Date: 5月 29th, 2014
Cate: オリジナル

オリジナルとは(あるスピーカーの補修・その12)

東京もしくは東京近郊で、エッジ交換をやってくれるところはいくつかあるのはわかった。
けれど、どこにするのか。

これもまたインターネットで検索して丹念に検索結果を見ていくと、
それらのところでエッジ交換をした人のサイトやブログがいくつか見つかるし、
エッジ交換をやっているところのサイトにも、交換した人の声が載っている。

そういうのをみていって、ここが良さそうだ、ここもいいみたいだな、とは思う。
けれど、どんなにインターネットで調べたり、エッジ交換をしたことのある知人に話をきいても、
ほんとうのところははっきりとしない。

つまりエッジ交換を依頼した経験のある人は世の中にけっこういる。
けれど、その人たちが、複数の業者にエッジ交換を依頼して、
仕上ってきたものを比較した上で、ここがいい、あそこがいい、と言ったり書いたりしているわけではない。

エッジ交換を依頼した人も、今回の私のように調べて、どこにするかを決めて、そこにする。
それで仕上ってきたモノをみて、満足がいけば、そこが良かった、ということになる。

インターネットに書いている人の多くはそうであろう。
よほどの人でなければ、複数の業者にエッジ交換を依頼して比較することはない。

どんなにインターネットで調べても、実際に話をきいたところで、肝心のところはわからない。
結局、どこかに決めてエッジ交換を依頼するしかない。

では、どうやってそこを選ぶのか。
いくつかの候補を消去法で消していき、残ったところに依頼するのか。
それも判断材料が少なすぎる。

Date: 5月 28th, 2014
Cate: きく

音を聴くということ(試聴のこと・その7)

4343のトゥイーター2405を取り外して天板に置き、
すべてのユニットをインライン配置を実行したした人にとっては、
そのことによって得られた音の変化は、すべてインライン配置によるものだ、と判断してしまうことだろう。

けれど第三者は冷静である。
そこでの音の変化を、インライン配置によるものだとはすぐには結びつけない。
いい方向への音の変化であろうと、そうでない方向への変化であろうと、
2405をフロントバッフルから取り外して、
天板に置くことによるさまざまな変化がもたらした音と受けとめるかもしれない。
私は、そう受けとめる。

2405を天板に置くために(インライン配置にするために)、多くの要素が変化しているから、
そこでの音の変化をインライン配置によるものだとは捉えない。

もちろんインライン配置にしたことのメリットがあることは認める。
けれど、音の変化はインライン配置だけによるものではないことは、何度でも強調しておく。

それを「インライン配置はやっぱりいい」と言い切ってしまうことのもつ意味を考えてほしい、と思う。

そう言い切ってしまえれば、オーディオは楽である。
けれどオーディオの世界を知れば知るほど、そう言い切れないことがわかってくる。
何かを変える。そのことによって、他の要素も変ってしまうことが往々にしてある。
ひとつの要素だけ変えることは、厳格な意味ではできないのではないか──。

ならば、「インライン配置はやっぱりいい」と言い切ってしまってもいいではないか、
なにか不都合があるのか──。

その人が満足さえしていれば、不都合はないといえばない。
それでも、私はそうではない、と思うだけだ。

Date: 5月 28th, 2014
Cate: オリジナル

オリジナルとは(あるスピーカーの補修・その11)

そういうわけで、ウレタンエッジにすることに決めた。
どれだけ持つのかはっりきとわからない。
交換したウレタンエッジも、いつの日かボロボロになるわけで、また交換しなければならない。
その時はまたウレタンエッジにするのか、
それともウレタンエッジに替る、いい材質のエッジが登場しているかもしれない。

とにかく今回はウレタンエッジにする。
では、どこに依頼するのか、となる。

ずっと以前はエッジの交換をやってくれるところを探すのも一苦労だった。
いまではインターネットで検索すれば、あちこちのオーディオ店でエッジ交換を受けつけていることがわかる。

いい時代になったな、ともいえるし、この中からどこを選ぶのがいいのか、
いまの時代は、そのことで迷う時代になっている。

以前ならば、見つけたところに依頼するしかなかったのが、いまでは選べるわけだ。

検索結果を丹念に見ていけば、評判のいいところがいくつかあるのがわかる。
そのうちのひとつは、その評判を耳にしていた。

そこを第一候補としたのだが、ここのウェブサイトのスピーカー・メンテナンスのページをみると、
お預かりに数ヵ月、とある。ここは時間がかかる、ともきいていた。
とはいえ数か月か……、と思った。
時間がかかるのはわかるけれど、数ヵ月預けている、ということが気になった。
自分のユニットではないだけに、よけいに、この点が気がかりとなる。

