Archive for category 素材

Date: 5月 25th, 2015
Cate: 素材

素材考(発電ゴムという素材・その3)

リコーの発電ゴムがどれだけの性能なのかは、はっきりとしたことはなにもわかっていない。
リコーの発表資料にあるとおりの性能であるならば、センサーとしての性能も期待できる。

別項の「電子制御という夢」、ここでもセンサーとして期待している。
発電効率が高いのであれば、細かくしてトーンアームの各部に装着できる。
ゴムという素材なのだから、いままでのセンサーでは拾えなかった情報もピックアップできるように思える。

さらにこれまではアームパイプ内部の状態を知ることは難しかったように思う。
発電ゴムならば、パイプ内部にも簡単に装着できるし、トーンアームの実効質量にもほとんど影響を与えないだろう。

さらにさらにカートリッジ内部のセンサーとしても使える。
ダンパーの一部としての利用、そしてカンチレバーのセンサーとしても使えるのではないだろうか。

電子制御トーンアーム。
おそらくどこも新たに開発しようというところはないだろう。
新しい電子制御トーンアーム開発の環境は、その昔よりもずっと整っているけれど……。

Date: 5月 24th, 2015
Cate: 素材

素材考(発電ゴムという素材・その2)

発電ゴムということは、その逆もまたできるはずである。
つまり音声信号を発電ゴムに流せば、振動するはず。
発音ゴムでもあるはずだ。

ゴムなのだから、叩いても共振はしないはずだ。
それに動作だか一手もピストニックモーションでの振動による変換ではないから、
振動板としての剛性の高さは必要としないはず。
つまりベンディングウェーヴ型のスピーカーの素材として使えるはずだ。

オーディオではカートリッジとスピーカーに使えるはずだと多くの人が考える。
他に使えるところはないのだろうか。

これは私の直感なのだが、トランスに応用できるのではないかと考えている。
トランスは鉄芯(コア)にコイルを巻いている。
一次側(入力側)のコイルに信号が流れると、コアに磁束の流れが生じる。
この磁束の流れは二次側(出力側)のコイルに電流を発生させる。

電気→磁気→電気という変換がトランスの中で発生している。
発電ゴムは、この磁気のところを振動に置き換えられるのではないか。
電気→振動→電気というトランスが可能になるのではないか。

トランスは一次側と二次側のコイルの巻線比を変えることで、昇圧(降圧)ができる。
発電ゴムの柔軟性が、コイルの巻線に相当するのであれば、
柔軟性の異る発電ゴムが登場したら、コアを必要としないトランスが可能になるような気がする。

Date: 5月 24th, 2015
Cate: 素材

素材考(発電ゴムという素材・その1)

5月18日にリコーが発電ゴムを発表している。
いわゆる圧電素子のひとつとなる。

これまでの圧電素子といえば、リンク先にもあるようにセラミックと高分子樹脂があり、
それぞれに長所と短所がある。
今回の発電ゴムがリコーの発表通りのモノならば、それぞれの長所を併せ持つ圧電素子となる。

圧電といえば、昔のローコストのカーリトッジは圧電型があった。
セラミック型、クリスタル型と呼ばれていたカートリッジである。

MM型、MC型、MI型が速度比例型なのに対し、
圧電型カートリッジは振幅(変位)比例型であるため、
イコライザーアンプは原則として不要になる。
しかも出力電圧も大きいため、
ポータブル型のスピーカー内蔵のプレーヤーには、圧電型カートリッジが搭載され、
アンプは小出力のパワーアンプのみという簡単な構成になっていた。

そのせいか、これまで圧電型カートリッジはローコスト向きのように受けとめられてきたところがある。
けれど、一部のあいだでは、圧電型の可能性を評価する声もあった。

とはいえ圧電素子そのものが改良されることが必須であり、
リコーの発電ゴム以前にも、圧電素子はいくつも登場してきている。

それでもオーディオの世界で圧電素子が採用される事はなかったが、
今回の発電ゴムは可能性があるように思える。

当然カートリッジへの採用がまず考えられる。
しかもゴムだから、この圧電素子自体がダンパーを兼ねることになる。
コイルも磁気回路もいらない。
設計の自由度は高くなる。

