Archive for category James Bongiorno

Date: 10月 12th, 2015
Cate: James Bongiorno

Ampzilla(その人気)

「世代とオーディオ(その14)」を書き終って、ステレオサウンド 59号をぱらぱらとめくっていた。
特集はベストバイ。
このころのベストバイはオーディオ評論家だけでなく、
読者が選ぶベストバイ・コンポーネントの集計結果が載っている。

それだけでなく投票した読者の現用機器の集計結果も掲載されている。
これを丹念にみていくと実に興味深い。

59号の発売、つまり1981年におけるパワーアンプ使用台数の一位は、QUADの405の102台、
二位がアキュフェーズのP300Xの92台、三位はパイオニア Exclusive M4(a)の85台、
四位はデンオンのPOA3000の84台、五位にAmpzillaが来ている。

Ampzillaの使用台数はAmpzilla II、Ampzilla IIAも含めて51台である。
ちなみにサンプル数は3003。Ampzillaの総数率は2.8%で、
1978年度は十六位、1979年度は八位と確実に順位をあげている。

Ampzillaより上位に来ているパワーアンプは、どれもAmpzillaと同価格帯のモデルではない。
405はAMpzillaの約1/4、アキュフェーズ、デンオン、パイオニアにしても1/2から1/3の価格であること考えると、
このころのAmpzillaの人気と実力の高さが読み取れよう。

ブランド別/現用装置対照表もある。
GASはパワーアンプ部門で53台の十一位。
Ampzillaが51台だから、あとの2台はSon of AmpzillaかGrandsonであろう。
Godzillaということは考えにくい。

Ampzillaとペアとなるコントロールアンプをみると、Thaedraは16台の二十五位。
ということはGASの純正ペアで使われるAmpzillaは1/3以下となる。
この結果は、ちょっぴり残念に思う。

Date: 10月 6th, 2015
Cate: James Bongiorno

ボンジョルノとレヴィンソン(その9)

鮮度とは、新鮮さの度合と辞書にはある。
ということは音の鮮度とは、音の新鮮さの度合であり、
鮮度の高い音とは新鮮さの度合の高い音ということになる。

ここでの新鮮とは、どういう意味になるのか。
いままで聴いたことのない、新しい魅力をもつ音としての新鮮さもあれば、
肉や魚や果物などに使う場合の新鮮さとがある。

特にことわりがなければ、音の鮮度がいい、とか、鮮度の高い音という場合には、
後者の意味合いで使われる。

つまり、この意味合いで使われるのは、実演奏での音(コンサートホールでの音)ではなく、
スピーカーやヘッドフォンから鳴ってくる音に対して使われる。
再生音にのみ使われる。

肉や魚、果物などの鮮度がいいという場合には、
それらの肉や魚はすでに死んでいるからこそ、鮮度がいいとか悪いとかいう。
果物にしても、すでにそれらがなている木から捥ぎ取られているからこそ、
鮮度が高いとか悪いとかを気にするわけだ。

再生音も、いわば捥ぎ取られた音といえるし、
すでに死んでいるともいえる。
こんなことを特に意識していなくとも、オーディオに夢中になっていれば、
そのことは無意識のうちにわかっているのであろう、だから音の鮮度ということが気になる。

だが、ここで音の鮮度とは、もうすこし違う意味合いがあることに、
GASのTHAEDRAをボンジョルノのパワーアンプにつないで聴いた者は気づくのかもしれない。

Date: 10月 1st, 2015
Cate: James Bongiorno

THE GOLDなワケ(THE NINEの場合)

SUMOのTHE POWERには半分の出力のTHE HALFがあった。
THE GOLDにも半分の出力のTHE NINEがある。

THE GOLDの中古を見つけて買ったことを山中先生に話したことがある。
THE NINEもいいアンプだよ、と教えてくださった。

THE NINEはTHE GOLDのハーフモデルだからA級動作である。
電圧増幅部はTHE GOLDがディスクリート構成なのに対し、THE NINEはOPアンプを使っている。
出力段はTHE GOLDとほぼ同じ構成である。

フロントパネルはTHE HALFが黒なのに対し、THE NINEはゴールドである。

こんなことを書いているけれど、THE NINEの実物を見ることはなかった。
山中先生が聴かれているのだから日本に輸入されているはず。
けれどステレオサウンドの新製品紹介のページには載ることはなかった。

