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Date: 6月 18th, 2014
Cate: アナログディスク再生

電子制御という夢(その1)

アナログプレーヤーの魅力はメカニズムの魅力ともいえる。
電子制御に頼らずに、モーターという駆動源があれば、他に電気を必要としない。
それだけに正確で静粛な回転を得るには、
精度が高くも強度も高いメカニズムが必要になり、そういうものはどうしても高価になってしまう。

ここに電子制御が加われば、メカニズムの精度、強度を落としてもカタログ上のスペックでは、
昔ながらのアナログプレーヤーよりも優れた数値となる。

電子制御によってアナログプレーヤーは大量生産ができるようになった、ともいえる。
そのせいもあって、音のいいプレーヤーとなると、メカニズムのしっかりしたモノということになっている。
私自身も、マイクロの糸ドライヴも使ってきたし、EMTのリムドライヴを愛用してきた。

どちらも回転系に電子制御のかかっていないプレーヤーである。

アレルギーとまではいかないまでも、アナログプレーヤーに電子制御は必要なのか、とずっと思ってきていた。
そういえば、瀬川先生は、ステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界 ’79」で、
DDモーターでもクォーツロックをかけたプレーヤーは、
音がハードになるとか、味もそっけもなくなるという批判が聞かれるようになってきたし、
確かな裏づけはないものの、クォーツロックでないプレーヤーのほうが、
ひと味ちがった音をもっているように思える、と発言されている。

いまでも回転系に電子制御は必要なのか、と思っている。
けれど、アナログプレーヤーで電子制御を取り入れてみたら、どうなるのか、と期待しているのが、トーンアームだ。

Date: 6月 18th, 2014
Cate: 「オーディオ」考

十分だ、ということはあり得るのか(その7)

マーラーを聴くにも十分だ、という言葉の裏には、
それ以前の音楽、具体的にはマーラーの交響曲ほど複雑でない交響曲、
ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームスなどの交響曲を聴くのに十分でも、
マーラーを聴くには十分でないことがある──、
そういうニュアンスもこめられていることが多い。

これは私の独りよがりではなく、
1970年代以降マーラーの交響曲が積極的に録音されるようになり、
1980年代にはいりデジタル録音の登場とも重なって、さらにマーラーの録音は増えていっていたおりに、
この類の発言は目にしたこともあるし、耳にしたこともある。

ベートーヴェンの交響曲の名演として、いまでもフルトヴェングラーがよく聴かれる。
フルトヴェングラーの録音はすべてモノーラル。
しかも当時の録音の水準からすると、いくつかは音がいいとはいえない録音もある。
有名なバイロイトの「第九」にしても、ライヴ録音とはいえ、
もう少しまともに録れたのでは……、といいたくなる。
それでも私も、ほかの人もベートーヴェンを愛する人ならば、フルトヴェングラーの録音を聴く。

フルトヴェングラーのベートーヴェンだけではない。
他の指揮者の古い録音であっても聴く。
けれどベートーヴェンにはそれほどいい音は必要ではない、ということではない。

Date: 6月 18th, 2014
Cate: JBL, Studio Monitor, 型番

JBL Studio Monitor(型番について・続余談)

リニアテクノロジーは、LTspiceという回路シミュレーターを公開している。
この回路シミュレーターは無料で使える。
これまではMac用はなかったけれど、昨年秋に公開されたことを先月に知った。
さっそくダウンロードした。

このときにリニアテクノロジーのtwitterのアカウントもフォローした。
昨日のツイートに、LTC4320と書いてあった。

4320という型番の製品がリニアテクノロジーにあるのか、と思って、
他にどんな型番の製品があるのか検索してみたら、LT4320というのもあった。

こちらはMOS-FETを使って整流回路を構成するパーツで、
資料には理想ブリッジダイオードコントローラーとある。
これはそのままオーディオにも使える製品である。
それに4320という型番がついているのだ。

他愛のないことだけど、これだけのことで使ってみたい気にさせてくれる。

Date: 6月 17th, 2014
Cate: ステレオサウンド

ガロ

テレビは持っていない。
テレビ無しの生活が、ありの生活よりもずっと長くなっているけれど、
テレビ嫌いなわけではなく、むしろテレビ好きであり、
思い出したように実家に帰省したとき、何をしているかといえば、こたつにもぐってずっとテレビばかり見ている。

