Date: 6月 15th, 2011
Cate: モノ
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モノと「モノ」(その8)

「オリジナル盤」「初期LP」と呼ばれる稀少盤は、確かに手にしたときの喜びは大きい。
私も、いまほど「オリジナル盤」がもてはやされる以前に、運良く愛聴盤に関しては、
程度のいいモノを比較的まともな価格で購入することがあった。

ジャケットのつくりもLPを収める内袋も、それにLPそのものもじつに丁寧な仕事がしてあるのが伝わってくる。
LPが贅沢品で、あれもこれもと買える時代ではなかったころにつくられたLPは、モノとして魅力に満ちている。
だから愛着がわく。その愛着も強いものとなる。

モノに対する愛情、愛着は大事なものだと、よくいわれる。
オーディオに対しても、愛情をもって使っていけば……的なことが昔から云われ続けている。
レコードに対しても同じことがいわれている。

大切に取り扱う、ということはモノとのつきあいでは大切なことだ。
だが、そこに愛着、とか、愛情、とか、「愛」を注ぐことは、危険な側面を持っている。
これがオーディオと無関係のモノに対しては、それでもいいと思う。

だが、オーディオで愛を持って接してなければならないのは、
オーディオ機器やレコードではなく、音楽そのものであり、
聴きたい音楽こそ、愛すべき存在のはずだ。

なのに、オーディオという世界には、その「音楽」の前にオーディオ機器、レコードという、
それぞれに魅力を十分に持った存在がある、待ち構えている、といってもいいかもしれない。

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