Date: 5月 28th, 2014
Cate: オリジナル

オリジナルとは(あるスピーカーの補修・その10)

以前、JBLの4411を使っている知人から、エッジがボロボロになっているけど、どうしたらいいか、ときかれた。
ウレタンエッジにすればまたいつの日かボロボロになる。
できればウレタンエッジに替るものでいいものはないのか、ということだった。

もう七年ほど前のことだったから、
ヒノオーディオが扱っているエッジを奨めておいた。
自分でエッジ交換をする必要があるが、知人は結果に満足していた。

それから数年後に、今度はLE8Tのエッジが……、という相談があった。
その人にもヒノオーディオのエッジを奨めた。
彼もまた自分でエッジを交換している。

スピーカーユニットは振動板からのみ音が放射されているわけではない。
何度か書いているようにフレームからの輻射もあるし、エッジも振動しているわけで、
しかも外周にあるから面積としても決して小さいわけではない。
この部分からも、音が出ている。

しかもエッジは常にきれいに動いているわけではない。
大振幅で振動板が動いているときのエッジの変形は、けっこう複雑なものである。
エッジの種類、材質によってもそれは異ってくるものの、
振動板が前に動いているときにエッジの一部は前、他の部分は後と、いわゆる分割振動的な動きをすることもある。

これらは何がしかの音として、振動板からの音に絡み合ってくる。

だからエッジのコンプライアンスが、
もともとついているウレタンエッジと交換したヒノオーディオのエッジとがまったく同じであり、
交換したあとのf0も変化しなかったとしても、音がまったく同じということはあり得ない。

どちらがいいのかは、その人が判断することである。
少しばかり音は変っても、もうエッジ交換の心配をしなくて済む方が精神的に安心して聴ける、
このことの価値を大事にする人にとっては、ウレタンエッジへの交換よりも、
ヒノオーディオが取り扱っていたエッジを、私は奨める。

今回のスピーカーの補修にあたって、ヒノオーディオのエッジのことが真っ先に浮んだ。
できれば、この先エッジの交換をしなくて済むことが大事なことであったからだ。
だがヒノオーディオはもうない。エッジも手に入らなくなっている。

Date: 5月 27th, 2014
Cate: マルチアンプ

マルチアンプのすすめ(その30)

五味先生が指摘されていることと同じこと(私はそう感じている)を、
長島先生も指摘されている。

ステレオサウンド 99号の新製品紹介のページで長島先生は、ATCのSCM200について書かれている。
その中にこうある。
     *
 例えば、3ウェイシステムの場合、ウーファー、スコーカー、トゥイーターが三位一体となって動いて欲しいのであるが、通常のLCネットワークであれば、電気的には各ユニットが接続された状態にあり、それぞれいい意味で影響しあって有機的に結合した状態をつくりだすことができる。もちろん悪影響を与えるということもある。しかし僕はそこにメリットのほうを見出していたのである。
 それに対してマルチ駆動の場合、ユニット同士の関係というものは一応セパレートしているものと考えることができ、はたして各ユニットがうまくブレンドしてくれるのだろうか、という不安があるのだ。
     *
五味先生はタンノイの、長島先生はジェンセンの、それぞれの同軸型スピーカーを鳴らされてきた。
そのふたりがマルチアンプに対して、同じことを感じられているのは興味深い。

オーディオにやり始めたころに疑問に思っていたことがある。
スピーカーの再生周波数帯域を拡げるためにマルチウェイにするのはわかる。
2ウェイでも、3ウェイでもいいのだが、
ウーファーはほとんどがコーン型であり、
トゥイーターはコーン型もあれば、ドーム型、リボン型、ホーン型……、といろいろな方式がある。

ウーファー、トゥイーターともにコーン型であれば、振動板も紙ということがある。
けれどトゥイーターがコーン型以外の方式となると、振動板の材質はさまざまだ。
布系の振動板もあれば、プラスチック系のモノもあるし、金属を使ったモノもある。
金属にもアルミニウムもあれば、チタニウム、マグネシウム、ベリリウムなど、いくつもの材質がある。