これまでのカートリッジとは違う音を開いてくれる可能性もある。

Date: 1月 21st, 2015
Cate: 素材

素材考(ジャーマン・フィジックスのDDD型ユニット)

昨年秋、ヨネックスがロードバイクのフレームを発表した。
もちろんカーボンを採用したフレームである。
発表された資料に、ゴムメタルという表記があった。

ゴムメタル
ゴムのような金属という意味なのか、と思い、検索してみると、
チタン合金の一種で、ゴムのような性質をもつものだとわかる。

柔らかく、しなやかで、高強度で腰が強い。
どんなに変形させても硬くならず、無限のプレス加工性を有している、ともある。

ジャーマン・フィジックスのDDD型ユニットはベンディング型であるため、
振動板は合成ではなくしなやかさが要求される。
チタンの薄膜を採用し、その後カーボン版も出ている。

カーボンは高剛性の高剛性の素材だと思っている人が多いようだが、
カーボン繊維はしなやかな素材である。
だからこそDDD型ユニットの振動板の素材としてカーボンもあり、といえる。

そのDDD型ユニットの振動板の素材として、ゴムメタルは最適の素材ではないだろうか。
現在採用されているチタンがどういうものなのか詳細はわからないが、
ゴムメタルの資料を読むかぎりは、より適しているように思える。

現在ジャーマン・フィジックスの輸入代理店は日本には正式にはない。
それが残念である。

ゴムメタルのDDD型ユニットの登場。
実現してほしい。

Date: 11月 19th, 2014
Cate: 素材

羽二重(HUBTAE)とオーディオ(その10)

羽二重=HUBTAEに、まず右手の人差し指でふれた。
布地の専門の人ならば、もっと違う触り方があるのかもしれないが、私はそうではない。
対象が布であろうと紙であろうと、その他の素材であろうと、
まず感触を確かめるのであれば右手の人差し指でふれる。

それから親指と人差し指で羽二重=HUBTAEの表と裏にふれ、指の腹をこすりあわせるようにする。
次は人差し指、中指、薬指で撫でる、両手の手のひらではさみこんでみる。

こうやって羽二重=HUBTAEの感触を確かめてきた。

羽二重=HUBTAEの上に指を置く。
ひとつ前に書いた映画「舟を編む」での紙のぬめり感についてのシーンでも、指を置く。

指を辞書のページの上に置く、羽二重=HUBTAEの上に置く。
そのことで対象物の、いわば領域に指が入ってきたことになる。

羽二重=HUBTAEの発表会では、羽二重=HUBTAEは平面の台に置かれていたわけではなかったが、
たとえば羽二重=HUBTAEが平面の台に置かれているとする。
きれいに伸ばされた状態で置かれている。

それをじっと見ていても、質感はある程度は伝わってくる。
この状態では、視覚的に羽二重=HUBTAEの上に指はない。
ふれようとして指を近づける。視界に自分の人差し指が入ってくる、
指の侵入なのかもしれない。そしてふれる。

指でふれる、ということは、そういうことだと思うようになってきた。

Date: 11月 14th, 2014
Cate: 素材

羽二重(HUBTAE)とオーディオ(舟を編む)

先日、映画「舟を編む」を観た。
国語辞典をつくる話だ。

辞典をつくっていくことの大変さは、なんとなく想像はしていたけれど、
実際はこれほど大変なことなのか、と知らされた。
校正にしても、雑誌と辞典では回数が大きく違う。

この物語の主人公は、辞書編集部の馬締光也。
国語辞典つくりが佳境になってきたころ、
製紙会社からもちこまれた紙について「ぬめり感がない」というシーンがある。
「ぬめり感?」ととまどう製紙会社の社員に、ある辞書をめくりながらぬめり感を説明する。

良質の辞書を使っている人ならば、辞書に使われている紙が薄く、指に吸いつくように、
けれど数ページがまとまってめくれたりはしないことを思い出されるはず。

辞書に使われている紙は薄い。
厚ければページ数の多い辞書の厚みはさらに増し、使いにくくなる。
薄くて丈夫で、一ページ一ページをきちんとめくれること。

このぬめり感(紙の質感)もまた、辞書のデザインであると気づかされた。

Date: 10月 31st, 2014
Cate: 素材

羽二重(HUBTAE)とオーディオ(その9)

