Date: 10月 11th, 2011
Cate: 快感か幸福か
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快感か幸福か(音楽の聴き方)

27歳のときに左膝を骨折して入院した。
入院経験のある方ならおわかりのように健康状態を知るために血液検査がある。
そのとき看護婦さんが教えてくれたのが、血液検査をすると、けっこう多くの人が、いわゆる栄養失調なんだそうだ。

栄養失調といっても、遠い昔の栄養失調とは違うのだが、栄養が偏っている、ということでは、
やはり栄養失調ということになるらしい。

食うや食わずの、遠い昔と違い、いまの日本には食べ物は豊富にある。
それこそ好きなものだけを食べていても満たされる。
ずっと昔は、そんな好き嫌いをいっていては、満たされることはできなかったであろうに、
いまや嫌いなものを食べずに好きなものだけ、そして手軽なものだけを食べて、とりあえず満たされる。

いまのように自由に、というよりも好き勝手に食べるものを選べる時代よりも、
そんなことはいっていられなかった時代のほうがいろんな食べ物(栄養)を万遍なくとっていた、
ともいえるということは、音楽の聴き方もそうなっている、といえるのかもしれない、と思う。

アクースティック蓄音器の時代は、SPも蓄音器も非常に高価なものだった。
ラジオも高価だった。
生活の中にあって、音楽を聴ける機会は、いまと比較するまでもなく、ごくわずかだった。
そうやって音楽を聴いてきた人と、いまのようにレコードを買わずとも、
パソコンとインターネットに接続できる環境があれば、いくらでも手軽に聴くことができる。
それこそ好きな食べ物だけを食べていても満たされる(腹はふくれる)ように、
好きな音楽だけを聴いていても、満たされる(といおうか、時間は過ぎ去っていく)。

音楽の選択肢は、圧倒的に増加している、あふれかえっている……。
けれど、音楽を聴いて生きていくのに必ずしも幸福なこととは、思えない。

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