羽二重(HUBTAE)とオーディオ(その10)
羽二重=HUBTAEに、まず右手の人差し指でふれた。
布地の専門の人ならば、もっと違う触り方があるのかもしれないが、私はそうではない。
対象が布であろうと紙であろうと、その他の素材であろうと、
まず感触を確かめるのであれば右手の人差し指でふれる。
それから親指と人差し指で羽二重=HUBTAEの表と裏にふれ、指の腹をこすりあわせるようにする。
次は人差し指、中指、薬指で撫でる、両手の手のひらではさみこんでみる。
こうやって羽二重=HUBTAEの感触を確かめてきた。
羽二重=HUBTAEの上に指を置く。
ひとつ前に書いた映画「舟を編む」での紙のぬめり感についてのシーンでも、指を置く。
指を辞書のページの上に置く、羽二重=HUBTAEの上に置く。
そのことで対象物の、いわば領域に指が入ってきたことになる。
羽二重=HUBTAEの発表会では、羽二重=HUBTAEは平面の台に置かれていたわけではなかったが、
たとえば羽二重=HUBTAEが平面の台に置かれているとする。
きれいに伸ばされた状態で置かれている。
それをじっと見ていても、質感はある程度は伝わってくる。
この状態では、視覚的に羽二重=HUBTAEの上に指はない。
ふれようとして指を近づける。視界に自分の人差し指が入ってくる、
指の侵入なのかもしれない。そしてふれる。
指でふれる、ということは、そういうことだと思うようになってきた。