そんなTHE NINEであっても、インターネットのオークションをみていると、
ときどき出品されていることがある。
並行輸入かもしれないし、正規品かもしれない。
とにかく、さほど数は多くないにしても日本にTHE NINEはある。

このTHE NINE、なぜNINEなのだろうか。
THE HALFはわかりやすい。半分だからだ。

NINEは9。
なぜ9なのか。あれこれ考えてみた。

THE GOLDの半分で9ということは、つまりはTHE GOLDは18になる。
18Kなのか、THE NINEは9Kということなのか。

これが正しいのかどうかはいまとなってはわからない。
仮に正しかったとしたら、THE GOLDは18Kであって、24Kではないのか、ということになる。
24Kがいわゆる純金なのだから。

ここまで考えてくると妄想はふくらむ。
THE GOLDのスペシャルもデルの構想がボンジョルノの頭の中にあったのかもしれない。
18Kではなく24KとしてのTHE GOLDの構想が。

Date: 9月 23rd, 2015
Cate: James Bongiorno

GASとSUMO、GODZiLLAとTHE POWER(その8)

ジェームズ・ボンジョルノはマランツ時代にModel 15を手がけている。
AMPZiLLAが取り上げられたステレオサウンド 35号では、
ボンジョルノはマランツでModel 500を手がけたとあるが、これは間違いである。
Model 15といっても、若い人ではどんなモノなのかまったく知らないだろう。

Model 15はパワーアンプで、
モノーラルアンプを二台左右にならべてフロントパネルで結合したコンストラクションをもつ。
つまり、いまでいうところのデュアルモノーラルコンストラクションである。

AMPZILLA 2000の登場を知って、ボンジョルノの復活を嬉しく思うとともに、
AMPZILLA 2000のスタイル、二台左右に並べての写真をみて、Model 15のことを思い出していた。
このことは、AMPZILLA 2000について考えていく上で無視できない。

GASのGODZiLLAもまたデュアルモノーラルコンストラクションをとっている。
フロントパネルのすぐ裏に二基の電源トランス(EI型)が配されている。

それはボンジョルノのアイディアだったのかは、
それともただ単にAMPZiLLAをブリッジ接続したともいえる規模からくるコンストラクションだったのか。

どちらなのかははっきりしない。
ただフロントパネルには電源スイッチが左右で独立してふたつあるところをみると、
そうなのかなぁ……、ともおもえる。

このGOFDZiLLAのコンストラクションは、予想のつくコンストラクションともいえる。
それに対して同時期に登場したSUMOのTHE POWERのコンストラクションは、
それまでのボンジョルノが手がけたアンプどれとも似ていない。

ここにボンジョルノの飛躍ともいえるものを感じるし、
ボンジョルノが奇才と呼ばれるのは、なにも奇を衒ったようなデザインとネーミングとロゴではなく、
こういうところにあるのだという具体的なモノとしての存在である。

Date: 9月 22nd, 2015
Cate: James Bongiorno

GASとSUMO、GODZiLLAとTHE POWER(その7)

ステレオパワーアンプを二台、モノーラルパワーアンプならば四台用意してブリッジ接続にする。
この場合の出力は8Ω負荷時の四倍の出力が得られる──、のが理屈である。

50W+50Wのステレオパワーアンプをブリッジ接続すれば、だから200Wのモノーラルパワーアンプとなる。
けれど実際にブリッジ接続してみても理論通りに四倍の出力が得られるモノはごくわずかである。

ほとんどの場合、出力の増加は二倍程度であった。

1977年に登場したマークレビンソンのML2は、8Ω負荷時で25W。
にも関わらず消費電力はA級動作のため400W。
無駄飯喰いのパワーアンプだが、4Ω負荷時では理論通りに50Wになり、
2Ω負荷時には、ここでもまた理論通りに100Wになる。

なのでML2Lをブリッジ接続すれば8Ω負荷時で100W、4Ω負荷時で200Wが得られる。
それだけML2は電源の余裕度が大きかったといえる。

ML2の登場によって、
電源の余裕度を4Ω負荷時の出力、ブリッジ接続時の出力から推し量ろうとするようにもなった。
4Ω負荷時の出力が8Ω負荷時の出力の二倍になっているかどうか、
ブリッジ接続時に四倍になっているかどうかである。

