オーディオの「本」(その16)
秋はオーディオのショウが東京でも、各地でも開かれる。
冬になると、各オーディオ雑誌では賞が発表される号が出る。
賞をはやくから始めていたのはラジオ技術のコンポ・グランプリとステレオサウンドのState of the art賞だろう。
ステレオサウンドのほうは名称が変り、いまはステレオサウンド・グランプリとなっている。
どちらも、もう30年以上続いている。
30年前といまとではオーディオ界そのものが変化している。
その変化のなかで、各出版社がやっている賞は、どう対応しているのだろうか。
これについては、私自身、各オーディオ雑誌の賞にほとんど関心をもてなくなってしまっているから、
何かを語れるだけのものはもっていないのだが、
ただ感じるのは、すべてオーディオ機器というモノに賞が与えられている、ということだ。
人に賞が与えられたことは、ない(はずだ)。
10年ほど前からなんとなく思っていた、このことが、
この2、3年、各オーディオ雑誌の冬号が出るたびに、つよく思うようになっている。
なぜなのか。
結局、オーディオの「現場」がどこにあるのか。ここにたどりつく気がしてならない。
自転車の世界では、レースという「現場」がはっきりと存在している。
その「現場」は厳しく、だからこそ魅力的な「現場」でもある。
以前も書いたが、オーディオの「現場」となると、私はすぐに答えられない。
秋のオーディオショウが現場といえば、いえなくもないが、「現場」ではない、ともいいたくなる。
自転車の世界とオーディオの世界を一緒くたにはできないのはわかっていても、
オーディオの「現場」は、いったいどこにあるのか。