Date: 12月 10th, 2025
Cate: audio wednesday

audio wednesday (next decade) –第二十二夜(再開)

一週間後の水曜日に、audio wednesday 二十二夜を行う。
前回書いているように、スペース的に大勢入れるわけではないので、非公開に近いかたちでの開催となる。
それでも楽しみにしてくれている人がいる。

私もこんなに早く再開できるようになるとは思っていなかったので、嬉しい。

今回は顔見知りの人たちばかりなので、少しばかり細かいことをやっていこうかな、と考えている。
audio teach-in的なこともやっていきたいし、話す時間も増やそうと考えている。

毎月開催できるかどうかはいまのところなんとも言えないが、それでもできる場があり、手を貸してくださる人がいる。

ありがたいことだ。

Date: 12月 9th, 2025
Cate: ステレオサウンド

管球王国の休刊(その6)

管球王国が10月発売の号で休刊となった。
タムラが管球式アンプ用のトランスの製造をやめることが発表されている。
秋葉原の万世書房も、年内で閉店する。

これらのことは偶然重なっているだけなのだろうが、
これからの日本のオーディオの行く末を暗示しているように捉えることもできなくはない。

だから暗澹たる思いになってしまう人がいてもおかしくない。
けれど、こうなることはずっと以前から予想できていたことだ。

管球王国は、この中でも顕著だった。
以前書いているように創刊当時の編集方針は劣化していった。

実名は出さないが、メインの書き手の一人の、管球王国周辺の癒着(そう言っていいと思っている)は、
誌面からも伝わってくるほどだった。

それを隠そうともしていなかった。読者をバカにしていたのか、と思うほどだ。

真空管アンプ作りが好きな友人からも、あの人の癒着ぶりはすごいですね……、と言われたことがある。
彼はそれほど熱心に読んでいなったはずなのに、誌面からそのことを感じとっていた。

それを長年継続してきた。
管球王国という雑誌を楽しみにしていた人たちは、このことをどう思っていたのか。

癒着ぶりを全く感じてなったのか。だとしたら、オメデタイとしか言いようがない。
気づいていたとしたら、なぜ、問題視しなかったのか。管球王国の編集部に、なんらかのアクションを起こそうとしなかったのか。

Date: 12月 8th, 2025
Cate: Noise Control/Noise Design

Noise Control/Noise Design(無防備な音)

ここでのテーマであるNoise Control/Noise Designについてあれこれ考えていて、ふと浮んできたのが「無防備な音」だった。

「無防備な音」で何か書こうとしたまま、半年が過ぎた。
そうだと思い、試しに生成AIで「無防備な音」とだけ入力して作文させてみた。
     *
無防備な音——それは、静寂の中に不意に現れ、こちらの心をゆさぶるもの。例えば、夜の街に響く遠くの電車の音、誰もいない部屋で落ちる水滴の音、森の奥から聞こえる小さな枝の折れる音。それらは、意図もなく、飾りもなく、ただ世界の中に存在している。耳を澄ませると、無防備な音は日常をそっと揺らし、私たちの心に柔らかな隙間を作る。
     *
ChatGPTによる「無防備な音」は、偶然にもここでのテーマに沿う。

Date: 12月 8th, 2025
Cate: 「オーディオ」考

時代の軽量化(その23)

何かを教わることの恍惚感。

スピーカーを通して音楽を聴く行為、それを長いこと続けられるのは、何かを教わることの恍惚感があったことだろう。

それは教わるでもあり、学ぶでもあり、
新たな景色に触れる歓びなのかもしれない。

知らなかった扉が開く。
その扉は、ずっと目の前にあったにも関わらず、それまで気づかずにいた。

そういう扉が開く瞬間に訪れるのが恍惚感なのか。
この恍惚感なしに教養が身につくことはないだろう。

Date: 12月 7th, 2025
Cate: PM510, Rogers, 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(ロジャース PM510・その9)

BBCモニター系列のスピーカーの音に惹かれることは、すでに書いてきているが、
ここでBBCモニターの音と書いても、それがあまり意味を持たないこともわかっている。

私にとってのBBCモニター系列のスピーカーを挙げると、もちろんロジャースのPM510、それからロジャースのLS3/5A(15Ω)、
スペンドールのBCII、あとハーベスのMonitor HLあたりとなる。

LS3/5Aはいまでも人気の高いスピーカーだし、ロジャース以外にも製造していたメーカーはいくつかあったし、
いまも復刻モデルが手に入るから、上に挙げたスピーカーの中では最も聴かれているといっていい。

