Archive for category 新製品

Date: 5月 21st, 2022
Cate: 新製品

新製品(Western Electric 777)

300Bの復刻が順調にいっているからなのか、
ウェスターン・エレクトリックから今年になんて新製品が二機種登場している。

一つは300Bのシングル動作のプリメインアンプ、91Eである。
どういうアンプなのか、その技術内容を読むと、聴いてみたくなる。
けれど写真を見てしまうと、
ここにもパチモンの波が押し寄せているのか──、と言いたくなる。

そして今回、スピーカーに関する新製品が登場している。
777というモデルである。

150Hzから2kHzまで受け持つミッドレンジ・ドライバーである。
写真をみると、昔ながらのコンプレッションドライバー+ホーン型のようだが、
ドライバーはAMT(ハイルドライバー)である。

ウェスターン・エレクトリックは、今回の777についてrAMTと謳っている。
Radical Air Motion Transformerの略である。

この777ドライバーを搭載したスピーカーシステムの写真もある。
このスピーカーシステムもまた91Eのようなアピアランスで、
この写真だけだったら、あまり関心をもたなかったけれど、777は違う。

777は100dB/W/mと能率が高いだけでなく、
受持帯域の下限(150Hz)と上限(2kHz)の積は30万になる。
40万の法則にぴったりとあてはまる、とまではいえないけれど、
ほぼほぼ40万の法則ともいえる。

777の単売はあるのだろうか。

Date: 2月 16th, 2022
Cate: 新製品

新製品(Chord Mojo 2・その3)

Mojo 2の日本での発売は、2月25日からで、価格は79,800円である。

Mojo 2は、私が見た海外のサイトでは599ユーロとなっていた。
なので日本での販売価格は、良心的といえる。

売れるんだろうな、と思っていたら、
18日から先行予約が始まる、とのこと。

先行予約をやるということは、輸入元も売れると踏んでいるのだろう。
25日には、レヴュー記事を公開する個人サイトもいくつか出てくるだろう。

MojoとMojo 2との比較もあちこちで語られるはず。

Date: 2月 7th, 2022
Cate: 新製品

Meridian 210 Streamer(その1)

2019年8月に、メリディアンから210 Streamerが発表になった。
218と同じ筐体で、USB入力をもつ210は218の良き相棒といえる存在である。

早く聴けるのを楽しみにしていた。
けれど210の発表からそう経たないうちに、
メリディアンの輸入元がオンキヨーにかわるというニュースが続いた。

オンキヨーがしっかりとメリディアンの輸入元としてやっていってくれれば、
何も問題はなかったのに、現実はまるで何もやってこなかった。

2020年、2021年と丸二年、オンキヨーはメリディアンの輸入元として、
何をやってきたのか。
おそらく210は輸入されていない。

2019年夏の発表当時ははっきりと確認できなかったのだが、
210はMQAのコアデコード機能を備えている。

96kHzまではコアデコードして送り出す。
つまりMQA非対応のD/Aコンバーターであっても、210の導入によって、
96kHzまではハードウェアによるコアデコードされた音を聴くことが可能(のはずだ)。

オンキヨーがメリディアンの輸入元としてしっかり仕事をしていれば、
いまごろは210によってMQA再生が日本でも拡がっていたはずだ。

ほんとうに二年間、210は輸入されなかった──。
けれど、今年は過去形として語れそうである。

Date: 2月 6th, 2022
Cate: 新製品

新製品(Chord Mojo 2・その2)

Mojo 2がいつから日本で発売になるのかは知らないけれど、
発売と同時に購入して、その製品評価を公開する人はすぐに、
何人もあらわれることだろう。

Mojoに関しても、けっこうな数のブログやウェブサイトで、
あれこれ製品評価している人がいる。

かなり詳細なことまで、みっちりと書いている人もいる。
それらすべてを読んでいるわけではないが、
私が知りたいと思っていることを書いている人は見つけられなかった。

Mojoにはヘッドフォン出力端子が二つある。
Mojo 2もこの点は同じである。

二つの端子は数センチほど離れている。
どちらの端子にヘッドフォン(イヤフォン)を接続するのか。

二つの端子の音の差が微々たるものであれば、どちらでもいいのだが、
実際に挿し替えて聴いてみると、無視できないくらいの差がある。

どちらの端子が音がいいのかは書かない。
Mojoを持っている人ならば聴いてみれば、すぐにわかることなのだから。

それなのに私が見た範囲で、このことに触れている人はいなかった。
それどころか写真を公開している人のなかには、
片方の端子に決めての試聴ではなく、
どっちの端子でも同じだろう的な試聴のしかたをしている人もいた。

