オーディオがオーディオでなくなるとき(その16)
デジタルの技術の進歩は、そういったことだけでなく、
趣味のオーディオの世界では、ハイレゾ(High Resolution)の方も向いている。
サンプリング周波数は高くなっていく。
別項で書いているように、
ハイアーレゾ(Higher Resolution)、
さらにはハイエストレゾ(Highest Resolution)を目指しているかのようでもある。
こういったデジタルの技術の進歩を、歓迎はしている。
けれど一方で、危惧するところもある。
デジタルの技術の進歩は、
鳴らし手に万能感を与えるのではないか、ということだ。
鳴らし手がほんとうに万能になるのではなく、万能感を与えるだけで終ってしまうのではないのか。
そうなってしまっては、完全に誤った道となってしまう。
そんな方向にオーディオが進んでしまった時、
それだけでなくオーディオマニアが、そんな方向に進んでしまった時、
オーディオがオーディオでなくなるとき──、ではないのか。
唐突なように感じる人もいるかもしれないが、
私は、ここでイェーツのよく知られる詩の一節をおもい出す。
“In Dreams Begin Responsibilities”
この短い一節をどう訳すのか、
どう受け止めるのかは人によって、大きく違ってくるかもしれないが、
それでも、“In Dreams Begin Responsibilities”のないオーディオは、
もうオーディオではなくなっている。