Archive for category audio wednesday

Date: 2月 25th, 2018
Cate: audio wednesday

30年ぶりの「THE DIALOGUE」(余談)

「THE DIALOGUE」のLPがオーディオ・ラボから発売になったのは、
1978年2月25日である。

ステレオサウンドの試聴で「THE DIALOGUE」が最初に使われたのは、
46号の特集「世界のモニタースピーカー そのサウンドと特質」においてである。

菅野先生が使われている。
ただしLPではなくテープである。
     *
 それから、モニタースピーカーのテストということなので、試聴には2トラック38cm/secのテープがもつエネルギーが、ディスクのもつエネルギーとは相当違い、単純にダイナミックレンジという表現では言いあらわしきれないような差があるためである。ディスクのように、ある程度ダイナミックレンジがコントロールされたものでだけ試聴したのでは、モニタースピーカーのもてる力のすべてを知るには不十分であると考えたからでもある。テープは、やはり私がdbxエンコードして録音したもので、八城一夫と川上修のデュエットと猪俣猛のドラムスを中心としたパーカッションを収録しており、まだ未発売のテープをデコーデッド再生したわけである。そのテープにより、スピーカーの許容入力やタフネスという、あくまで純然たるモニタースピーカーとしてのチェックを行っている。
     *
猪俣猛のドラムスを中心としたパーカッション、
「THE DIALOGUE」のことで間違いない。

この時、ステレオサウンドはの試聴室では、どんな音が鳴り響いたのだろうか。

Date: 2月 22nd, 2018
Cate: audio wednesday

第86回audio wednesdayのお知らせ(チューニングの方向性)

別項「喫茶茶会記のスピーカーのこと(その9)」で書いたように、
今年はトゥイーターを交換してみたい、と考えているし、
それにともない、スピーカーの鳴らし方の方向性を少し(時には大きく)変えようとも考えている。

月一回とはいえ、2016年(九回)、2017年(十一回)鳴らしてきて、
スピーカーケーブルやネットワークなどは、
少し手は加えているけれども、喫茶茶会記で常時鳴らしているモノを使ってきた。

今年は、このあたりも変えていこう、と考えている。
これまでは私自身の音の好みはあえて無視してきた。

目の前にあるスピーカーを鳴らし切ろう、という方向で行ってきた。
もちろん鳴らし切った、とはいえないが、そろそろ方向性を変えて、
私自身の音の好みを反映させていこうか、
別に私の好みでなくとも、常連の誰かの好みでもかまわない。

少なくとも半年くらいは、そういう感じで鳴らしていこうと思う。

3月のaudio wednesdayは、7日。
場所はいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。
19時開始です。

Date: 2月 8th, 2018
Cate: audio wednesday

第86回audio wednesdayのお知らせ

3月のaudio wednesdayは7日です。
テーマは未定ですが、音出しの予定です。

場所はいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。
19時開始です。

Date: 2月 2nd, 2018
Cate: audio wednesday

第85回audio wednesdayのお知らせ(SACDを聴く)

喫茶茶会記にSACDプレーヤーが導入された。
マッキントッシュのMCD350である。

これでプレーヤー、アンプがマッキントッシュで揃った。
マッキントッシュで鳴らすアルテック──、
こんなふうに書いてしまうと、いかにも昔ながらのジャズ喫茶のシステムのようでもある。

確かに喫茶茶会記のアルテックは、ジャズ喫茶全盛時代のころのモノだ。
マッキントッシュは、その時代のモノではないし、
そのころのマッキントッシュの音のイメージと、現在のマッキントッシュの音のイメージは、
ずいぶんと変化してきているところがある。

パネルフェイスからして、ガラスパネル採用は変らずだが、
そのイメージはかなりの変化だ。

それはもう昔のジャズ喫茶のイメージではなくなっている。

MCD350を聴くのは、初めてとなる。
どんな音が鳴ってくるのか、私自身楽しみにしている。

場所はいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。
19時開始です。

Date: 1月 31st, 2018
Cate: audio wednesday

第85回audio wednesdayのお知らせ(SACDを聴く)

