30年ぶりの「THE DIALOGUE」(その15)
SACDとCDのハイブリッド盤では、
当然のことながら、SACDへのマスタリングとCDへのマスタリングは同じではない。
器(メディア)のカタチ(DSDかPCM)、サイズ(記憶容量)が、SACDとCDでは違うのだから、
その器におさまるもののマスタリングが違うのは、ごく当り前のことである。
とはいえ「THE DIALOGUE」のSACDの音は、そうとうに違う。
まっとうなSACD、それもハイブリッド盤で、CDの音と比較すると、
低音域が1オクターヴとはいわないまでも、半オクターヴほど低いほうにのびる印象がある。
このことは私だけでなく、多くの人が感じられていることだろう。
古くからの友人でオーディオマニアのKさんも、まったく同じことを言っていた。
これまでラックスのD38uでのCDレイヤーの再生では、
もう一息、低音が下のほうまでのびてくれれば……、と思い続けていた。
喫茶茶会記のウーファーはアルテックの416-8C。
JBLのウーファーとは、そこが大きく違うところだな、と感じてもいた。
ここでいうJBLのウーファーとは、
私が「THE DIALOGUE」のアナログディスクを聴いて驚いたJBLのスタジオモニター、
つまり4343と4350Aに搭載されている2231Aのことである。
「THE DIALOGUE」のSACDの音は、その領域が416-8Cからも出てきたのである。
CDでもおそらく出ていたのであろう。
けれど、どこか空振り気味だったのかもしれない。
しっかりと音として伝わってこなかった(聴こえてこなかった)。
それがSACDでは、はっきりと聴きとれる。
この違いは、ほんとうに大きいだけでなく、音楽の本質的なところに関ってくる。