ただ、ぼんやりと……選ばなかった途をおもう(その5)
しばらく実家に帰っていなかった。
今年の年末には久しぶりに帰省しようかな、と思ったのは2020年。
新型コロナ禍で、この年の年末も帰省しなかった。兵庫に住む妹一家も、
コロナ禍のため、帰省しなかった。
そんな数年があった。
妹は帰省を再開したけれど、私はそのままずるずると帰省しないままだった。
先週後半、ほんとうに久しぶりに帰省した。
少し時間が空いたので、ぶらぶら歩いていた。夜遅くにも歩いた。明るい時間帯も歩いた。
小学校、中学校への通学路も歩いてみた。
どの路も、記憶にあるよりもずっと狭く感じていた。
東京で暮らすようになってからも、何度も帰省していたけれど、
今回ほど、そのギャップを感じたことはなかった。
何か、自分の身体が大きくなったかのようにも感じていた。
それに夜が、こんなに暗かったか、とも思っていた。
田舎には街灯が少ない。小学生の頃は、夜道を歩くには懐中電灯を持っていた。
暗いのもわかっていた。にも関わらず、暗いと感じたのはなぜなのか。
そんなことをぼんやり考えて歩いていた。
目的地はなく、ただ歩いていた。
この路、あの路と歩いていた。そんなふうに歩いても、小さな町だから、大変ではない。
今回の帰省は、夜、熊本駅に着いた。
実家に帰るには、昔、交通センターと呼ばれていたバスターミナルに行かなければならない。
ここが桜町バスターミナルとなっていた。名称が変更になっただけでなく、大きく変っていた。
ちょうど台湾フェアをやっていて、眩しいほどに明るく活気がある。
熊本駅周辺も変っていた。