Archive for category アナログディスク再生

Date: 5月 7th, 2017
Cate: アナログディスク再生

アナログディスクのクリーニング(その1)

別項「瀬川冬樹氏のこと(その5)」で、
瀬川先生の、カートリッジの針先とレコードのクリーニングについて書いた。

私のクリーニングも、基本的には同じである。
液体は、まず使わない。
その危険性については、瀬川先生からだけでなく、
他の方からも聞いているからである。

瀬川先生のカートリッジの針先のクリーニング方法は、
なんて乱暴な……、と思われる人がけっこういるのではないか。
瀬川先生自身は、慣れていない人には勧められない、といわれていた。

長島先生の針先クリーニングも、実は瀬川先生と基本的に同じである。
これも慣れていない人には勧められない。

クリーニングについての考えは、人によってかなり違う。
以前、液体の類は使わない、とあるところで書いたら、
けっこう攻撃的なコメントをもらったことがある。

高価なレコードクリーナーが、昔からいくつも登場しているのは、
クリーニング効果があるからだし、なぜ、それらを否定するのか、ということだった。

何も否定していたわけではなく、
あくまでも個人的に液体の類は使わない。
絶対に使わないのではなく、必要にかられれば使う。
基本的には使わない、ということであっても、理解してもらえなかった。

高価なレコードクリーナーとして、代表的な製品といえるのが、
イギリスのキースモンクスである。
1978年ごろ、MARK2が日本に入ってきた(輸入元は東志)。
価格は395,000円だった。1982年には495,000円になっていた。

MARK2は蒸留水とアルコールの混合液で洗浄、
洗浄液を吸引、その後の乾燥までを自動的に行ってくれる。

MARK2が登場したばかりのころ、究極のレコードクリーナーだ、と思っていた。

Date: 5月 2nd, 2017
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴとカートリッジのコンプライアンス(その2)

昔のラジオ技術を読み返していると、ハッと気づかされることがいくつもある。
1961年7月号「ベテラン8氏にきく現用再生装置」で、
瀬川先生はガラード301のことを、
《目下のところ自家用としてベルト・ドライブの必要を感じないほど》
と書かれている。

これが1965年1月号「ステレオ再生装置の総合設計」の中では、次のように変っている。
     *
 わたくし自身は、モノ時代から長いこと、ガラードのプロフェッショナル・ターンテーブル〝301〟を愛用してきて、とくに不満を感じなかった。ところが、ハイ・コンプライアンス・カートリッジの採用にともなってSMEのライト・シェル・タイプなどに切りかえてみると、急にゴーゴーというウナリが気になりはじめて、ついにもっと優れたターンテーブルに交換する必要をせまられるほど、プレーアの問題は大きくなるいっぽうである。
 結論からいえば、ターンテーブルはベルト(あるいは糸)ドライブ以外は使いものにならない。しかし具体的にはどうするかということになると、やはり問題が多い。
     *
まだこのころはEMTの930stを使われていないし、
ダイレクトドライヴ型も登場していない。

アイドラードライヴ、ベルトドライヴ、ダイレクトドライヴ、
というふうに順をおって体験してきたわけではない世代の者にとっては、
そうか、そうなのか、と思うわけだ。

ダイレクトドライヴ型が登場したころは、
1965年当時よりも、もっとハイコンプライアンス化されている。
MC型カートリッジよりも、MM型、MI型カートリッジがかなり使われていた時代でもある。

カートリッジがますますハイコンプライアンス化(軽針圧化)していく時代に添うように、
ダイレクトドライヴ型は登場した、ともいえる。

Date: 5月 2nd, 2017
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴとカートリッジのコンプライアンス(その1)

私がオーディオに興味を持ち始めた1976年は、
国産のアナログプレーヤーはほぼすべてダイレクトドライヴ型といえた。

海外製品でもアイドラードライヴは、EMTの930stと927Dst、
ガラードの401にマイクロトラックのModel 740、デュアルの1225、BSRくらい、
ベルトドライヴも少なかった。
リンのLP12、トーレンスのTD125、エンパイアの698、EMTの928、
これらの他にデュアル、シネコ、B&Oなどがあった。

