中点(その3)
そこそこの時間生きていれば、得たものもあれば、同じぐらいの失ったものもあるのが、
あたりまえのことなのかもしれない。
これまで生きてきて、なにひとつ失ったものは、無い、という、
ひじょうに恵まれている、と世間でいわれている人もいるかもしれない。
それでも、失うものを失っている、だけで、そのことに気がついていないのは、
当の本人ではなく、羨ましげに見ている周りの人たちの方かもしれない。
築いてきたもの、手にしてきたもの……、それらのものを、あるとき、一瞬にして失うかもしれないし、
徐々に失ってきてもいる。
誰だって、苦労して得てきたものほど、失いたくはない。
それでも、失わなければ、感知できないなにかが確実にある。