ただしこれを逆手にとって、
4Ω負荷時の出力の半分の値を8Ω負荷時の出力として表示するアンプも登場したようだ。
8Ω負荷時には実際はもっと出力が得られるのだが、正直にその値を発表すると電源の容量が不足している、
そんなふうに受けとめられることを避けるためでもあった。

ML2にしても8Ω負荷時で実のところ50Wの出力が出せていたようでもある。
それが初期のロットからそうだったのか、途中からそうなっていったのかは不明なのだが。

GASのAMPZiLLAは8Ω負荷時の出力は200W+200W、
GODZiLLA ABの出力は350W+350Wと約二倍である。

AMPZiLLAの外形寸法はW44.5×H17.8×D22.9cm(AMPZiLLA IIAのカタログ発表値は若干大きい)、
GODZiLLAはW48.0×H18.0×D49.0cm、
重量はAMPZiLLAが22.7kg、GODZiLLAが45.0kg。

GODZiLLAはAMPziLLAを奥行き方向に二台並べた外形寸法と重量である。
出力もAMPZiLLAをブリッジ接続した値に近い。

このことだけでは断言できないものの、
やはりGODZiLLAはAMPZiLLAのブリッジ接続がベースになっているパワーアンプなのだろう。

Date: 9月 19th, 2015
Cate: James Bongiorno

ボンジョルノとレヴィンソン(その8)

目の前に、スタインウェイのピアノがあったとする。
スタインウェイでなくともよい、ベーゼンドルファーのピアノでもいいし、
ストラディヴァリウスのヴァイオリンでもかまわない。
とにかく目の前に、よい音を奏でてくれるであろう楽器がある。

でも、これだけではその楽器から音は一音たりとも鳴ってこない。
弾き手がいて、はじめて、その素晴らしい楽器から音が鳴ってくる。
素晴らしい楽器になればなるほど、素晴らしい弾き手を求める。

楽器はそれ単体では音を鳴らさない。
弾き手(つまり人間)の肉体運動の結果として、楽器から音が鳴ってきて、
音楽が奏でられる。

それはどんな音楽であってもそうだ。
クラシックであれジャズであれロック・ポップスであれ、
人間の肉体運動によって音は発せられる。

このことを実感できる再生音とそうでない再生音とがある。
ジェームズ・ボンジョルノのアンプとマーク・レヴィンソンのアンプ。
両者のアンプの違いは、こういうところにもはっきりと出てくる。
そして、音の鮮度の高さに関しても、ボンジョルノのアンプとレヴィンソンのアンプとは同じわけではない。

念のため書いておくが、ここでのマーク・レヴィンソンのアンプとは、
ジョン・カールがいた時代、関与したアンプ、つまりJC2(ML1)、LNP2、ML2などのことである。

ステレオサウンド 52号のSUMOのTHE POWERの新製品紹介の記事。
ここでコントロールアンプをLNP2からTHAEDRAにすると、
途端に音の鮮度や躍動感が出てきた、とある。

音の鮮度。
THE POWERが登場した1979年、
GASのTHAEDRAよりも鮮度感の高さ、透明度の高さを誇るコントロールアンプはあった。
ふつうに考えれば、そういったコントロールアンプの方が、より鮮度のある音が得られるように思う。

私はそう思っていた。
THE GOLDを手に入れて、THAEDRAを遅れて手に入れるまでは。

Date: 9月 18th, 2015
Cate: James Bongiorno

THE GOLDなワケ

SUMOからTHE GOLDが登場したとき、
なぜTHE GOLDなワケについて深く考えはしなかった。

AB級のTHE POWERがブラックパネル、
A級のTHE GOLDはゴールド(塗装)パネル。

フロントパネルの色でいえば、THE POWERはTHE BLACKという型番でもいいはず。
だが実際は、THE POWERとTHE GOLDである。

1985年12月、偶然にもTHE GOLDの中古を見つけた。
ちょうどステレオサウンドの冬号が店頭に並んで、ぽっかりヒマな時間ができたというので、
会社を抜け出して秋葉原に行っていた。

なんとなくTHE GOLDがありそうな予感だけがあったからだ。
そして実際に、そこにTHE GOLDがあり、衝動買いだった。

そうやって自分のモノとして、なぜこのアンプはTHE GOLDなのか、と考えた。
THE POWERの半分の出力をもつ弟分にあたるアンプはTHE HALFだった。
わかりやすいネーミングだ。

