キヤノン AE1
中学二年になったばかりの春、
キヤノンからAE1というカメラが登場した。
当時読んでいた学研が出していた中学生向けの月刊誌にも、
AE1の広告は載っていた。
その数年前から父は写真に凝っていた。
モノクロ写真を自分で現像していた。
休日は、一日自分の部屋にこもっての作業をしていた。
そんな父の楽しそうな姿を見ていたから、
写真に興味をもった時期が、私にもあった。
ちょうどそのころと重なるようにAE1が登場した。
本体価格は、八万円くらいだった。
すぐには無理でも、なんとか買えそうな気がした。
中学生向けの月刊誌に広告を出していたくらいだから、
キヤノンも、10代の若者をターゲットにしていたのかもしれない。
最初に買うカメラはこれだ! と決めた。
よし貯金をするぞ、と思った。
1976年の春のことだった。
結局、この年の秋に「五味オーディオ教室」に出逢う。
そこでカメラへの興味を抑え込んだ。
まだ買えてなかったから、できたのかもしれない。
「五味オーディオ教室」との出逢いが二、三年遅れていたら、どうなっていただろうか。
AE1のこと思い出し、ふとそんなことを思うのは、
最近、写真家の野上さんと話すことが増えたからかもしれない。
まぁ、写真はヘタの横好きで終っていたであろう……