ベルトドライヴを出していた海外メーカーも、
翌年、翌々年にはダイレクトドライヴに移行していた。

にも関わらず1970年代が終ろうとしていたあたりから、
ダイレクトドライヴ型プレーヤーの音質への疑問がいわれるようになってきた。
このことは別項「ダイレクトドライヴへの疑問」でも書いている。

ダイレクトドライヴ型があっというまに席捲し、
数年後には疑問がもたれたことには、
カートリッジのコンプライアンスも関係しているように思われる。

MC型カートリッジのブームが1970年代の終りにやってきた。
ステレオサウンド別冊として、
長島先生による「図説・MC型カートリッジの研究」が1978年秋に出ている。

MM型、MI型カートリッジに比べれば、
このころ新しく登場したMC型カートリッジであっても、針圧は重めである。
つまりローコンプライアンスである。

もしMC型カートリッジのブームが訪れなかったなら、
ダイレクトドライヴ型への疑問は生れなかったか、
もしくはもっと後のことになっていたかもしれない。

オーディオ入門・考(ステレオサウンド 202号)

facebookを見ていて、
そうか、ステレオサウンド、出ているんだ、ということに気づいた。

ステレオサウンドの発売日は知っている。
でも、発売日が待ち遠しいということはなくなってから、久しい。
それでも発売日ちかくになれば、今度の号の特集はなんだろう、
表紙はなんだろう、という興味からステレオサウンドのサイトを見ていた。

でも今回はそれすらもしていなかったことが、自分でも少し意外だった。
なので202号は読んでいないが、
特集は「本格ハイレゾ時代の幕開け」、第二特集が「アナログレコード再生のためのセッティング術」。

ここで書くのは第二特集のほうだ。
セッティングに術をつけてしまう感覚には「?」を感じてしまうが、
この第二特集では柳沢功力氏が「レコードプレーヤー・セッティングの基本」を書かれている。

私はまだ読んでいないのだが、facebookでは、この記事が話題になっていたし、
ページ数もけっこう割かれている、とのこと。

柳沢功力氏のことだから、破綻のない内容にはなっているはずだ。
ステレオサウンドの筆者の中には、どうにもアナログディスク再生に関して、
かなりアヤシイ人がいる。
いかにもわかっているふうに書いているつもりであっても、
読めば、その人の基本がなってないことはわかる人にははっきりとわかる。

誰とは書かないが、気づいている人は少なくない。
その人に「レコードプレーヤー・セッティングの基本」を書かせなかったのは、賢明といえる。

「レコードプレーヤー・セッティングの基本」が私が考えている内容であれば、
この記事を、203号が出た頃から、ステレオサウンドのサイトで公開すべきだと思う。

基礎的、基本的な記事はいつでも読めるようにしておくことが、
オーディオのこれからを考えているのであれば、その重要性がわかるはずだ。

何もいますぐ公開すべき、とまではいわない。
三ヵ月先、半年先でもいいから、
無料で「レコードプレーヤー・セッティングの基本」は公開することで、
オーディオ界が得られることは必ずあるはずだからだ。

Date: 2月 11th, 2017
Cate: アナログディスク再生

アナログディスク再生・序夜(その7)

2月1日はかなり寒い日だった。
audio wednesdayを行う喫茶茶会記のLルームは、
イベントが行われない時は使われていないから暖房も入っていない。

セッティングをやっているときに暖房を入れたわけで、
音を出しはじめるころには部屋はある程度暖まっているけれど、
カートリッジの内部まで十分に暖まっているとはいえない。

そのため針圧も、ずっと同じ値で聴いていたわけではない。
鳴らしはじめの針圧、途中で変えた針圧。
しばらく鳴らしていて、カートリッジの内部も十分に暖まったころの針圧は違ってくる。

