中点(消失点・その1)
2チャンネルのステレオは、モノーラル再生を水平(左右)方向に拡大している。
その2チャンネルのステレオがうまく鳴ったときに、われわれは奥行き感といったものも感じられる。
けれど2チャンネルのステレオは、あくまでも水平方向への拡大であるから、
完全な立体音源とはいえない。
完全な立体音源であるための理屈では、水平方向も左右だけでなく前後への拡大が最低でも必要となり、
さらには垂直方向への拡大も求められる。
にも関わらず、左右のスピーカーシステムの中央に歌手が定位すれば、
その歌手のボディの厚みさえ感じられることすらある。
これは考えれば不思議なことでもある。
なぜそう聴こえるのか、感じるのか。
もっといえばそう感じられる録音もあれば、そう感じられない録音もあるし、
そう感じられる録音のディスクをかけたとしても、そう感じられる音もあれば、そう感じられない音がある。
この違いは、なぜ起るのか。
なにに関係していることなのだろうか。
左右のスピーカーシステムあいだに架空の透明のキャンバス(もしくはスクリーン)が存在しているとすれば、
それは消失点(vanishing point)の有無なのだろうか……。
そんなことを考えている。