Date: 5月 2nd, 2012
Cate: 素朴
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素朴な音、素朴な組合せ(その21)

その音を聴いて、コロッと参ってしまったフィリップスのフルレンジユニットはAD7063/M8である。
17.8cm口径のダブルコーンの、このフルレンジをおさめた知人による自作スピーカーから出てきた音は、
冷静に判断すれば非常に個性的な音であり、この音がダメな人にとっては癖の強い音ともなろう。

フィリップスのユニットは、素直な音、癖の少ない音を出そうとしてつくられたスピーカーユニットではないことは、
誰の耳にはっきりとわかるくらいに、その音は人工的な、といいたいところがあり、
この音が好きな者にとってはなんとも心地よく、巧みな音の美しさ、とも思えてくる。

プレス製のフレームに、ダブルコーン仕様、価格も1979年当時で6500円。
物量を投入したつくりではないし、高性能を追求したユニットではない。
周波数特性のグラフをみても、音を聴いても、ワイドレンジを狙ったものではない。

すべてがほどほどに、バランス良くうまくまとめられたユニットであるから、
このAD7063/M8で高忠実度再生を目指そうとは思わないし、
たとえばこのユニットから始めて、トゥイーターを追加してその次にはウーファー……、
といった瀬川先生が発表されている発展的4ウェイ自作スピーカーに使いたいとは思わない。

このフルレンジユニットは、もうこれ一本だけで使おう、というところで心が落ち着く。

なぜ、そういう気持になるのかといえば、フィリップスのフルレンジユニットの音には、
このユニット、この音ならではの説得力があるからではないだろうか。

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