1月3日のaudio wednesdayでは、
パイオニアのSACDプレーヤーPD-D9がなかなかいい音を聴かせてくれた。

そのときは何の問題もなく再生できたが、その後、再生が止ることが発生したらしい。
しかも毎回止るわけではなく、ときどきその現象が発生するとのこと。

2月7日のaudio wednesdayでは、だから別のSACDプレーヤーが用意されることになっている。
今年中にはSACDプレーヤーを導入します、と店主の福地さんは昨年から宣言していた。
PD-D9の音、そして不調が導入の時期を早めることになりそうだ。

テーマは「SACDを聴く」でいく。
大丈夫のはずである。

ただ心配なのはスピーカーである。
1月のときにも、左チャンネルのドライバーの音が、うまく鳴っていないことを、
セッティングをやっているときから感じていた。

ある客が、アルテックのドライバーの上に、グッドマンのトゥイーターを落としたようだ。
トゥイーターの端子とハウジングの一部が欠けていたし、
ドライバーの下の角材の一部も固い物がぶつかった跡が残っていた。

もしかするとスピーカーが万全とはいえない状態かもしれない。
そうだっとしても、なんとか鳴らしていくつもりだ。

場所はいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。
19時開始です。

Date: 1月 12th, 2018
Cate: audio wednesday

30年ぶりの「THE DIALOGUE」(その15)

SACDとCDのハイブリッド盤では、
当然のことながら、SACDへのマスタリングとCDへのマスタリングは同じではない。

器(メディア)のカタチ(DSDかPCM)、サイズ(記憶容量)が、SACDとCDでは違うのだから、
その器におさまるもののマスタリングが違うのは、ごく当り前のことである。

とはいえ「THE DIALOGUE」のSACDの音は、そうとうに違う。
まっとうなSACD、それもハイブリッド盤で、CDの音と比較すると、
低音域が1オクターヴとはいわないまでも、半オクターヴほど低いほうにのびる印象がある。

このことは私だけでなく、多くの人が感じられていることだろう。
古くからの友人でオーディオマニアのKさんも、まったく同じことを言っていた。

これまでラックスのD38uでのCDレイヤーの再生では、
もう一息、低音が下のほうまでのびてくれれば……、と思い続けていた。

喫茶茶会記のウーファーはアルテックの416-8C。
JBLのウーファーとは、そこが大きく違うところだな、と感じてもいた。

ここでいうJBLのウーファーとは、
私が「THE DIALOGUE」のアナログディスクを聴いて驚いたJBLのスタジオモニター、
つまり4343と4350Aに搭載されている2231Aのことである。

「THE DIALOGUE」のSACDの音は、その領域が416-8Cからも出てきたのである。

CDでもおそらく出ていたのであろう。
けれど、どこか空振り気味だったのかもしれない。
しっかりと音として伝わってこなかった(聴こえてこなかった)。

それがSACDでは、はっきりと聴きとれる。
この違いは、ほんとうに大きいだけでなく、音楽の本質的なところに関ってくる。

Date: 1月 4th, 2018
Cate: audio wednesday

第85回audio wednesdayのお知らせ(SACDを聴く)

2月のaudio wednesdayは、7日。
テーマは、SACDを聴くことにしようか、と思っている。

パイオニアのPD-D9。
決して最高級機のSACDプレーヤーではないけれど、
SACDの魅力をきちんと伝えてくれるプレーヤーだ、と昨晩のaudio wednesdayで感じた。

聴いていた人みなが、「THE DIALOGUE」のSACDの音に圧倒されていた。

去年のインターナショナルオーディオショウでの、とある輸入元ブース。
そこで取り扱っているモノは、ひじょうに高額なモノが多い。
スタッフの人が、来場者に向って話していた。SACDのことである。

ソニーのプレーヤーがよくないから、SACDは普及しなかった的なことを言っていた。
ソニーのSACDプレーヤーだと、CDとSACDの音の違いがそんなにでないでしょう。
あんなプレーヤーで聴いているからSACDの良さが発揮されない──、
そんなことを悪びれることなく、自慢げに話していた。

