アンチテーゼとしての「音」(アンチ「自己」・その4)
JBLのフラッグシップモデルであるDD66000を鳴らしているのに、なぜ、アルテックを鳴らそうとするのか。
当時の早瀬文雄(舘 一男)さんのリスニングルームに入って、そのことを思っていた。
この時、アルテックは名前だけの存在になってしまっていた。A7、A5、620A(B)、6041といったスピーカーシステムはもちろんなかったし、代わりとなるモデルもなかった。
中古のアルテックから、何を選ぶか。舘さんは、スピーカーユニットの604-8Gを選んだ。エンクロージュアは620Aとどうとうの大きさのモノを特注していた。
そのエンクロージュアは、私が京都に着く少し前に到着したらしくて、二人で604-8Gを取り付けた。
舘さんは、どんな音で鳴ってくれるのか、とワクワクしていた。私はというと、DD66000がかなりいい音で鳴っていたから、いまさらアルテック……、という気持があったことは否定しない。
それでも久しぶりに聴く604-8Gは、どんな音で鳴ってくれるのか。がっかりするのか、それとも、やっぱりアルテック! と思える音が聴けるのか。
604-8Gを取り付け、DD66000の前まで運んで、結線。ボリュウムをあげる。
接続ミスしたのか──。二人で確認しているから、間違ってはいない。けれどウーファーしか鳴っていない。トゥイーターが、両チャンネルとも鳴っていない。
604-8Gを外す。トゥイーターのバックカバーを外す。するとダイアフラムのリボン状のリード線が、どちらも断線していた。
この時の舘さんの落ち込みようは、いまでも思い出せるほどだった。