THE GOLDは純A級アンプなのだから、THE PUREという型番でもいいではないか。
いうまでもなくフロントパネルがゴールドだからTHE GOLDではないはず。
THE GOLDだからフロントパネルをゴールドにしたものと思われる。

そんなことをぼんやりと考えて思いついたのは、
AMPZiLLAがアンプのゴジラなのだから、
THE GOLDはゴジラの強敵といえるキングギドラなのではないか。
キングギドラは金色に輝く。

だからTHE GOLDなのか、と思った。
もちろん、何の根拠も確証もない単なる憶測にすぎない。
けれど、他にこれ! といった理由がいまだに思いつかないでいる。

Date: 9月 18th, 2015
Cate: James Bongiorno

ボンジョルノとレヴィンソン(その7)

神経質とこまやかな神経とは決して同じではない。

こまやかを細やかと書くか濃やかと書くか。
これもけっして同じとはいえない。

マーク・レヴィンソンとジェームズ・ボンジョルノについて書いているが、
ふたりの違いを端的に書けば、神経質か濃やかな神経かということになる。

もちろん神経質なのはマーク・レヴィンソンであり、
濃やかな神経なのはジェームズ・ボンジョルノである。

マーク・レヴィンソンが神経質であることに認める人でも、
ジェームズ・ボンジョルノが濃やかな神経の人であると思う人は多くないかもしれない。

GASやSUMOといったネーミングにしても、
GASのデビュー作であるAMPZiLLAのネーミングとそのデザイン、
どこかふざけているように受けとめてしまう人はいるはずだ。

ボンジョルノが濃やかな人だとは、私はすぐには気づかなかった。
ステレオサウンドに載っているGASの一連のアンプの評価を読んでいるだけでは、
そのことに気づくことはなかった。

結局、ボンジョルノのアンプの音を聴いてみるしかなかった。
だからといって聴けばすぐにわかることもあればそうでないこともある。

GASのアンプにしろSUMOのアンプにしろ、聴いてすぐにわかる良さはある。
けれど、ボンジョルノを濃やかな人と気づくようになるには、
私の場合、しばらくの期間を聴き込むことが必要だった。

つまり自分のモノとしてつきあうことが必要だった。
そうやって気づく良さがあり、
そのことに気づいた上で、もう一度、GAS、SUMOのアンプの評価を読むと、
特に井上先生、山中先生の新製品紹介のページを読みなおすと、また気づくことがある。

Date: 9月 17th, 2015
Cate: James Bongiorno

ボンジョルノとレヴィンソン(と五味康祐氏)

ステレオサウンドの原田勲氏が、五味先生が亡くなられた直後、
藝術新潮に書かれた「五味先生を偲んで」に、こう書いてある。
     *
 シャイな先生は、ご自分の根本のところでの真面目さをひたかくしにされていた。ひたかくしに、かくしたいからこその〝奇行〟にも真面目にはげまれてしまうのであった。
     *
いくつかのことを思っていた。
そのひとつがジェームズ・ボンジョルノのことだった。

ボンジョルノのGAS、SUMOと行った会社のネーミング、
AMPZiLLA、THAEDRA、THE POWER、THE GOLD、その他のアンプのネーミング、
このことが五味先生の〝奇行〟と重なってきた。

根本のところでの真面目さをかくしたいからこそのネーミングなのかもしれない。

ほんとうのところはわからない。
ただ「五味先生を偲ぶ」を呼んで、そう感じたことがある。

Date: 9月 17th, 2015
Cate: James Bongiorno

ボンジョルノとレヴィンソン(その6)

マークレビンソンの最初の、そして代表的なアンプといえば、やはりLNP2となる。
LNP2は、Low Noise Preamplifierの略である。

LNC2は、Low Noise Crossover Networkの略だと思う。
LNC2を知った中学生のころは、Low Noise ChannelDividerだと思っていた。
日本ではマルチアンプシステムを組み場合に必要となるエレクトリッククロスオーバーネットワークを、
チャネルデバイダー(略してチャンデバともいう)と呼ぶことが多い。
けれどアメリカでは、そうは呼んでいない。
だから、おそらくCrossover Networkの方だと思われる。

ヘッドアンプのJC1、薄型のコントロールアンプJC2は、設計者のJohn Curlの頭文字である。

JC2は1977年にML1と型番が変更された。
MLとは、いうまでもなくMark Levinsonの頭文字である。
つまりMLシリーズは、設計者がジョン・カールではなくマーク・レヴィンソンに変ったことを意味している──、
そう日本では当時伝えられていた。