カートリッジの針圧を、カタログにある値にぴったりと合わせて、
それ以外の針圧で聴くことはしない人がいるけれど、針圧はすぐに変えられるものであり、
己の感覚に合せて、自由に変えていくものである。

そのためには針圧によって音がどう変化するのかを把握しておく必要はある。
あるレコードにはうまく合っていた針圧でも、
音楽の傾向、録音の年代や方法が大きく違うときには針圧を変えたほうがいいこともある。

料理における塩加減のようなものである。
塩は足りなければ足せるけど、多かったら、その料理から取り除くことは無理だが、
針圧は増やすことも減らすことも簡単にできる。

喫茶茶会記のアナログプレーヤーのトーンアームはRMG309だから、
インサイドフォースキャンセラーがついていない。
たいていのトーンアームにはついている。

インサイドフォースキャンセラーも針圧同様、もっと自由に変えてみて音の変化を把握しておく。
基本は針圧と同じ値にすることだが、それが最良の結果になるわけではない。
少し増やしてみたり減らしてみたりする。

それができるのがアナログディスク再生である。

Date: 2月 6th, 2017
Cate: アナログディスク再生

アナログディスク再生・序夜(その6)

その3)でアナログプレーヤーを、
置き場所で左右前後に動かしてみると、音の変化ははっきりとしたものがある、と書いた。

何も特別なラックでなくとも、この音の変化は容易に聴きとれる。

こういう例もあった。
サイドボードの上にアナログプレーヤーが置かれていた。
サイドボードもしっかりとした造りではなく、
アナログプレーヤーの置き台としては望ましいとはいえなかった。
けれど、そこしか置き場所がないのであれば、その範囲で音が良くなるようにするしかない。

アナログプレーヤーの右奥の角をサイドボードの右奥の角と一致するように設置した。
サイドボードには側板があって、強度的にこの部分がしっかりしている。
そこにできるかぎりトーンアームの回転軸をもってくる。
ただこれだけで音の明瞭度は増す。

別のところでは国産の縦型ラックがあった。
システムコンポーネント用といえるラックで、特別にしっかりしたつくりでもなく、
キャスター付きのモノだった。

アナログプレーヤーを、ここでも右奥にずらす。
たったこれだけのことだ。
それまでの位置と右奥にずらしたときの音を聴いて、
オーディオに関心のなかった人が、
「クリフォード・ブラウンのフレーズがはっきりした」といってくれた。

私はトーンアームの回転軸を、
アナログプレーヤーの中心と考えている、と書いている。

これは、上記のことからもそうだといえる。
つまりアナログプレーヤーの中心とは、
完全な静止が理想であっても、現実にはそんなことは無理である。
だからできるかぎり静止状態にしておきたい個所、
他の個所よりも最優先で静止状態にしておきたいところであり、
それはトーンアームの回転軸であり、
その2)で書いているスタビライザーの少し意外な使い方も、
このアナログプレーヤーの中心と関係してくる。

少し意外な使い方に関しては、
ステレオサウンドの古い号にも書いてあるし、このブログの別項でも以前書いているし、
facebookでは写真を公開している。

Date: 2月 5th, 2017
Cate: アナログディスク再生

アナログディスク再生・序夜(その5)

2月1日のaudio wednesdayでは、この部分、
片持ちになっている先端(プレーヤーボードの右奥の角)に下に、ものをかませることにした。

あらかじめ、喫茶茶会記のアナログプレーヤーについて細部を見ておけばよかったのが、
それを怠ったため、当日になって三点支持だったことに気づいた。
最初からわかっていれば、手頃な角材でも用意してくるのだが、そういう用意はない。