昔から使われてきて馴染みのある紙の振動板のコーン型ウーファーと、
紙とはまったく異質の振動板を使った、それも振動板の形状も違う方式のトゥイーターが、
システムとしてまとめたときにほんとうに調和するのだろうか。

こういう疑問だった。

Date: 5月 27th, 2014
Cate: きく

音を聴くということ(試聴のこと・その6)

フロントバッフルも天板も振動している。
その振動は同じではない。
つまりフロントバッフルに取り付けられているときにフロントバッフルから伝わってくる振動と、
天板から2405へと伝わってくる振動は決して同じではない。
しかもフロントバッフルに取り付けた状態では前方から振動が伝わってくる。
天板の場合に2405の下部から振動が伝わってくる。

それにフロントバッフルに取り付けられているとウーファーの背圧の影響も受けている。

天板に置くためには、ネットワークから2405までのケーブルをはわせなければならない。
4343にもともとついているケーブルをそのまま利用したとしても、
ケーブルの這わせ方が違ってくる。

天板に置いた2405にサブバッフルをつけるどうか。
さらには天板のどの位置に置くのか。前後方法の調整はほかのユニットとの位相関係の変化にもつながる。

2405を天板に直置きするのか、間にフェルトやゴム、その他の素材を介するのかどうか。

こういったこまごまとしたことが、2405を天板に置きインライン配置にしたことによる変化である。
もっと細かな変化もあるが、それを書き出すことがここでの目的ではないし、
いいたいのは、これだけの要素が変化している中で、
インライン配置にしたから音が良くなった、とはいえない、ということだ。

さまざまな要素が変化している。
しかもそれらは独立しているわけではない。
それらが結びついた結果として音は変化している。

だからこそ、何を聴いているのかを明確にする必要がある。

Date: 5月 27th, 2014
Cate: きく

音を聴くということ(試聴のこと・その5)

オーディオマニアたるもの少しでもいい音が出せる可能性があるのなら、あれこれ試してみる。
例えばJBLの4343。
4ウェイ・4スピーカーの4343はウーファーミッドバス、ミッドハイの三つのユニットはインライン配置。
ならば9.5kHz以上を受け持つ2405をフロントバッフルから取り外して、エンクロージュアの天板にのせれば、
四つのユニットすべてインライン配置にできる。

実際にやってみたとする。
音はずいぶんと変る。
それを実行した人にとって、それがいい結果だったと仮定する。
すると、その人は、やっぱりすべてのユニットをインライン配置にしたほうがいい、というかもしれない。
そういいたくなる気持はわかる。
わかるけれど、2405をインライン配置にしたことで、変った要素は、ユニット配置だけではない。

まず2405をフロントバッフルから取り外す。
この時点でフロントバッフルへの荷重が変化する。
それにフロントバッフルの振動モードも変化する。

2405を取り外したところにはメクラ板をとりつける必要がある。
するとメクラ板がミッドハイの両側に位置することになり、この影響も無視できない。
メクラ板はフロントバッフルから伝わってくる振動に対しても、
エンクロージュア内部の音圧によっても共振しているからだ。

2405を天板の上にのせる。
ただこれだけでも音は変化する。
試しに2405を本来の位置に取り付けたままで、
2405と同じくらいの大きさで同じくらいの重量をもつモノを4343の天板の上に置いて聴いてみるといい。

きちんと調整された4343ならば、この変化量に驚く。
天板のどこに置くかでも変化する。

2405を天板に置くことで天板の振動モードは変化する。
天板だけが変化するのではない。
エンクロージュアの側板、前後のバッフル、底板はすべてつながっているわけだから、
天板の振動モードの変化は、他の部分の振動モードの変化へとつながる。

Date: 5月 26th, 2014
Cate: きく

音を聴くということ(試聴のこと・その4)

スロープ特性と極性の組合せをひとつひとつ聴いていっているとき、レベルはまったく手をつけなかった。
それからCDも一枚に決め、CDプレーヤーから試聴しているあいだは、一度も取り出すことなく聴く。

スロープ特性、極性を切り替える際には、コントロールアンプのボリュウムには手を触れない。
ボリュウムはそのまま、つまり音量は最初に決めたままである。

そしてCDプレーヤーは切り替えの際には、ポーズ・ボタンを押す。
停止状態にはしない。
チャンネルデヴァイダーの切り替え操作が終ったら曲の頭に戻し、再生ボタンを押す。

