Date: 1月 5th, 2026
Cate: アナログディスク再生

Wilson Benesch Circle(その6)

早瀬文雄(舘 一男)さんは、黒色を嫌っていた。
ヤマハのGTR1を使っていた時も、黒が嫌だからと塗り替えていた。

なのでGYRODECのブラック仕上げを選ぶことはなかったはず。
Wilson BeneschのCircleは石臼みたいなアピアランスで、
ターンテーブルプラッターは半透明の白っぽい感じだが、ベース部は黒。

舘さんがCircleを使っていた時、これがメインのアナログプレーヤーだった。
なのに私に「使いませんか」と譲ってくれたのは、黒だったことも理由の一つのように思っている。

音は気に入っている、いいプレーヤーだ、と彼はCircleを高く評価していたから、黒だったからだろう。

ターンテーブルプラッターがまわっているのを、ぼんやり眺める。
GYRODECには、そういう視覚的な楽しさがある。Circleにはない。

こうやって書きながらも、どうして舘さんがGYRODECに、あそこまで惚れ込んでいたのか、その理由ははっきりとはわからない。

考えるだけ無駄といえばそうなのだけれど、目の前にCircleがあって、たまにLPをかけると、とりとめもなく考えてしまったりする。

Date: 1月 4th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・その2)

あるエンジニアの方いわく、
マランツのModel 10Bは通信機の造りだが、マッキントッシュはラジオだ、と。

Model 10Bと同時代のマッキントッシュの管球式チューナーを比較すると、確かにそうだと頷きたくなる。
マッキントッシュだけではなかった。
この時代のすべてのチューナーは、いわゆるラジオだった。

チューナーなのだからラジオでいいだろう、
そのラジオの中で普及機、高級機があって、マッキントッシュは高級ラジオ(チューナー)だった。

けれどModel 10Bは、そこにはいなくて通信機レベルのチューナーだった。

今の中古相場しか知らない人は信じられないだろうが、1970年代、’80年代はModel 7よりもModel 10Bの方が、明らかに高価だった。

それに当時のオーディオ誌では、マランツがスーパースコープに身売りするきっかけとなったのが、
Model 10の開発に予算と時間をかけすぎたため、というのが載っていた。

そういうすごいチューナーだが、Model 10Bの音を聴いているのといえば、聴いていない、というしかない。

まったく聴いたことがないわけではない。Model 10Bが受信したFMの音は、一回だけ聴いている。
とはいえ同じ条件で、他のチューナーと比較試聴したわけではない。

もっともチューナーの比較試聴は、まず無理である。チューナーの音について語るには、一ヵ月ほど自宅で使用して、次の月には別のチューナーにしてみる。
そんなふうにじっくり時間かけて使ってみないことには、チューナーの音を語ることはできない。

それでもModel 10Bは、いまでも欲しいのは「五味オーディオ教室」から、私のオーディオは始まっているからだ。

瀬川冬樹氏のこと(ロジャース PM510・その11)

ロジャースのLS3/5Aは、私にとってどういう存在、位置づけかというと、
非常に私的なスピーカーシステムということだ。

オーディオを介して音楽を聴くという行為は、私にとってはひとりで音楽を聴く行為である。

ひとりで好きな音楽を聴く。
それは、その姿を誰かに見られたら気恥ずかしいと思える音楽を、その音楽にふさわしい音で聴く、ともいえる。

LS3/5Aで、好きな女性ヴォーカル、それも歌い上げる歌手ではなく、
そっとささやくように歌う歌手を聴いているところを想像してみてほしい。

私は、その時の姿を誰かに見られたくないと思うし、
そんなこと一度も想像したことがない、という人の鳴らすLS3/5Aの音は、
私が思い描いているLS3/5Aの音とは、まったく別ものでしかない。

何人かのオーディオマニアのお宅で鳴っていたLS3/5Aは、そうではなかった。
オーディオショウで聴いた、いくつかのLS3/5Aの音もそうではなかった。
だからといって、ひどい音で鳴っていた、というつもりではない。