そこで取り扱っているモノだと、SACDのすごさを発揮してくれるのだそうだ。
自社で取り扱っているモノを強くアピールしたい気持はわかるが、
なぜソニーの名前を挙げてまで、こき下ろす必要があるのだろうか。

この輸入元は一年か二年前にも、同じことをやっている。
そのときはマッキントッシュの名を挙げて、安物アンプといっていたそうだ。
私のその場にいなかったが、SNSに書き込まれていた。
書いていた人は、マッキントッシュのアンプを使っている人である。

そんな輸入元の人にいわせれば、きっとパイオニアのPD-D9(安物のプレーヤーと言い切るはずだ)、
そんなモノで聴いてもSACDの良さはわからない、となるのだろう。

そんなふうには思っていない私は、2月のaudio wednesdayは、PD-D9でSACDを中心に聴いていく。
スピーカーのセッティングも、それにあわせて変更してみようかとも考えている。

場所はいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。
19時開始です。

Date: 1月 4th, 2018
Cate: audio wednesday, High Resolution

30年ぶりの「THE DIALOGUE」(その14)

昨晩のaudio wednesdayは、「THE DIALOGUE」のSACD再生をやった。
実をいうと昨年12月でも、「THE DIALOGUE」のSACDを鳴らしたといえば、鳴らした。

喫茶茶会記に、ソニーの安価なSACDプレーヤーが置いてあった。
鳴らしてみましょうよ、ということになって、試しに接いでみた。
そのことについて前回なにも触れなかったのは、SACDで鳴った、というレベルでしかなかったからだ。

安価なプレーヤーとはいえ、SACDの良さがまったく感じられなかった、というと、
そんなことはない。

オーディオは正直である。
基本性能が高ければ、それだけのポテンシャルはいちおうは持っている。
ただ物量を投入したモノとそうでないモノとの差も、はっきりと出る。

別項で書いている598のスピーカーシステムも、
きちんと鳴らすことができれば、価格を無視したといえる物量投入がなされているだけに、
そのことが音にもきちんと反映されるところがある。
とはいえ、そうたやすく、そんなふうに鳴ってくれるものではないが。

ソニーの安価なSACDプレーヤーは、
持った瞬間に、このくらいの価格の製品だな、と感じられる造りだった。
多少、そのことを補うような使い方をすれば、いくぶんマシになってくるものの、
こちらもそれほど気合いが入っているわけでもない(入らなかった)。

今回はパイオニアのPD-D9があった。
ほとんど使った感じのしない、新品同様のPD-D9があった。

最初は、以前からのCDプレーヤー、ラックスのD38uで聴いていた。
「THE DIALOGUE」とカンターテ・ドミノはSACDレイヤーをもつ。

PD-D9はもった感じも、ソニーの安価なSACDプレーヤーとは、大きく違う。
リモコンはそうとうに貧弱といえるが、本体はしっかり作ってある──、そんな印象を受ける。

結論を先に書けば、「THE DIALOGUE」のSACDの音は、圧倒的だった。

Date: 12月 27th, 2017
Cate: audio wednesday

30年ぶりの「THE DIALOGUE」(その13)

廃刊どころか出版社そのものもなくなってしまったスイングジャーナルは、
毎年、最優秀録音盤を選んでいた。

国内録音と海外録音とに分けての、優秀録音盤の選定であった。
「THE DIALOGUE」が候補になっていたころのスイングジャーナルを、読んでいない。

「THE DIALOGUE」と同じ年に発売された国内録音のLPが、
他にどんなのがあったのかも知らない私だが、
少なくとも、その年の国内録音の最優秀録音盤は「THE DIALOGUE」のはずだ。

