Date: 10月 25th, 2025
Cate: ハイエンドオーディオ

ハイエンドオーディオ考(その23)

昨年あたりからハイエンドオーディオ機器の価格は、跳ね上った。
今年、さらに跳ね上った。
来年は、どうなるのか。

数千万円を超え、一億円も超えるようになってきた、それらのオーディオ機器のことを否定する気はない。
ただ言いたいことは、価格ではなく、その規模に節度はあるのか、そのことだけである。

規模が大きくなることに、マニアならば昂奮もする。よくぞ、ここまでやった、と思うこともある。
けれど……、である。

別項でも触れているが、山中先生ステレオサウンド 50号の特集で、クラシックスタンダードという言葉を使われている。

マランツのModel 7は、まさしく、そのクラシックスタンダードなオーディオ機器である。

スタンダード(standard)の意味を調べると、節度ともあった。
スタンダードにはいくつかの意味がある。節度は、その中の一つなのだが、
いまの時代のハイエンドオーディオ機器を見ていると、これらが二十年後、三十年後、さらにもっと年月が経ってふり返ったときに、
クラシックスタンダードとは、呼ばれないだろう。

クラシックスタンダードと呼ばれることが、何らかの絶対条件であるとは言わないが、
それでも節度を全く感じさせないオーディオ機器は、将来、どういう評価を得るのか。

デュ=プレとフェリアーを「友」として

ジャクリーヌ・デュ=プレとカスリーン・フェリアーを生涯の「友」として聴いてきたのであれば、その人の人生は幸福だったはず。

人生にはいろんなことが起こる。苦労ばかりだった──、そんなことをつぶやきたくなる人生でも、
デュ=プレとフェリアーの音楽とともに歩んでこれたのならば、やはり幸せなはずだ。

もっとも、どんな音で聴いてきたか。
このことを無視して、生涯の「友」として聴いてきたとは語れない。

11月5日のaudio wednesdayで、ヴァイタヴォックスのCN191を鳴らすわけだが、
うまく鳴ってくれれば、二人の演奏をかける。

Date: 10月 23rd, 2025
Cate: audio wednesday

audio wednesday (next decade) –第二十二夜(Vitavox CN191 Corner HornとUltra DACで聴く)

11月5日のaudio wednesdayでヴァイタヴォックスのCN191を鳴らすと決めてから、
先日のインターナショナルオーディオショウで聴くことができたし、
ヴァイタヴォックスからは新製品が登場するなど、不思議とヴァイタヴォックスとの縁(のようなもの)を感じている。

今回CN191を鳴らす器材は、いつもと同じである。
D/Aコンバーターは、メリディアンのUltra DACだ。

ここには日本製、アメリカ製ではなくヨーロッパ製を持ってきたいし、できればヴァイタヴォックスと同じイギリス製を、というのは、私のこだわりでしかない。

以前から感じていることなのだが、100dB/W/mほどの高能率スピーカーほど、MQAとの相性がいい。

野口晴哉氏のリスニングルームのスピーカーは、
シーメンスにしてもウェストレックス・ロンドンにしても高能率であるが、
その中でヴァイタヴォックスは低域もホーン型という存在。
それ故の難しさもあろうが、
オールホーン型という、いまでは稀少な存在となったスピーカーシステムを鳴らせるのは、楽しみでしかない。

Date: 10月 22nd, 2025
Cate: 純度

純度と熟度(ディープエンドオーディオ・その1)

ハイエンドオーディオという言葉が、昔から嫌いだった。
こんなことを書くと、 ハイエンドオーディオ機器を買えないことからの僻みだろう、と言われようが、
ハイエンドオーディオと呼ばれているオーディオ機器が嫌いとか認めないとかではなく、
ハイエンドオーディオという言葉そのものが嫌いなのだ。

ハイエンドオーディオって、高域まで伸びているオーディオのことですね──、そんなふうに言ったりしていたことも二十代のころはあった。

ハイエンドオーディオという言葉を、たぶんこれから先も好意的に使うことはない、すらいえる。

もちろん他人がハイエンドオーディオという言葉を、有り難かったり、
自分自身を大きく見せるために使うのは、ご自由に、と思う。

少し前からディープエンドオーディオと書くようになった。
もうひとつ言葉としての響きがよくないと自分でも感じているが、
深みを目指していくのだから、いまのところ、かわりのいい感じの言葉が思いつかない限りは、
ディープエンドオーディオを使っていくことになるが、
ディープエンドオーディオには高能率のスピーカーが絶対的に欠かせない存在である。