LS3/5Aというスピーカーの捉え方がまるで違うだけのことだ。

Date: 1月 3rd, 2026
Cate: audio wednesday

audio wednesday (next decade) –今後の予定

1月のaudio wednesdayは14日です。
2月と3月は4日です。

開催場所の関係で人数制限があります。参加希望の方は、私宛にメールで連絡ください。無料です。

Date: 1月 3rd, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・その1)

出逢ったのは秋なのでもう少し先になるのだが、今年は「五味オーディオ教室」から始まった私のオーディオ歴は五十年になる。

一つの節目なので、私が欲しい、欲しかったと思ったオーディオ機器について書いていく。

チューナーからにしたのは、たまたま。すぐ目につくところにあったステレオサウンド別冊の表紙が、セクエラだったからだ。

TIDALやQobuzがなかった時代、チューナーの存在は大きかった。
18まで住んでいた熊本は、その頃は民放のFM局はなく、NHKのみ。
それでもケイト・ブッシュの歌と出逢えたのは、夕方の番組だった。
ケイト・ブッシュと出逢えたことだけでも、チューナーを持っていてよかった、
エアチェックしておいてよかった、といまでも思っているくらいだ。

五味先生は、FMのエアチェックに熱心だったことは「五味オーディオ教室」からも伝わってきた。

年末に放送されるバイロイト音楽祭、それから日本で行われるコンサートの生中継のエアチェックのために、
マランツのModel 10Bを使われていた。

当然、最初に憧れたチューナーはModel 10Bだ。

Date: 1月 2nd, 2026
Cate: ハイエンドオーディオ

ハイエンドオーディオ考(その25)

1988年に登場したビクターのSX1000は、ダイアモンド振動板を採用した。
いまではハイエンドオーディオのスピーカーシステムにも、ダイアモンド振動板は使われている。

ダイアモンド振動板だから、ということで驚くことはとうの昔になくなった。

ハイエンドオーディオの世界は、2024年に一億円を超えるスピーカーシステムが登場した。
2025年は、さらに上まわる二億円のスピーカーシステムも現れた。
こうなると、今年はもっと高価なスピーカーシステムが登場するのかもしれない。

もしかするとダイアモンドエンクロージュアのスピーカーシステムが、そう遠くないうちに現れるかもしれない。

最初は中高域のエンクロージュアのダイアモンド化であっても、それが受け入れられたとしたら、
ウーファーのエンクロージュアまでダイアモンド化──、そんな時代がいつくるのか。

私が生きているうちに登場したとして、はたして“Wow”というだろうか。

(その24)で、
デザイナーのミルトン・グレイザーの言葉を引用している。

“There are three responses to a piece of design—yes, no, and WOW! Wow is the one to aim for.”

言わないような予感だけがある。

Date: 1月 1st, 2026
Cate: オリジナル

オリジナルとは(想いとの関係性)

1981年、ステレオサウンド編集部宛に手紙を何度も書いては送っていた。
やってほしい企画を、思いつくかぎり書いては送っていた。

この手紙を、面白いやつがいる、と思ってくれた人がいたから、ステレオサウンド編集部で働くようになった。

1981年のことだから、紙に手書き。それを送っていたのだから、私の手元には何も残っていない。
それが手紙というものだ。

1997年からインターネットをやるようになって、友人と電子メールでやりとりするようになった。
最初は気づかなかった、というよりも意識していなかったのだが、
電子メールは送信したメールも、パソコンの中に残っている。

そのことを当たり前のように受け止めていたのだが、ふと、私のところに残っている、この送信メールはオリジナルなのか。
そんな疑問がわいてきた。

理屈では残っているメールがオリジナルで、送信したのは、そのコピーである。

けれど、ここに、なんらかの想いが絡んでくると、本当にそうなのか、とも思えてくる。
なんらかの想いを込めて送信したメールこそがオリジナルであって、
パソコンなりスマートフォンの中に記録されている送信済メールは、
コピーでしかない(事務的なメールを、そんなふうに感じたことはない)。