そういう聴き方で、どれだけ厳密な試聴ができるのか。
ことこまかなことをどれだけ書いていようと、数枚の写真が別のことを語っている。

Mojo 2が出て、そのことについて触れる人はあらわれるのだろうか。

Date: 2月 2nd, 2022
Cate: 新製品

新製品(Chord Mojo 2・その1)

ようやくChordのMojo 2が発表になった。

Mojoの登場は2015年だった。
2020年には新型(Mojo 2)が出るのでは、と予想していたけれど、
ようやく今年になっての登場。

詳細はリンク先を読んでいただきたいが、
買い替える人はけっこういるのではないか、と思える変更がなされている。

私にとっては、Mojo 2になってもMQA対応していないので、
いま使っているMojoでしばらくは満足できる。

Polyも、しばらくしたらPoly 2になるのか。
Poly 2でMQA対応となるのか。
それともしないのか。

Chord独自のD/A変換方式で、MQAの音がどうなるのか。
その音が聴ける日は、いつになるのだろうか。

Date: 1月 18th, 2022
Cate: 新製品

新製品(その22)

パチモン的新製品を否定することばかり書いている。
けれど、それらパチモン的新製品の音は、どれも聴いていない。

音が、とても良かった、としよう。
ならば、パチモン的新製品を欲しい、と思うだろうか。

思う人もいるし、思わない人もいる。
どのくらいの割合になるのかは、まったくわからないが、
パチモン的新製品で、どんなスピーカーを鳴らすのだろうか、と考えてみた。

さきほど「4350の組合せ(その13)」を書いて公開したのは、
パチモン的新製品で、たとえば4350を鳴らす人はいるだろうか、
と想像してみたからでもある。

私の感覚では、絶対に鳴らさない。
どんなにいい音がえられようと、パチモン的新製品で4350を鳴らしたいとは思わないし、
考えもしない。

パチモン的新製品で鳴らすのもいいや──、
そんなふうに思うのは、パチモン的新製品のスピーカーである。

パチモン的新製品のスピーカーシステムを、
パチモン的新製品のアンプで鳴らす。
CDプレーヤーも、ついでにパチモン的新製品である。

こうなってしまう怖れが、いまのところないとはいえない。
可能性として、十分ある、と思っている。

Date: 1月 15th, 2022
Cate: 新製品

新製品(その21)

メーカー(ブランド)の論理とオーディオマニアの論理は同じではないわけだが、
そもそも、この二つの論理は違うものなのか、
両者のあいだに溝があるのか、もしくはズレているだけなのか。

ケース・バイ・ケースなのだろう。
とにかく同じであることは稀なのだろう、というか、
同じであることはないのだろう。

それはそれでいい、と思っている。
この両者の論理のあいだを埋めていく、
もしくは橋をかけていくのが、オーディオ評論家の仕事のはずだ。

それができてこそオーディオ評論家(職能家)だと思っている。

マークレビンソンのML50、マッキントッシュのいくつかのモデル。
これらに共通するパチモン的新製品について考えていると、
こんなことを思うとともに、これらのパチモン的新製品が登場してくるのは、
上書きしかできない人が増えて来つつあるのかもしれない、
上書きしかできない人が開発に携わっているからかも、とも思えてくる。

別項「2021年をふりかえって(その19)」で、
ゲスな人に共通しているのは、上書きしかできないことなのだろう、と書いている。

そうなのかどうかはいまのところなんともいえないが、
ふとそんな気がした。

同時に上書きだけしかできない人が作る新製品も、
上書きだけの製品にしかすぎず、それは新製品とは呼べない何かともいいたくなる。

Date: 1月 13th, 2022
Cate: 新製品

新製品(その20)

