Date: 4月 24th, 2025
Cate: ショウ雑感

2025年ショウ雑感(その1)

今年のOTOTENにも、
ジャーマン・フィジックスの輸入元のタクトシュトックが出展しないようだ。

去年のOTOTENにも、タクトシュトックの名はなかった。
その代わりなのか、6月に開催された京都オーディオフェスティバルには出展していた。

今年もそうなのか、と思ったら、やっぱりそうだった。
いまのところ、タクトシュトックは、東京で開催されるOTOTENにも、インターナショナルオーディオショウにも出展しないようだ。

そして6月開催の京都オーディオフェスティバルには出展する。

Date: 4月 23rd, 2025
Cate: スピーカーの述懐

スピーカーの述懐(その60)

オーディオ雑誌に登場するオーディオ評論家。
瀬川冬樹、岩崎千明、
この二人よりも、今時の評論家はずっと長くオーディオ評論家として、書いてきている。

けれど、そんな彼らがどんな音楽が好きなのか、
演奏家は誰が好きなのかが、なかなか見えてこない。

あの頃の好きと、今時の好きとでは、温度が違うのか。

Date: 4月 22nd, 2025
Cate: 情景

情景(その15)

ステレオサウンド 130号、勝見洋一氏の連載「硝子の視た音」の最後に、こうある。
     *
 そしてフェリーニ氏は最後に言った。
「記憶のような物語、記憶のような光景、記憶のような音しか映画は必要としていないんだよ。本当だぜ、信じろよ」
     *
これまでに三度引用している。

また引用したのは、心に近い音、耳に近い音についてこれまで書いてきているが、
このフェリーニのことばも、心に近い音をあらわしていると思ったからだ。

耳に近い音は、記録のような音、
心に近い音は、記憶のような音。

Date: 4月 21st, 2025
Cate: 所有と存在

所有と存在(その23)

音も音楽も所有できないからこそ、オーディオは素晴らしい、と、
以前よりも強くそう思うようになってきたのは、残り時間が少なくなってきたからなのだろうか。

私が死んだら、所有しているディスクやダウンロードした音源、オーディオ機器は残る。

それは所有できたものが残るだけのことであって、
私が追い求めてきた音、音楽は残らないからだ。

私とともに、それらは消失する。痕跡は微かに、短い期間は残るかもしれないが、
その僅かさえ、いつかは消えてしまう。

だから、素晴らしい。

Date: 4月 20th, 2025
Cate: 終のスピーカー

エラック 4PI PLUS.2のこと(その16)

自作スピーカーのトゥイーターを別のモノに交換したり、
既製品のスピーカーシステムにスーパートゥイーターを足さなくても、
同じ音の変化、つまり高音域が変ると、低音域の鳴り方も変ってくるを体験できる。

グラフィックイコライザーを積極的に使っている人ならば、確かにそうだ、と頷かれるだろう。

グラフィックイコライザーの使い始めの頃は、
操作している周波数あたりの音の変化に意識が集中しがちになるだろうが、
使いこなしていくうちに、そしてグラフィックイコライザーによる補整がうまくいくにつれて、
高い周波数をいじることで、低音域の鳴り方が変化していることに気がつくようになる。

Date: 4月 19th, 2025
Cate: コントロールアンプ像

パッシヴ型フェーダーについて(その11)

こういうことを書いていると、
CDプレーヤーとパワーアンプ直結の音が冴えなかったのは、
マッキントッシュのMC2500のレベルコントロールに使われているポテンショメータのクォリティが良くなかったからだろう──、
そういうことを思う人、言う人もいる。

例えばMC2500の部品として、スペクトロールやP&Gのポテンショメータが使われていたら、
そんな結果にはならなかったはず、とまで言う人がいてもおかしくない。

それらのポテンショメータが使われていたとしても、
多少は音の変化はあったとしても、
大きな結果としては、やはり変らなかったと考えている。

パッシヴ型フェーダーを介した時はMC2500のレベルコントロールは、
時計方向いっぱいにしている。つまり減衰量は0の位置である。

CDプレーヤーと直結にすれば、このレベルコントロールのツマミを操作するわけで、減衰量ある一定量ある。

この場合、何が違うのか。
ポテンショメータを介していることには変りはない。

レベルコントロールのツマミを反時計方向に回すということは、
信号経路に直列に抵抗が入ることになる。

ポテンショメータは、その抵抗体が分割されることで、信号を減衰させる。
つまり信号経路に直列に入る抵抗分をR1、並列に入る抵抗分をR2とすると、
この二つの抵抗分、R1とR2の比で、減衰量が決まる。

つまりポテンショメータのR2を通じて、信号の一部、
絞り切ってしまえば、信号のすべてが信号源に還っていく。
残りがパワーアンプへと渡って行く。

このR2を通じて信号源に還って行く信号の経路が、どこに位置するのかによって、
その長さが大きく変化する。

Date: 4月 18th, 2025
Cate: コントロールアンプ像

パッシヴ型フェーダーについて(その10)

