型番について(その4)
A50からはじまったアキュフェーズのA級パワーアンプは、A50Vに改良され、
その次に出力が50Wから60Wにアップされ、型番はA60になった。
今年、出力は60WのままだがA60の改良モデルとして、A60VではなくA65として登場した。
A50に末尾にVがついたときから思っていたことがある。
このアンプの出力が、できればA級で75Wになってくれたら、型番はA75だろう。
そして改良モデルが出たら、そのときの型番はA80ではなく
(これだったらスチューダーのオープンリールデッキと同じになってしまうから)、
A75Vにしてほしい、そんな音とはまったく関係ないことを、実は思っていたのだ。
A75Vという型番を見て、あるパワーアンプを思い出す人が、どれだけいるだろうか。
1970年代のおわりに、エレクトロリサーチというアメリカのブランドから、A75V1という、
型番が示すとおり75Wの出力、それもA級のステレオ仕様のパワーアンプがあった。
設計者は、ジョン・アイバーソン(John Iverson)だった。
A75がオリジナルモデルで、その改良モデルがA75V1だったと記憶している。
ステレオサウンドの新製品紹介で取りあげられているのが印象的で、ずっと記憶に残っている。
フロントパネルには温度計がついていた。業務用機器を思わせるところがある。
やや武骨ながら精悍な感じで、井上先生と山中先生の音の印象も、読んでいると、そうとうにいい感じに思えて、
当時、ぜひ聴いてみたいパワーアンプのひとつだったにもかかわらず、
結局、実物をいちども見ることはなかった。
山中先生に、どんなアンプだったのか訊いたことがある。
「なかなかいいアンプだったよ」と答えが返ってきた。
そんなことをきいてしまうと、よけいに聴きたくなるが、頭の中で思い描くしかない。
いまのペースでいくと、あと3年後だろうか、アキュフェーズのアンプの出力が75Wか70Wになり、
その改良モデルとして、型番がA75かA75Vになるのは。
型番が似てきたからといって、それが何? と言われれば、返す言葉はないけれど、
それでも同じ型番になってくれたらなぁ、と思ってしまう。