喫茶茶会記にも使えそうな角材はなかったので、アルミケースを使うことにした。
高さが数cmほどたりないので、厚手のフェルトを二枚折り重ねて高さを、なんとか合せる。

なのでがっちりとプレーヤーボードの右奥の角を支えているわけではない。
軽く支えている程度ではあるし、アルミケースも共振体になってもいるが、
それでもはっきりとした効果が、音になって聴きとれる。

片持ち部分を片持ちにしないだけでも得られる変化であり、
よりきちんとした支えにすれば、変化はもっとはっきりしたものとなる。

同じことが十年以上前にもあった。
あるオーディオ店で、あるスピーカーが鳴らされていた。
決してうまく鳴っているといえなかった。

オーディオ店は営業時間だったが、平日ということもあってか、
客は私ら以外にはいなかった。
店のスタッフがひとり、私らが四人で、そのうちの一人がスタッフと顔なじみということもあって、
なんのすこしだけセッティングを変えることになった。

どこをいじってもよかったのだが、いちばん気になっていたところ、
エンクロージュア上部にあるトゥイーターの後部が片持ちになっているところを、
柔らかい素材を使って、軽く後部先端を支えた。

あまり強く支えてしまうと、別のテンションをがかかってしまうため、過度にやり過ぎないことである。
この効果は、やはり大きかった。

ちょうどアコースティックギターが鳴っていたのが、
エレキギター的な音に聴こえていた。
たったこれだけのことでアコースティックギターとして鳴ってくれる。

このときかかった時間も数分程度で音の変化は大きく、
多くの人の耳にもはっきりとわかるぼどである。

腕自慢をしているのではない、
片持ちが音に与える影響と、そこを対処することによる音の変化の確実さを知ってほしいだけである。

もちろん製品によっては、そういったことをわかったうえであえて片持ちにしているモノがないわけではない。
いわゆる音づくりのための片持ちがあるのは理解しているが、
そうではない片持ちの方が多いというのが現状だ。

Date: 2月 4th, 2017
Cate: アナログディスク再生

アナログディスク再生・序夜(その4)

アナログプレーヤーの中心は? ときかれて、どこだと答えるか。
アナログプレーヤーの中心をどう定義するかによっても違ってくるが、
ターンテーブルの中心と答える人が多いのではないだろうか。

ターンテーブルプラッターは回転しているわけだから、
そのセンターはまさしく中心といえる。

そういう考えからすれば、
今回使用したガラード401用のプレーヤーボードは、
その中心が三点支持の中、それも中心に近いところに位置している。

手前が二点、後方が一点の三点支持により形成される三角形の右側には、
片持ちの三角形が存在することになる。

しかもこの三角形はトーンアームがロングアームということもあって、
標準長のトーンアームの場合よりも面積は広いものとなる。

世の中に完全剛体の材質があれば片持ちの構造の影響も抑えられるだろうが、
現実にはそんな材質はないし、アナログプレーヤーの周りをさまざまな振動が囲っている。

一枚の板の一辺を固定して振動させれば、もっとも振幅が大きくなるところはどこだろうか。
その部分にトーンアームを取り付けるということはどういうことなのか。

私はアナログプレーヤーの中心は、
ターンテーブルの中心ではなく、トーンアームの回転軸だと捉えている。

今回の片持ちの構造だと、
私が考えるアナログプレーヤーの中心が大きく揺すられることになる。
もちろんその振動は目で捉えられるわけではないが、
振動モードを解析してみるまでもなく、片持ちの先端がどういう状態なのかは容易に想像がつく。

Date: 2月 3rd, 2017
Cate: アナログディスク再生

アナログディスク再生・序夜(その3)

今回使用したアナログプレーヤーは、いわゆる自作プレーヤーということになる。
ガラード401が取り付けられている木製ボードと、台座から構成されていて、
台座は三点支持であるから、ボードとも三点で接している。

ボード手前の両端と後側の一点の三点である。
後側の一点は左側に寄ったところであり、
おそらくこのプレーヤーを自作した人は重量バランスを配慮しての、
こういう三点の配置にされたのだろう。