私には、マークレビンソンやマッキントッシュが、
自社製品のパチモン的新製品を出す理由が理解できない、というか、納得できない。

マッキントッシュは立て続けにパチモン的新製品を出してくる。
ということは、売れるからなのだろう。

売れるモノを作らなければならない──、
そのことはわかっている。

どんなにいいモノを作っても、売れなければ、それで終りである。
事業を継続するためにも売れるモノが必要となる。

それがパチモン的新製品だとしたら──。

これからもマッキントッシュからはパチモン的新製品が出てくる、と思っている。
マークレビンソンからも、ML50がすぐに完売でもしたら、
同じように続けて出してくる可能性もある。

ブランド(メーカー)の論理とオーディオマニアの論理は同じではない。
そのことはわかっていたつもりだった。

けれど、パチモン的新製品が続いていること、
拡がっていく気配があること、
そんな空気を感じとっているいまは、
それぞれの論理の違いをわかっていなかったと思い知らされている。

Date: 1月 12th, 2022
Cate: 新製品

新製品(その19)

マークレビンソンもマッキントッシュも、創業者の名前がつけられたブランドである。
この二社だけでなく、他にも創業者の名前がそのままブランドになった会社はいくつもある。

創業者はいつかは、そのブランドからいなくなる。
会社から去っていくこともあるし、この世から去っていくこともある。

創業者がいなくなれば、そのブランドも変っていく。
そういうものであり、その変化は嘆くことではない。

そうとわかっていても、今回のマークレビンソンのML50、
マッキントッシュのいくつかの製品を見ると、そういうこととは何か違うような気がしてならない。

創業者が去ったことだけによる変化なのだろうか──、と思ってしまう。
投資会社に買収されたことによる変化だけなのだろうか、とも思う。

陳腐なことをいうんだな、と笑われそうだが、
愛の不在だ、としか、いいようがない。

ルコントを再建したベイクウェルには、愛があった。
だからこそ、といえる。

いまマッキントッシュ、マークレビンソンに残っている人たちに、
同じ意味での愛はあるのだろうか。

愛ゆえのパチモン的新製品だとしたら、もうほんとうに終りでしかない。

同時に、ルコントは洋菓子のブランドである。
洋菓子は嗜好品である。

ではオーディオは?
そのあたりのことも考えているわけだが、
ここから先は、ここでのテーマとは大きく離れてきそうなので、割愛する。

Date: 1月 11th, 2022
Cate: 新製品

新製品(その18)

マークレビンソンのML50が、つい最近発表になったばかりだから、
ついML50だけを取り上げてしまったけれど、
ML50だけではない、自らのブランドのパチモンを出してくるのは。

ここ数年のマッキントッシュの一部のモデルは、
マッキントッシュのパチモンとしか思えないかっこうをしている。

「マークレビンソンがマークレビンソンでなくなるとき」よりも早く、
「マッキントッシュがマッキントッシュでなくなるとき」がおとずれていた。

ただ、こちらも、現行のラインナップのすべてがパチモン的なわけではない。
マッキントッシュらしいアンプもある。
けれど、パチモン的新製品が、あまりにもパチモン的すぎる。

今回のマークレビンソンのML50が、いまのところ、これ一機種だけである。
ML50があっさり限定台数が売り切れてしまったりしたら、
この路線が今後続いていくことだって考えられる。

でも、いまのところML50だけである。

マッキントッシュは、もうそうではなくなっている。
一つ一つ機種名をあげたりは、もうしない。
別項で、これまで書いてきているからだ。

こういうパチモン的新製品を見るのは、つらい。
特に、昔憧れていたブランドの製品だと、よけいにそうである。

オーディオ・ブランドも、いまや投資対象であり、
一つのブランドがある会社が買収し、また別の会社に買収され──、
そんなことがけっこう続いている。

買収されることが、すべて悪とは考えていないけれど、
時にはそう口走りたくなることがある。

別項「オーディオと偏愛(その4)」で、ルコントのことを書いている。
だからよけいにML50の写真を見ていると、愚痴ってしまいたくなる。

Date: 1月 9th, 2022
Cate: 新製品

新製品(その17)

別項で「オーディオがオーディオでなくなるとき」を書いている。
そこで、「ステレオサウンドがステレオサウンドでなくなるとき」についても、
考えて書いていきたい、としている。

