世代とオーディオ(コンプレッションドライバーの帯)
コーン型、ドーム型ユニットを使ったスピーカーシステムからオーディオをスタートしても、
心には「いつかは大型ホーンとドライバーを組み合わせて……」という気持があった。
マニアならば、一度はホーン型を使うもの、
言い方をかえればホーン型を使いこなしてこそ、一人前のマニアという空気が確実にあった。
そんな空気の実感できたのは私ぐらいの世代が最後なのかもしれない。
いまでは中途半端に頭でっかちの人たちは、ホーン型なんて……、と否定する、
そんな空気を感じることがある。
ここではホーン型なのか、それともダイレクトラジエーター型なのか、
どちらが優れているのかを論じるわけではない。
ここで書きたいのはコンプレッションドライバーの、いわゆる帯のことについて、である。
JBLのドライバーにしろ、アルテック、ガウス、ヴァイタヴォックスなどの海外のドライバーだけでなく、
コーラル、マクソニック、オンキョーなどの国産のドライバー、
アルニコマグネットを採用したドライバーなら、ドライバーの後方に帯がはいっている。
たいていは銀色の帯である。
この帯がなければコンプレッションドライバーは黒い鉄のかたまりであり、
帯がはいっていることで見映えもよくなる。
けれどいうまでもなく、この帯は装飾のための帯ではない。
ダイアフラムがドライバー後方にあるタイプ(バックプレッシャー型)のダイアフラムを交換したことのある人、
もしくはカットモデルを見たことのある人ならば、
この帯が磁気回路のプレートであり、必然的にできるものだということを知っている。
つまりダイアフラムのボイスコイルは、この位置にあるわけで、
外側からボイスコイルの位置がすぐにわかるようになっていて、
ユニットを組み合わせてスピーカーを構築していく人にとって、
この帯はユニットの位置合せの目安にもなっていた。
既製品のスピーカーシステムだけを使っている人にとっては、
こんなことは知っていたからといって役に立つわけではないから、
以前では知らない方が恥ずかしかったのに、
いまでは知らない人の方が時として堂々としていたりする。