ジョン・カールとマーク・レヴィンソンが仲たがいしたのは、
この件が大きかった、とジョン・カールに以前にインタヴューしたときに聞いている。

そういえはディネッセンから1980年代に登場したコントロールアンプは、
ジョン・カールの設計で型番はJC80だった。

ジョン・カールがJCという型番にこだわるのは、それだけプライドがあってのことだろうが、
それにしても……、と思うところも正直ある。
レヴィンソンに関しては、会社名にも型番にも自分の名前をつけるのは、いかがなものか、と、
いまは思う。

そういまは思う、のだ。
マークレビンソンのアンプを知った中学生のころは、
その会社(ブランド))名、型番もカッコイイと思っていた。
そんな時期があった。

Date: 9月 17th, 2015
Cate: James Bongiorno

ボンジョルノとレヴィンソン(その5)

マーク・レヴィンソンが興した会社はMark Levinson。
自身の名前をつけている。
マークレビンソン以前にも、創立者の名前をブランドにしたメーカーはいくつもある。
マランツ、マッキントッシュ、ボザーク、グラドなどがあり、JBLもそうである。
けれどどのメーカーも、フルネームをメーカー名にしていたわけではない。

JBLはフルネームといえなくもないが、あくまでも頭文字だけである。
マーク・レヴィンソンはメーカー名をLevinsonではなくMark Levinsonにしている。

ジェームズ・ボンジョルノはGAS(ガス)、それにSUMO(スモ)である。
GASは以前書いたようにGreat American Soundであり、
SUMOは相撲である。

ステレオサウンド 52号のインタヴューでも、社名について答えている。
     *
 私は世界中で最も日本が好きだし、その国技である〝相撲レスリング〟が大好きだから、〝SUMO〟というネーミングにしたのです。ある人から「お前が今度作ったパワーアンプを聴いたけれど、〝SUMO〟というブライドにしたのがなんとなくわかるような音だ」といわれました。しかし、私としては日本が好きで、相撲が好きだから、〝SUMO〟としただけで他意はないんです。
     *
こういうセンスはマーク・レヴィンソンからはまったく感じられない。
GAS、SUMOを、人を喰ったようなネーミングだと感じ、
そのことに対して、やっぱりボンジョルノだな、と感心する人もいれば、
不真面目な、と思う人もいる。

ボンジョルノがつくりあげたアンプの音を聴いていれば、
GAS、SUMOに対する感じ方も変ってくる。
少なくとも私はそうだった。

AMPZiLLA、THAEDRA,THE POWER、THE GOLDの音を聴き、
THAEDRAとTHE GOLDは自分のモノとしていた私は、
GAS、SUMOという会社名をボンジョルノらしいと思っているし、
この会社名を含めてのAMPZiLLAであり、THE POWER、THE GOLDである。

つまりAMPZiLLAという型番は、 GASという会社(ブランド)名といわば対だから映える、
THE POWER、THE GOLDもSUMOという会社(ブランド)名と対だから映えるのではないだろうか。

絶対にありえないことだがMark LevinsonのAMPZiLLAだったら、どう感じるか。
そぐわない。
やっぱりGASのAMPZiLLAであるべきだし、
SUMOのTHE POWER、SUMOのTHE GOLDであるべきだ。

Date: 9月 16th, 2015
Cate: James Bongiorno

GASとSUMO、GODZiLLAとTHE POWER(その6)

ステレオサウンド 52号のインタヴューで、ジェームズ・ボンジョルノはこう語っている。
(ききては長島先生)
     *
ボンジョルノ 従来のアンプですと振動板の持っているイナーシャが、信号に確実に比例した動きに逆らおうとする力として働くのです。もちろん逆起電力によってもブレーキがかかるわけですが、その時点で次の入力信号に合わせて振動板を駆動しなければならないという、じつにやっかいな仕事を強いられていたわけです。
〝ザ・パワー〟では、新しく開発した〝フォア・クォドラント差動平衡型ブリッジ回路〟によって、いままでのパワーアンプの問題点を解決したつもりです。
長島 その新しく開発された回路の基本的な考え方というのは、どういうことなのですか。
ボンジョルノ それは平衡型ブリッジの四隅から同時にフィードバックをかけることで、スピーカーの+、−側にアンプから4組の独立したプッシュプル・フィードバックをかけ、スピーカーの振動板を強制的に入力信号に比例するように動作させるというものです。
長島 今おっしゃったフルブリッジ回路によって、従来のパワーアンプとは格段の動的忠実度を達成できたんですね。
ボンジョルノ そうです。これこそ〝コンピューター・サーボ〟と呼ぶにふさわしい、本格駆動方式なのです。
     *
GASからは1978年にTHE BRIDGEが出ている。
どんな製品だったっけ……、と思われる人もいるだろう。
THE BRIDGEは、いわゆるブリッジアダプターで、トランスを使っているため電源は必要としない。
SUMOからもブリッジアダプターは出ている。
THE MOATという。こちらはゲイン0dBのユニティアンプを使っている。

