Date: 11月 11th, 2022
Cate: 楽しみ方
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オーディオの楽しみ方(その11)

《真剣に戯れること》、
特にオーディオと真剣に戯れることで思い出すのは、
上杉先生のことであり、黒田先生の文章である。
     *
 三十インチ・ウーファーが横に四本並んだところは、壮観でした。それを目のあたりにしてびっくりしたはずみに、ぼくは思わず、口ばしってしまいました、なんでこんな馬鹿げたことをしたんですか。そのぼくの失礼な質問に対しての上杉さんのこたえがまた、なかなか痛快で、ぼくをひどくよろこばせました。上杉さんは、こうおっしゃいましたね──オーディオというのは趣味のものだから、こういう馬鹿げたことをする人間がひとりぐらいいてもいいと思ったんだ。
 おっしゃることに、ぼくも、まったく同感で、わが意をえたりと思ったりしました。オーディオについて、とってつけたようにもっともらしく、ことさらしかつめらしく、そして妙に精神主義的に考えることに、ぼくは,反撥を感じる方ですから、上杉さんが敢て「馬鹿げたこと」とおっしゃったことが、よくわかりました。そう敢ておっしゃりながら、しかし上杉さんが、いい音、つまり上杉さんの求める音を出すことに、大変に真剣であり、誰にもまけないぐらい真面目だということが、あきらかでした。いわずもがなのことをいうことになるかもしれませんが、上杉さんは、そういう「馬鹿げたこと」をするほど真剣だということになるでしょう。
     *
私も、上杉先生のこの時のシステムをみたら、
「なんでこんな馬鹿げたことをしたんですか」と口走ると思う。

ステレオサウンド 38号の特集からの引用である。
黒田先生がオーディオ評論家のリスニングルームを訪問されている。

この時の上杉先生のシステムは、
シーメンスのオイロダインに中心帯域を受け持たせて、
8kHz以上をテクニクスのホーン型トゥイーターEAS25HH22NAに、
150Hz以下はエレクトロボイスの30Wという、かなり大がかりなシステムであった。

エレクトロボイスの30Wは、30インチ(76cm)口径のウーファー、
これを上杉先生は片チャンネルあたり二本、つまり両チャンネルで四本使われている。
30Wが二発横に並んでいる上にオイロダインのウーファーがあるわけだが、
オイロダインの38cm口径ウーファーが20cm口径ぐらいに感じられる。

黒田先生は《上杉さんは、そういう「馬鹿げたこと」をするほど真剣だということになるでしょう》
と書かれている。

深刻ぶるのが好きな人は、こんなことは絶対にやらない。

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