オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(KEF Model 303・その3)
S9500は1989年に登場している。
303の十年後である。
S9500は、一本2,200,000円だった。
303の三十倍以上である。
エンクロージュアを構成する素材も、
S9500と303とでは、そうとうに違う。
S9500は、そのころのJBLのフラッグシップモデルだった。
303は、当時、日本に輸入されていたKEFのモデルとしては、もっとも安価な製品だった。
製品コンセプトからして、まったく違う。
十数年前に見たS9500は、なんとも古びた感じがしていた。
それはデザインが古くなってしまった、ということではなく、
ホーンに採用されたアクリル、
ベースのコンクリート、
どちらもくすんでしまっていたからだった。
所有者がこまめに手入れをしていなかったのだろう。
ウーファーは、特にくたびれた感じはしなかったけれど、
ホーンとベースは、無機的な材質ということもあってか、
手入れを怠るとこんなふうになってしまうのか、と少々驚いたことがあった。
303には、そういうところ(材質)は存在しない。
303の外観は、くり返すが、素っ気ない。
素っ気ないからといって、デザインされていないわけではない。
むしろ、よくデザインされている、と今回、自分のモノとして眺めてそう思った。