Date: 10月 24th, 2026
Cate: ショウ雑感

2026年ショウ雑感(その12)

私がインターナショナルオーディオショウに行くようになったのは2002年からだった。
そのころからアキュフェーズとラックスのブースは隣同士だったと記憶している。

そのためだろう、この二つのブース前の廊下には、オーディオ関係者が大勢集まっている。特に初日はそうである。

その光景を、毎年一回のオーディオ関係者の同窓会のようだ、と思いながら眺めていた。

今年もそうだった。やっぱり、ここに皆集まっている、と。
でも、三年前にふたり、今年に一人、オーディオが縁で知り合い、親しくしていた友人が亡くなっているから、こちらの感じ方にも変化が芽生えてきた。

Date: 10月 23rd, 2026
Cate: ショウ雑感

2026年ショウ雑感(その11)

ヴァイタヴォックスのCN191について書きたいことはまだあるが、今年のオーディオショウでのことをいくつか先に書いておく。

あるブースで、アナログプレーヤーが鳴らされていた。10万円ほどの製品で、このプレーヤーの後に四倍ほどする上級機になった。

この上級機のアナログプレーヤーはダイレクトドライヴ型なのだが、音を鳴らすまでターンテーブルプラッターは停止していた。ディスクをのせて、針を降ろす直前で回転なのだが、出てきた音は、上級機らしいところは感じられるものの、なんとも見通しが悪い。一分ほどしたら、明らかに見通しが良くなる。こうなると上級機らしい良さも感じられるようになる。

アナログプレーヤーもウォームアップが必要なことはずっと以前から言われていた。特にダイレクトドライヴ型はそうである。

にも関わらず、このブースでは、そのことに無頓着のまま鳴らす。その結果の、一分弱の見通しの悪い音だ。

この明らかな音の変化を、このブースのスタッフは気づいていないのかもしれない。こういうことをメーカーの人に対し、指摘するオーディオ評論家もいないのかもしれない。

アナログディスク関連では、アイレックスのブースに入った時、ちょうどスタッフの方によるリニアトラッキングアームについての解説がなされていた。

ここでの説明は、リニアトラッキング型こそ理想に近いという幻想に捉われることなく、実際のリニアトラッキング型の動作について、カートリッジ側からされていた。

このことは1980年代から指摘されていたことだから、いわば常識ともいえそうなのだが、実際にはそうではなく、オーディオ評論家の中にもリニアトラッキング型の実際を理解している人少ないようだ。

アイレックスのブースでの説明は、リニアトラッキング型こそが──、と思っている人は聞かない方がいいのかもしれない。

Date: 10月 23rd, 2026
Cate: ショウ雑感
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2026年ショウ雑感(その10)

インターナショナルオーディオショウに行ってきた。会場着が11時すぎで19時までいたが、全てのブースを聴けたわけではなかった。

なので聴けた範囲での印象になってしまう。今日聴いた音で、もっとも印象に残ったのは、やはり今井商事のヴァイタヴォックス CN191だった。
私が聴いたのは14時からの回。アンプは、是枝重治氏製作。昨年のアンプとは違い、パワーアンプはPX25のシングルアンプで、出力は6W。

今年のCN191は良かった。明らかに昨年の音よりもずっと良くなっていた。音の安定感が大きく違う。
リヒターによるマタイ受難曲は、本当に素晴らしかった。最後まで聴かせてほしいと思うほどに、その音に神性が感じられた。
こういうマタイ受難曲が、オーディオショウで聴けるとはまったく思っていなかっただけに、よけいに素晴らしく感じられたのかもしれないが、このマタイ受難曲ははっきりと私の裡に残っているし、これからも残り続けるだろう。

Date: 10月 22nd, 2026
Cate: ディスク/ブック

Pablo Casals in Concert, Cellist & Conductor

2027年1月22日に発売になる“Pablo Casals in Concert, Cellist & Conductor”が、本当にすごい内容。

詳細はリンク先を見てほしい。演奏されたのは知っていたけれど、聴く機会が訪れることはあるのか……、とほぼ諦めていたベートーヴェンの第九がある。
他にも、この曲がカザルスの指揮で聴けるのか、と軽く昂奮するほどに、すごい。

Date: 10月 22nd, 2026
Cate: 純度

オーディオマニアとしての「純度」(その20)

自分の音に自信を持つ人は、けっこう多いことだろう。
けれど、自分の音に責任を持つ人は、どれだけいるのか。

Date: 10月 21st, 2026
Cate: 世代

とんかつと昭和とオーディオ(余談・その5)

