に感じる。

このへんを省いていくと、Mark 2500クラスの、現代のパワーアンプということでは、
アキュフェーズのP7300、マッキントッシュのMC462、TADのTAD-M1000あたりだろう。

これら三機種のパワーアンプとMark 2500を直接比較すれば、
時代が四十年違うわけで、その差ははっきりとあるはずだ。
歴然とした差があって当然であり、それほど違いが感じられないということにもしなれば、
それは、なにか(どこか)で間違っている、ということになる。

Date: 7月 21st, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(2500と現代アンプのこと・その3)

SAEのMark 2500が現役だったころといまとでは、
オーディオ機器の価格はどれだけ変動していったのだろうか。

当時の初任給といまの初任給を比較すればすむことだろうか。
検索してみると、ほぼ二倍になっている。

それをそのままオーディオにあてはめてもいいのかと思って、
ロングセラーモデルの価格の変動を見てみると、
たとえばデンオンのDL103がある。

DL103は当時19,000円だった。
いまもDL103は現行製品で、41,600円(税抜き)である。
約二倍である。

ラックスの管球式プリメインアンプのLX38とLX380は、
198,000円と460,000円と、ここでも約二倍といえなくもない。

LX38とLX380とでは内容的にもかなり違っていて、
DL103のように、そのまま当時の価格といまの価格を比較して、
これだけ違う、というのは無理があるのはわかっている。

それにカートリッジとアンプという違いもあるのだから、
そういうことも含めての比較しなければならないのだろうが、
そのへんはばっさり省いての、約二倍である。

QUADのESL63とESL2812は、860,000円と2,100,000円。

ESL63とESL2812も基本的構成は同じであっても、
フレームの強度が、ESL2812ではずっと増している。
もし同等の造りであれば、やはり二倍程度ということになるであろう。

もう一つ挙げれば、テクニクスのSP10Mk3とSP10Rがある。
250,000円と800,000円である。約三倍だ。
SP10の場合も、内容的にかなりの違いがある。

数少ない例だし、これだけで決めつけることはできないのはわかっていても、
この四十年のうちに、
同クラスといえる製品の価格帯は二倍から三倍あたりに移行している──、
大雑把に、そう捉えてもいいであろう。

Date: 7月 16th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(2500と現代アンプのこと・その2)

四十年前のアンプ技術と現代のアンプ技術。
差があって当然であって、その差とは、いわゆる進歩といえる。

四十年間のアンプ技術進歩。
いろいろありすぎる。
一つ一つ取り上げていったら、項を別にしてもなかなか終りそうにないくらいにある。

それでも大きなことを挙げるとすれば、
D級アンプの進歩とスイッチング電源の進歩である。
それから面実装部品の多用である。

SAEのMark 2500は、そのいずれも採用していない。
四十年前のアンプのなかにも、D級アンプはあったし、スイッチング電源のアンプもあった。

だから、そういうアンプとの比較はできる。
別項で触れているAliExpressを検索すれば、
五万円で購入できるパワーアンプは、まあまあある。

それにMark 2500を五万円ほどで手に入れたとはいえ、
手を加えるのが前提の五万円であるから、
手を加えるのに必要な部品の費用を、まず五万円に足さなければならない。

それから私の手間賃をどう加算するのか。
どこか業者に頼めば、そこそこの技術料を請求されるだろう。

けれど、自分でやれば、時間はとられるものの、現金が減っていくわけではない。
とはいえ、自分の技術料をまったく考慮しないのも、なんだかずるい気もする。

部品代には数万円かかる。
面倒なので、部品代と同じだけの技術料とすると、
Mark 2500は十万円を超えることになる。

十数万円のパワーアンプ。
それも日本のオーディオ店で取り扱っていることにこだわらず、
海外からのインターネット通販も含めれば、面白い比較ができるように思うが、
実際に、それらの製品を聴いているわけではないので、妄想でしかない。

Date: 7月 15th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(2500と現代アンプのこと・その1)

