Siemens Eurodyn + Decca DK30(その5)
野口晴哉氏のオイロダインを鳴るようにしたのは、2024年5月。
オイロダインの裏側にはカバーがかけられていた。このカバーを外すと、少なくとも五十年以上、
野口晴哉氏が所有されてからだと、おそらく六十年くらいか、
それだけの月日が経っているとは思えぬほどのコンディションだということが、
見ただけで伝わってきた。
これは、今回、デッカのリボン型トゥイーターを鳴らすため、その結線のため、
オイロダインの裏側に回って、改めて実感していた。
オイロダインもデッカも、スピーカー端子はネジ式である。
このネジの状態が、まるで違う。
デッカの方は、長い年月が経っていていることを感じさせる。
そうだよなぁ、五十年以上経っているのだからと思いながら、
ネジを外して、端子まわりをきれいにしていった後で、オイロダインに目を向けると、
造りが違うとは、こういうことをいうのだな、と感心するほどに、輝きを失っていない。
ネジひとつとっても、メッキ処理が大きく違うのか、と思える。
劇場で、スクリーンの後ろという、決してスピーカーにとって、いい環境とはいえないところで、
連続して何時間も音を鳴らしていくスピーカーとしての造りが、そこにはある。
デッカは、そういう使われ方を想定したスピーカーユニットではない。
あくまで家庭用のスピーカーであって、お金を稼ぐためのスピーカーと同次元で比較するのが間違っているのはわかっている。
それでも野口晴哉氏のリスニングルームで、この二つのスピーカーが近接して取り付けられていて、それを間近で接すれば、どうしても比較してしまう。
オイロダインは、くたびれない。そう感じていた。