パワーアンプの中には入力レベルを可変できるモノがある。
ポテンショメータで可変するもの、切り替えスイッチによるモノなどがある。

パッシヴ型フェーダーの接続による音の違いを確認していた時に使っていたのは、マッキントッシュのMC2500だった。
MC2500は左右独立の連続可変のレベルコントロールを持つ。

なのでCDプレーヤーの出力をパッシヴ型フェーダーも通さずに直接MC2500に接ぐ。
パッシヴ型フェーダー使用時では、
CDプレーヤーとパッシヴ型フェーダー間、パッシヴ型フェーダーとパワーアンプ間に、それぞれラインケーブルが必要になる。

CDプレーヤーとパワーアンプを直結すれば、ラインケーブルも一組で済む。
この時は、ラインケーブルは同じモノで揃えた。既製品のケーブルなので、
パッシヴ型フェーダーを介した時よりもラインケーブルの全長は少し短くなる。
それから接点も少なくなる。

短絡的に捉えるならば、パッシヴ型フェーダーを介するよりも音は良くなるはずだった。
けれど、こちらの期待に反して、全体的に冴えない。

この時、一緒に聴いていたO君も首を傾げるほどに、冴えない音へと変化した。
なので、またパッシヴ型フェーダーを介する。
やはり、こちらの方がいい。

介さない方がいいはず、という先入観は、私にもO君にもあった。にも関わらず、の結果である。

ここで試したのは三つの音。
CDプレーヤーとパッシヴ型フェーダー間のケーブルを短くした音、
パッシヴ型フェーダーとパワーアンプ間のケーブルを短くした音、
パッシヴ型フェーダーを介さずにパワーアンプと直結した音。

ここでの結果から推測できることがある。

Date: 4月 17th, 2025
Cate: ロングラン(ロングライフ)

プリント基板の寿命

真空管全盛期の真空管アンプには使われていなかったが、
トランジスターアンプになってからは、プリント基板が当たり前として使われているし、
真空管アンプにも使われるようになってずいぶん経つ。

古いアンプを修理した、という記事や投稿を見ても、
プリント基板については、ほとんど書かれていない。

悪くなった部品を交換した、とはあっても、プリント基板に関しては、まず記述はない。

けれどプリント基板にも寿命はある。
以前から気になっていたことで、インターネットで検索しても、
プリント基板の寿命についてはっきりしたことは見つけられなかった。

プリント基板の材質、品質によっても当然、寿命は違ってくるし、
使用条件によっても影響を受ける。

この使用条件は、筐体設計に関係してくることと、
ユーザーの使い方に関係してくるとがある。

筐体内温度がかなり高温になり、
しかも温度変化の大きい部屋に置いていたり、
埃が多く湿気も高い部屋で使用してたりすれば、
寿命は、高信頼性のプリント基板であっても短くなるのは容易に想像できる。

実際に、プリント基板のパターン(銅箔)が剥れることはある。

プリント基板の寿命は、何年とは言えない。
それでもプリント基板の劣化はいつかは起こる。

Date: 4月 16th, 2025
Cate: コントロールアンプ像

パッシヴ型フェーダーについて(その9)

CDプレーヤーが登場し、ある程度普及したころから、
パッシヴ型フェーダーについて語られるようになり、製品もいくつか出てきた。

当時、パッシヴ型フェーダーに対しての否定的なこととしてよく言われていた(書かれていた)のは、出力インピーダンスが高いので、
パッシヴ型フェーダーとパワーアンプ間のケーブルをあまり長くできないが、あった。

当時製品化されたモノのインピーダンスは、たいていが10kΩだった。
けれど10kΩのフェーダーを使ったからといって、
そのパッシヴ型フェーダーの出力インピーダンスが10kΩになるわけではないことは、
少しばかり考えればわかること(はっきりすること)だ。

減衰量によって変動するとはいえ、パッシヴ型フェーダーの出力インピーダンスは、
前段のCDプレーヤーの出力インピーダンスとの兼ね合いで決まるものだ。

それにフェーダー(ポテンショメーターを含めて)は、
プリメインアンプ、コントロールアンプにも使われていて、
ライン入力からの信号は、まず入力セレクターを通り、
レベルコントロール(フェーダー、ポテンショメータ)へと行く。
そしてラインアンプへと接続されているわけで、
ここでもパッシヴ型フェーダーで指摘されていることは当然起こっている。

こう書くと、いや、アンプ内のケーブルは短いから、という人がいる。
確かにアンプ内でのレベルコントロールからラインアンプの入力まではそう長くはない。
そのくらいの長さならば問題は無視できる、とのことだ。

本当にそうなのだろうか。

パッシヴ型フェーダーは、ステレオサウンドの試聴室であれこれ試したことがある。
使い勝手は悪くなるが、パッシヴ型フェーダーをパワーアンプの近くに置き、
パッシヴ型フェーダーとパワーアンプ間のケーブルをかなり短くして聴いたこともある。

この場合、CDプレーヤーとパッシヴ型フェーダー間のケーブルは長くなる。

使い勝手は無視するとして、どちらが好結果が得られたかというと、
私が試した範囲では、CDプレーヤーとパッシヴ型フェーダー間のケーブルを短いした方だった。

Date: 4月 15th, 2025
Cate: plain sounding high thinking

plain sounding, high thinking(その15)