昔、オーディオ雑誌の読者の相談コーナーに、
○○製のアンプの音が気に入っている、
このアンプの音を活かすスピーカーを教えてほしい、というのが、わりとあった。

瀬川先生は、この手の質問をばっさりと切られていた。
スピーカーが主役であり、スピーカーが決ってから、
そのスピーカーをいかにうまく鳴らすか、そのためのアンプ選びだ、と。

そういう趣旨のことを、熊本のオーディオ店に来られている時も話されていた。

そうである、気に入っているスピーカーがなければ、
ある意味、オーディオは始まらない。

今回、SAEのMark 2500を手に入れた。
鳴らすスピーカーは、コーネッタである。

Mark 2500とコーネッタは同時代である。
1970年代後半の音を聴くうえでは、興味ある組合せではあるが、
スピーカーは古いままでも、アンプ、特にパワーアンプを最新のモノにすることで、
聴き馴染んだスピーカーから、新しい魅力を抽き出すこともある。

昨年後半、喫茶茶会記では、マッキントッシュのMA7900で鳴らした。
最新とまではいえないMA7900だが、古いアンプではない。
現代のマッキントッシュのプリメインアンプといえる製品だ。

コーネッタは四十年以上前のスピーカーだが、
だからといって古いアンプで鳴らさなければならない、なんてことはない。
なのに、Mark 2500を手に入れて、浮れている私がいる。

そのことは、
つまりは私にとってMark 2500は、現代アンプに負けない魅力を持っている、ということなのか。
だとしたら、現代アンプとの比較ということで、どのアンプを持ってくるのか。

Mark 2500は四十年前に650,000円だった。
ならば、いまの同価格のアンプとの比較なのか。

Mark 2500は、あの時代、最高級パワーアンプの一つだった。
ならば、現代の、そういえるアンプとの比較となるのか。

Mark 2500は、ヤフオク!で五万円(送料込み)ほどで手に入れた。
ならば、五万円クラスのアンプと比較すべきなのか。

Date: 7月 15th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(2500とM6000のこと・その5)

SAEのMark 2500とラックスのM6000は同じ価格といっていい。
日本市場では、為替相場の変動でMark 2500が数万円高かった時期もあったが、
同じ価格だった時期もある。

SAEはアメリカ製、ラックスは日本製。
当時の為替相場や関税などを考慮すると、
海外製品は割高といわれていた時代である。

この時代は、
輸入元によっては1ドルあたり500円以上で換算したような値づけのモノもあった、ときいている。

Mark 2500とM6000、投入されている物量からいえば、
あきらかにM6000のほうが上である。

ラックスの製品でいえば、M4000とMark 2500が内容的には同クラスとなろうか。

前回、マッキントッシュのMC2300をM6000は意識している、と書いた。
MC2300とMark 2500は、といえば、あきらかにMark 2500はアメリカの新世代のアンプである。

内部の造りを比較して、そういえる。
Mark 2500はメインテナンスがしやすい。
表現をかえれば、手を加えやすい。

もし、いまM6000を手に入れたとしよう。
積極的に手を加えるかといえば、おそらくやらないだろう。

内部に関しては写真でしか見ていないが、やりにくそうだし、
50kgを超える重量からして、体力も必要となるし、場所もそれなりにとる。

Mark 2500は増幅回路は3ブロックに分れている。
電圧増幅部、ドライバー部、出力段である。

そしてヒートシンクも、M6000のような豪華なモノではなく、
アルミ板をコの字に曲げただけのモノだ。

Date: 7月 12th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(2500とM6000のこと・その4)

