Date: 5月 21st, 2017
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日本の歌、日本語の歌(アルテックで聴く・その7)

井上先生がフランスのスピーカー、キャバスを選ばれたのは、
日本語の「色」とフランス語の「色」が近いという理由からではない。

声の臨場感、生々しさ、それに定位をシビアに要求した場合に、
中高域を受け持つユニットの振動板が金属であれば、どうしても金属製の音は避けられない。
そこで高分子系のマイラー、フェノールの振動板のユニットをもつモノとして、
第一に選択されたのがロジャースのLS3/5Aで、
この延長線上でもう少しスケール感の出せるスピーカーとしてのBrigantinである。

このころの私にとってBrigantinは、JBLの4343以上に気になる存在だった。
JBLは地方の、少し大きなオーディオ店にはたいてい置いてあった。
一方のキャバスはどこにもなかった。

当時のキャバスの輸入元は成川商会。
JBLの輸入元の山水電気との規模の違い、
ブランドの知名度の違い、それらが重なってのことなのだろうが、
Brigantinを聴くことはついになかった。

聴きたくとも聴けなかったスピーカー、
スピーカーにかぎらず、アンプもカートリッジもそうだけど、
特にスピーカーは聴けなかったものの存在は、時としてずっと心に残ってしまう。

Brigantinが、そうだった。
そうだったからレコード芸術での内田光子のインタヴューを読んで、
日本語の「色」とフランス語の「色」の話が、私においてはBrigantinとつながっていき、
内田光子のインタヴューの、そのところだけを強く憶えてしまっていた。

そして考えるのは、ヤマハのNS5000の試作機が、
日本語の歌において精彩を欠いていたのは、「色」の再現ができていなかったのか。

NS5000は昨年発売になっている。
2016年のインターナショナルオーディオショウでのNS5000の音については、
私にとってはどうでもいい音になってしまっていた。
その後もじっくり聴く機会はないから、これ以上のことは書かないし、
日本語の歌がきちんと鳴るようになったのかも確認していない。

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