なぜ木は腐ることがあるのか。
木という素材が呼吸をする素材であるからで、
そのため湿気の多過ぎる環境下では腐っていく。

CRAFT-α9000の振動板に採用されたαウッドは、通常の木が腐ってしまう環境下でも腐らないのだろう。
つまりαウッドは呼吸をしない素材ではないのか。
その意味で、井上先生は「それは、もう木じゃないね」といわれた。

羽二重=HUBTAEの発表会での川崎先生の話の中に、ナイロンのことが出てきた。
ここでも「呼吸しない素材」ということだった。
最新のナイロンはそうではない、ということだった。

呼吸をしている素材だから、場合によっては腐ることもある。
腐るということは素材としての死であり、ならば呼吸をしているということは、素材として生きている──、
そう受けとめることもできる。

いかなる環境下でも腐らない、というのは呼吸をしていない、ということになり、
ならばその木は防腐処理をされた死んだ状態(つまりは生きていない状態)ともいえるわけだ。

生きていない状態の素材でも、それが役に立つこと(箇所)はあるだろう。
だが、オーディオの、それもスピーカーの振動板となると、
本来生きている状態の素材を生きていない状態にしてしまって使うことに、どれだけのメリットがあるといえるのか。

井上先生が話されたことは、そういうことだった。

Date: 10月 29th, 2014
Cate: 素材

羽二重(HUBTAE)とオーディオ(その8)

話がそれるように思われるかもしれないが、ひとつ思い出したことがあるので書いておく。
1987年に大建工業がスピーカーシステムCRAFT-α9000を出した。

それまでオーディオとは関係のなかった企業のオーディオへの参入であり、
大建工業のスタッフの方が、ステレオサウンドの試聴室にCRAFT-α9000を持ち込まれた。
音を聴き、説明を受けた。

後日、井上先生の新製品の試聴があった。
そのときにCRAFT-α9000の話になった。
どうだった? ときかれたので、話した。

そのとき井上先生がいわれたことが今も記憶に残っている。
「それは、もう木じゃないね」だった。

CRAFT-α9000は振動板にαウッドと呼ばれる新素材を採用した平面振動板による3ウェイのシステムだった。
αウッドは、中部コーン製作所と京都大学の木材研究所との共同開発で生れてきたもので、
アセチル化処理により木材の欠点を改良した、というものだった。
細かなことはインターネットで検索すれば出てくるので省略するが、
大きな特徴として水を吸いにくい(吸わない)ので腐らない、ということだった。
経年変化もわずかということだった。

自然素材である木の欠点を改良する。
いいことのように思えるけれど、そこに井上先生の一言で考えさせられた。

木の欠点をなくすことで、木の良さも失っている。
それはもう木とは呼べない、ということだった。

Date: 10月 20th, 2014
Cate: 素材

羽二重(HUBTAE)とオーディオ(その7)

川崎先生の講演が終り、展示してある七枚の羽二重=HUBTAEに触れる。

私は布地の専門家ではない、素人である。
専門の人たちがどういうふうに七枚の羽二重=HUBTAEに触るのかを見てから、
それをマネして触ってみようと思っていたけれど、最初の一枚に触ってみると、
そんな真似をしなくとも、オーディオマニアにはオーディオマニアとしての触り方があるように感じて、
ピンと張ったりしながら、あれこれ触ってみた。

七枚を触った後で、また最初から触っていた。
会場には多くの人がいたから納得するまで触っているわけにはいかない。
それから子供のころよくやっていたことを思い出していた。

紙や布をピンと張って口を付けて振るわせる、というものだ。
実はこれを試してみたかったけれど、顰蹙をかうことは必至だからしなかった。

七枚の羽二重=HUBTAE、

こし:もちもち・しこしこ
はり:バリバリ・パリパリ
ぬめり:ぬるぬる・べとべと
ふくらみ:ふかふか・ふわふわ
しゃり:しゃりしゃり・しょりしょり
きしみ:きしきし・きゅっきゅっ
しなやかさ:しなしな・たらたら

これらを振るわせて音を出してみたら、
どういう違いが出てくるのだろうか。

手で触っていた時に感じていた違いよりも、はっきりと感じられるのか、それともそれほどでもないのか。

Date: 10月 2nd, 2014
Cate: 素材

羽二重(HUBTAE)とオーディオ(その6)