いつのころからか、あっ、送ったメールのコピーが残っている──、そんなふうに思うようになった。

Date: 12月 31st, 2025
Cate: 1年の終りに……

2025年の最後に

昨年11月に、父が倒れた。
90の誕生日の二日後だった。

大きな病院での検査の結果、国指定の難病だった。
今年5月に亡くなる。半年の入院だったわけだが、父は本の差入れを求め、ずっと読んでいたそうだ。

80半ばまで週一回テニスをしていた。
惚けることもなく、それまではずっと健康といえた。

母は足腰が弱ってきているものの、惚けることなく元気でいてくれている。

オーディオはお金もかかるし、時間も必要とする。
私は長男だから、いつかは親の介護で実家に帰ることになるだろう──、と若い頃から思っていた。

そのころからずっと東京で暮らしたままオーディオをやっていられる。
それだけで幸せだし、幸運だったとも思っている。

Date: 12月 31st, 2025
Cate: アナログディスク再生, 老い

アナログプレーヤーのセッティングの実例と老い(その17)

X(Twitter)に投稿されていたショート動画を見たばかり。
私が知らないだけで、ある程度有名なレコードコレクターの方が、レコードをかける動画だった。

無雑作にセンタースピンドルの先端で、レコードの中心孔周辺を擦っている。
いわゆるヒゲをつけまくるレコードのかけ方だ。

レーベルにヒゲがつこうが、音が刻まれている盤面には関係ない──、そういう感覚、認識なのだろう。

そんな人がレコードコレクターとして、そこそこ知られている。
人が、というよりもオーディオ界そのものが老いてきているような気さえする。

Date: 12月 31st, 2025
Cate: オーディオマニア

五条件(その11)

特定のオーディオ・ブランドの信者の、その精神(姿勢)は、けっして探究心ではなく、
ゆえに視野狭窄に陥り、いわゆる教祖に従おうとする──、
そういう見方もできる。

Date: 12月 30th, 2025
Cate: オーディオマニア

五条件(その10)

信者、それも熱心な信者ほど視野狭窄になるようだ。少なくともオーディオに限って、そう言える。

視野狭窄になって、信じる、そのブランドの製品しかいいモノとは思えなくなるのは、信者にとってはシアワセなことだろう。
だから、よけいに自然と視野狭窄に進んでなっていくのか。

これも本人だけのことであれば、何も言うことはないのだが、そのブランドの製品を周りにも薦める。

しかも完璧、もしくは完璧に近いモノのように薦めてくる。
本当に完璧、完璧に近いモノであれば、新型や改良型が、そのブランドから登場するはずもないのに──、そんなことにも気づかないくらいに陥っている。

周りの人は、冷静に信者が薦める製品を見ている。良さもあれば、そうでないところもあるのを感じている。

けれど信者は違う。
視野狭窄になってしまっているために、逆に、そのブランドの製品の全てが見える(聴けている)とはいえない。
視野狭窄ゆえにいいところだけ、しかもそれもかなり狭い範囲でしか聴けなくなっていることを自覚していない。

それでは説得力を持たない言葉を力説するだけになる。
そして、誰もわかってくれない。
このブランドの良さがわかるのは私だけ、となるのかもしれない。

そうなった時に、同じく信者に出会えば意気投合する。固く結ばれる。
今はソーシャルメディアがあるから、昔と違って信者同士が繋がりやすい。一人が二人、三人、四人……、と増えていく。
そして彼らが集まれる「教会」を手に入れようとする。

Date: 12月 29th, 2025
Cate: オーディオマニア

五条件(その9)

オーディオ・ブランドには、多かれ少なかれファンがつく。
古くからのブランドだと、けっこうな数のファンがいて、その人たちだけを相手にしても商売が成り立つのかもしれないし、
また、そのブランドのファンが広報の役割を果たしてくれたりするものだろう。

