ボンジョルノのこと、ジャーマン・フィジックスのこと(その45)
セレッションのSL600の音に特にこれといった不満があったわけではなかった。
けれど、ステレオサウンドの試聴室で、
ロングセラースピーカーを聴く、という企画で聴いたQUADのESLにまいってしまう。
SL600のふたつ前に鳴らしていたロジャースのPM510のことも、頭に浮んだ。
そしてESLに変えてしまう。
このときは、「朦朧体」という言葉も知らなかったし、
音の輪郭線についての考えが確立していたわけでもなかったから、
実のところ、ESLやPM510に惹かれるのは、音色に関して、だと思っていた。
そうでないことに自分で気がつくのは、もうすこし先のこと。
そして気づいてみると、PM510をウェスターン・エレクトリックの349Aのアンプで鳴らそうと考えたのか、
なぜ突然SUMOのThe Goldを欲しいと思うようになり手に入れたのか、等々、
それらの行為に納得が行くようになった。
憧れていたものと追い求めていたものが違うことに気づく。