今回マークレビンソンのML50の写真を見て、まず思ったのは、
「マークレビンソンがマークレビンソンでなくなるとき」が、
いよいよ来たな、だった。

個人的には、マーク・レヴィンソンが離れた時点で、
「マークレビンソンがマークレビンソンでなくなるとき」だったわけだが、
それでもNo.20は、新体制の意気込みを感じさせるに足る製品で、
あえて、そんなことを言葉として発することはしなかった。

mark levinsonのロゴも少し変更になってから、
ずいぶん変ってしまったなぁ……、とは感じていた。

でも今回のML50を見ていると、
「マークレビンソンがマークレビンソンでなくなるとき」が来たな、と感じたのは、
マークレビンソンがマークレビンソンのパチモンを作ってどうするんだ!──、
そういう想いが根底にあるからだ。

しかも創立五十周年記念モデルである。
どういう発想から、こんな製品を出すことになったのだろうか。
ここが、ほんとうに知りたい。

私がオーディオに興味をもった1976年において、
マークレビンソンのLNP2とJC2は、すでに高い知名度と評価を得ていた。

その約一年後にML2が登場した。
ほんとうにわくわくして、その登場を待っていたし、
実際のML2の音を聴いた時は、衝撃でもあったから、
LNP2の登場に、当時、衝撃を受けた人たちの気持はわからないわけではない。

そのマークレビンソンが五十年を迎える。
その記念モデルがML50とは、なんとも寂しい、という気持以上に、
落ちぶれてしまった感が強い。

しかも現行のラインナップもそうであるならば仕方ない、とあきらめるしかないのだが、
そうではないのだから、よけいに理解に苦しむ。

Date: 1月 8th, 2022
Cate: 新製品

新製品(その16)

コロナ禍のためCESがオンラインで開催されていて、
そこでの新製品の発表のニュースが、いくつか続いている。

別項で触れたJBLの4305Pがそうだし、
JBLと同じハーマン・グループのマークレビンソンからは、
初のヘッドフォンが登場し、さらにマークレビンソン創立五十年を記念しての、
ML50も発表になっている。

Mark Levinsonの頭文字MLを型番につけていたのが、
マーク・レヴィンソンが会社を離れ、新体制になったことで、
型番の頭にはNo.とつけられるようになり、最初の製品がNo.20だった。

ML2の出力を25Wから100Wに増したNo.20は、やはりA動作のパワーアンプだった。
ML50もモノーラル・パワーアンプである。

型番はML2風、フロントパネルのラックハンドルはNo.20風、
フロントパネルの意匠は、いまのマークレビンソンのアンプ風である。

これがなんともちぐはぐな印象でしかない。
音はどうなのかはわからない。
マークレビンソンのパワーアンプなのだから、それなりのクォリティであることは確かだろう。

それはいいのだが、このML50(限定モデルでもある)を欲しがる人は、
いったいどういう人なのだろうか。

限定というキャッチフレーズ、
創立五十周年記念というキャッチフレーズ、
そういったことに心がグラッとくる人向けなのだろうか。

その15)で、
新製品の登場は、新性能の登場である。
たまには旧性能の登場といえるモノもないわけではないが、
基本的には、新製品は新性能の登場である、と書いている。

ML50のベースモデルは、No.536とのこと。
当然、そのままというわけではなく、細部のブラッシュアップが図られていることだろうし、
音もNo.536そのままというわけではないはずだ。

その意味では、No.536の音を高く評価している人にとっては、
安心して購入できるアンプということになる。

ハズレ、ということはないアンプである。
けれど、そのことは、わくわくしない、ということにもつながっていく。

Date: 1月 5th, 2022
Cate: 新製品

新製品(JBL 4305P)

別項「2021年をふりかえって(その15)」で書いてるように、
JBLの4309は、聴いてみたいスピーカーの一つである。

その4309をアクティヴモニターとして仕上げた4305Pが発表になっている。

価格は2,200ドルだから、4309と比較してもそれほど高いわけではない。
アンプは当然マルチアンプ仕様で、いまどきのアクティヴ型だけにD/Aコンバーターを搭載している。

