Date: 6月 5th, 2011
Cate: モノ
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モノと「モノ」(その2)

黒田先生の「聴こえるものの彼方へ」のなかの
「ききたいレコードはやまほどあるが、一度にきけるのは一枚のレコード」に、
フィリップス・インターナショナルの副社長の話がでてくる。
     *
ディスク、つまり円盤になっているレコードの将来についてどう思いますか? とたずねたところ、彼はこたえて、こういった──そのようなことは考えたこともない、なぜならわが社は音楽を売る会社で、ディスクという物を売る会社ではないからだ。なるほどなあ、と思った。そのなるほどなあには、さまざまなおもいがこめられていたのだが、いわれてみればもっともなことだ。
     *
「ききたいレコードはやまほどあるが、一度にきけるのは一枚のレコード」は1972年の文章、
ほぼ40年前に、フィリップス・インターナショナルの副社長は、
いまの時代のレコード会社の責任ある地位にいる者としての発言をおこなっていた、といえる。

黒田先生が「なるほどなあ」と思われたように、
さまざまな思いをこめて「なるほどなあ」とつぶやきたくなる。

CDの売上げが落ちている、とよく云われる。
なにも日本だけのことではなくて、どこの国でもCDの売上げは落ちている、らしい。

音楽CDをだしている会社を「レコード会社」と呼んでいる。
この言葉のイメージするところからすれば、以前だったらLP、いまならばCD、
これらレコードの売上げが落ちることは会社の存続に直接関わってくることになるわけだが、
フィリップス・インターナショナルの副社長のいうように、
「ディスクという物を売る会社ではない」ならば、「音楽を売る会社」としての在り方を、
「レコード会社」ははっきりと示してほしい、と思う。

「レコード」は、いまの若い人たちは、アナログディスクのことだけを示す単語として使われているから、
「レコード会社」ではなく「ディスク会社」(もっと正しくいえば「ミュージックディスク会社」か)が、
違う呼称となる日は、もう来ている。
というよりも1972年の時点で、すでに来ていた、ともいえる。

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