Date: 10月 26th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

サンスイ EC10が、JBL 2220Bとともにやって来た(その2)

サンスイのEC10とともにやって来たJBLの2220Bを眺めていて思い出したことがある。
ステレオサウンドで働き出したころ、Nさんのところに何度か行って、その音を聴かせてもらっていた。Nさんといっても、いまも編集部にいる同姓のNさんではなく、私よりも七つ上のNさんである。

このころ、NさんはJBLの2220Bをジェンセンのウルトラバスレフレックス型エンクロージュアに入れ、上の帯域は2397に2440か2441という2ウェイで、アンプはマッキントッシュのMC2300、コントロールアンプはなしで、EMTの927Dstの出力を、エッグミラーのアッテネーターW85で受けて、というシステムだった。

Nさんは根っからのジャズの聴き手だった。私がArt Ensemble Of Chicagoを初めて聴いたのは、このシステム、Nさんのところでだった。

ここで、カルロス・クライバーのブラームスの四番も聴いているが、クラシックを鳴らすのは無理があるシステムとも感じていた。

しばらくしてNさんは引っ越しして、そこでウェスターン・エレクトリックの350Bのプッシュプルと349Aのプッシュプルを持ち込んで聴いている。台風直撃の日にアンプをタクシーで運んだ。

350B、349A、どちらもウエストレックスのA10をベースとしている。350Bの方はある方の自作で、349Aは伊藤先生が作られたそのものだった。

Nさんは350Bのプッシュプルの音に昂奮されていた。MC 2300よりも、ずっとしなやかで熱い感じの音だった。MC 2300の出力は300W、350Bプッシュプルの方は20Wほど。
それでもスピーカーの出力音圧レベルが100dB超えだから、20Wでも十分すぎるほどだ。

最後になって伊藤先生の349Aにした時の音を聴いた瞬間、私は、当時鳴らしていたロジャースのPM510には、このアンプしかないと直感したほど、素晴らしかった。

ジャス向きとしか思えないJBLの2ウェイから、クラシックが澄んだ音、しなやかな音で響いてくれるだけでなく、音の消え際の美しさと自然さは、どんなアンプでも聴いたことがない。

Nさんは、この日の試聴で350B熱が高まっていったが、私は349Aに惹かれてしまった。

エンクロージュアは違うけれど、この時のJBLの2ウェイは、私のところにあるモノで構成できる。
2220BにEC10があり、2397+2441がある。

349Aは、そのころは一本五千円ほどだったのが、いつの間にか、かなり高価な真空管になってしまった。これから、また、あのころ、揃えたのと同じ349Aを──、ということは考えていない。

それでも代わりに、あの五極管ならば──、ということを、ちょっと考えている。

時間をかけて集まってきたモノを眺めていて、あの日、聴いた音を思い出した。

Date: 10月 25th, 2026
Cate: ショウ雑感

2026年ショウ雑感(その13)

どこのブースなのかは明かさないが、あるブースで、そこがとりあつかっているブランドのケーブルの比較試聴があった。

ケーブルのグレードが上がることで、どう音は変化するのか。同一ブランドでの比較試聴だった。
ケーブルの比較試聴なのに、ケーブルの引き回しが実にぐちゃぐちゃだった。信号系ケーブルの近くには、使用していないケーブルがとぐろをまいた状態で置かれている。

比較試聴に関しても、グレードが上がるごとにそれまでのケーブルを片付けていく。片付けること自体はいいことなのだが、というか、片付けておくのが基本なのだが、まずそこが疎かににされているだけでなく、全ての段階で疎かにしているわけではない。

比較試聴ならば、全て同じ条件で鳴らすようにしてほしい。片付けていくことでの音の変化を聴き分けているのであれば、最初から同じ条件で鳴らす(聴いてもらおう)とするはずだ。

ケーブルの片付け具合だけでなく、ケーブルの挿し替えごとにパワーアンプが少し動く。手直しもされるのだが、モノーラルパワーアンプで、途中から置き台に対しての位置が、左右で違うことになっていた。

こんな感じで自社の試聴室でも聴いているのか、と思う。そして、このブースの人たちは、そこで鳴らしている音に、責任ということを感じているのかどうかだ。

Date: 10月 24th, 2026
Cate: ショウ雑感

2026年ショウ雑感(その12)