Date: 10月 22nd, 2025
Cate: VITAVOX, 新製品

Vitavox T3(その1)

数年前にヴァイタヴォックスのウェブサイトに、CN191でもBitoneMajorでもないエンクロージュアの写真が公開されていたことがある。

その写真も全体が写っていたわけではなく、詳細は全く不明だった。何か新しいスピーカーシステムを開発しているんだろうな、とうかがわせるだけだった。

そのスピーカーシステムがようやく登場した。しかも三システム同時にであり、さらにトゥイーターも一緒にである。

T3 Systemという。
TriStar、Triple5、Tritoneの三システムだ。

型番がTriから始まることからもわかるように、おそらくヴァイタヴォックス初の3ウェイシステムである。

それぞれのモデルについては私が書くよりもヴァイタヴォックスのウェブサイトを見たほうが早いし、
それにエンクロージュアの詳細がわかっていない。

それでも書いておきたいのは、トゥイーターの形状だ。JBLの2405のヴァイタヴォックス版といえる。

Date: 10月 22nd, 2025
Cate: CN191, VITAVOX, 瀬川冬樹

Vitavox CN191と瀬川冬樹(その2)

瀬川先生の文章に魅了され、熱心に読んできた者にとって、
瀬川先生が生きておられたら、スピーカーは何を鳴らされていただろうか、は永遠に答の出ないテーマであり、
早瀬文雄(舘 一男)さんとは、よく話したものだ。

瀬川先生はメインのスピーカーとして、JBLの4341、4343、4345と鳴らされていた。
4345の次は、いったいどのスピーカーにされたのか。

JBLのスピーカーを選ばれたのか。それとも──、楽しいオーディオ談義でもあった。

決定的なコレだ、というスピーカーはなかったけれど、ダリのSkyline 2000は、かなり高い評価をされたはず、と二人で納得したこともある。

それでもSkyline 2000を購入されるのかどうかは、なんとも言えなかった。
反対に、コレはないな、というスピーカーについても話していた。

1990年代のころ、アメリカのハイエンドオーディオを代表するブランド、
具体的に挙げればアヴァロン、ティール、ウィルソン・オーディオは、絶対にない、と、これも二人とも共通していた。

そんなことを話しながらも舘さんに話すことはなかったが、
私はJBLのパラゴンとヴァイタヴォックスのCN191のことも考えていた。

Date: 10月 21st, 2025
Cate: CN191, VITAVOX, 瀬川冬樹

Vitavox CN191と瀬川冬樹(その1)

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)、
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」で瀬川先生は、ヴァイタヴォックスのCN191について、こう書かれていた。
     *
 いまの私には、これを鳴らす理想的なコーナーを整えるという条件を満たすことができないからあきらめているが、せめていつかは、この豊潤で渋い光沢のある独特の音質をわがものにしてみたいという夢を持っている。いまやこれだけが、現行製品の中で良き時代を残した最後の生き残りなのだから。
     *
CN191のことは、「五味オーディオ教室」を読んでいたから、その存在だけは知っていた。
五味先生のタンノイのオートグラフと双璧をなすスピーカーシステム、
それもアメリカ製ではなく、イギリスのスピーカーシステム。

さらに私がオーディオに興味を持ったころ、オートグラフはタンノイでは製造しておらず、
輸入元のティアックがライセンスを得て日本でエンクロージュアを作っていたのだから、
イギリス・オリジナルのスピーカーユニットとエンクロージュアの組合せによるスピーカーシステムの音を聴けるのは、
もうそれだけで素晴らしい価値あることだと、中学生だった私は思っていた。

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」では、《コーナー型オールホーン唯一の、懐古趣味でなく大切にしたい製品。》と、
瀬川先生は書かれている。

1978年でも、CN191を懐古趣味として見る人はいたわけだ。
ましてそれから五十年近く経っているのだから、
ヴァイタヴォックスという会社すら知らない若い世代にとっては、
懐古趣味どころか化石のような存在なのかもしれない。

スピーカーユニットが何ひとつ見えない。
ウーファーはクリプッシュホーンによって隠れている。
中高域を受け持つドライバーとホーンも、化粧カバーに覆われていて見えない。

CN191は、そういうスピーカーである。

Date: 10月 20th, 2025
Cate: audio wednesday

audio wednesday (next decade) –第二十二夜(Vitavox CN191 Corner Hornで聴く)