二年前、別項「Noise Control/Noise Design(Silent Design)」で、
Silent Designという言葉を使った。

使っただけで、それについて説明したわけではないが、
Silent Designは、私にとっては大切なテーマである。

二年経って、何か書けるようになったかと言えば、まだだ。
それでも、Silent Designとは、天衣無縫な音へとつながっていると、いまは確信しているし、
天衣無縫な音よりも、天衣無縫の音とした方が、どうしてだかしっくりとくる。

Date: 4月 14th, 2025
Cate: 「オーディオ」考

オーディオがオーディオでなくなるとき(その22)

五年前の(その16)で、
イェーツの“In Dreams Begin Responsibilities”を引用している。

いくつかの訳がある。
どれが、いまの自分にとってしっくりくるのか、
ずしっとしたものを感じるとか、
それは人によって違ってきて当然である。

“In Dreams Begin Responsibilities”、
これ自体に何も感じない人もいても不思議ではない。
そのくらい、人はさまざまである。

それでも、再び“In Dreams Begin Responsibilities”を引用しておきたい。

Date: 4月 13th, 2025
Cate: PM510, Rogers, 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(ロジャースPM510・その8)

audio wednesdayを毎月第一水曜日にやる度に思うことがある。
オーディオ業界から離れている私だってやれることを、
どうしてステレオサウンドをはじめとするオーディオ雑誌はやらないのか、だ。

機材も人もそろっているわけだから、
私がやっているよりも、ずっと多くのことができるわけだし、協力してくれるメーカーや輸入元は、ほぼすべてと言ってもいいはず。

ステレオサウンド編集部が、こういうことを定期的にやりたいと、
メーカーや輸入元に声をかければ、断るところはないと思う。
特に準備期間はなくとも、すぐに始められるはずだけ。
けれど、やらない。
もったいないな、とも思う。

こんなことを、audio wednesdayをやりながら毎回思うし、
瀬川先生だったら、どんなふうにやられただろうか、も考えてしまう。

JBLの4343を鳴らしてから思い始めたことがある。
ロジャースのPM510を鳴らしてみたい、と。

Date: 4月 12th, 2025
Cate: 「オーディオ」考

耳の記憶の集積こそが……(その10)

別項で、屋上屋を架すとしか言いようのない音を出す人がいる、と書いている。

どうして、そんな音しか出せないのか。
そのことについて考えると、耳の記憶という積み木を、
彼らは積み重ねていくことができないのだろう、という結論が、
いまのところ見えてくる。

積み木を積むのに、接着剤とか釘、ボルト、ナットなどを使って、
積み木を一つずつを固定しながらやっていくのではない。
慎重に確実に積み上げていくしかない。

屋上屋を架す音しか出せない人は、ただ勢いだけで積み木を積んでいくのだろう。
基礎をしっかりした上で、ということをやらないのではないのか。

ただただ積んでいく。
それでもある程度の高さまではいける。
でも、所詮はそこまでだ。

きっと彼らには、その積み木が、耳の記憶だという認識もないのだろう。

Date: 4月 11th, 2025
Cate: 電源

ACアダプターという電源(その10)

今回の電源の比較試聴は、
Sboosterのリニア電源にはアクティヴ型のノイズフィルターがあるのに対し、
スイッチング電源の方にはないわけで、
このアクティヴ型のフィルターが、どれだけ音質の寄与しているのかは確かめられなかったし、
このアクティヴ型のフィルターをスイッチング電源にも使ったら、どういう結果になるのか。

Sboosterのウェブサイトには、アクティヴ型のフィルターも購入できるようだ。
このフィルターをスイッチング電源に使えば、どれだけ音は変化するのか。

今回の比較試聴では、リニア電源の方を取るが、
スイッチング電源にもいくつかの種類があるし、
別項で触れているようにそのノイズ対策もあれこれできるし、
アクティヴ型のフィルターも、Sboosterの製品もあれば、iFi Audioにも同様の製品はある。

なので、リニア電源でなければならない──、という結論には個人的には達していない。

それでも手元には、あるパワーアンプから取り外したEIコアの電源トランスがある。
何か使えるだろうととっておいているのだが、
roon rock用の電源をこれで作ろうかな、とも思い始めている。

Date: 4月 10th, 2025
Cate: ディスク/ブック

Mauriat 100(その4)

《音楽は、いつでも、思い込みだけであれこれいわれすぎる》

黒田先生が、ずっと以前に書かれていたことだ。

ポール・モーリアの音楽も、たぶんにそうだ。
私にも、そういうところが全くないと言わない。

それでも私は黒田先生のことばに、23歳のころに出合っている。
そうでなかったなら、もしくはずっと後だったりしたら──、
音楽への接し方はずいぶん、いまとは違っていたはずだ。

ここでポール・モーリアについて書いてたりはしなかっただろう。

くり返そう。
《音楽は、いつでも、思い込みだけであれこれいわれすぎる》
音楽だけではない、オーディオも、またそうである。