私がインターナショナルオーディオショウに行くようになったのは2002年からだった。
そのころからアキュフェーズとラックスのブースは隣同士だったと記憶している。

そのためだろう、この二つのブース前の廊下には、オーディオ関係者が大勢集まっている。特に初日はそうである。

その光景を、毎年一回のオーディオ関係者の同窓会のようだ、と思いながら眺めていた。

今年もそうだった。やっぱり、ここに皆集まっている、と。
でも、三年前にふたり、今年に一人、オーディオが縁で知り合い、親しくしていた友人が亡くなっているから、こちらの感じ方にも変化が芽生えてきた。

Date: 10月 23rd, 2026
Cate: ショウ雑感

2026年ショウ雑感(その11)

ヴァイタヴォックスのCN191について書きたいことはまだあるが、今年のオーディオショウでのことをいくつか先に書いておく。

あるブースで、アナログプレーヤーが鳴らされていた。10万円ほどの製品で、このプレーヤーの後に四倍ほどする上級機になった。

この上級機のアナログプレーヤーはダイレクトドライヴ型なのだが、音を鳴らすまでターンテーブルプラッターは停止していた。ディスクをのせて、針を降ろす直前で回転なのだが、出てきた音は、上級機らしいところは感じられるものの、なんとも見通しが悪い。一分ほどしたら、明らかに見通しが良くなる。こうなると上級機らしい良さも感じられるようになる。

アナログプレーヤーもウォームアップが必要なことはずっと以前から言われていた。特にダイレクトドライヴ型はそうである。

にも関わらず、このブースでは、そのことに無頓着のまま鳴らす。その結果の、一分弱の見通しの悪い音だ。

この明らかな音の変化を、このブースのスタッフは気づいていないのかもしれない。こういうことをメーカーの人に対し、指摘するオーディオ評論家もいないのかもしれない。

アナログディスク関連では、アイレックスのブースに入った時、ちょうどスタッフの方によるリニアトラッキングアームについての解説がなされていた。

ここでの説明は、リニアトラッキング型こそ理想に近いという幻想に捉われることなく、実際のリニアトラッキング型の動作について、カートリッジ側からされていた。

このことは1980年代から指摘されていたことだから、いわば常識ともいえそうなのだが、実際にはそうではなく、オーディオ評論家の中にもリニアトラッキング型の実際を理解している人少ないようだ。

アイレックスのブースでの説明は、リニアトラッキング型こそが──、と思っている人は聞かない方がいいのかもしれない。

Date: 10月 23rd, 2026
Cate: ショウ雑感
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2026年ショウ雑感(その10)

インターナショナルオーディオショウに行ってきた。会場着が11時すぎで19時までいたが、全てのブースを聴けたわけではなかった。

なので聴けた範囲での印象になってしまう。今日聴いた音で、もっとも印象に残ったのは、やはり今井商事のヴァイタヴォックス CN191だった。
私が聴いたのは14時からの回。アンプは、是枝重治氏製作。昨年のアンプとは違い、パワーアンプはPX25のシングルアンプで、出力は6W。

今年のCN191は良かった。明らかに昨年の音よりもずっと良くなっていた。音の安定感が大きく違う。
リヒターによるマタイ受難曲は、本当に素晴らしかった。最後まで聴かせてほしいと思うほどに、その音に神性が感じられた。
こういうマタイ受難曲が、オーディオショウで聴けるとはまったく思っていなかっただけに、よけいに素晴らしく感じられたのかもしれないが、このマタイ受難曲ははっきりと私の裡に残っているし、これからも残り続けるだろう。

Date: 10月 22nd, 2026
Cate: ディスク/ブック

Pablo Casals in Concert, Cellist & Conductor

2027年1月22日に発売になる“Pablo Casals in Concert, Cellist & Conductor”が、本当にすごい内容。

詳細はリンク先を見てほしい。演奏されたのは知っていたけれど、聴く機会が訪れることはあるのか……、とほぼ諦めていたベートーヴェンの第九がある。
他にも、この曲がカザルスの指揮で聴けるのか、と軽く昂奮するほどに、すごい。

Date: 10月 22nd, 2026
Cate: 純度

オーディオマニアとしての「純度」(その20)

自分の音に自信を持つ人は、けっこう多いことだろう。
けれど、自分の音に責任を持つ人は、どれだけいるのか。

Date: 10月 21st, 2026
Cate: 世代

とんかつと昭和とオーディオ(余談・その5)

