私にとってアナログディスク再生とは(その37)
グラシェラ・スサーナの45回転盤はリマスターは行われていたようだが、リミックスが行われていたわけではない。
ケイト・ブッシュの12インチ・シングルにおさめられていたのはリミックスである。
アルバム”Hounds of Love”に収められている曲をそのまま12インチ・シングルにリカットしたものではなく、
12インチ・シングルの片面に1曲のみのカットだから、
曲の時間も12インチ・シングル用に長く、リミックスしたものだった。
そのこともあって、音の傾向もアルバムとはやや異るところもある。
それがリミックスだけによるのではなく、
12インチ・シングルというアナログディスクがもてる特質を活かしたものであったように思っている。
12インチ・シングルにリカットされた曲を聴いた後では、アルバムにおさめられている同じ曲が、
すこし稀薄といったらいいのだろうか、最初にアルバム(LP)で聴いたときの強烈な印象が、
12インチ・シングルのより強烈な印象の後では、どうしても色褪せて聴こえてしまうところを認めざるをえない。
なにが違っていたのか。
まずリズムの刻みが、より力強く深く感じられる。
そのことによってだと思うのだが、ふたつのスピーカーシステムの間にあらわれるケイト・ブッシュの存在感が、
33 1/3回転のLPで聴いたときよりも、CDで聴いたときよりも、
あきらかにケイト・ブッシュの体温が感じられるかのように生々しい。
当り前すぎることだが、ケイト・ブッシュは日本人ではない。
ケイト・ブッシュはそれほど大柄ではないようだが、それでも同じ身長の日本人女性と比較すれば、
横からみたときの体格の差がはっきりとするところが、音のうえにもあらわれる。
どちらかといえば薄っぺらな日本人の体格ではなく、厚みを感じさせる体格から声が出てくるという感じは、
12インチ・シングルの音から、誰の耳でもはっきりと感じられることだと思う。