これをくり返し行う。
一枚のディスクの同じところを何度も何度も聴いていく。

何かを切り替えていくときに、他の箇所はまずいじらない。
ボリュウム操作をしてしまうと、厳密には同じ音量には設定し難い。
音量がわずかでも違ってくれば、スロープ特性の違いのみを聴きたいのに、
そこに音量の違いという要素が加わってくる。

CDプレーヤーをポーズ(一旦停止)にするのも同じ理由からである。
停止してしまうと、ディスクの回転が止る。
ふたたび再生ボタンを押すとディスクの回転が始まるわけだが、
CDプレーヤーにはサーボ技術が不可欠であり、
このサーボの立上り時に音が安定するのに、わずかな時間を必要とする。
だからポーズにしてディスクはつねに回転させた状態を維持するわけである。

Date: 5月 26th, 2014
Cate: きく

音を聴くということ(試聴のこと・その3)

今年一月にあるオーディオマニアのお宅に伺う機会があった。
バイアンプ駆動のシステムだった。

何枚かのCDを聴いて、気になるところがあって、
チャネルデヴァイダーのスロープ特性と極性の切り換えをいくつか試してみた。

できれば違うところを調整したかったのだけれど、私のシステムではないから、
スイッチで切り換えられる範囲であれば、元のポジションにすれば元に戻せるので、
この部分だけをいじってみた。

スロープ特性はハイカット、ローカット別個に指定できる。
ウーファーのハイカットを12dB/oct.で、上の帯域のローカットを18dB/oct.ということができる。
スロープ特性は12dB、18dB、24dBがあり、
ウーファーの正相・逆相、上の帯域の正相・逆相がそれぞれ指定できる。

最初はローカット、ハイカットとも12dB/oct.で、正相・正相、
その後に12dB/oct.のままウーファーを逆相、上の帯域を正相、
今度は12dB/oct.のままウーファーを正相、上の帯域を逆相、
さらに12dB/oct.のままでウーファー、上の帯域とも逆相にする。

同じことを18dB/oct.でもやる。
さらにウーファーのスロープ特性を12dB/oct.に、上の帯域のスロープ特性を18dB/oct.にして、
極性の切り替えを4パターン試していく。

今度はウーファーと上の帯域のスロープ特性を入れ替えて、
極性の切り替えをこれまた4パターンやっていく。

これで16通りの音を聴くことになる。
ほんとうは24dB/oct.の音も聴きたかったし、
12dB/oct.と24dB/oct.の組合せ、18dB/oct.と24dB/oct.の組合せも試してみたかったけれど、
あきらかに一緒に聴いていた人たちが退屈しているのがはっきりと感じられて、そこまではやらなかった。

Date: 5月 26th, 2014
Cate: 世代

世代とオーディオ(コンプレッションドライバーの帯)

コーン型、ドーム型ユニットを使ったスピーカーシステムからオーディオをスタートしても、
心には「いつかは大型ホーンとドライバーを組み合わせて……」という気持があった。
マニアならば、一度はホーン型を使うもの、
言い方をかえればホーン型を使いこなしてこそ、一人前のマニアという空気が確実にあった。

そんな空気の実感できたのは私ぐらいの世代が最後なのかもしれない。
いまでは中途半端に頭でっかちの人たちは、ホーン型なんて……、と否定する、
そんな空気を感じることがある。

ここではホーン型なのか、それともダイレクトラジエーター型なのか、
どちらが優れているのかを論じるわけではない。

ここで書きたいのはコンプレッションドライバーの、いわゆる帯のことについて、である。

JBLのドライバーにしろ、アルテック、ガウス、ヴァイタヴォックスなどの海外のドライバーだけでなく、
コーラル、マクソニック、オンキョーなどの国産のドライバー、
アルニコマグネットを採用したドライバーなら、ドライバーの後方に帯がはいっている。
たいていは銀色の帯である。

この帯がなければコンプレッションドライバーは黒い鉄のかたまりであり、
帯がはいっていることで見映えもよくなる。

けれどいうまでもなく、この帯は装飾のための帯ではない。

ダイアフラムがドライバー後方にあるタイプ(バックプレッシャー型)のダイアフラムを交換したことのある人、
もしくはカットモデルを見たことのある人ならば、
この帯が磁気回路のプレートであり、必然的にできるものだということを知っている。