ここで嬉しいのが、MQA対応であること。
楽しい製品なような気がする。

Date: 11月 17th, 2021
Cate: 新製品

新製品(マッキントッシュ MC3500・その6)

マッキントッシュからMC3500が新たに登場するということを知って、
まず確認したのはMC2301が製造中止になったのかどうか、である。

2008年に登場したMC2301のスペックはMC3500に、かなり近い。
どちらも管球式モノーラルパワーアンプで、
MC2301が出力が300Wに対して、MC3500は350Wである。

アピアランスはずいぶん違うが、価格的にも近いところになるであろう。
そうなると発表されて十年以上経っているMC2301は製造中止になってもおかしくない。

いまのところMC2301は現行製品扱いである。
別項で書いているように、MC2301は、いまでも聴いてみたいアンプである。
マッキントッシュのパワーアンプのなかで、MC2301にいちばん興味がある。

その理由も別項で書いているので、ここではさらっと触れておくが、
管球式であってもソリッドステートであっても、
これまでのマッキントッシュのアンプにはなかったコンストラクションを採用しているからだ。

重量バランスがとれているコンストラクションである。
だからこそ、いまでも聴いてみたいし、
できればマッキントッシュの他のアンプとの比較試聴もやってみたい。

けれどインターナショナルオーディオショウで実物を見たことはあるが、
音を聴くことはできなかった。

MC2301とMC3500、
その違いをオーディオ雑誌に期待しても、まぁ無理であろう。

Date: 11月 17th, 2021
Cate: 新製品

新製品(マッキントッシュ MC3500・その5)

ステレオサウンド 52号特集の巻頭「最新セパレートアンプの魅力をたずねて」で、
瀬川先生がこう書かれている。
     *
 ずっと以前の本誌、たしか9号あたりであったか、読者の質問にこたえて、マッキントッシュとQUADについて、一方を百万語を費やして語り尽くそうという大河小説の手法に、他方をあるギリギリの枠の中で表現する短詩に例えて説明したことがあった。
 けれどこんにちのマッキントッシュは、決して大河小説のアンプではなくなっている。その点ではいまならむしろ、マーク・レビンソンであり、GASのゴジラであろう。そうした物量投入型のアンプにくらべると、マッキントッシュC29+MC2205は、これほどの機能と出力を持ったアンプとしては、なんとコンパクトに、凝縮したまとまりをみせていることだろう。決してマッキントッシュ自体が変ったのではなく、周囲の状況のほうがむしろ変化したのには違いないにしても、C29+MC2205は、その音もデザインも寸法その他も含めて、むしろQUADの作る簡潔、かつ完結した世界に近くなっているのではないか。というよりも、QUADをもしもアメリカ人が企画すれば、ちょうどイギリスという国の広さをそのまま、アメリカの広さにスケールを拡大したような形で、マッキントッシュのサイズと機能になってしまうのではないだろうか。そう思わせるほど近ごろ大がかりな大きなアンプに馴らされはじめた目に、新しいマッキントッシュは、近ごろのアメリカのしゃれたコンパクトカーのように小じんまりと映ってみえる。
     *
《決してマッキントッシュ自体が変ったのではなく、周囲の状況のほうがむしろ変化したのには違いないにしても》
とある。
「五味オーディオ教室」から始まった私のオーディオだけに、
この点は、確かにそうだな、と思いながら読んでいた。

といっても、この時点で、マッキントッシュのアンプの音を聴いていたわけではない。
五味先生、瀬川先生の書かれたものを信じて、思っていたわけだ。

その1)で引用した五味先生の文章。
そこには、《MC二七五は、必要な一つ二つは輪郭を鮮明に描くが、簇生する花は、簇生の美しさを出すためにぼかしてある》
とある。

これこそまさに大河小説のアンプではなく、短詩で表現するアンプである。
そのMC275に対してMC3500は、大河小説的なアンプであったわけで、
MC3500だけが、当時のマッキントッシュのアンプのなかで特別だった、ともいえる。

そこからさらに四十年ほどが経っているわけで、
昔のMC3500も、52号で瀬川先生が書かれたように感じてしまうのだろうか。

そして新しいMC3500は、どう感じるのか。