伊藤先生は、ステレオサウンド 42号「真贋物語」で、
とんかつについて、《とんかつぐらいラーメンと共に日本人に好かれる食いものはない》と書かれている。

菅野先生は、ステレオサウンド 89号ベストオーディオファイル」で、ラーメンについて語られている。
     *
菅野 南さんはラーメンの専門家でおられるわけだけど、ぼくもラーメンは大好きでして、ラーメンというのは料理の傑作だと思っているんです。ルーツは支那かもしれないけど、やはり違って、日本独特なものだと思うんです。
 それにラーメンは一品の料理なるがゆえに、いろいろな要素が加わっていると思うんです。スープが一番大事でしょうが、麺、その他を含めて、トータルでバランスしてなければ明確な印象のない味になるように思うんです。そして音もそういう気がしますけど、いかがでしょうか?
南 一緒のような気がします。
     *
この時も、私がテープ起こしをしてまとめているから、この時、菅野先生もラーメン好きなんだ、と思ったのは、いまでも憶えている。

とんかつもだけれど、ラーメンも昭和を代表する料理といえよう。
とんかつもラーメンも、昭和から平成、平成から令和とともに、変ってきたと感じるところもある。

どちらも(特にラーメンは)、不味いと感じる店は少なくなった。それから高価なとんかつ、高価なラーメンも登場してきて、受け入れられている。

それらのいくつかは食べたことがあるけれど、また行きたいと思う店は少ない。悪くはない。素材の一つひとつはいいものだと思うけれど、菅野先生が言われている《トータルでバランスしてなければ明確な印象のない味になる》を感じることが少なくない。特にラーメンは、その傾向を強く感じる。

麺もいい、スープもいい、具材もいい──、けれどおいしいと感じて夢中で食べる、というラーメンでないことがある。

89号に登場されている南 武二氏は、当時、金沢でラーメン店をやられていた。写真の説明文に、金沢の「南ちゃん」ラーメンといえば知る人ぞ知る存在である、と。

Google Mapsで、南ちゃんで検索してもヒットしない。Googleで、「金沢 南ちゃんラーメン」で検索すると、ナンチャンが表示される。

南ちゃんをみなみちゃんと読んでいたが、ナンチャンなのだろう。さらに検索していくと、昭和44年ごろ創業とあった。
ベストオーディオファイルの記事中に、店を持って22年とあるから、このナンチャンが「南ちゃんラーメン」で間違いないと思う。

金沢に行く予定はないけれど、機会があれば寄ってみたい。

Date: 10月 20th, 2026
Cate: アクセサリー

3M Novec Contact Cleaner(その2)

六年前に紹介した3MのNovec Contact Cleanerは重宝していた。オーディオ好きの友人、知人にも勧めていた。

Contact Cleanerとあるが、このクリーナーは電子機器内部の優秀なクリーナーでもある。プリント基板を洗浄したい時、私は、これを使っていた。

近々使いたいので、今日、用事が終ったあと秋葉原の海神無線に寄ったら、ない。訊いたら製造中止になった、とのこと。

代わりを見つけなくてはならなくなった。

Date: 10月 19th, 2026
Cate: 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(45真空管アンプ・その3)

小型出力管の45を、パワーアンプではなくラインアンプに使おうと考えて書いたのが(その1)なのだが、そこから五年、ようやく動き出した。

信号系のトランスは手持ちがある。抵抗やコンデンサーも、必要とする数が少ないので、すぐに揃う。
回路もすでに決めている──、にも関わらずそのままになっていたのは、真空管のソケット。
それも45用のUXソケットで、これだというモノがなかなか見つからなかったことが、一番の理由。

別項でも書いているように、いまでも新品のUXソケットは作られている。それらを使えば済むことなのに、なんとなく使いたくない、少なくとも45用のソケットとしては使いたくない気持があった。

ないものはしかたないのだから──、と考えもした。でも、この45アンプは、コントロールアンプとパワーアンプ間に挿れて使う。
つまり、なくても音は出せるわけで、そういうモノをあえて作って、45という直熱三極管の音を加えようというだけに、じっくり時間をかけて、使いたい部品(ソケット)が手に入ったら、そこからスタートしよう、と。

時々ヤフオク!やeBayで検索していた。日課としていたわけではないから、たまたまでいいモノが出品されているかどうか。いままでは、そう、うまいこといかなかった。

本当に、新品で、これならばと思えるUXソケットは少なくなっている。

やっとヤフオク!で見つけて、昨日落札した。

Date: 10月 18th, 2026
Cate: 再生音, 快感か幸福か

必要とされる音(その19)