いまでもときどき友人宅に遊びに行った時にテレビを見ることはあり、
本人はそれほど真剣に見ているつもりはないけれど、「何、そんなに真剣に見ているんだ」とよくいわれる。

だからテレビを持たない生活を送っている。

海外ドラマが好きなので、Huluに加入している。
先月、Huluで「ゲゲゲの女房」が公開された。
NHKの朝の連続テレビ小説で、数年前の話題作をいまやっとMacで見た。

ひとりのマンガ好きの男として見ていて、いろいろおもうことはかなりあった。
ドラマの中では「ゼタ」という名称だが、ガロについて語られている。

ガロがどういう雑誌であったのかは検索すれば、すぐにわかることだ。
オーディオに関係することでおもったのは、ステレオサウンドはガロではなかったな、ということだった。

Date: 6月 17th, 2014
Cate: 試聴/試聴曲/試聴ディスク

試聴ディスク考(その7)

ステレオサウンド 44号の発売とともに、
ブレンデルのモーツァルトのピアノ協奏曲のレコードを買ったわけではない。
45号が出てもまだ買っていなかった。
近所のレコード店に置いてなかったというのも理由のひとつだが、
他に買いたいレコードはかなりの数あったから、つい先延ばしにしていた。

なのでしばらくは黒田先生の試聴ディスクを一枚も聴かずに、その試聴記を読んでいた。
それぞれのレコードの5つのチェックポイントについては、
特集記事の前半にまとめられているから、黒田先生の試聴記を理解するには、
チェックポイントのページと行き来しながら読む必要があった。

これが10枚すべての試聴ディスクを持っていて聴き込んでいればそんな手間は必要なかっただろうが、
そのころは私はそうする必要があった。

44号、45号の黒田先生の試聴スタイルは、いまでも意義のあることだったと考えているが、
ページ数に制限があれば、読者にわずかとはいえ負担を強いることになる。
それう厭わずに読む人もいれば、そうでない人もいるのが現実だ。

ステレオサウンドの誌面構成は納得のいくものではあったけれど、
読みやすさという点では問題があり、黒田先生の意図をうまく読者に伝えていたかについては疑問も残る。

このやり方はあれこれ考えて細部を見直しても、誌面に限りのある実際の本に向いているとはいえない。
そのためか、このスタイルの試聴は44号と45号限りだった。

Date: 6月 17th, 2014
Cate: オリジナル

オリジナルとは(あるスピーカーの補修・その16)

昭和49年だから1974年、いまから40年前にオーディオラボオガワで岩崎先生は講演をされていたことが、
今回メールのやりとりでわかった。

エアリーズのウーファーの補修を担当してくれたSさんは、
当時10代だったので、そのときの岩崎先生の講演をきかれてはなかったけれど、
岩崎先生の話は耳にされていて、オーディオラボオガワの専務に確認されたところ、
当時の写真が残っていた。

その写真のコピーがエアリーズのウーファーに同封されて、岩崎先生のご家族のところに戻ってきた。

もしオーディオラボオガワ以外のところに補修を依頼していたら、
こんなことはなかったわけだ。

Sさん(女性の方である)からのメールを読んでいて、
喜ばれているように感じた。
岩崎先生のご家族の方も喜ばれている。

私も、オーディオラボオガワを選んで良かった、と喜んでいる。

Date: 6月 17th, 2014
Cate: 試聴/試聴曲/試聴ディスク

試聴ディスク考(その6)

ステレオサウンド 44号、45号で黒田先生が試聴ディスクとしてあげられた10枚は、
すべて買いたい、と思ったけれど、このころはまだ中学三年。
そんな余裕はなかったから、ブレンデルのモーツァルトのピアノ協奏曲を選んで買った。

このころの私は五味先生の影響を強く受けたばかりのころだから、
カラヤンのヴェルディの序曲・前奏曲集は真っ先に外した。
クライバーの「こうもり」は欲しかったけど、二枚組ということで後回しに。
こんなふうに一枚一枚リストから削ってのブレンデルのレコードだった。

黒田先生は試聴曲として第22番の第三楽章の冒頭1分20秒ほどを使われている。
この時間のなかでの5つのチェックポイント。
実際に聴きながら、こういうところに気をつけて試聴されているのかと、初心者なりに納得していた。

