日本の歌、日本語の歌(アルテックで聴く・その6)
十年は経っていないと思う。
七、八年前のレコード芸術(だったと記憶している)に、
内田光子のインタヴュー記事が載っていた。
来日時のインタヴューのはずだから、2009年のころだろうか。
掲載誌のレコード芸術が手元にないので、はっきりとはいえないが、
このあたりのインタヴューで間違いないと思う。
そこでのインタヴューで、内田光子は、
言葉と「色」は深く結びついている、と語っていたのが強く記憶に残っている。
言葉と「心」も切り離せない、ともいっていた。
そしてヨーロッパの言語の中で、日本語に近いのがフランス語である、とも。
内田光子は他のインタヴューでも語っているが、
日本語を特殊な言語として、英語がイエス、ノーをはっきりと相手に伝える言語に対し、
日本語は八方丸くおさめるための曖昧なところを残す言語である、と。
レコード芸術でのインタヴューは言語の「色」なのだから、
日本語とフランス語の「色」が近い、ということだろう。
なぜ、このインタヴューの、この部分を憶えているのかというと、
オーディオとの関係においてである。
私が最初に手にしたステレオサウンドは40号と「コンポーネントステレオの世界 ’77」である。
「コンポーネントステレオの世界 ’77」に、井上先生による組合せがある。
フランスのキャバスのスピーカー、ブリガンタン(Brigantin)を、
AGIの511とQUADの405、それにカートリッジはAKGのP8ESで鳴らす、というものだった。
この組合せは、女性ヴォーカル、それも日本人による日本語の歌をひっそりと聴く、というものだった。
ジャニス・イアンのレコードも含まれていたから、
必ずしも日本語の歌というわけではないが、
そこでの組合せの記事で山崎ハコの印象が強かったため、そんなふうに受けとめてもいた。