1979年発行のステレオサウンド別冊HIGH TECHNIC SERIESの四冊目は、「魅力のフルレンジスピーカーその選び方使い方」。

巻頭座談会「フルレンジスピーカーの魅力をさぐる」は、岡 俊雄、菅野沖彦、瀬川冬樹の三氏による。

この座談会は、当時以上にいま読んだ方が、いろいろと考えさせられる──といっても、現在では読みたいと思ってもなかなか読めなかったりする。

瀬川先生が語られている。
     *
 ぼくは前号の「トゥイーター特集」のときに、トゥイーターを聴くための方便だったのですけれども、久しぶりにJBLのLE8Tの音を、それこそ丸三日以上続けて聴いて、その非常に素直な音に久々に感心したわけです。そして、やはりすごく反省しました。つまり、日頃聴きなれているJBL4343では出てこないような、ある種の素直さがあるのですね。もちろん、ローエンドもハイエンドも十分には出てこないので、「情報量」などという言葉を使うと明らかに何かが足りないのですけれども、同じ「情報量」という言葉を使っても逆に4343で出てこないものがLE8Tでちゃんと出てきているという感じがしたわけです。これならば素直に何時間でも聴いていられるな、という一種の安心感があるのですね。そこで、ぼくは最近何か大事な音を忘れていたのではないかという気持になって、矢も盾もたまらず、今回のフルレンジテストの一員に加えてくれ、といって強引に割り込んでなわけです。
     *
これを読んでどう感じ、どう思い、どう考えるかは、その人次第ではある。

Date: 10月 17th, 2026
Cate: 再生音, 快感か幸福か

必要とされる音(その18)

アルテックのA4というスピーカーシステムは、ラッパと表現した方がぴったりくる。
変換効率重視のウーファーとドライバー、エンクロージュアはフロントショートホーンで、ホーンは昔ながらのマルチセルラホーン。

周波数帯域も両端ともすっとのびているわけではない。典型的なナロウレンジのスピーカーである。

だからというか、いまどきのハイエンドスピーカーシステムのような細部の表現はしない。しない、というよりもできないといった方がいいのだろうか──、と思いながらも、ここでも瀬川先生が書かれたことを思う。

《楽器をいじる人にきいてもらうと、演奏のテクニックがいちばんよくわかるという》というのは、
別の意味での、別の次元での細部の表現が優れているということではないのか。

Date: 10月 16th, 2026
Cate: ショウ雑感

2026年ショウ雑感(その9)

一週間後に開催のインターナショナルオーディオショウ。今年、多くの注目を集めるのはB&WのD5シリーズと、JBLのSummitシリーズだろう。

どちらも多くの人がそれぞれのブースに訪れるだろうから、音を聴けるのだろうかと、思ったりもする。

D5シリーズもSummitシリーズも、オーディオ雑誌での評価は高い。ステレオサウンドの冬号の表紙は、JBLだろう。

Summitシリーズのフラッグシップモデルの写真を見ていると、私はつい4343と比較してしまう。

4343の登場から五十年。技術、音の変化以上に、デザインの変化に、思うところがいろいろある。

音を聴けば、それも変化するのだろうか。

Date: 10月 15th, 2026
Cate: 名器

名器、その解釈(JBL 4343の場合・その3)

JBLの4343は、ステレオサウンド 41号で登場している。1976年12月発売の号である。

二年後の49号の特集は、State of the art(ステート・オブ・ジ・アート)だった。
4343は、State of the artに選ばれている。

4343が名器かどうか。そのことについて書いているわけだが、4343は、いまふり返ってもState of the artだったと思っている。

49号の特集の冒頭は、それぞれのオーディオ評論家による“State of the art”の解釈が載っている。みんな、この解釈の難しさについて書かれていた。

“State of the art”を、どう解釈するかで4343はState of the artなのかどうかは違ってこようが、4343は名器とは少し違うと感じている私は、“State of the art”イコール名器とか解釈していないからこそ、4343はState of the artだと思う。

Date: 10月 15th, 2026
Cate: レスポンス/パフォーマンス

一年に一度のスピーカーシステム(その12)

別項で、「違いがわかっても、違いしかわからなかったりする」を書いている。
この、違いがわかっても、違いしかわからなかったりする人は、レスポンスのいい人とも評価されがちだ。

違いしかわからなくても、少なくとも違いはすぐにわかるのだから、その人はレスポンスがいいのは、その通りだろう。

でも違いしかわからないのであれば、そこにパフォーマンスの高さは、ない。

人に限った話ではない。スピーカーも同じだ。

Date: 10月 15th, 2026
Cate: 604-8G, ALTEC

ALTEC 604-8G + Sansui EC10(その2)