先日、きいた話では「THE DIALOGUE」ではなかった、とのこと。
意外に思った。
教えてくれた人は、その経緯も話してくれた。

スイングジャーナルの選考方法は、候補となったディスクすべてを、
選定者が集まって、いっしょに聴いて、というものである。

その場でも「THE DIALOGUE」の音は、圧倒的だった、そうだ。
そうだろう、と思う。

「THE DIALOGUE」が国内録音の最優秀録音盤に決りかけたときに、
ある人が言ったそうだ。
「確かに音はいいんてすけど、これってジャズですか」と。

こんなことをいった人が誰なのかまで聞いている。
私に、「音はいいけど、音楽的(ジャズ的)にはつまらない……」といった人とは別の人だ。

こんなことをいう人が他にもいるのか、と驚く、というより呆れる。
それにしても、なぜ、そんなふうに「THE DIALOGUE」を聴くのだろうか。

Date: 12月 27th, 2017
Cate: audio wednesday

第84回audio wednesdayのお知らせ(調整の感覚量)

2011年2月から始めた、この会も1月で七年である。

常連の人たちだけのaudio wednesdayといえば、たしかにそうだが、
今年初めて来られた方もいた。
そのうちの一人は、仕事の都合で無理な時以外は顔を出される。

数年前もそうだった。
ふらーっと現れた人が、いまも来てくれている。

水曜日に決めたのは、ノー残業デイは、たいてい水曜日であるからだ。
第一水曜日にやる、と決めた時点で、1月は正月休みのときのことがあるのはわかっていた。
1月1日にやったこともある。

2018年1月のaudio wednesdayは、3日である。
来られる方は、おそらく一人か二人だろう。

だからといって手抜きの音は出したくない。
新年最初のaudio wednesdayだから、いつもより細かな調整をしようか、と思っている。

いままでの音出しでの調整は、
私の感覚量でいえば5cm単位の調整である。

細かなことをやっている、と思われているかもしれないが、
まだまだ細かなことをやっている意識はない。

そろそろ感覚量としての3cm単位、1cm単位の調整へと移っていこうかな、
と考えているところであり、
mm単位の調整、さらにはもっと細かな調整をaudio wednesdayで行うのは、一年後くらいか。

場所はいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。

正月休みなので、いつもは19時開始ですが、18時くらいからやる予定です。

Date: 12月 7th, 2017
Cate: audio wednesday

30年ぶりの「THE DIALOGUE」(その12)

THE DIALOGUE(その1)」で、
ジャズ好きの人から、
「音はいいけど、音楽的(ジャズ的)にはつまらない……」といわれ、
それに反論できなかったことを書いた。

一瞬一瞬の結晶化こそがジャズだ、とすれば、
「THE DIALOGUE」ははっきりとジャズであり、
「THE DIALOGUE」をジャズでなくしているとすれば、
それは聴き手(鳴らし手)の問題である、といまならはっきりといえる。

Date: 12月 7th, 2017
Cate: 1年の終りに……, audio wednesday

2017年をふりかえって(その4)

毎月第一水曜日に四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記で行っているaudio wednesday。
今年は11回の音出しだった。
11月のみ喫茶茶会記が使えなかったので、毎回の音出しといっていいだろう。

昨年が9回だった。
昨晩のaudio wednesdayが、音出し20回目だったわけだ。

2016年1月の、最初の音出しからの20回目。
音はそうとうに変化している。

昨晩、Hさんが持参されたCDを鳴らした。
「満足です」と言って帰られた。
社交辞令でないことはわかっている。

もうひとりのHさんは、最後までおられて「ありがとうございます」と言ってくださった。

少なくとも自己満足の音は出していない、といえる。

Date: 12月 7th, 2017
Cate: audio wednesday

30年ぶりの「THE DIALOGUE」(その11)

岩崎千明氏のこと(ジャズの再生の決め手)」、「岩崎千明氏のこと(続・ジャズの再生の決め手)」、
ジャズ再生の決め手は、一瞬一瞬の結晶化と書いた。

クラシックばかり聴いてきた私が感じたことである。

今年一年のaudio wednesdayでは、「THE DIALOGUE」をよく鳴らした。
とにかく、頻繁にかけた、といえるくらいに、しかもかなりの音量で鳴らした。