オーディオショウでも何度も聴いているし、個人宅でも聴く機会は複数回あった。
どれも同じ音で鳴っていたわけではない。同じ音で鳴っていることを期待していたわけではないし、オーディオとはそういうものではない。

けれど、それらで聴けたLS3/5Aの音に、私が惹かれるBBCモニターの音を感じたことはなかった。

私が初めて聴いたBBCモニターのスピーカーは、BCIIだった。
瀬川先生が熊本のオーディオ店に来られた時に鳴らされたBCIIの音だ。

Date: 12月 6th, 2025
Cate: ジャーナリズム

レコード芸術ONLINE(その3)

レコード芸術が休刊になり、レコード芸術ONLINEに移行して一年。
有料会員は増えているのかどうかはわからないし、関心もない。

関心があったのは、紙の本からインターネットになっても、レコード・アカデミー賞を続けるのかどうかだった。

新レコード・アカデミー賞として、またやるという。

これを聞いて、有料会員になろうという人がいるのだろう。
でも私は、有料会員になろうとは、もう思わない。

Date: 12月 5th, 2025
Cate: 音影

音影と陰翳礼讃(その3)

優れたワンポイント録音こそ、ここでのテーマの実証例なのだが、
世の中にはワンポイントであれば優れた録音になると思い込んでいる人もいて、
そういう人たちによるワンポイント録音をいくつか聴いたことが、ずいぶん前にある。

だからこそ「優れたワンポイント録音」と書くしかない。

Date: 12月 5th, 2025
Cate: オーディオ評論

評論と評価/「表」論と「表」価(その3)

別項「時代の軽量化(その22)で、知識だけでは教養を持てるわけではない、と書いた。

評論が「表」論に、評価が「表」価に成り下ったのも、そこに教養が存在しなくなったからだろう。

Date: 12月 4th, 2025
Cate: 1年の終りに……

2025年をふりかえって(その7)

別項で何度か書いたことを、ここでも書く。

「私のオーディオの才能は、私のためだけに使う。」

三十年ほど前の私は、こんなことをいっていた。
そんな私に、
「せっかくの才能なんだからオーディオの仕事をしたらどうですか」
「何か書いたらどうですか」、「書いてくださいよ」
そういってくれていた。
しつこいくらい言われていた。

それでも「私のオーディオの才能は、私のためだけに使う。」と返していた。嘯いていたのかもしれない、といまは思う。

くり返しそう言ってくれたのは早瀬文雄(舘 一男)さんだ。

1985年からのつきあいの中で、疎遠となった時期もある。お互いに、なんだ、こいつは、とおもったこともある。
それでも舘さんは、私のオーディオの才能を認めてくれていた。

今頃になって、そのありがたさを噛み締めている。
今年10月から、the re:View (in the past)で、早瀬さんの文章を、だから公開している。

Date: 12月 3rd, 2025
Cate: オーディオの「美」

人工知能が聴く音とは……(その11)

生成AIで、画像も動画もつくれる時代。
私が知らないだけかもしれないが、オーディオ機器の試聴用音源も、生成AIによるものが出てくるのか。

すでに出ていてもおかしくないと思っている。
高音質音源として生成AIがつくり出すだけでなく、
オーディオ機器のそれぞれの違いが、誰の耳でもはっきりわかるような音源もつくれるはず。

そんな音源が登場したとしよう。
その音源で高い評価を得るオーディオ機器が、
市販されている音源(録音された音楽)を聴いて、どう評価されるのか。

同じ評価となるのか、まったく違ってくるのか。
違ってきたとしても、なぜ違いが生じるのかをフィードバックしていくことで、
生成AIがつくり出す音源は改良されていくだろうし、音質評価の深いところに光が当てられていくかもしれない。

Date: 12月 2nd, 2025
Cate: きく

音楽をきく(その8)

「東島丹三郎は仮面ライダーになりたい」というマンガがある。ことしからアニメも放送されている。

主人公の東島丹三郎だけでなく、彼の周りの人たちの仮面ライダーへの愛情は、はっきりと異常である。

いい歳した大人が仮面ライダー、それも昭和の初期の仮面ライダーに夢中になって、それを引きずったまま生きている──、滑稽だと笑う以前に、
なぜ、そこまで仮面ライダーなのか、と若い世代の人は疑問に思うだろう。

仮面ライダーは、シリーズとしてずっと続いている。
昭和の仮面ライダー・シリーズがあり、平成の仮面ライダー・シリーズがあり、
いまは令和の仮面ライダー・シリーズがある。

世代によって子供の頃、見ていた仮面ライダーは、それぞれ違う。

仮面ライダーの最初の放送は、1971年。私は8歳、小学生だった。

前回書いたように、当時の熊本の民放テレビ局はわずかだった。
そんな状況での仮面ライダーだけに、クラスの男子はほぼ全員見ていたといってもいい。
カード付きの仮面ライダー・スナックも売り出されていて、こちらもほぼみんな集めていた。