三点支持のオーディオ機器は多い。
けれど三点支持はガタツキがなく、楽ではあるが、必ずしも音の面で有利とはいえない。

三点支持によって形成される三角形の中に、オーディオ機器が収まっている関係であれば、
三点支持は確かにいい。
けれど実際にはそんな三点支持はほとんどない。

今回のプレーヤーにおける音質上の問題点は、ここにある。
どうしても三点支持にするのであれば、私なら前後を逆にする。
手前側を一点にして、後側両端の三点支持とする。

このプレーヤーキャビネットを製作された人は、
アナログプレーヤーを前後左右に動かして、それぞれの音を確かめられていないのかもしれない。

アナログプレーヤーは置き場所によって音が変ることはよく知られている。
けれど同じ置き場所(ラックや置き台)であっても、
ラックなら棚板の大きさに少し余裕があるから、前に動かしてみたり、左右に動かしてみたりできる。
斜めに動かすこともできる。

動かせる範囲は狭い。
狭いけれど、ここでの音の変化は決して小さくない。
しっかりした置き台であろうと、少しヤワな置き台であっても、
重量級のプレーヤーであろうと、軽量級のプレーヤーであろうと、
はっきりとした変化が聴きとれる。

この経験がある人ならば、少なくとも三点支持で後一点で、
しかもトーンアームの軸があるところを片持ちにすることはしないはずだからだ。

Date: 2月 2nd, 2017
Cate: アナログディスク再生

アナログディスク再生・序夜(その2)

ふたつのスタビライザーを用意して、聴ける音は三つ、と考えがちだ。
スタビライザーを使わない音、
トーレンスのスタビライザーにした音、山本音響のスタビライザーにした音。

けれどスタビライザーがひとつでも、基本的に三つの音を聴くことができる。
だからふたつのスタビライザーがあれば、七つの音が聴ける。

このスタビライザーの、少し意外な使い方による音の変化は大きい。
スタビライザーをレコードのレーベルに乗せるのは、個人的にはあまり好まない。
使う時もあれば、使わない時もある。

スタビライザーの使用によって、音が良くなると考えるよりも、
トーンコントロールみたいなものと思って使っている。
使うスタビライザーの性質をわかっていれば、乗せたり外したりは、すぐに判断がつくようになる。

このスタビライザーによる七つの音は、最後にもう一度行った。
スタビライザーの少し意外な使い方は、私が担当した井上先生の記事で書いている。
記事を憶えている方ならば、すぐにわかるはずだ。

松田聖子のLPをくり返し聴いていたときに、
参加された方の聴いているポイントは少しずつ違っていた、と感じた。

私はというと、Kさんが松田聖子のディスクを持参されることもあって、
ここ数年聴く機会が増えた。

松田聖子のデビューは1980年だから、まだ実家暮しで、
テレビから流れてくる松田聖子の歌を聴くくらいだった。
松田聖子のディスクを買ったことはなく、
1980年ころのテレビでの松田聖子によって、イメージができ上がっていた。

アイドル歌手としての松田聖子だった。
でも松田聖子のCDなりLPを聴く機会があって、感じたのは松田聖子はプロの歌手だということ。
だから松田聖子の声質よりも、松田聖子の歌の表現力がどれだけ拡がるかを、まず聴いている。

Date: 2月 2nd, 2017
Cate: アナログディスク再生

アナログディスク再生・序夜(その1)

アナログディスク再生といっても、
セッティングはいつものと基本的には同じ。

いつもCDプレーヤーを置いている位置にアナログプレーヤーを置いた。
スピーカーのセッティングは、実は毎回少しずつ変えている。
視覚的にもわずかな変化だから、毎回来られている方も気づいていないかもしれない。

アナログディスク再生・序夜のアナログプレーヤーは、
何度も書いているようにガラードの401に、オルトフォンのSPUとRMG309の組合せ。
昇圧トランスはオルトフォンのST5である。

