SAE Mark 2500がやって来る(その8)
瀬川先生は、ステレオサウンド 43号で、Mark 2500について、
こう書かれている。
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一年前自家用に購入して以後も、目ぼしい製品とは常に比較してきたが、今日まで、音のダイナミックな表現力の深さ、低音の豊かさ、独得の色っぽい艶と滑らかさなど、いまだこれに勝るアンプはないと思う。日頃鳴らす音量は0・3W以下だが、そういうレベルでも音に歪っぽさが少しもなく、危なげない充実した音で楽しませてくれる。こういうパワーなら、換気に留意すればファンはOFFにして使っても大丈夫のようだ。
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最初に読んだときには気づかなかったのだが、
その後、Mark 2500の基本設計がジェームズ・ボンジョルノだということを知ってから、
そしてボンジョルノのアンプ(GASのThaedraとSUMOのThe Gold)を使うようになってから、
《音のダイナミックな表現力の深さ》は、ボンジョルノのアンプに共通している特質である。
43号のころ(1977年)は、ボンジョルノのアンプ(音)の洗礼を受けていなかった。
なので、当時のパワーアンプのなかでは、Mark 2500もいいアンプなのだろうけど、
スレッショルドの800Aはもっといいパワーアンプのはず、という思い込みがあった。
Mark 2500も800Aも、中学二年の私に、手の届かない存在だったけれど、
800AのほうがMark 2500よりも高価だった(百万円超えだった)。
しかもA級動作という謳い文句に、より惹かれていた。
同じ43号で、セクエラのModel 1について、こう書かれていたことも、
800Aにより惹かれた理由のひとつになっている。
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スピーカーならJBLの4350A、アンプならマークレビンソンのLNP2LやSAE2500、あるいはスレッショールド800A、そしてプレーヤーはEMT950等々、現代の最先端をゆく最高クラスの製品には、どこか狂気をはらんだ物凄さが感じられる。チューナーではむろんセクエラだ。
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この時の私には、Mark 2500よりも800Aのほうが、
より《現代の最先端をゆく最高クラスの製品》に見えていた。
The Goldの音を聴くまでは。