その上で黒田先生の試聴記をもう一度読む。

44号、45号での黒田先生の試聴記は、
曖昧さの排除ということで、各チェックポイントについて30字以内で書かれている。
一枚のディスクに5つのチェックポイントだから、一枚の試聴ディスクにつき150字、
10枚のディスクだから、1500文字の試聴記となっていた。

具体的にこんなふうに書かれていた。
4343でのブレンデルのモーツァルトのピアノ協奏曲についての試聴記である。

❶音像はくっきりしていてい、しかもピアノのまろやかなひびきをよく示す。
❷木管のひびきのキメ細かさをあますところなく示す。
❸ひびきはさわやかにひろがるが、柄が大きくなりすぎることはない。
❹しなやかで、さわやかで、実にすっきりしている。
❺ひびきの特徴を誇張しない。鮮明である。

これだけではわかりにくいと感じる人もいるだろう。
ここでの黒田先生の試聴記は、
あくまでも各レコードについてのチェックポイントについての文章を読んだ上での試聴記である。
しかも、黒段背性と同じように、10枚のディスクを聴いていればこそ掴みやすい試聴記でもある。

Date: 6月 16th, 2014
Cate: 試聴/試聴曲/試聴ディスク

試聴ディスク考(その5)

ステレオサウンド 44号と45号で黒田先生が使われた試聴ディスクは次の通り。

ヴェルディ/序曲・前奏曲全集(カラヤン/ベルリンフィルハーモニー)
モーツァルト/ピアノ協奏曲第22番(ブレンデル、マリナー/アカデミー室内管弦楽団)
シュトラウス/「こうもり」(クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団、プライ、ヴァラディ、ポップ他)
珠玉のマドリガル集(キングズ・シンガーズ)
浪漫(タンジェリン・ドリーム)
アフター・ザ・レイン(テリエ・リピダル)
ホテル・カリフォルニア(イーグルス)
ダブル・ベース(ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ)
タワーリング・トッカータ(ラロ・シフリン、エリック・ゲイル他)
座鬼太鼓座

カラヤンのヴェルディをいちばん長く聴かれている(約4分30秒)、
ほかのレコードは1分強から2分ほどである。

誌面にはB&Kの測定器(Type 2112、Type 2305)による各レコードのレベル記録グラフが掲載されていて、
それぞれのレコードのチェックポイントについての解説も載っている。

ヴェルディの序曲集では仮面舞踏会の前奏曲が試聴曲として使われていて、
まず出だしでは、「ヴァイオリンによるピッチカートが左から鮮明にききとれるか」、
それから「フルートとオーボエのピアニッシモによるフレーズの音色が充分にかわるか」とある。

こんな感じで、各レコードの五つのチェックポイントについて書かれているし、
各レコードについての試聴レコードとして寸評もある。

Date: 6月 16th, 2014
Cate: 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(こういう面も……)

瀬川先生がずっと以前はアンプ作りをされていたことは何度か書いているし、
古くからのオーディオマニアの方ならば、ラジオ技術に掲載された記事を読まれた方もいるだろう。

ラジオ技術の5月号には、瀬川先生のアンプ製作記事が復刻ページとして載っている。

ステレオサウンド 9号の第二特集として「オーディオの難問に答えて」が載っている。
ある読者の、改良したはずが改悪になっていないだろうか、という質問に瀬川先生が答えられている。
この読者は瀬川先生がラジオ技術に発表されたマランツのModel 7タイプのコントロールアンプを使っている。

瀬川先生の回答はこうだ。
     *
まずイコライザー回路ですが(「ラジオ技術」65年1月号)、あるの回路は、ぼくの悪いアマノジャク根性から、実は2〜3の陥し穴を、わざとこしらえてあるのです。たとえばイコライザーの定数は、あの数値ではRIAAカーブに乗りません。あなたは怒るかもしれないが、ぼくにしてみればイコライザーの定数ミスを発見できない人には、あの回路を作ってもどうせうまくいかないという気持(意地悪根性は重ねてお詫びします)があるのです。
     *
これを読んでの反応はさまざまかもしれない。

この時代、アンプを作るということは、そういうことでもあった。
そういうことがどういうことであるのかは、人それぞれなのかもしれない。

Date: 6月 16th, 2014
Cate: オリジナル

オリジナルとは(あるスピーカーの補修・その15)

