好きな音、好きだった音(その5)
別項「日本の歌、日本語の歌(アルテックで聴く・その6)」で引用した内田光子のインタヴュー。
手元にそのレコード芸術がないので正確な引用ではないが、
そこで語られた言葉で印象に残っているのが、もうひとつある。
「人は歳をとればとるほど自由になる」
そう内田光子は語っていた。
この言葉を、内田光子は、
ベートーヴェンのピアノ協奏曲の録音で協演したザンデルリングにも言った、とあった。
ザンデルリングも同意した、と記事にはあった。
(確か2010年ごろのレコード芸術のはずだ)
歳をとるということは老化する、ということ。
体力的には衰えるし、身体も硬くなってくる。
けれど自由になっていく。
自由になっていくことを自覚していない人は、
つまりは大人になっていない、ということなのかもしれない。
この「自由」になっていくことで、はじめて鳴らせる音の領域がある、と、
ここ数年思うようになった。
内田光子のインタヴューを読んだときは、私はまだ40代だった。
いまは50なかば。
内田光子のことばを実感しつつある。