当たりのカードが出ると、専用のカードアルバムがもらえた。みんな夢中だった。

そんな時代の小学生だったからこそ、「東島丹三郎は仮面ライダーになりたい」の主人公たちの気持がわかる、と言いたくなる。

もし、あの時代、テレビのチャンネルが東京のようにいくつもあったら、どうだったろうか。
仮面ライダーはそれでも人気番組だったろうが、クラスの男子ほぼ全員が見ていたとはならなかったはずだ。

Date: 12月 1st, 2025
Cate: ハイエンドオーディオ

ハイエンドオーディオ考(その24)

昨春、この項で、DBシステムズのDB1+DB2のことを書いた。
他の人はどうなのかは関係なく、私はDB1+DB2をハイエンドオーディオ機器の一つとして認識しているし、
その理由として、可能性について書いている。

可能性とは、ワクワクする(させてくれる)ものだし、
それは何かを変えてくれる(くれそうな)パワー(活力)であるせん、と。

デザイナーのミルトン・グレイザーの言葉がある。

“There are three responses to a piece of design—yes, no, and WOW! Wow is the one to aim for.”

DeepLによる訳をコピーしておく。

デザインに対する反応は三つある——「はい」「いいえ」、そして「すごい!」だ。目指すべきは「すごい!」である。

Wowを、あの時代、私はDB1+DB2から感じた。

別項で、パイオニアのExclusive M4との組合せについても書いている。
Exclusive M4は、ハイエンドオーディオ機器なのか。

私の答は、Exclusive M4もそうである。
DB1+DB2とExclusive M4が現行製品だった時代は、そう感じた。

Exclusive M4の音には、DB1+DB2とは違った意味でのWowを感じた。

Date: 11月 30th, 2025
Cate: 「オーディオ」考

時代の軽量化(その22)

音楽の知識が豊富な人、オーディオの知識が豊富な人は意外と多かったりする。
キャリアが長いから、知識が豊富とは限らないのだが、それでも豊富な人はけっこういるものだ。

けれどそれらの人全員が、音楽の教養がある、オーディオの教養がある、と感じさせるわけではない。
むしろ教養があるな、と感じさせる人は、かなり少ないと感じている。

知識だけはあるのに教養はない──、とでも言ったらいいのか。

以前どこかで目にしたのは、知識だけではだめで、愛があってこそ教養となる、というものだった。

検索してみると、愛を経てこそ、愛を触媒として、が表示される。

誰が言い出したことなのかは知らない。
それはどうでもいいことで、知識が豊富でも教養がない人は、確かに愛が欠けている人といえよう。

反論があるのはわかっている。
オーディオ愛なんて言っていて恥ずかしくないのか、そんなことを言う人もいる。
オーディオに教養? という人もいよう。

そういう時代なのか。

Date: 11月 29th, 2025
Cate: audio wednesday

audio teach-in

瀬川先生が、熊本のオーディオ店に定期的に来られていた試聴会の名称は、オーディオ・ティーチイン(audio teach-in)だった。

先日、ある方からのメールに、《宮﨑さんのナレッジを基礎的な部分だけでも講義してくれませんか》とあった。

そう思ってくれる人は少数だろうが、来年のaudio wednesdayでは、audio teach-in的なことを含めてやっていければと考えている。

Date: 11月 28th, 2025
Cate: 映画

映画の音、ホームシアターの音(その3)

ステレオサウンドのオーディオ評論家で、ホームシアターに積極的に取り組まれていた山中先生。

記憶違いでなければ、ホームシアター用のスピーカーとして、チェロのSTRADIVARI GRAND MASTERを鳴らされていた。

チェロのスピーカーシステムは、ARのLSTをベースにしたAmatiだけしか聴いたことがない。
STRADIVARI GRAND MASTERを始め、STRADIVARIシリーズは、どれも聴いてないのだが、
それでも山中先生が、STRADIVARI GRAND MASTERを選ばれ、そしてホームシアター用のスピーカーとしても鳴らされていたのは、
なんとなくでしかないが、わかる気がする。

ホームシアター用のスピーカーに求めるものは、人によって違ってきて当然だから、このスピーカーこそが最適とは、誰にも言えないはず。

好きなスピーカーでホームシアターを楽しむ。
それでいいと思いながらも、もし私がこれからホームシアターに、のめり込むまではいかなくとも、
ある程度、こだわってみたいとなると、スピーカーはBOSEの901を、まず試してみたい、と考える。