ラックスのM6000の容積と
マッキントッシュのMC2300の容積を比較すると、M6000の方がわずかに小さい。

重量もMC2300は58.1kgだから、これもM6000のほうが6kgほど軽い。
しかもMC23000はファン付き、M6000はファン無し。

MC23000はオートフォーマーを含めてトランス類の数は三つ、
M60000は電源トランスが二つ。
その分、チムニー型の鋳物によるヒートシンクを持つ。

こんなふうに比較していくと、M6000はMC2300を意識していたように思えてくる。

M6000が登場した1975年のステレオサウンドのムック「世界のオーディオ」のラックス号、
ここで、井上先生がM6000について語られている。
     *
 私はこのアンプを見たときに、ラックスのハイパワーアンプに対する姿勢が、かなり他社と違っていることを、一番感じたわけです。というのは、いままで、ハイパワーアンプというのは、主として、「業務用」とか、プロフェッショナル用とかいう、お墨付きをもらったもの、もしくは、その方向を志向した製品が多かったでしょう。これが、ラックスの場合には、あきらかに、コンシュマーユースという目的にしぼったデザインをしていますよね。ここに、このM6000の現時点での特異性があると思います。
     *
マッキントッシュのMC2300は、管球式のMC3500のソリッドステート版である。
MC2300と、同じマッキントッシュのほかのパワーアンプとは風貌からして違う。
いわゆる「業務用」としての役割を果たせるアンプである。

MC2300を意識しながら、MC2300とは好対照な存在。
それがラックスのM6000というアンプだと思う。

SAEのMark 2500は、というと、
19インチのフロントパネルからも、プロフェッショナルということを意識しているはずだ。

それゆえに強制空冷であるし、
電源トランスの一次側には、通常のフューズだけでなく温度フューズも使われている。
温度フューズを嫌うメーカーは多いなかで、アメリカ製としては珍しい。

Mark 2500の基本設計がジェームズ・ボンジョルノということで、
Mark 2500も動作が不安定で、よくスピーカーを壊すアンプだと思い込んでいる人が、
どうも日本のオーディオマニアはいる。

Mark 2500が不安定なアンプだということは、いままで聞いたことがないし、
ステレオサウンド 41号で、瀬川先生は、
《中でも300W×2のMARK2500は、動作の安定なことはもちろんだが、その音質がすばらしく、出力の大小を問わず現代の第一級のパワーアンプである》
と書かれている。

Date: 7月 12th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(2500とM6000のこと・その3)

M6000のことをこうやって書いていると、
DA07のことを思い出す。

1988年に登場した、このD/Aコンバーターは、大きかった。
200W+200Wクラスなみの大きさと重さのD/Aコンバーターだった。

ラックスのずんぐりむっくりのプロポーションは、
いま思えば、このDA07から始まったのかもしれない。

とにかくDA07の筐体は、それまでのラックスのイメージからはほど遠く、
その時は感じられたのだが、いまM6000のことを書いていると、
ラックスという会社は、
いきなり、こういう大きさと重さの製品を出してくるところがあることに気づく。

M6000という超弩級のパワーンア符の存在が、十年以上前にあったのだから、
ラックスはDA07というD/Aコンバーターを世に送り出した──、
というより送り出せたのではないだろうか。そんな気がする。

M6000は前脚は通常の固定脚だが、後脚はキャスターになっている。
多少なりとも扱いやすいように、という配慮だろう。

でも思うのだが、横幅が57cmあるから、そのころ発売されていたラックには収まらない。
収まるようなラックがあったとしても、重量が52kg。
そうとうに頑丈に作られたラックでなければ、やはり無理である。

あの時代、M6000を購入した人たちは、どうしていたのだろうか。
ラックを特註したのか、それとも床に直置きしていたのか。

私は見たことがないが、鉄フレームの専用ラックも発売されていた、ときいている。
そういうモノまで用意するくらいなら、モノーラル構成にしたほうがよかったのでは──、
とは多くの人が思うはず。

M6000の内部は、
電源トランスから左右チャンネルで独立しているデュアルモノコンストラクション。

モノーラル仕様だったら、入出力端子のすんなり設けられただろうし、
専用ラックを用意することもなかったわけだ。

それでもステレオ仕様にこだわったのは、
マッキントッシュのMC2300の存在を意識してのことのようにおもえる。

Date: 7月 10th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(2500とM6000のこと・その2)

