ベートーヴェン(その3)
ケント・ナガノ指揮、児玉麻里のピアノによるベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番を聴いたのは、
3年前、菅野先生のリスニングルームにおいて、である。
「これ、聴いたことあるか?」と言いながら、このCDを目の前に出された。
正直、ケント・ナガノと児玉麻里……と思っていた。
菅野先生は、熱い口調で「まさしくベートーヴェンなんだよ」と語られた。
菅野先生の言葉を疑うつもりはまったくなかったけど、
それでも素直には信じられない気持があった。
菅野先生のところでもう何度も、いろんなディスクを聴かせていただいたけれど、
聴く前にディスクを手渡されたのは、このときがはじめてだった。
音はいいんだろうな、と思っていた。
このディスクは、ノイマンがデジタルマイクロフォンを開発して、
そのデモンストレーション用として作られたものだということだったからだ。
でも菅野先生は「まさしくベートーヴェンなんだよ」と言われたのだから、
それが優れているのは録音のことだけでなく、演奏も含まれているわけだ。
とにかく、このCDが鳴りはじめた。