THE BRIDGEを出したころは、ボンジョルノはまだGASにいたのどうか微妙になってくる。
つまりこのころから(もしくはそれ以前から)、パワーアンプのブリッジ化を考え、
AMPZiLLAを二台用意してのブリッジ接続による実験で、なんらかの手応えを得ていたのではないだろうか。

そのためのTHE BRIDGEであるわけだが、THE MOATとは内部が違いすぎる。
けれどTHE BRIDGEには、定冠詞のTheがついている。
GASの製品の型番にTheがついてるのは、THE BRIDGEだけである。

ということはTHE BRIDGEまでがボンジョルノが手がけたのだろうか。

Date: 9月 16th, 2015
Cate: James Bongiorno

Ampzilla(附録)

ジェームズ・ボンジョルノがGAS創立からSUMO創立までに手がけたアンプが、
ステレオサウンドの新製品紹介ページに登場した号をまとめておく。
(確固内はステレオサウンドの発売月)

36号(1975年9月) AMPZiLLA
37号(1975年12月) THAEDRA
38号(1976年3月) SON OF AMPZiLLA
41号(1976年12月)THOBE, GOLIATH
42号(1977年3月) AMPZiLLA II
45号(1977年12月)THALIA, GRANDSON
46号(1978年3月) THAEDRA II
47号(1978年6月) THE BRIDGE
48号(1978年9月) AMPZiLLA IIA
51号(1979年6月) GODZiLLA
52号(1979年9月) SUMO:THE POWER
54号(1980年3月) THAEDRA IIB, GAS500 AMPZILLA
55号(1980年6月) SUMO:THE GOLD, THE HALF

50号には井上肇氏による’79米国CEショー見聞記があり、
463ページにGASのGODZiLLAとSUMOのTHE POWER(プロトタイプ)の写真が隣同士で掲載されている。

36号ではSAEのMark2500も取り上げられている。
AMPZiLLAの回路図とMark 2500の回路図を比較するとはっきりすることだが、
ボンジョルノの設計がそこから読みとれる。

Mark 2500はボンジョルノが設計したわけではないが、
基本的な回路構成はボンジョルノのものといえるところがある。

そのことが関係してのことだと私は受けとっているのだが、
37号でのTHAEDRAの記事では、
試しにMark 2500を組み合わせてみたら、ひじょうにいい結果が得られた、とある。

Date: 9月 15th, 2015
Cate: James Bongiorno

GASとSUMO、GODZiLLAとTHE POWER(その5)

GASのGODZiLLAに続いて登場したSUMOのTHE POWER、さらに少し後に登場したTHE GOLD。
GODZiLLAにA級とAB級があるように、SUMOのAB級がTHE POWERでありA級がTHE GOLDである。

これら四機種は入力にアンバランスとバランス両方をもつ。
GODZiLLAが登場した1979年当時の情報でははっきりとわからなかったけれど、
その後の情報でGODZiLLAもSUMOのアンプと同じように、
フルブリッジ回路(バランス回路)であることがはっきりとした。

つまりパワーアンプ本体はバランス回路で、バランス入力で、
アンバランス入力に対応するためにアンバランス/バランス変換回路が前段に設けられているのは、
GODZiLLAもSUMOのアンプも同じである。

そして出力。
GODZiLLA Aは90W+90W、GODZiLLA ABは350W+350W、
THE GOLDは125W+125W、THE POWERは400W+400Wと近い。
GODZiLLAもSUMOも空冷ファンを使っている。