ヴァイタヴォックスのCN191は、1977年の時点では一本796,000円だった。ペアで1,592,000円。

復刻されたCN191の価格は、ずっとわからなかった。エンクロージュアの手のかかる造りからして、かなり高価になっていることわかるし、
なんとなくだが、最低でもペアで800万円、もしかしたら1,000万円前後か、と思っていた。

今回のインターナショナルオーディオショウで価格がわかった。ペアで1,500万円ほどである。
約五十年ほどで十倍になったわけだが、復刻のCN191のホーンは、ずっしりと重たそうなウッドホーンになっている。

是枝重治氏の話では、ドライバーのS2も精度が高くなり、昔のS2よりもいい、ということだった。
ということはウーファーもエンクロージュアの造りも、昔よりも一段と良くなっているのかもしれない。

まだ日本では誰も復刻CN191の音を聴いていないのだろう。

そんな復刻CN191の音を想像しながら、11月のaudio wednesdayでは、昔のCN191を鳴らす。

Date: 10月 19th, 2025
Cate: ショウ雑感

2025年ショウ雑感(その15)

結局、今年のインターナショナルオーディオショウは17日しか行けなかった。
18日も予定していたのだが、膝の調子が芳しくなくて休養を優先した。
今日(19日)は用事があったので無理。

初日の午後だけ。しかも今井商事のブースに二時間ほどいたので、すべてのブースどころか、わずかなブースのみしか回れなかった。

それでも是枝重治氏と話す機会があったし、私にとってはけっこう有意義なショウだった。

タクトシュトックのブースで、15時からのジャーマン・フィジックスを聴きたかったけれど、
是枝重治氏の講演が終ったのが、15時15分くらいだったため、諦めた。

今井商事のブースに行く前にタクトシュトックのブースに寄ったのだが満員だったのを見ていたから、
15時過ぎに行ってもダメだろう、と思い、太陽インターナショナルのブースで並んだ。

16時から土方久明氏の回。列はすぐに長くなり、席はすぐに埋まってしまう。立っている人も多い。
太陽インターナショナルといえば、今年はdCSのVarèseが、
なんといっても大きな注目を集めている。

買える買えない、そんなことは関係なく一度は聴いてみたい。そう思わない人は、いるのだろうか。
けれどVarèseの試聴は、dCSからのお達しで、人数制限ありで整理券が必要となる。

朝10時から配布される整理券は、行く前から諦めていた。とはいえ実物を見ることはできる──、そう思っていたら、
土方久明氏の回の最後で、一曲だけではあったがVarèseの音を聴くことができた。

Date: 10月 18th, 2025
Cate: ショウ雑感

2025年ショウ雑感(その14)

昨晩の(その13)では恥らいという言葉を使ったが、だからといってヴァイタヴォックスのCN191の音を、恥らいの音と表現するのには躊躇いがある。

恥らいと書いてしまうと、どこか、そして少しばかりネガティヴにも受け止めれかねない。
大きく外れていないけれど、微妙に誤解を招くとも感じる。

含羞。
辞書には、はにかみ、はじらい、とある。

それでも恥らいと含羞とでは、同じだろうか。
同じだろう、と言われれば、そうですね、と言ってしまうけれど、
CN191の音を聴いた人ならば、わかってくれるかもしれない、とも思っている。

含蓄のある音と、CN191の音をたとえることもできる。
でもそれだけではない、といまの時代のスピーカーを聴いた後だと、よけいに思う。

含羞のある音。
いまの私はそう感じている。

Date: 10月 18th, 2025
Cate: 「ネットワーク」

ネットワークの試み(その17)

昨日のインターナショナルオーディオショウ、今井商事での是枝重治氏の講演で、
ヴァイタヴォックスのCN191のネットワークがらみで、JBLのハーツフィールドについても、少し話された。

ハーツフィールドがうまく鳴らないのであれば、ヴァイタヴォックスのネットワーク、NW500を試してみるといい、ということだった。

ハーツフィールドのネットワークはN500で、NW500と同じくクロスオーバー周波数は500Hz。
使用ユニットのインピーダンスもほぼ同じなので確かに使える。

N500は一般的な並列型、 NW500はくり返しになるが直列型。
使用部品の違いもあるが、この並列型か直列型かの違いの方が、そこで鳴ってくる音への影響は大きいと私は考えている。

どういう結果になるのかはなんともいえないが、NW500の中古を探して試してみる価値はある。

Date: 10月 17th, 2025
Cate: 「ネットワーク」

ネットワークの試み(その16)