この他に常連のKさんがシェルターの昇圧トランスと、
トーレンスと山本音響のスタビライザー、それから是枝重治氏のフォノイコライザーアンプを持参された。

是枝重治氏のアンプは、デンオンのDL103様の昇圧トランス(初期型)を内蔵したもので、
真空管ではなくOPアンプ構成の小型のモノである。
これらを使い、約四時間、あれこれやっていた。

最初に、おおまかなセッティングの調整。
最初に来られたKさん持参のLP(松田聖子)に固定した。
一時間以上、松田聖子の一曲をくり返し聴いていた。

音は確実に変化していくので、楽しいと思う人もいれば、
少なくとも10回以上、20回近く、同じ曲の同じところをくり返し聴かされることにうんざりされたかもしれない。

松田聖子のLPを使ったセッティングは、19時の開始前にやっておく手もあった。
でも、どういうことでアナログディスク再生は音が変化するのかを体験してもらいたかったのと、
私自身、ひどく体調不良で、そこまでの余裕がなかった、ということもある。

松田聖子のLPで、昇圧トランスはシェルターにした。
接続ケーブルもKさん持参のモノにした。トランスの置き方もいくつか試した。

松田聖子のLPで決めたことのひとつは、スタビライザーの使い方である。
トーレンスと山本音響の、ふたつのスタビライザーを聴いた。

スタビライザーを使わない音から始まり、七つの音を聴いた。

Date: 12月 21st, 2016
Cate: アナログディスク再生

自走式プレーヤーの領域(その7)

このリード線の処理は、
ステレオサウンド 87号(1988年)の時代よりも、
いまのほうがより重要なポイントといえる。

いうまでもなくカートリッジ出力信号は微小信号である。
しかも低域においては中域よりもレベルが下っていくし、
ローレベルの信号はさらに下るわけである。

実際に自分で計算してみると、ぞっとするような小さいな値になる。
リニアトラッキングアームではリード線の可動範囲がどうしても大きくなる。
この部分をうまく処理しないと、
アナログディスク再生の魅力を大きくスポイルすることになってしまう。

最近のハイエンドのトーンアームの中にも、
リード線の処理について無頓着な製品をみかける。

自走式プレーヤーとなると、このリード線の処理がネックになる。
なにせトーンアーム自体が毎分33 1/3回転、それが約20分ほど続くわけだから、
どの部分からリード線を引き出して、どうするのかをきちんと考えないと、
実際の再生はおぼつかなくなる。

解決策は、ひとつは考えてある。
ただし、この解決策では実験は可能でも、製品とすることは難しい。
なので、なんらかの工夫がさらに必要となってくる。

それでは実際にサウザーのSLA3と同じ機構のリニアトラッキングアームで、
自走式プレーヤーにするかといえば、
ここにもさらなる工夫が必要となる。

リニアトラッキングアームを自分のモノとして使ってはいないが、
ステレオサウンドの試聴室で使っている。
気づいている点がいくつかある。

その点に関しても、考えていることがある。

Date: 12月 21st, 2016
Cate: アナログディスク再生

自走式プレーヤーの領域(その6)

ステレオサウンド 87号に「スーパーアナログプレーヤー徹底試聴」が載っている。
副題として、
「いま話題のリニアトラッキング型トーンアームとフローティングがたプレーヤーの組合せは、
新しいアナログ再生の楽しさを提示してくれるか。」
とつけている。

私が担当した企画(ページ)である。
ここで取り上げたのはSOTAのStar SapphireにエミネントテクノロジーのTonearm 2、
オラクルのReferenceにエアータンジェントのAIRTANGENT II、
ゴールドムンドのStudietto、
バーサダイナミックスのMODEL A2.0にMODEL T2.0である。