羽二重=HUBTAEの発表会の会場には、七枚の羽二重=HUBTAEが展示してあった。

くばられた資料には、オノマトペによる「七つ」布感性評価を求める、とある。
続けて、こう書いてある。
     *
・「織物」と「人間」の関係は、「布」と「肌」との関係です。それは互いに呼吸をする界面・インターフェイスそのものです。布は、麻、綿、絹が文明をつくり、それぞれの肌感覚を求めて文化になりました。とりわけ絹には最も高級感があり、人肌を包み込む品格が、織物技術に「智恵」を込める最大のポイントでした

・生糸が「羽二重」になったとき、絹の品格は「七つの要素」で決定されました。「しなやかさ」は絹のつつましくも品性としての高級感になり、それは織物を人工化し人絹になっていく技術進化でした。

・ポリエステルは人間が到達した最高のモノになりましたが、これまでは大きな欠点がありました。それは呼吸をしない布でしたが、現代の呼吸するポリエステルは、布の理想をさらに追求しています。

・私たちが追い求めてきたのは、「七つの要素」を、オノマトペ=擬音語による共通感覚で布特性を「基準化」し、オノマトペの運用による評価によって、さらに未来の布開発目標を明確にしました。

・さらに私たちが求めたのは、子どもたち、それも5最の幼児たちの感覚で新たなオノマトペで布の感性評価を進展させる試みです。

・まず、私たちは「羽二重=HUBTAE」に七つの表現を基準化。この基準で、これからの布見本帳を体系化していきます。そうした未来を織り込む感性評価は、人と布とのインターラクション(人とモノとの総合性)づくりです。
     *
七つの要素、七つの表現とは、
こし:もちもち・しこしこ
はり:バリバリ・パリパリ
ぬめり:ぬるぬる・べとべと
ふくらみ:ふかふか・ふわふわ
しゃり:しゃりしゃり・しょりしょり
きしみ:きしきし・きゅっきゅっ
しなやかさ:しなしな・たらたら
である。

展示してあった七枚の羽二重=HUBTAEは、
こしの羽二重=HUBTAE、はりの羽二重=HUBTAE、ぬめりの羽二重=HUBTAE、ふくらみの羽二重=HUBTAE、
しゃりの羽二重=HUBTAE、きしみの羽二重=HUBTAE、しなやかさの羽二重=HUBTAEであった。

Date: 9月 29th, 2014
Cate: 素材

羽二重(HUBTAE)とオーディオ(その5)

耳の構造は、外耳、中耳、内耳にわけられ、外耳と中耳の境界に鼓膜がある。
この鼓膜を振動板を捉え、鼓膜にボイスコイルに相当するものがついていれば、話は違ってくるのだが、
実際には鼓膜が音を神経に伝えているわけではない。

耳の構造については、いまではインターネットで検索すれば専門的な知識も得られるので、
こまかなことは省略するが、内耳に蝸牛がある。

この蝸牛にはリンパ液が入っていて、このリンパ液の揺れを感覚細胞(有毛細胞)がとらえて電気信号に変える。
電気信号は、蝸牛神経を通って大脳に伝えられる。

有毛細胞はリンパ液に触れている。つまり触覚によって、最終的に音という空気の疎密波を脳に伝えている。
たしかに聴覚は触覚といえる。

味覚はどうか。嗅覚はどうか。
聴覚と同じように調べていけば、触覚が、それぞれに特化した機能といえることに気づくはずだ。
味覚も嗅覚も触れなければ、味や匂いを感じることはできない。

五感ではなく二感。
納得できる。

9月26日の羽二重=HUBTAEの発表会での川崎先生の話をきいていて、このことを思い出した。
菅野先生による音色と音触、
そこに川崎先生の、五感ではなく二感、
聴覚はあきらかに触覚である。

ならば音の色見本は触覚的なモノであるべきなのではないか。
むしろ触覚であることで、直感的に理解できるのではないのか。
さらにいえば、触覚による音の色見本によって、音に対して、より鋭敏になることができるのではないのだろうか。

Date: 9月 28th, 2014
Cate: 素材

羽二重(HUBTAE)とオーディオ(その4)