四谷三丁目の喫茶茶会記でaudio wednesdayをやっていた時、
アルテックのスピーカーユニットによるスピーカーシステムのネットワークは、
途中から私が作った直列型になった。

コーン型ウーファーとホーン型トゥイーターといった、上と下で構造の違うユニットを組み合わせるとき、
直列型ネットワークの方がうまくまとまるような感じを持つようになった。

コーン型ウーファー、コーン型トゥイーターもしくはドーム型トゥイーターといった、どちらもダイレクトラジエーター型ならば、
ネットワークはどちらがいいのかは、その結果は変ってくるかもしれないが、
コーン型とホーン型の組合せにおいては、直列型ネットワークが優位性が高いような気さえする。

今日、インターナショナルオーディオショウに行き、今井商事のブースで是枝重治氏の話を聞いて、
ヴァイタヴォックスのネットワークNW500も、直列型であったことを知る。

Date: 10月 17th, 2025
Cate: ショウ雑感

2025年ショウ雑感(その13)

インターナショナルオーディオショウに行ってきた。
もちろん今井商事のブースで、ヴァイタヴォックスのCN191を聴くためだ。

14時からの是枝重治氏の講演で聴く。
13時には今井商事のブースに入っていた。
D/AコンバーターはマイテックのManhattan DACで、MQAが再生できる。

今井商事が用意されていたCDの中に、MQAの発売が始まったころ、
ユニバーサルミュージックが通常のCDとMQA-CDを比較試聴できるサンプラーを発売していた。このCDがあったので聴かせてもらった。

MQAで聴くCN191の音である。アンプは是枝重治氏製作のアンプ。管球王国で発表されていた管球式プリメインアンプでの音でもある。

おそらく今年のインターナショナルオーディオショウで鳴っていたスピーカーの中で、一番の変換効率の高さのCN191である。

その高能率とひきかえに、決してワイドレンジなスピーカーではない。
これだけ大型のスピーカーであっても、ずっと小型の今どきのスピーカーの方が低域も高域も伸びている。

でも、そんなこととは無縁といえる音を聴くことができる。
古めかしい音と一蹴するのは、聴く人の自由と言えようが、
本当にそうだろうか。それは聴き手の自由なのだろうか。

世の中、恥じらいが失われていると感じている人もいるだろう。オーディオもそうだ、と感じている人もいるだろう。
そういう時代だからこそ、CN191の存在が輝きを取り戻しつつあるのかもしれない。

是枝重治氏の講演でCN191が聴けるのは、明日(18日)の14時からの会で終る。

Date: 10月 16th, 2025
Cate: ショウ雑感

2025年ショウ雑感(その12)

今井商事のブースで、ヴァイタヴォックスのCN191を鳴らすアンプは、是枝重治氏製作のモノ。
入力系は、というと、マイテックのManhattan DACとのこと。
ということはMQA対応のはず。

今井商事のブースが来場者のリクエストに応えてくれるのかはわからないが、
MQAで鳴るCN191の音が聴けるかもしれない。

Date: 10月 16th, 2025
Cate: ハイエンドオーディオ

ハイエンドオーディオ考(その22)

マッキントッシュのゴードン・ガウの言葉がある。

「quality product, quality sales and quality customer」。
どれかひとつ欠けても、オーディオの世界はダメになってしまう──、
とゴードン・ガウは言っていた。

これまで、別項で何度も引用してきている。
この項でも、このゴードン・ガウの言葉を思い出す。

非常に高価なオーディオ機器を一式ポンと買っていく富裕層が、いまのハイエンドオーディオブランドの客だという話がある。

そうかも、と思う。
金額の桁が一つどころか二つほど違うオーディオ機器を、ポンと買える人たちを相手にした方が、商売の効率はいい。

そういう層の人たちがいるのはいい。
そういう層の人たちがいるから、ものすごいモノにメーカーも取り組めるという一面があるからだ。

でも、前回書いたことのくり返しになるが、そういう層の人たちは、
ゴードン・ガウのいうところのquality customerだろうか。

ゴードン・ガウがマッキントッシュからいなくなってずいぶん経つ。
マッキントッシュというブランドもずいぶん変った。

ゴードン・ガウがいた頃のマッキントッシュにとってのquality customerと、
不在の、いまのマッキントッシュにとってのquality customerは同じとは思えない。

このことはマッキントッシュだけに限ったことではない。
そしてゴードン・ガウのいうところのquality customerも、最初からquality customerだったわけではないはず。

だからこそ“quality product, quality sales and quality customer”なのだろう。