オーディオの「本」(その15)
オーディオの雑誌が平積みでなくなっているのは、定期刊行物である。
その一方で、オーディオ関係のムックは以前よりも増えている。
ヘッドフォン、イヤフォン関連の本もみかけるし、PCオーディオ関係の本もいくつか出てきている。
だからオーディオ関連の本全体としてみれば、必ずしも減ってきているとは言い難いのかもしれないけれど、
それでも、いままでずっと平積みされてきた定期刊行物が棚置きになってしまうのは、
オーディオそのものに勢いがなくなりはじめていることを現しているのだ、と感じる。
本の勢いといえば、私の趣味である自転車の雑誌は、数年前から勢いに乗っている。
私が自転車に興味を持ちはじめたころから出版されていたサイクルスポーツは、
当時中綴だったのがページ数が増えてきて中綴では製本できないほどの厚さになってしまった。
数ヵ月前に出たサイクルスポーツは、月刊誌なのにステレオサウンドに近い厚さがあった。
雑誌も増えている。
自転車という趣味は、オーディオと似ているところもある。
自転車というメカニズムそのものの魅力に惹かれるところは、オーディオと同じといってよい。
だからなのか、自転車の雑誌はどうしても自転車というモノ中心になりがちである。
だが、自転車には、スポーツだからレースが行われている。
日本でも行われているし、ヨーロッパでは日本とは比較にならないほど頻繁に行われている。
いわば自転車の「現場」が、ここにある。
そして、この「現場」だけを取り扱う雑誌が自転車にはある。
CICLISSIMO(チクリッシモ)という本だ。
おもに、というかほとんどヨーロッパのレースを取材している。
ここでは、人が主役だ。
サイクルスポーツやバイシクルクラブといった、従来からある雑誌もレースはとりあげている。
ツール・ド・フランス、それにジロ・デ・イタリアはけっこうなページ数を割いているものの、
それ以外のクラシックレースとなると、ページ数という物理的な制約のため、
扱いはツール・ド・フランスに較べるとずっと小さくなる。
それはやむを得ないことだとわかっているし、だからサイクルスポーツを出している出版社からCICLISSIMOが出た。