マッキントッシュも、そういうオーディオ・ブランドの一つであって、
ファンの中には、(その8)で書いているような人も生まれてくる。

ファンを超えて信者となってしまう。そうなると、そのブランドの製品は全て素晴らしいと、その人の中ではなってしまう。

それが、その人の中だけのことであれば、何も言わないのだが、信者も熱心な信者になるほど、周りの人たちを信者にしようとする。
新興宗教の信者と同じと言っていいのかもしれない。

どうして周りを巻き込もうとするのか。
彼らは善意ゆえの行動と思っているのかもしれないが、常軌を逸しているのでは──、と感じてしまうことがないわけではない。

ソーシャルメディアを眺めていると、そんな信者の投稿が、時に表示される。
自分たちだけがわかっている──、そういう位置からの投稿のようにも感じる。

彼らは何を最終的に求めているのか。
いい音ではなく、彼らにとっての「教会」なのではないか、と思えてならない。

Date: 12月 28th, 2025
Cate: アナログディスク再生

Wilson Benesch Circle(その5)

早瀬文雄(舘 一男)さんのスピーカー遍歴はすごいが、アナログプレーヤー遍歴もなかなかだった。

マイクロのSX8000IIにSMEのSeries Vの時もあれば、BARCO-EMTの復刻930stの時もあったし、ガラードの301、
いま私の元にあるWilson BeneschのCircleなどがある。
他にも記憶しているアナログプレーヤーはあるが、
書きたいのはそれらのことではなく、
J.A.ミッチェルのジャイロデックのことだ。

いまではMichell(ミッチェル)となっているが、
1980年代に輸入されていたころは、J.A.ミッチェルという表記だった。

GYRODECが、最初に日本に紹介された。
舘さんは、このGYRODECにベタ惚れだったと言っていいくらいに、そのデザインを高く評価していた。

メインのアナログプレーヤーとして使っていた時もあれは、サブ用として、
舘さんのリスニングルームには、常にGYRODECがあった。

私の記憶違いでなければ、一度手放してまた購入されている。

見ているだけで満足という感じでもあった。

いまではブラック仕上げもあるが、舘さんはシルバー仕上げだった。

Date: 12月 27th, 2025
Cate: 老い

老いとオーディオ(齢を実感するとき・その29)

オーディオマニアとして齢を実感するのは、私の場合、人それぞれだ、と思うことが増えてきたことによってだ。

昔は、若かった頃は、ムキになって説明することもあった。
どうして、このことがわかってくれないのか、どうすれば理解してくれるのか──、
そこにエネルギーを費やすことがあった。

でも、ほぼ過去形になっている。
最初から諦めているわけではないが、何度か言葉を交わしていれば、わかってくる。

この人には、どれだけ言葉を尽くしても……、ということがだ。

人それぞれだから、この人には……、となる。
そういう時に、齢をとったのかなぁ、と思うわけだが、いや待てよ、と思うところもある。

相手にオーディオのことをもっと理解したいという熱があるのならば、それに応えようという気持は、まだある。

そうではなくて、要領よくやろうとしている人、横着な人、
オーディオの体系化された知識ではなく、ウワサ話的なことに興味がある人、
目の前のオーディオマニアが、そんな人たちなのかどうかが、昔よりも判別つくように、こちら側がなったということも関係していよう。

Date: 12月 26th, 2025
Cate: アナログディスク再生

Wilson Benesch Circle(その4)

私のところにあるWilson Beneschのアナログプレーヤー、Circleは、舘(早瀬文雄)さんが使っていたモノである。

舘さんが東京から京都にクリニックを移し引越しする時に、使ってください、と言ってくれたモノだ。

カートリッジはZYXが付いていたけれど、カンチレバーは折れていた。うっかりプラッターにぶつけて折ってしまったとも言っていた。

そんなうっかりがあるかな、と思ったけれど、自分で使ってみると、そのうっかりはたやすく起ってしまうことに気づく。

アームレストの固定が緩いから、すぐにトーンアームが外れてしまいプラッターにぶつかる。
運が悪ければ、カンチレバーが折れる。
舘さんもそうやってのことだったのだろう。