国産300Wパワーアンプ、アキュフェーズのM60、ラックスのM6000、サンスイのBA5000、
このなかで、完全な自然空冷はM6000である。

BA5000は空冷ファンを搭載している。
M60はファン無しだが、使用状況に応じて、リアパネルにファンが後付けできる。

M6000は、これら二機種とは比較にならないほど物量投入型のヒートシンクをもつ。
リアパネル全体を占めるM6000のヒートシンクは、チムニー型である。

取り外してみたわけではないが、このヒートシンク単体でもけっこうな重量があるはずだ。
この重量級のヒートシンクが、二基リアパネルに取り付けられているため、
入出力端子が、M6000の場合、別のところに設けられている。

M4000もM6000と同様、チムニー型のヒートシンクで、リアパネルにM6000と同じに配置されている。
けれど、出力が少ないこともあって、ヒートシンクのサイズも小さい。
そのおかげで、左右のヒートシンクの間の隙間が多少ある。

ここに入出力端子がある。
けれど、写真をみるかぎり、太めのスピーカーケーブルは使えない。

この時代の平均的な太さの平行二芯ケーブルぐらいだろう。
それであっても、スピーカー端子に挿し込むのは、指の太い人だと苦労するかもしれない。

M6000の入出力端子はどこに設けられているかというと、アンプ上部である。
M6000のウッドケースは上1/3ほどが取り外せるようになっている。

アンプ上部の中央のフロントパネル裏側に入力端子、その後方にスピーカー端子が並ぶ。
M6000も太いケーブルの使用は難しいはずだ。

M6000の取り外せるウッドケースの裏側も、表面と同じに仕上げられている。

300W+300Wの出力で自然空冷を実現するための大型のチムニー型ヒートシンク。
そのために、横幅が57cmもあるアンプなのに、
リアパネルに入出力端子を設ける余地がない。

JBLのプリメインアンプSA600の入力端子は、
リアパネルではなく底部に設けられている。

SA600は軽いアンプだから、ケーブルを接続して元の状態に戻すのもたやすい。
けれど、M6000は50kgを超える大型アンプだから、
もし底部に入出力端子があったら、たいへんな作業になる。

リアパネルもダメ、底部もダメとなると、アンプ上部しかない。

Date: 7月 9th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(2500とM6000のこと・その1)

SAEのMark 2500と同時期に、300W出力のパワーアンプは、
日本のメーカーからも出ていた。

よく知られるところではアキュフェーズのM60がある。
それからラックスのM6000、サンスイのBA5000である。

M60はモノーラル仕様で、ステレオ仕様のMark 2500とはもともとからして規模が違う。
ステレオ仕様として、Mark 2500と比較したいのはM6000である。

BA5000に関しては知っているというぐらいで、実機をみたこともない。
まわりに聴いたことがあるという人もいない。

M6000もその点に関しては、BA5000と似たような感じではある。
実機はみたことがある。
オーディオ店で見ている。

といっても、音は聴いているのかといえば、
まったく聴いていないわけではないが、じっくり聴いたわけでもないから、
聴いていないのと同じじゃないか、といわれれば反論しようがない。

それでもM6000の印象は、BA5000よりもはるかに強い。
M6000は300W+300Wで、弟分としてM4000(180W+180W)、M2000(120W+120W)がある。

1976年当時の価格は、M2000が225,000円、M4000が350,000円に対し、
M6000は650,000円とランク的にも一段上であった。

価格だけではない。
外形寸法/重量においてもだ。
M2000はW48.3×H17.5×D29.5cm/18.0kg、M4000はW48.3×H17.5×D39.0cm/30.0kg。
Mark 2500は規模的にはM4000と同じといえる。

M6000はW57.0×H22.0×D42.5cm/52.0kgと、
マッキントッシュのMC2300と同等であり、サンスイのBA5000もこれに近い。

M6000は、19インチのラックに収まらない規模である。
けれど、写真でみるかぎり、うまくまとめられているおかげもあって、
さほど大きくは感じられない。
写真で見るだけならば、M4000もM6000も横幅は同じだと思ってしまう。