ゴールドムンドだけがサーボコントロールを採用している、
いわば電動型のリニアトラッキングアームである。

これら四機種は、どれも未完成品といえるアナログプレーヤーばかりである。
87号が手元にある方はページを開いてほしい。

大見出しに
「趣向をかえたプレーヤー試聴。いずれも『未完成』の魅力をもっている。」
とつけている。

この時の試聴は輸入元の担当者にあらかじめセッティングと調整をお願いした。
試聴は、そのセッティングをいじることなく、場所の移動もすることなく、始めた。

それでも一部の機種では不都合が生じ、私が調整しなおすことになった。

実際にこれらのアナログプレーヤーを触ってみると、
未完成品といいたくなる。

もちろんすべてのオーディオ機器が100%完成品といえるわけでもなく、
その意味では少なからず未完成の部分も保留しているけれど、
そういう意味ではなく、もっと積極的な意味での未完成品である。

だから、この記事ではリード線の処理について、写真とともに解説をつけている。

Date: 12月 21st, 2016
Cate: アナログディスク再生

自走式プレーヤーの領域(その5)

1980年代なかば、アメリカからSOUTHER(サウザー)というブランドの、
カートリッジの送りにモーターを使っていた、それまでのリニアトラッキングアームとは違う、
モーターに頼らないタイプのリニアトラッキングアームSLA3が登場した。

日本での当時の輸入元はサエク・コマース。
価格は220,000円していた。

SMEのトーンアームと比較すると、完成度という点では劣る、といえた。
でもモーターを使わないリニアトラッキングアームは、新しく見えた。

サウザーの評価はアメリカの一部では高かったようだ。
その後、エミネントテクノロジー、エアータンジェント、
バーサダイナミックスといったブランドが、
リニアトラッキングアームをひっさげて登場してきた。

サウザーのSLA3はモーターを使わないだけではなく、
アームパイプが存在していないことも目を引く。
パイプがなければ、パイプに起因する問題は起こらないわけで、
このメリットはかなり大きい、といえる。

パイプをなくしたリニアトラッキングアームはSLA3が最初ではなく、
ルボックスのB790もパイプをもたない機構のはずだ。

私がいま思い描いている自走式プレーヤーは、サウザーのSLA3に近いといえば近い。
SLA3は通常のプレーヤー、つまりターンテーブルが回転するプレーヤーに取りつけて使う。

ここで発想を逆転させて、ターンテーブルをストップさせて、
なんらかの方法で SLA3を回転させたら……。
これが出発点になっている。

Date: 12月 19th, 2016
Cate: アナログディスク再生

自走式プレーヤーの領域(その4)

アナログプレーヤーはターンテーブルを持つ。
ターンテーブル(turntable)の名の通り、回転する、直径約30cmの円盤である。

円盤の材質は金属が多いが、最近では金属以外の材質も増えている。
重量も数十kgを超えるモノもあれば、軽量級のモノもある。
それぞれに能書きがある。

円盤といってもすべてがフラットな形状ではない。
ここにも各社さまざまな工夫がみてとれる。

ターンテーブルの駆動方式も、ダイレクトドライヴ、ベルトドライヴ、リムドライヴがあり、
それぞれに特徴がある。

アナログプレーヤーのターンテーブルに関することは、
あのサイズの円盤を回転させることによって生じているといえ、
それゆえの難しさと、からくりが成立している。
ここにアナログディスク再生のおもしろさがある。

とはいえ、この時代にもういちどアナログディスク再生を考えてみるときに、
ターンテーブルの存在に縛られすぎてはいないだろうか、というおもいがある。

ターンテーブルの存在について考えていくのもおもしろいし、
別項「ダイレクトドライヴへの疑問」で書いているわけだ。

だがそれとは別の視点でのアナログプレーヤーの発想も必要だと思う。
ソニーのCDP5000がディスクを移動させたのと同じようなことを、
アナログプレーヤーで考えると、それは自走式ということになる。

自走式であればターンテーブルはいらない。
回転しないターンテーブルだから、円盤状のテーブルである。