老いとオーディオ(ピーター・ゼルキンのこと)
ハタチぐらいのころだから、もう四半世紀前になる。
ピーター・ゼルキンのコンサートに行った。
コンサートのチラシには、長髪の、しかも神経質そうな表情のピータ・・ゼルキンの写真が使われていた。
現代曲中心のプログラムだったような記憶もあるが、正直なところひどく曖昧だ。
コンサートでのピーター・ゼルキンの演奏よりも、
彼の父であるルドルフ・ゼルキンとの風貌の違いが、より印象に残った。
そのころテラークから、
ルドルフ・ゼルキンと小澤征爾によるベートーヴェンのピアノ協奏曲が出て話題になっていた。
ジャケットでのルドルフ・ゼルキンと、
コンサートでのピーター・ゼルキンが親子とは、何も知らなければそうは思わないだろう。
その後、ピーター・ゼルキンは長髪でなくなったことは知っていた。
それでもピーター・ゼルキンの録音に興味を持つことはなかった。
つい先日、たまたまピーター・ゼルキンの近影を見た。
偶然に見かけたものだっただけに、
四半世紀前の印象とあまりにも違いすぎたピーター・ゼルキンに驚くだけでなく、
父と息子は、結局歳を重ねればそっくりになっていくのか、とも感じていた。
親子だから似てくるのは当然なのだが、
それでも長髪のころの印象が強かっただけに、
そのころのピーター・ゼルキンからはいまの風貌は想像できなかった。
そうなると不思議なもので、これまでさっぱり聴いてこなかったピーター・ゼルキンを、
ルドルフ・ゼルキン(こちらもほとんど聴いていない)の演奏とともに聴きたくなってくる。