でも実機をみると、
それもオーディオ店で、比較対象となるパワーアンプがあったりすると、
家庭用のアンプとしての枠を超えていることを実感することになる。

Date: 7月 8th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(その14)

五味先生の「ピアニスト」に、コーネッタのことは出てくる。
もう何度か引用している。
     *
 JBLのうしろに、タンノイIIILZをステレオ・サウンド社特製の箱におさめたエンクロージァがあった。設計の行き届いたこのエンクロージァは、IIILZのオリジナルより遙かに音域のゆたかな美音を聴かせることを、以前、拙宅に持ち込まれたのを聴いて私は知っていた。(このことは昨年述べた。)JBLが総じて打楽器──ピアノも一種の打楽器である──の再生に卓抜な性能を発揮するのは以前からわかっていることで、但し〝パラゴン〟にせよ〝オリンパス〟にせよ、弦音となると、馬の尻尾ではなく鋼線で弦をこするような、冷たく即物的な音しか出さない。高域が鳴っているというだけで、松やにの粉が飛ぶあの擦音──何提ものヴァイオリン、ヴィオラが一斉に弓を動かせて響かすあのユニゾンの得も言えぬ多様で微妙な統一美──ハーモニイは、まるで鳴って来ないのである。人声も同様だ、咽チンコに鋼鉄の振動板でも付いているようなソプラノで、寒い時、吐く息が白くなるあの肉声ではない。その点、拙宅の〝オートグラフ〟をはじめタンノイのスピーカーから出る人の声はあたたかく、ユニゾンは何提もの弦楽器の奏でる美しさを聴かせてくれる(チェロがどうかするとコントラバスの胴みたいに響くきらいはあるが)。〝4343〟は、同じJBLでも最近評判のいい製品で、ピアノを聴いた感じも従来の〝パラゴン〟あたりより数等、倍音が抜けきり──妙な言い方だが──いい余韻を響かせていた。それで、一丁、オペラを聴いてやろうか、という気になった。試聴室のレコード棚に倖い『パルジファル』(ショルティ盤)があったので、掛けてもらったわけである。
 大変これがよかったのである。ソプラノも、合唱も咽チンコにハガネの振動板のない、つまり人工的でない自然な声にきこえる。オーケストラも弦音の即物的冷たさは矢っ張りあるが、高域が歪なく抜けきっているから耳に快い。ナマのウィーン・フィルは、もっと艶っぽいユニゾンを聴かせるゾ、といった拘泥さえしなければ、拙宅で聴くクナッパーツブッシュの『パルジファル』(バイロイト盤)より左右のチャンネル・セパレーションも良く、はるかにいい音である。私は感心した。トランジスター・アンプだから、音が飽和するとき空間に無数の鉄片(微粒子のような)が充満し、楽器の余韻は、空気中から伝わってきこえるのではなくて、それら微粒子が鋭敏に楽器に感応して音を出す、といったトランジスター特有の欠点──真に静謐な空間を持たぬ不自然さ──を別にすれば、思い切って私もこの装置にかえようかとさえ思った程である。でも、待て待てと、IIILZのエンクロージァで念のため『パルジファル』を聴き直してみた。前奏曲が鳴り出した途端、恍惚とも称すべき精神状態に私はいたことを告白する。何といういい音であろうか。これこそウィーン・フィルの演奏だ。しかも静謐感をともなった何という音場の拡がり……念のために、第三幕後半、聖杯守護の騎士と衛士と少年たちが神を賛美する感謝の合唱を聴くにいたって、このエンクロージァを褒めた自分が正しかったのを切実に知った。これがクラシック音楽の聴き方である。JBL〝4343〟は二基で百五十万円近くするそうだが、糞くらえ。
     *
このとき、4343を鳴らしていたのは、
コントロールアンプがGASのThaedra、パワーアンプがマランツのModel 510Mである。
カートリッジはエンパイアの4000とあるから、4000D/IIIだろう。

