三十数年ぶりの名曲名盤(その1)
Kindle Unlimitedで、レコード芸術が読める。
最新号(2021年9月号)も読める。
9月号の特集は、「新時代の名曲名盤500」である。
9月号は、モーツァルトからシューベルトまで。
私のレコード芸術の、この名物企画を熱心に読んでいたのは、
もう三十年以上前のこと。
1980年代終りごろは、この特集が一冊にまとめられたムックも買ったほどだった。
文字通りボロボロになるまで読んだ。
聴きたい(買いたい)ディスクのところに赤丸をつけたり、
選にもれているけれど、私が気に入っているディスクを書き込んだりしていた。
このころ名曲名盤は、選者全員がコメントをきちんと書いていた。
書き手の負担は大きくても、読み手にとって読み応えがあった。
それがいつのころからかそうではなくなったのは、
ステレオサウンドの同様の企画であるベストバイと同じである。
書き手の負担を減らすように、回を重ねるごとになっていく。
読み応えが薄れていけば、熱心に読まなくなる。
それが編集部の目的なのだろうか──、と勘ぐりたくもなる。
そんなことを書きたかったわけではないのだが、
書き始めると、どうしてもいいたくなってしまう。
今月号のレコード芸術の特集を眺めていて、
ずいぶん三十年前と変ったな、とまず思った。
モーツァルトのピアノ・ソナタをじっくりと見ていて、
特にそう感じた。
すごい変りようだ、と感じた曲もあれば、
あまり変っていないな、と感じた曲もある。
モーツァルトのピアノ・ソナタでは、意外にもグールドがあまり選ばれていない。
一位に選ばれているので目につくのは、
アンドレアス・シュタイアーとクリスティアン・ベザイデンホウトの二人。
二人とも、三十年前にはまったく選ばれていなかった。
レコード(録音物)は、オーディオ機器と違って、
廃盤になっても、何年後かには復刻されたりする。
最新録音(演奏)と数十年前の録音(演奏)とが、同時に売られたりする。
オーディオ機器は、そうはいかない。