昨晩のaudio wednesdayでも、もちろん鳴らした。

自画自賛といわれようが、
昨晩の「THE DIALOGUE」は、一瞬一瞬の結晶化であった。

Date: 12月 7th, 2017
Cate: audio wednesday

第84回audio wednesdayのお知らせ

2018年1月のaudio wednesdayは、3日。

今年1月は4日だった。
来られたのは一人だけだった。

Hさんが持ってこられた「能×現代音楽 Noh×Contemporary Music」を鳴らす回になった。

おそらく来年1月も一人だけ、だろうし、今年1月の回と同じようになりそうである。
なのでテーマは決めずに、一枚のディスクを鳴らし込むことになると思う。

場所はいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。

Date: 11月 30th, 2017
Cate: audio wednesday

第83回audio wednesdayのお知らせ(誰かに聴かせたい、誰かと聴きたいディスク)

二週間ほど前にセルの「エグモント」について書いた。
今回、このCDを持っていく。

とあるジャズ喫茶は、「エグモント」をリファレンスレコードとしている、ときいている。
その意味で、ジャズ喫茶である喫茶茶会記でどんなふうに鳴ってくれるのかという興味はある。

あるけれど、だからといって「エグモント」を、
喫茶茶会記での隠れたリファレンスディスクにするのは、なんともおもしろくない。
つまらぬ意地なのかもしれないが、また別のディスクにしたい。

最新録音から選ぶのも、おもしろくない。
何をもっておもしろいとするのか、おもしろくないとするのか、
それは私の中の勝手な判断でしかなくて、いちいち説明するのはめんどうだ。

候補として考えているのが、ショルティ/シカゴ交響楽団によるマーラーの二番である。
ショルティを理由もなく毛嫌いしていた20代のときに聴いている。
CDで聴いている。

第一楽章冒頭の低弦の鳴り方の凄さ。
実演では聴けそうにない(おそらく聴けないであろう)低弦のこわいまでの鳴り方。

これを録音が生み出した音であって、コンサートホールでは、こんな音は響かない──、
と否定するのは、誰にでもできよう。

そんなことはデッカの録音陣、そしてショルティはわかったうえでの、
この録音であると受け止めるもののはずだ。

ショルティによる二番の最初の録音は、1966年、ロンドン交響楽団によるもの。
このLP(それもオリジナル盤)の、出だしの低弦は、すごかった、と、
岡先生が「マイクログルーヴからデジタルへ」の下巻でふれられているので、引用しておく。
     *
このレコードの開始部の凄まじい低弦の表現力というもは、おそらくどんなコンサートでも聴かれない強烈な効果で聴き手を圧倒する(筆者がこの曲をコンサートで聴いたのは、小沢征爾が日フィルを振った一回しかないが、コンサートでは、ベルリンPOやシカゴSOであろうと、ショルティのレコードのようには鳴らないだろうと思っている)。明らかに低弦にブースト・マイクが置かれており、しかもハイレベルでカッティングされている。このレコードが出た当時のデッカのカッティング・ヘッドはノイマンのSX45であったはずだが、明らかに低域の低次ひずみが存在しており、それがかえって低弦の表現に強烈なダイナミックな効果を添えていたと思う。のちにSX68でリカットされたこの部分は、明らかに低次ひずみが減って音はおとなしくなり、コンサートで聴かれるチェロとコントラバスのユニゾンのフォルテらしい音になっていたけれど、凄まじいまでの迫力は失われていた。
     *
そして14年後の、つまり今回もっていくシカゴ交響楽団との再録については、
こう書かれている。
     *
十四年間の録音系の進歩は、レコードの音質の改善に明らかであるが、ショルティは《復活》の冒頭の低弦を、前回よりもさらに強烈に表現する。低弦に対するマイクは旧録音よりさらに近づけられ、低弦楽器の低次倍音までなまなましくとらえる。
     *
現象としてのマーラーの二番ではなく、
心象としてのマーラーの二番を響かせたい、と考えている。

場所はいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。