つまりダイアフラムのボイスコイルは、この位置にあるわけで、
外側からボイスコイルの位置がすぐにわかるようになっていて、
ユニットを組み合わせてスピーカーを構築していく人にとって、
この帯はユニットの位置合せの目安にもなっていた。

既製品のスピーカーシステムだけを使っている人にとっては、
こんなことは知っていたからといって役に立つわけではないから、
以前では知らない方が恥ずかしかったのに、
いまでは知らない人の方が時として堂々としていたりする。

Date: 5月 26th, 2014
Cate: JBL, Studio Monitor

JBL Studio Monitor(4400series・4435のウーファー)

4430のウーファーは2235H、4435のウーファーは2234H(二発)と書いた。
けれどステレオサウンドを注意深く読んできた人の中には、あれっ? と思われる方もいると思う。

ステレオサウンド 61号での紹介記事のページに掲載されている4435のスペックには、
ウーファー:38cm×2(2234H、2235H)、とあるからだ。

マスコントロールリングをもつ2235Hを200Hz以下を再生するサブウーファーとして使っている。
ちなみに235Hのマスコントロールリングの重量は100g。

この仕様の4435は61号で紹介された、いわばサンプルだけのようで、
ステレオサウンド 62号掲載の井上先生による「JBLスタジオモニター研究」には、こう書いてある。
     *
4435には、振動系は2235Hと同じだが、マスコントロールリングのない2234Hが2本使用されている。なお、4435の最初に輸入されたサンプル(編注=本誌No.61の新製品欄で紹介したもの)では、低域は2234Hと2235Hの異種ウーファーユニットの組合せであったが、正規のモデルは2234Hが2本に変更されている。
     *
なぜJBLが4435の仕様をこれだけ早く変更したのか、その理由ははっきりとしない。
ステレオサウンド別冊「JBL 60th Anniversary」にも、4435のウーファーは2234Hとあるだけで、
サンプルでの2235Hとのスタガー接続についての記述はどこにも書いてない。

菅野先生が61号に書かれた4435の音──、
《一言にしていえば、その音は私がJBLのよさとして感じていた質はそのままに、そして悪さと感じていた要素はきれいに払拭されたといってよいものだった。私自身、JBLのユニットを使った3ウェイ・マルチアンプシステムを、もう10数年使っているが、長年目指していた音の方向と、このJBLの新製品とでは明らかに一致していたのである》
これはあくまでも2234Hと2235Hのスタガー使用の4435の音である。

では市販された4435の片側のウーファーを2235Hに交換すればサンプルと同じになるかといえば、
正規モデルの4435では100Hz以下で2234Hをもう一本加えている形なのに、
サンプルの4435では200Hz以下という違いがあるから、うまくいくかもしれないし、そうではないかもしれない。

Date: 5月 25th, 2014
Cate: JBL, Studio Monitor

JBL Studio Monitor(4400series・その3)

この新しいバイラジアルホーンを搭載した、ふたつの4400シリーズ。
4430は15インチ口径のウーファー2235Hを一発、4435は15インチ口径の2234Hを二発搭載している。

2235Hは4300シリーズに採用されてきた2231の改良型である。
そのためコーン紙の根元にマスコントロールリングが使われている。
2234Hは、このマスコントロールリングを取り外したものである。

となると当然振動系の実効質量は軽くなり、その分F0は高くなる。
低域の再生能力は多少狭まることになるけれど、4435では100Hz以下ではダブルウーファーとして動作させ、
100Hzより上の帯域ではホーンの真下に取り付けられているウーファーのみが鳴る。
こうすることでマスコントロールリングがないことによる低域のレスポンスの低下をカバーしている。

ここところが同じ15インチ口径のダブルウーファーでも、4350、4355とは違う点であり、
この4435のウーファーの使い方は、4435の25年後に60周年モデルと登場したDD66000に生きている。

この点に注目して、4435とDD66000を見ていくと、
DD66000の原型は4435ではないか、と思えてくる。

それはウーファーの使い方だけではない。
ホーンに関しても共通するものがある。

Date: 5月 25th, 2014
Cate: JBL, Studio Monitor

JBL Studio Monitor(4400series・その2)

アルテックとJBLの新しいホーン。
共通するところがあると同時に、そうでないところもある。

まずアルテックのマンタレーホーンMR94は奥行き71.1cm、開口部は86.4×161.0cmという、かなり大型である。
JBLの4430、4435に搭載されたバイラジアルホーンは、かなり短い。正確な寸法はわからないが、
写真を見ても、その短さはかなり特徴的ですらある。