サンスイのECシリーズのカタログの冒頭には、こうある。
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JBLのエンクロージャーは厳選した高級合板や硬質圧縮材を使用、不要な共産や振動を防ぐ卓越した設計をしているようにECシリーズも厳選した素材を使って、入念な手造りの仕上げをしています。EC-10、EC-20、EC-30はすべてバスレフ型エンクロージャーですが、その最大の特徴はバッフル板に18mm、13層の北欧産桜等厚合板を採用したことです。緻密な材質で、板振動特性に優れた桜合板製バッフル板がエンクロージャーとしての完成度を高めています。
北欧産桜等厚合板のバッフル板と特殊硬質パーチクルボードの天板、側板の接続は〝止め構造〟を採用しています。これはバッフル板を含めて全ての板面の接合面積が広いため、強度が高い一体化構造となり、しかも板振動も理想的なものです。
また、内部には米松の補強材を十分取り付けており、ウーファーの圧倒的な重低音再生にも箱鳴りや音像のくずれはありません。
     *
JBLのスピーカーシステムのエンクロージュアの材質を全て知っているわけではないが、少なくともECシリーズ登場以前で、北欧産桜等厚合板が使われたことはない、と思っているし、井上先生が、ステレオサウンド 62号掲載の「JBLスタジオモニター研究」で、このように書かれている。
     *
 また補強棧が多く使われていることも目立つ変化である。とくに、4343系と比較すれば、天板と底板に、横方向に大きな補強棧が使われているのが特徴である。この補強棧の使用法は、低域の再生能力を改善する目的で使われる例が多く、国産のスピーカーシステムでは低域の改善方法として採用されている標準的な手法である。裏板の補強棧の使用法も4343系と大きく異なるが、エンクロージュア側板の補強棧が、横位置から縦位置に変更されていることも含み、エンクロージュアの鳴きを抑える方向ではなく、適度に響きの美しさをいかす方向のチューニングであることがわかる。これは、バッフルボードに約19mm厚の積層合板が採用されていることからも明らかなことである。積層合板がバッフル板に使用されたのは、正式に公表されたものとしては(筆者は以前JBLのエンクロージュアで、同じ型番のものでも、チップボードを使ったり、積層合板を使ったりしているものを見ている)、JBL初のことと思われる。
     *
サンスイのECシリーズはJBLとの共同開発なのだが、一方的にJBL側からのアドバイスを受けての設計ではなく、サンスイ側からも提案がなされたのではないのか。

その結果、ECシリーズが登場し、そこでの成果が4343の後継機の4344のエンクロージュアに活かされているようにも思われる。

そのECシリーズのエンクロージュアにアルテックの604-8Gを取り付けるわけだから、エンクロージュアの響きは殺さず、歪めず鳴らしたいと考えている。

Date: 10月 14th, 2026
Cate: 604-8G, ALTEC

ALTEC 604-8G + Sansui EC10(その1)

アルテックの604-8Gのためのエンクロージュアをどうしようかとあれこれ探していた時、ヤフオク!を眺めている時間は長くなっていた。

アルテック純正の620A、620Bエンクロージュアが出品されているのも何度か見ている。
落札しようかと思いながらも、いまひとつ決心がつかなかったのは、オリジナルであることの面白みが欠けること、それにネットワークはオリジナルを使うつもりは最初からなったから、フロントバッフルに開けられているネットワーク用の開口部をどうするかが、主な理由だ。

不要な開口部はメクラ板でふさげばいいのだが、このメクラ板の仕上げをどうするか。黒で塗るにしても、なんとなくしまらない感じがする。

何度も入札の一歩手前で留まっていた。次に目をつけたのは、タンノイなRectangular Yorkのエンクロージュアだった。620エンクロージュアよりも少しばかり小さいのも気に入っていた。

ヤフオク!には、620エンクロージュアよりも出ている。それらを眺めていて気づいたのは、フロントバッフルのユニット取付用開口部の中央、垂直に補強桟が入っているモノとないモノとがある。

Rectangular Yorkは、私がオーディオに興味を持つ以前の製品ということもあって、詳細をそれほど知らない。とはいえ、この違いは気になる。

Rectangular Yorkで画像検索していくと、搭載ユニットがHPD385に変更になってから、この垂直の補強桟が設けられたようである。
なぜかというと、HPD85になりユニットの重量が増している。アルテックもタンノイの同軸型ユニット、特にアルニコ時代のモノは重いだけでなく、ユニットの奥行きも長い。

このことはフロントバッフルへの荷重が、かなりあるというこたで、それだけフロントバッフルにはテンション(ストレス)がかかっている。

おそらくだが、開口部垂直の補強桟がなければ、HPD385になってからの荷重に、Rectangular Yorkのフロントバッフルは耐えられなくなっていたのだろう。

フロントバッフルへの荷重が増してテンションも大きくなると、フロントバッフルの響きは、それまでとは違ってくる。