続・再生音とは……(波形再現・その12)
マイクロフォンを使ってスピーカーの測定には、つねに曖昧さといっていいものがつきまとう。
正弦波を使っての、もっとも基本的な測定であっても、
スピーカーからの距離が変れば、高域の特性は変化する。
スピーカーから1mでの周波数特性と2m、3m……と離れていった場合の特性は、
高域の減衰量が違ってくる。
同じ距離であっても、マイクロフォンの高さが違えば、また変ってくる。
それから微妙なことだが、マイクロフォンがきちんと正面を向いているかどうか。
少し斜め上になっていたり、左右どちらかに少しズレていたりしたら、
それだけでも測定結果は変ってくる。
距離も高さも同じでも、湿度が違えば、また違ってくる。
空気も粘性をもっているのだから、考えれば当然のことである。
そこにマイクロフォンのことが絡んでくる。
測定用のマイクロフォンなのかどうかである。
測定用であっても、きちんと校正されているのかどうか。
いまではスマートフォンとアプリがあれば、簡単な測定は可能である。
外部マイクロフォンをもってくれば、もう少し正確な測定ができるようになる。
測定が手軽に身近になっているのは、いいことだと思う。
それだけに、いま自分が何を測定しているのかは、常に意識しておく必要がある。
特にスピーカーからの音をマイクロフォンで拾い、
その波形とCDプレーヤーからの出力波形とを比較して、
どれだけの再現率があるのかをみるのに、どんなことが要求されているのか、
ほんとうに理解しての波形の比較なのだろうか。
しかもスピーカーは、ステレオ再生の場合、二本必要である。
モノーラルが二つあれば、
それでステレオ(正確にはステレオフォニック)となる──、
そう考えているのだとしたら、正しくはない。