伊藤先生は、ステレオサウンド 42号「真贋物語」で、
とんかつについて、《とんかつぐらいラーメンと共に日本人に好かれる食いものはない》と書かれている。

菅野先生は、ステレオサウンド 89号ベストオーディオファイル」で、ラーメンについて語られている。
     *
菅野 南さんはラーメンの専門家でおられるわけだけど、ぼくもラーメンは大好きでして、ラーメンというのは料理の傑作だと思っているんです。ルーツは支那かもしれないけど、やはり違って、日本独特なものだと思うんです。
 それにラーメンは一品の料理なるがゆえに、いろいろな要素が加わっていると思うんです。スープが一番大事でしょうが、麺、その他を含めて、トータルでバランスしてなければ明確な印象のない味になるように思うんです。そして音もそういう気がしますけど、いかがでしょうか?
南 一緒のような気がします。
     *
この時も、私がテープ起こしをしてまとめているから、この時、菅野先生もラーメン好きなんだ、と思ったのは、いまでも憶えている。

とんかつもだけれど、ラーメンも昭和を代表する料理といえよう。
とんかつもラーメンも、昭和から平成、平成から令和とともに、変ってきたと感じるところもある。

どちらも(特にラーメンは)、不味いと感じる店は少なくなった。それから高価なとんかつ、高価なラーメンも登場してきて、受け入れられている。

それらのいくつかは食べたことがあるけれど、また行きたいと思う店は少ない。悪くはない。素材の一つひとつはいいものだと思うけれど、菅野先生が言われている《トータルでバランスしてなければ明確な印象のない味になる》を感じることが少なくない。特にラーメンは、その傾向を強く感じる。

麺もいい、スープもいい、具材もいい──、けれどおいしいと感じて夢中で食べる、というラーメンでないことがある。

89号に登場されている南 武二氏は、当時、金沢でラーメン店をやられていた。写真の説明文に、金沢の「南ちゃん」ラーメンといえば知る人ぞ知る存在である、と。

Google Mapsで、南ちゃんで検索してもヒットしない。Googleで、「金沢 南ちゃんラーメン」で検索すると、ナンチャンが表示される。

南ちゃんをみなみちゃんと読んでいたが、ナンチャンなのだろう。さらに検索していくと、昭和44年ごろ創業とあった。
ベストオーディオファイルの記事中に、店を持って22年とあるから、このナンチャンが「南ちゃんラーメン」で間違いないと思う。

金沢に行く予定はないけれど、機会があれば寄ってみたい。

Date: 10月 20th, 2026
Cate: アクセサリー

3M Novec Contact Cleaner(その2)

六年前に紹介した3MのNovec Contact Cleanerは重宝していた。オーディオ好きの友人、知人にも勧めていた。

Contact Cleanerとあるが、このクリーナーは電子機器内部の優秀なクリーナーでもある。プリント基板を洗浄したい時、私は、これを使っていた。

近々使いたいので、今日、用事が終ったあと秋葉原の海神無線に寄ったら、ない。訊いたら製造中止になった、とのこと。

代わりを見つけなくてはならなくなった。

Date: 10月 19th, 2026
Cate: 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(45真空管アンプ・その3)

小型出力管の45を、パワーアンプではなくラインアンプに使おうと考えて書いたのが(その1)なのだが、そこから五年、ようやく動き出した。

信号系のトランスは手持ちがある。抵抗やコンデンサーも、必要とする数が少ないので、すぐに揃う。
回路もすでに決めている──、にも関わらずそのままになっていたのは、真空管のソケット。
それも45用のUXソケットで、これだというモノがなかなか見つからなかったことが、一番の理由。

別項でも書いているように、いまでも新品のUXソケットは作られている。それらを使えば済むことなのに、なんとなく使いたくない、少なくとも45用のソケットとしては使いたくない気持があった。

ないものはしかたないのだから──、と考えもした。でも、この45アンプは、コントロールアンプとパワーアンプ間に挿れて使う。
つまり、なくても音は出せるわけで、そういうモノをあえて作って、45という直熱三極管の音を加えようというだけに、じっくり時間をかけて、使いたい部品(ソケット)が手に入ったら、そこからスタートしよう、と。

時々ヤフオク!やeBayで検索していた。日課としていたわけではないから、たまたまでいいモノが出品されているかどうか。いままでは、そう、うまいこといかなかった。

本当に、新品で、これならばと思えるUXソケットは少なくなっている。

やっとヤフオク!で見つけて、昨日落札した。

Date: 10月 18th, 2026
Cate: 再生音, 快感か幸福か

必要とされる音(その19)