オーディオラボオガワから修理の終えたユニットが戻ってきた。

戻ってきた、といっても私のところではなく、この項の(その1)にも書いたように、
今回のスピーカーは私のモノではないから、持主のところに戻ってきている。

オーディオラボオガワから輸送用のダンボール箱を送ってもらうときに、
今回の事情を説明して、ダンボール箱はそちらに送付してもらった。

このときに岩崎先生のスピーカーだ、ということを伝えた。
今回補修を依頼したウーファーは、エレクトロボイスのエアリーズ搭載のものだ。

その後何度か担当のSさんとメールでやりとりして感じたことは、
ほんとうにここで良かった、ということである。

五味先生が「西方の音」で、
《直感はあやまたない、誤るのは判断だとゲーテは言ったが、当てにならない。》と書かれている。
そうかもしれない。
それに直感と本人が感じているだけであって、それがほんとうに直感がどうかもあてにはならない。

それでも今回、最初に頭に浮んだのはオーディオラボオガワだったし、
その後、判断材料としてあれこれ情報を集めて選んだのもオーディオラボオガワだった。

直感と判断が一致したから選択であるわけだが、
ふり返って思うに、オーディオラボオガワを選ぶようになっていたのかもしれない。

Date: 6月 15th, 2014
Cate: 試聴/試聴曲/試聴ディスク

試聴ディスク考(その4)

ステレオサウンドに出てくる試聴レコードのすべてでなくとも、
何割かを自分のモノとして聴くことは、試聴記をより理解するための指標ともなる。

音を言葉で表現することの難しさはここであらためて書くまでもないことで、
これまでもいろいろな試みがなされてきた。
それでも音を誌面だけで伝えることの困難さは、まったく変っていない。

それだからこそオーディオ雑誌を読む楽しみというのが、
オーディオそのものの趣味とは別のものとして成り立っているともいえる。

言葉で表現された音を、
その試聴記を書いた人が聴いた音と重ね合わせていく作業には、
そのとき使われた試聴レコードがあるとないとでは、ずいぶん違ってくる。

どのディスクのどの部分を試聴用として使うのか。
そのことがわかっていても、どう聴かれたのかについては、なかなかわからない。

ステレオサウンド 44号、45号のスピーカーシステムの特集における黒田先生の試聴レコードは、
実に興味深かった。
ステレオサウンドを読みはじめて一年が経ったころのスピーカーの特集。
そこで黒田先生は10枚の試聴レコードの50のチェックポイントについて、淡々とした試聴記を書かれていた。

Date: 6月 15th, 2014
Cate: D44000 Paragon, JBL, 瀬川冬樹

瀬川冬樹氏とスピーカーのこと(その29)

ガリバーが小人の国のオーケストラを聴いている──、
こんなイメージに必要なのは、自分(ガリバー)が小人よりも大きいと意識できるかどうかであり、
実際に小人のオーケストラを聴いたことがあるわけではないが、
それでも想像できるのは目、耳と同じ高さに小人のオーケストラがあるよりも、
やはり下に位置した方が、より自分の大きさ(相手の小ささ)を意識できるのではないのか。

20代のある時期、私もLS3/5Aを鳴らしていたことがある。
あくまでもサブスピーカーとしてだったから、専用スタンドを用意することはなかった。
聴きたくなったら、何かの台にのせて鳴らしていた。
その台は、LS3/5A用として売られていたスピーカースタンドよりも低いもので、
LS3/5Aを斜め上から見下ろす感じで聴いていた。

そのせいか、いまでも小型スピーカーをごくひっそりとした音量で鳴らす時は、
こんなふうにして聴くことが多い。

ここでもう一度瀬川先生の「いま、いい音のアンプがほしい」の冒頭を読み返してみよう。
こうある。
     *
このゴミゴミした街が、それを全体としてみればどことなくやはりこの街自体のひとつの色に統一されて、いわば不協和音で作られた交響曲のような魅力をさえ感じる。そうした全体を感じながら、再び私の双眼鏡は、目についた何かを拡大し、ディテールを発見しにゆく。
     *
全体を感じながら、目についた何かを拡大し、ディテールを発見しにゆく、とある。
この聴き方こそ、瀬川先生の聴き方ななのかもしれない。

何かを拡大する──、そういう聴き方に向いているといえるのは、JBLだったといえないだろうか。

Date: 6月 15th, 2014
Cate: 新製品

新製品(フィデリティ・リサーチの場合・その3)

