My Favorite Things(オープルリールデッキ篇・その17)
1980年代の秋葉原はオーディオの街だった。私がステラヴォックスの実機を初めて見たのは、秋葉原のサトームセンのオーディオのフロアだった。
この時代のサトームセンはオーディオにかなり力を入れていた。マークレビンソンのHQDシステムも展示してあった。そのフロアのガラスケースの中にあった。
それまで写真でしか見たことがなかったモデルが、ガラス越しとはいえ目の前にある。触れないし音も聴けないけれど、これがステラヴォックスなのか、という実感だけで満足できていた。
ステラヴォックスとナグラ、どちらが優れているのかは私にはどうでもいいことで、どちらも欲しいと思うけれど、どちらかと問われればステラヴォックスと答えるぐらいの違いだ。
それにナグラはSNNというモデルがあった。SNNに相当するモデルは、ステラヴォックスにはなかった。
SNNは外形寸法W14.7×H2.6×D10.0cm、重量0.574kg(テープ、電池を含む)で、まさに手のひらサイズのオープンリールデッキ。
テープ速度は4.75cm/secと9.5cm/secで、録音時間は27分(18μテープ、9.5cm/sec)、1時間48分(9μテープ、4.75cm/sec)。
電源は単三電池二本使用。おそらくだが、この単三電池二本だけで、1時間48分の録音は可能だったと思われる。
コンパクトにつくるだけでなく、省電力も実現していたわけで、SNNにはオーディオマニアとしてではなく、モノマニアとして強く惹かれる。
SNNは940,000円(1981年)していた。SNNは欲しいという気持よりも一度使ってみたい、という気持の方が強い。
そんなSNNを出していたナグラから、1982年にT-Audioが登場した。ポータブル機器専門メーカーだと思っていたナグラが、据置型のオープンリールデッキを出してきた。
価格は3,500,000円。このころアンペックスのATR102は4,000,000円、スチューダーのA80が3,990,000円、テレフンケンのMagnetophon15A-S/VUが6,240,000だったから、特別に高価だったわけではない。