1979年発行のステレオサウンド別冊HIGH TECHNIC SERIESの四冊目は、「魅力のフルレンジスピーカーその選び方使い方」。

巻頭座談会「フルレンジスピーカーの魅力をさぐる」は、岡 俊雄、菅野沖彦、瀬川冬樹の三氏による。

この座談会は、当時以上にいま読んだ方が、いろいろと考えさせられる──といっても、現在では読みたいと思ってもなかなか読めなかったりする。

瀬川先生が語られている。
     *
 ぼくは前号の「トゥイーター特集」のときに、トゥイーターを聴くための方便だったのですけれども、久しぶりにJBLのLE8Tの音を、それこそ丸三日以上続けて聴いて、その非常に素直な音に久々に感心したわけです。そして、やはりすごく反省しました。つまり、日頃聴きなれているJBL4343では出てこないような、ある種の素直さがあるのですね。もちろん、ローエンドもハイエンドも十分には出てこないので、「情報量」などという言葉を使うと明らかに何かが足りないのですけれども、同じ「情報量」という言葉を使っても逆に4343で出てこないものがLE8Tでちゃんと出てきているという感じがしたわけです。これならば素直に何時間でも聴いていられるな、という一種の安心感があるのですね。そこで、ぼくは最近何か大事な音を忘れていたのではないかという気持になって、矢も盾もたまらず、今回のフルレンジテストの一員に加えてくれ、といって強引に割り込んでなわけです。
     *
これを読んでどう感じ、どう思い、どう考えるかは、その人次第ではある。

Date: 10月 17th, 2026
Cate: 再生音, 快感か幸福か

必要とされる音(その18)

アルテックのA4というスピーカーシステムは、ラッパと表現した方がぴったりくる。
変換効率重視のウーファーとドライバー、エンクロージュアはフロントショートホーンで、ホーンは昔ながらのマルチセルラホーン。

周波数帯域も両端ともすっとのびているわけではない。典型的なナロウレンジのスピーカーである。

だからというか、いまどきのハイエンドスピーカーシステムのような細部の表現はしない。しない、というよりもできないといった方がいいのだろうか──、と思いながらも、ここでも瀬川先生が書かれたことを思う。

《楽器をいじる人にきいてもらうと、演奏のテクニックがいちばんよくわかるという》というのは、
別の意味での、別の次元での細部の表現が優れているということではないのか。

Date: 10月 16th, 2026
Cate: ショウ雑感

2026年ショウ雑感(その9)

一週間後に開催のインターナショナルオーディオショウ。今年、多くの注目を集めるのはB&WのD5シリーズと、JBLのSummitシリーズだろう。

どちらも多くの人がそれぞれのブースに訪れるだろうから、音を聴けるのだろうかと、思ったりもする。

D5シリーズもSummitシリーズも、オーディオ雑誌での評価は高い。ステレオサウンドの冬号の表紙は、JBLだろう。

Summitシリーズのフラッグシップモデルの写真を見ていると、私はつい4343と比較してしまう。

4343の登場から五十年。技術、音の変化以上に、デザインの変化に、思うところがいろいろある。

音を聴けば、それも変化するのだろうか。

Date: 10月 15th, 2026
Cate: 名器

名器、その解釈(JBL 4343の場合・その3)

JBLの4343は、ステレオサウンド 41号で登場している。1976年12月発売の号である。

二年後の49号の特集は、State of the art(ステート・オブ・ジ・アート)だった。
4343は、State of the artに選ばれている。

4343が名器かどうか。そのことについて書いているわけだが、4343は、いまふり返ってもState of the artだったと思っている。

49号の特集の冒頭は、それぞれのオーディオ評論家による“State of the art”の解釈が載っている。みんな、この解釈の難しさについて書かれていた。

“State of the art”を、どう解釈するかで4343はState of the artなのかどうかは違ってこようが、4343は名器とは少し違うと感じている私は、“State of the art”イコール名器とか解釈していないからこそ、4343はState of the artだと思う。

Date: 10月 15th, 2026
Cate: レスポンス/パフォーマンス

一年に一度のスピーカーシステム(その12)

別項で、「違いがわかっても、違いしかわからなかったりする」を書いている。
この、違いがわかっても、違いしかわからなかったりする人は、レスポンスのいい人とも評価されがちだ。

違いしかわからなくても、少なくとも違いはすぐにわかるのだから、その人はレスポンスがいいのは、その通りだろう。

でも違いしかわからないのであれば、そこにパフォーマンスの高さは、ない。

人に限った話ではない。スピーカーも同じだ。