Date: 4月 12th, 2023
Cate: ディスク/ブック
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宿題としての一枚(その12)

瀬川先生からの宿題としての一枚。
コリン・デイヴィス指揮のストラヴィンスキーの「火の鳥」である。

熊本のオーディオ店。
瀬川先生が鳴らされた音。

JBLの4343、
トーレンスのリファレンス、
マークレビンソンのLNP2、
SUMOのTHE GOLD、
これらのシステムが鳴らした音は、忘れられない音だ。
絶対に忘れられない音の記憶である。

別項で書いているように、この時が、瀬川先生が熊本に来られた最後だった。
いつもならば、試聴会の終りに、リクエストはありませんか、といわれるのに、
その日は、具合がひどく悪そうで、「火の鳥」を片面鳴らされたあと、すぐに引っ込まれた。

体調が悪かったのか……、そんなこともあるよなぁ……、
そんな感じで受け止めていたのだけれど、
そのオーディオ店を出て歩いていたら、駐車場から瀬川先生をのせた車が出てきた。

車内で瀬川先生はぐったりされていた。
そうとうに具合が悪いのは、誰にだってわかるほどにだ。

あの時の「火の鳥」の音は、なんだったのか──、と考えることがいまでもある。
高校生のときに聴いた音だから、それ以上の音をそれまで聴いたことがないから、
すごい音と感じたということは否定できないけれど、それ以上の音であったようにも思う。

冷静に聴くことができれば、欠点はいくつか指摘できる音だったのかもしれないが、
あの時の「火の鳥」はそういうことを一瞬にしてどうでもいいことと思わせるほど、
そんなふうな音だった──、といまでもおもっている。

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