この組合せの状態で、スピーカーだけを4343からコーネッタに替えられている。
そしてショルティの「パルジファル」を聴かれて、
《恍惚とも称すべき精神状態》に五味先生はなられた。

私は、この文章を読みながら、
瀬川先生が鳴らされていた──、とついおもってしまった。

瀬川先生ならば、アンプはLNP2とMark 2500だっただろうし、
カートリッジもクラシックを鳴らすのであれば、4000D/IIIは絶対に選ばれない。
ヨーロッパ製のカートリッジを組み合わされていたはずだ。

この瀬川先生の組合せで、
4343からコーネッタに替えられた音を聴かれたのであれば──、
そんなことを当時読みながらおもっていた。

そのことを今回おもい出した。

Date: 7月 8th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(その13)

瀬川先生は、SAEのMark 2500で、JBLの4341、4343を鳴らされていた。
私は、Mark 2500で何を鳴らすかといえば、タンノイのコーネッタである。

コーネッタにMark 2500?
そう思う人がいるだろうし、私も自分のことでなければ、そう思うだろう。

「コンポーネントステレオの世界 ’77」での瀬川先生の組合せ。

室内楽を静謐な、しかも求心的な音で聴きたい、というレコード愛好家のための組合せで、
スピーカーはタンノイのアーデン、
これを鳴らすためにスチューダーのA68、マークレビンソンのLNP2を選ばれている。

このころの瀬川先生はLNP2にはMark2500を組み合わせることが常だった。
だから、この組合せの記事でも、なぜMark2500ではなくA68なのか、について語られている。
     *
マーク・レビンソンのLNP2に組合せるパワーアンプとして、ぼくが好きなSAEのマーク2500をあえて使わなかった理由は、次の二点です。
第一は、鳴らす音そのものの質の問題ですが、音の表現力の深さとか幅という点ではSAEのほうがやや優れているとおもうけれど、弦楽器がA68とくらべると僅かに無機質な感じになる。たとえばヴァイオリンに、楽器が鳴っているというよりも人間が歌っているといった感じを求めたり、チェロやヴァイオリンに、しっとりした味わいの、情感のただようといった感じの音を求めたりすると、スチューダーのA68のほうが、SAEよりも、そうした音をよく出してくれるんですね。
      *
《ヴァイオリンに、楽器が鳴っているというよりも人間が歌っているといった感じ》、
レコード音楽が、こんなふうに鳴ってくれれば、これほど嬉しいことはない。

ここでの組合せのスピーカーは、アーデンである。
私が鳴らすのはコーネッタ。

アーデン搭載のユニットよりも、コーネッタのユニットは二まわり口径が小さい。
ならば、A68で充分すぎるのではないか。

だからA68を探していたわけだが、
今回、Mark 2500がやって来た。

コーネッタと組み合わせて、ということは、ほとんど考えずにヤフオク!で落札した。
コーネッタにはミスマッチなのかもしれないと思いながらも、
やって来たのだから、コーネッタをMark 2500で鳴らすことになるわけだが、
《弦楽器がA68とくらべると僅かに無機質な感じ》、
これさえ払拭できれば、わりといい組合せになるんじゃないか──、
そう思い込もうともしている。

すると、五味先生の文章を思い出した。

Date: 7月 4th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(2500とA68のこと)

SAEのMark 2500と同時期に、
瀬川先生が愛用されていたパワーアンプに、スチューダーのA68がある。

A68はプロ用のパワーアンプのため、
コンシューマー用とは、かなり違う構成となっている。

ブロックダイアグラムをみると、
まずAFフィルター(コイルとコンデンサーで構成)がある。
そのあとに、1:1のトランス、レベルコントロール、
それからゲイン14dBのプリアンプ部、カットオフ周波数50kHzのローパスフィルター、
これらの回路が、いわゆる通常のパワーアンプ部の前段にある。