ステレオサウンドで働くようになって、まもなくのことだった。
なにかのきっかけでフィデリティ・リサーチが話題になった。

どなたにきいたのかをもう忘れてしまったが、
FR1とFR7の音があれだけ違うのは、発電構造が違うだけではない、と話された。

フィデリティ・リサーチの創立者の池田勇氏のスピーカーが変ったからだ、と教えてくれた。

それまでのスピーカーがボザークだったのは、何かで読んで知っていた。
ボザークのスピーカーは、私がいたころはステレオサウンドの試聴室で鳴らされることは一度もなかった。
ほとんど聴く機会のなかったスピーカーだが、わずかに聴いた印象と、
ボザークに関する記事、それに井上先生のスピーカーだということから、
だいたいのイメージはできあがっていたし、それは大きく外れてはいなかったはずだ。

私のなかでのボザークの音、
これにFR1の音はうまく相補うような気がする。
もしこれから先ボザークのスピーカーを聴く機会が訪れるとしたら、
なんとかしてFR1を探してきて、それで鳴らしてみたい。

ボザークから何に替ったのは、なぜか失念してしまった。
FR1からFR7への音の変りようからすれば、ボザークとは傾向の違うスピーカーであることは確かだ。

もし池田勇氏のスピーカーがボザークのままだったら、
FR7の音も違ってきた可能性はあるのではないか。

Date: 6月 15th, 2014
Cate: 新製品

新製品(フィデリティ・リサーチの場合・その2)

FR7はなぜシェル一体型なのか。
それまでのフィデリティ・リサーチのカートリッジにシェル一体型はなかった。

FR7の構造図をみれば、すぐに理解できる。
シェル一体型でなければ実現できない構造である。

ステレオサウンド 47号の新製品紹介のページにFR7は登場した。
記事は井上先生が書かれている。
その他に井上先生と山中先生が、このカートリッジについて語られている。
このふたつを読めば、FR7がどういうカートリッジなのかは伝わってくる。

そして構造図が掲載されていた。
通常のMC型カートリッジはマグネットはひとつだけである。
FR7はふたつのマグネットを持つ。
そのためどうしてもカートリッジの横幅が通常の、マグネットがひとつのタイプよりも増すことになる。

井上先生は、FR7の発電方式をプッシュプルと紹介されていた。

FR7の音が、それまでのフィデリティ・リサーチのカートリッジとはずいぶん違ってきていることは、
47号の特集ベストバイでの評価を読んでもわかった。

それにしても、どうしてこうも変ったのだろうか、ともそのとき思っていた。

Date: 6月 14th, 2014
Cate: 試聴/試聴曲/試聴ディスク

試聴ディスク考(その3)

東京に住んでいればオーディオ店も当時は数多くあった。
ちなみにダイナミックオーディオは、当時、秋は原と新宿以外に六本木、新橋、渋谷、丸の内にも店舗があった。

そういう環境であれば、そういう場に赴けば、あれこれ試聴できるだろう。
お金を持っていない中学生、高校生でも、他に購入しそうな客がいて、
その人が試聴をしていれば、音を聴くことはできたと思う。

それが私が住んでいた田舎ではそうはいかない。
熊本市内にオーディオ店はあった。
けれど東京のオーディオ店と比較できるところは、当時は一店舗だけだった。
そこに行くにも時間と交通費が、小遣いと新聞配達のバイト代だけの高校生にとってはけっこう負担だった。

とにかく、このころの私は渇望していた。
オーディオのこと、音楽のことを、とにかく知りたかった(聴きたかった)。
それはステレオサウンドの誌面の世界を少しでも実体験(追体験)してみたかった、ともいえる。

ステレオサウンドで高い評価を得ていたオーディオ機器を聴きたい。
でも、そうそう聴けるわけではない。
聴けたとしても、そう長い時間で聴けるわけでもないし、くり返し聴けるわけでもない。

それでもレコードは、当時もいまと変らぬ価格だったから、決して安くはなかった。
けれどオーディオ機器に比べれば、ずっとずっと買いやすい。

レコードならば、すべとはいかないまでも何枚かは買える。
自分のモノであれば、いつでも聴きたい時にくり返し聴ける。

これが当時の私にとっては、ステレオサウンド誌面の実体験(追体験)であった。