音色は、ねいろ、とも読み、おんしょく、とも読む。
オーディオを語る際の音色は、おもにおんしょくである。

もう十年以上前になるが、菅野先生が音触(おんしょく)という造語を使われはじめた。
いまおもえば、このときなぜ気づかなかったのかだろうか。

音色、音触、どちらもおんしょくである。
ならば音の色見本を、いろみほんと呼ばずに、しょくみほんと呼べば、音の触見本を連想しても不思議ではない。

でも、音触という言葉に出会ってから、結局十年以上かかった。
それも羽二重=HUBTAEの登場というきっかけがなければ、まだ気づいていなかった。

いちど気づくと、あのことも気づかせてくれるきっかけとだったんだ……、と思い出すことがある。
九年前のことだ。
川崎先生が、五感について話された。

五感とは目(視覚)・耳(聴覚)・鼻(嗅覚)・舌(味覚)・皮膚(触覚)、
この五つの感覚を、何の疑いもなく、そのまま信じている。
けれど、川崎先生は五感ではなく二感だ、といわれた。

人間には視覚と触覚の、ふたつの感覚しかない、ということである。

Date: 9月 27th, 2014
Cate: 素材

羽二重(HUBTAE)とオーディオ(その3)

インターナショナルオーディオショウでの例は、つい最近のことだから書いたまでで、
こういうことはこれまでに何度も体験してきている。

ステレオサウンドにいたころ、音の色見本があれば、と考えたことがある。
すぐに思いつくのは、LPなりCDに、解説付きでさまざまな音色の音を録音しておくことである。

だが、このディスクを再生する環境がまたく統一されていない。
パソコンのディスプレイには、色をキャリブレートするためのハードウェアとソフトウェアが用意されている。
音の世界に、こういうものはない。

そういう状況で、音による音の色見本をつくろうとしても、
まったく役に立たないとまではいわないとしても、無理といえる。

いまならばiPodとヘッドフォン(イヤフォン)の組合せで、
ヘッドフォンをある特定機種にすることで、環境が揃えられるとはいえる。
それでも、音の色見本がうまくいくようには思えなかった。

なぜ、そう思えないのか、その理由もはっきりとはしていなかった。
変な話なのだが、音による音の色見本が、直感的とは思えないからであった。

音よりも、音の色見本を直感的に伝えるにはどうしたらいいのか。
これは四六時中考えていたことではないが、長いこと考えつづけてきたことであった。

音よりも直感的と思えるものは、ここにあった──、
国際文化会館での「羽二重」HUBTAE=新素材ブランドの発表会で、直感的にそうおもえた。

Date: 9月 27th, 2014
Cate: 素材

羽二重(HUBTAE)とオーディオ(その2)

ステレオサウンドで働くようになって、色見本というものを知った。

音にも、音色という言葉があるように、色はある。
けれど、音の色見本というのは存在していない。

音の色見本がない状態で、われわれは音を言葉で表現しようとしている。
だから書き手と読み手とのあいだには、誤解も生じることになる。

先日もインターナショナルオーディオショウに行って、その感を強くした。
あるブースで、あるオーディオ評論家が音を鳴らしていた。
いい音ではなかった。そのことが問題ではなく、
音を鳴らし終った後に「素晴らしく滑らかな音でしたね」と、オーディオ評論家がいう。

椅子に腰かけて聴いている人の中には、頷いている人がいた。
ということは、この音が滑らかな音ということになっているのか、とびっくりするよりも呆れた。
どこをどう聴いても、いいように受けとめようとつとめても、
いましがた鳴っていた音は、決して滑らかな音ではなかった。

聴いていた人の中には、私と同じように感じていた人もいたであろう。
でも、この場に、オーディオに関心をもち始めたばかりの若い人がいたら、どうなるだろうか。

オーディオ雑誌に登場しているオーディオ評論家が
「素晴らしく滑らかな音ですね」と絶賛しているのを耳にしてしまったら、
やはり、その場で鳴っていた音が、滑らかな音ということになってしまうことだって考えられる。

これは憂慮すべきことである。
だが、このオーディオ評論家ばかりを責めたいわけではない。
このオーディオ評論家も、どこかでそういう体験をしてきたから、こうなってしまった──、
そう考えられるからである。