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Date: 7月 11th, 2014
Cate: 音楽性

「音楽性」とは(映画性というだろうか・その7)

スパイダーマンの映画については、あれこれ書いていきたいことはあるけれど、
オーディオとの関係性はほとんどないので、ここはがまんするとして、
「アメイジング・スパイダーマン2」を3D+ドルビーアトモスで観た人ならば、
「アメイジング・スパイダーマン2」は映画だな、と誰もが思うはずだ。

私が小学校にあがる前までごろはうちにあるテレビはモノクロだった。
ブラウン管のサイズも小さかった。
それがカラーになり、サイズも大きくなっていった。
それでも私が実家にいたころは21インチだった。

その数年後に三菱電機から37インチのテレビが登場した。
そのころはステレオサウンドで働いていたし、となりのHiVi編集部に、
この37インチが運ばれてきた日のことは、憶えている。

大きいことは予想していたけど、その奥行きは予想以上だった。
こんなにも大きいのか、37インチでこれだけの奥行きを必要とするのであれば、
もっと大きなブラウン管だと、どれだけ奥に長くなるのか。

技術は進歩していくから、同じインチでも奥行きは短くなっていくであろうが、
それでもブラウン管を使っているかぎり、テレビの大画面には無理がある、と思っていたし、
そのころは、いまのようにここまで家庭のテレビが大型化するとはまったく予想していなかった。

家庭のテレビはどこまで大きくなっていくのか。
大きくなっていくことで、昔以上に考えさせられるのは、映画とテレビの、
それぞれの作品の違いとはいったいなんなのか、である。

どちらも映像作品であるわけだが、何が映画としての作品であり、テレビとしての作品を、
われわれにそう認識させているのだろうか。

Date: 9月 18th, 2008
Cate: 音楽性

「音楽性」とは(その1)

「音楽性」という言葉ほど、便利な言葉はないように思っている。
この機種は音楽性がある、とか、豊かだとか、もしくは貧弱だとか。
音そのものはよいが音楽性が感じられない、というふうに一刀両断にできたりもする。

音楽性とは、なんなんだろうか。

2006年暮、友人にさそわれて、とある高級オーディオばかりを扱う販売店の試聴会にでかけた。
スピーカーは2機種。どちらも1千万円弱(当時)する。
2つのスピーカーの厳密な比較試聴というよりも、それぞれの世界を味わってください、
という感じで、それぞれのスピーカーには、異るアンプとCDプレーヤーが組み合わされていた。

最後にかけられたのは、ラミレスのミサ・クリオージャであった。
ホセ・カレーラスのではなく、アルゼンチンの大御所、メルセデス・ソーサの歌唱によるもの。
はじめて聴くディスクだが、
それでも、あきらかにAのスピーカーから鳴ったソーサの歌い方はおかしい、と感じた。
ソーサほどの歌手が、ミサ・クリオージャをこんなふうに歪めて歌うわけがない。
こんな歌い方ではなく、敬虔に歌うはずである。
ミサ・クリオージャという音楽、メルセデス・ソーサをすこしでも知っていれば、そう思えるはず。

そんな疑問が消えぬうちに、もうひとつのスピーカーからソーサの歌声が鳴ってきた。
正しい歌い方だ。これは、もう直感だ。

なるほどAのスピーカーの世評は高い。ステレオサウンドでも、ひじょうに高く評価されている。
けれど、ミサ・クリオージャをこんなふうに歪めて鳴らしているということは、
ラミレスに関しては、音楽性を歪めている、と言い換えてもいいだろう。

このとき、音楽性という、この便利な言葉、とても曖昧な意味で使われることの多い言葉を、
すくなくとも、私自身の中で意味付けられるような感じがした。