パワーアンプ部の電圧増幅部のゲインは21dB、
出力段はトランジスターの3パラレル・プッシュプルとなっている。

A68もまた、FETを使っていない。
プリアンプ部もパワーアンプ部も能動素子はトランジスターのみで、
定電圧電源も、その点は同じである。

EMTのプレーヤー搭載のイコライザーアンプの155stも、
すでに書いているように、FETは使っていない。
Mark 2500もそうであり、A68もである。

FETを使っていないアンプを愛用されていたことは、単なる偶然であろう。
FETを使っていないアンプを探しての選択ではないことはわかっている。

それでも、このことは素通りできない事実であるように感じている。

Date: 7月 3rd, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(2500とAMPZiLLAシリーズのこと)

SAEのmark 2500とMark 2600の回路図を比較すると、
抵抗やコンデンサー、電圧などの値が回路図に入ってなければ、
まったく同じである。

これまで書いてきたように、2500と2600の基本回路の設計は、
ジェームズ・ボンジョルノであり、
Mark 2500と同時期に、GASを設立し、AMPZiLLAを出している。

AMPZiLLAは、いうまでもなくボンジョルノの設計である。
基本設計とことわることなく、彼のアンプである。

兄弟といっていいほど、Mark 2500とAMPZiLLAシリーズは似ているし、
違うところもいくつかある。

入力コンデンサーに関してもそうである。
どちらのアンプも、入力には電解コンデンサーが入っている。

Mark 2500では100μFの電解コンデンサーが使われている。
電圧増幅回路は、いわゆる上下対称回路と呼ばれているもので、
入力信号は、プラス側のトランジスターとマイナス側のトランジスターの入力へと、
分岐している。

それぞれの入力に電解コンデンサーが入るわけだが、
電解コンデンサーの向きが、プラス側とマイナス側とでは違う。

プラス側のコンデンサーは+端子が入力側で、
マイナス側のコンデンサーの+端子はトランジスター側となっている。

AMPZiLLAでは、ここに関しては同じなのだが、
AMPZiLLA IIからは変ってきている。

220μFの電解コンデンサーを二つ直列接続している。
そしてこのコンデンサーの出力から分岐して、
プラス側とマイナス側のトランジスターへと接続されている。

SUMOのThe Power、The Goldでも電解コンデンサーがあって、
AMPZiLLA IIと同じ使い方がされている。

ちなみにSAEのXシリーズでも、この電解コンデンサーはある。
使い方はMark 2500、AMPZiLLAと同じなのだが、容量が47μFと約半分になっている。

Date: 7月 2nd, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(2500と2600の関係・その3)

Mark 2500の出力段にかかる電圧は95V、
Mark 2600は105Vである。

パワートランジスターとヒートシンクは、振動源と音叉の関係に近い。
トランジスターを流れる電流で振動を発生する。
この振動がヒートシンクのフィンに伝わっていく。

だからパワーアンプ(ヒートシンクのつくり、取り付け方)によっては、
パワーアンプの出力に抵抗負荷を接ぐ、入力信号をいれ、ヒートシンクに耳を近づければ、
音楽が、かなり盛大に聞こえてくることもある。

その聞こえ方も、アンプの構造によって違ってくる。
それゆえにヒートシンクの扱いは、パワーアンプの音質を大きく左右するともいえる。

このことを、高校生の私は知らなかった。
このことを知ったうえで、2500と2600を比較すると、
トランジスターにかかる電圧が若干高くなったことでトランジスターの振動は、
多少ではあるだろうが、2500の95Vのときよりも増えているはずだ。

振動源であるパワートランジスター。
その振動が変化するということは、ヒートシンク(音叉)との関係にも変化がある。

2500と2600の筐体構造は共通である。
ヒートシンクも写真でみるかぎりは共通している。

パワートランジスターとヒートシンクの振動源と音叉の関係を理解したうえで、
2500と2600の音の違いを考えれば、このへんが影響してのことのはず、といえる。