つまりGASのGODZiLLAとSUMOのTHE GOLDとTHE POWERは、仕様がほほ同じといえる。
これは単なる偶然とは思えない。
ジェームズ・ボンジョルノがSUMOを創立する直前までいた会社からも、
同じ仕様、コンセプトのパワーアンプが二機種登場するということは、
GODZiLLAの開発コンセプトはボンジョルノがGASにいたときからあったものと推測してもいいのではないだろうか。

Ampzillaの上級機というよりも最終形態として、ボンジョルノが構想したものがGODZiLLAだとすれば納得がいく。

Date: 9月 14th, 2015
Cate: James Bongiorno

GASとSUMO、GODZiLLAとTHE POWER(その4)

ステレオサウンド 51号の新製品紹介のページにGASのGODZiLLA、
52号の同ページにSUMOのTHE POWERが取り上げられている。

このころのステレオサウンドの新製品紹介のページは、井上先生と山中先生の対談によるものだった。
51号と52号のあいだは三ヵ月。
52号のTHE POWERの記事を読んでの既視感に、
やはり同じ血筋の、同じ遺伝子をもつパワーアンプなんだ、と思っていた。

51号、GODZiLLAのところには、こう書いてある。
     *
井上 マーク・レビンソンが硬めのエネルギー感とすれば、ゴジラは柔らかめのエネルギー感ですね。前者が激流としたら、ゴジラは海のように広い大河だと思う。
山中 最初はマーク・レビンソンのLNP2Lと組合せて聴いたのですが、これをテァドラに変えた時に、大河のようにとうとうたるパワー感がよく出ました。
 クラスAとクラスABを比べると、クラスAの方が音がよく磨きあげられているという感じですね。
井上 マーク・レビンソンを金属、あるいは硬質ガラスを磨き上げたような、硬さをもったつややかさとすると、ゴジラAは黒檀とか樫のような堅い木を磨きあげたような印象です。クラスAとクラスABの最大の違いは、クラスAの方が中域のエネルギー感がより強烈に出てくることですね国産のAクラスアンプとは違った力強さを十分にもっています。
     *
51号のGODZiLLAの記事は1ページだった、
52号のTHE POWERは2ページ使って取り上げられている。
これだけで注目度に違いがあることがわかる。

読めばわかるのだが、実際に評価は高い。
     *
井上 JBLの4343が、ころころと鳴らされてしまいますからね。ワイドレンジだし、特に中低域の迫力はすごい。一方、スピーカーが勝手に鳴らないように、うまくコントロールしている部分もあって、こういう性格のアンプですと一言でいいにくい面をもった製品です。大まかにいえば、マッキントッシュ的なサウンドバランスといえるかもしれません。
山中 しかし、実は全然違うのですね。
井上 そうなのです。音に対する反応は、もっと速いし。そういう意味で、非常に魅力を感じました。
山中 ちょっと聴きには当りが柔らかそうに感じるのですが、トータルなエネルギーはすごいですからね。エネルギー感のよく出る最近のアンプとしては、マーク・レビンソンのML2Lがあるのですが、この場合にはもっととぎすまされたエネルギー感でしょう。ザ・パワーの場合には、マスのある、たっぷりしたエネルギーが猛烈なスピードでぶつかってくるという感じ。ですから、ものによっては、本当に弾き飛ばされそうな印象があります。
井上 ごく初期のアンプジラにあったキャラクターがより凝縮され、よりパワフルになったというのが、一番わかりやすい説明ではないでしょうか。
 たとえば、マーク・レビンソンのコントロールアンプと組み合わせた場合は、それほど魅力は発揮されなかったと思うのですが、テァドラで鳴らしたら、途端に音の鮮度や躍動感が出てきたのです。このことからいっても、組み合わせるコントロールアンプをかなり選ぶと思います。
     *
マークレビンソンML2との対比で語られるエネルギー感のすごさ、
マークレビンソンのLNP2のときの音とTHAEDRAと組み合わせた、いわはど純正組合せといえるときの音の対比、
まったく同じことが51号と52号に書いてあるではないか。

このふたつの記事を、自分自身でTHAEDRAを使った経験を持った後で読み返すと、
GASのGODZiLLAも、ボンジョルノの設計だと思えてくる。

最終的な仕上げまでボンジョルノが手がけたかどうかは、おそらく違うであろう。
けれどアンプの核となるところの設計はボンジョルノの手によるものだからこそ、
51号と52号の記事のようになるのだろう。