バイラジアルホーン(マンタレーホーン)以前のホーンでも、
アルテックとJBLのホーンを比較すると、JBLはショートホーンであることが多い。
4350に搭載されているホーン2311-2308は短い。
2308がスラントプレートの音響レンズの型番で、2311がホーンの型番で、2311の奥行きは11.7cmしかない。
これでカタログに掲載されているクロスオーバー周波数は800Hzとなっている。

同じ時期のアルテックのホーンでクロスオーバー周波数が800Hzになっている811Bの奥行きは34.0cmある。

JBLのホーンが短い(短くできる)のにはわけがある。
そして短くしたことによるメリットとして、ホーンにつきまとうホーン臭さの要因でもあるホーン鳴きは、
当然、長いホーンよりも抑えられるわけだ。

JBLはバイラジアルホーンでも、このメリットを活かしている。
もっともその後JBLから単体ホーンとして登場したバイラジアルホーン2360、2366の奥行きは、
それぞれ81.5cm、139.0cmとかなり長い。

同時期のバイラジアルホーン2380、2385の奥行きは、どちらも23.6cm。
このホーンのカットオフ周波数は400Hzで、推奨クロスオーバー周波数は500Hzとなっている。

Date: 5月 25th, 2014
Cate: JBL, Studio Monitor

JBL Studio Monitor(4400series・その1)

ステレオサウンド 61号の新製品紹介のページに、JBLの4430と4435が取り上げられている。
菅野先生が書かれている。

4345に関しては半年ほど前に、4345という4343の上級機が登場するというアナウンスがあったのに対して、
4430、4435は型番からもわかるように、まったく新しいスタジオモニター・シリーズあるにも関わらず、
そういった事前のインフォメーションはまったくなく、いきなり登場した。

しかもその姿、システム構成のどちらも、それまで4300シリーズを見てきた者には驚く内容だった。
まず2ウェイであること。中高域はホーン型が受け持つが、そのホーンの形状がいままでみたことのないものだった。

バイラジアルホーンと呼ばれる、そのホーンは、注意深くみていくと、
前号(60号)の特集に登場したアルテックの、
これもまた従来のホーンとは大きく異る形状のマンタレーホーンと共通するところが見いだせる。

ホーン奥のスリットがどちらも縦に細長い。
音響レンズつきJBLのホーンの場合、ドライバーの取り付け部の形状は丸。
ドライバーの開口部も丸だから、そのまま取り付けられる。
JBLのホーンでもディフラクションホーン、ラジアルホーンはドライバー取り付け部は四角なため、
ドライバーとホーンとの間に丸から四角へと形状を変化させるスロートアダプターが必要となる。

つまりバイラジアルホーン以前のホーンでもホーン奥のスリットは長方形だった。
だが同じ長方形でもバイラジアルホーン以前は約1:3ほどの縦横比だったのに対し、
バイラジアルホーンではそうとうに細長くなっている。

ステレオサウンド 60号に載っているアルテックのマンタレーホーンをみると、
その細長いスリットがかなり奥に長い。開口部の広がり方もいままでのホーンを見慣れた目には特異にうつる。

くわしいことはわからなくとも、60号のアルテックのマンタレーホーン、61号のJBLのバイラジアルホーン、
新しいホーンが登場したことははっきりとわかった。

Date: 5月 25th, 2014
Cate: re:code

re:code(その5)

記事の本数が4300になった時点で、JBLの4300シリーズのことを書き始めた。
まだ書いている。もう少しというか、まだまだ書いていくことがある。

いま4350のことを書いている。
4350の音を思い出しながら、
4350でいま聴いてみたいレコード(録音物)のことを思いながら書いていて気づくのは、
JBLのスピーカーの音の特質について、である。

4350の音は、生よりも生々しい。生を超える迫真性とでもいいたくなるリアリズムがある。
それがいったいどういうところから来るものなのか、
レコード(録音物)を家庭で再生するという行為において、
このJBLならではの特質はどう活きてくるのか、どう捉えるべきなのか。

こんなことを考えていた。
そして、二年前に書いていたことが浮んできた。

re:codeについて、である。
これからどういうふうに書いていくのかはまったく決めていないし、わからない。
けれど、re:codeについて書く必要がある、ということは実感している。